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特別支援教育就学奨励費とは?支給日や年収制限などを解説

2025.12.29
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特別支援教育就学奨励費とは経済的負担を減らす制度

小学校入学を控えた保護者の方にとって、学習机やランドセル、体操服などの準備費用は大きな出費です。特に、発達に心配のあるお子さんが特別支援学級などに進む場合、通常とは異なる準備や通学の負担が生じることがあります。そんな保護者の経済的な負担を少しでも軽くするために設けられているのが、特別支援教育就学奨励費という制度です。

「うちの年収でももらえるのだろうか。」「いくらもらえるのだろうか。」「手続きが大変そうで、よく分からない。」「デメリットはあるのか。」

そんな疑問を持つ方のために、この記事では制度の仕組みや対象者、具体的な支給額の目安について詳しく解説します。愛知県教育委員会の資料なども参考にしながら、支給日やデメリットの有無についても触れていきますので、就学準備の参考にしてください。

制度の対象となる子どもと仕組み

まずは、どのような子どもが対象になるのか、制度の基本的な仕組みを理解しましょう。

制度の目的と対象となる子ども

この制度は、単にお金を配るためのものではなく、障害のある幼児児童生徒が特別支援学校や小学校・中学校の特別支援学級等で学ぶ際に、保護者が負担する教育関係経費について、家庭の経済状況等に応じて国や自治体が補助する仕組みです。教育の機会均等を保障し、特別支援教育の普及を奨励することを目的としています。

対象となるのは以下の児童生徒です。

①特別支援学校の児童生徒
②特別支援学級の児童生徒
③通級指導教室の児童生徒
④通常学級の児童生徒のうち、学校法施行令第22条の3に規定する障害の程度に該当するもの

①の特別支援学校の児童生徒については、「特別支援学校への就学奨励に関する法律」で決められており、国庫負担金から都道府県が就学に要する経費を負担することになっています。
そのため、特別支援学校の児童生徒に対する制度は、都道府県の教育委員会が窓口になります。

一方、②から④の小学校や中学校に通う児童生徒については、法律ではなく、各市区町村の要綱で定められており、国庫補助金から出ています。
そのため②から④の小学校や中学校に通う児童生徒に対する制度の名称は、名古屋市や大阪市では「特別支援教育就学奨励費」に対し、神戸市では「特別支援教育就学援助」というなど、自治体により名称が異なることがあります。
また、小学校や中学校に通う児童生徒に対する制度は、市区町村の教育委員会が窓口となります。

詳しくは、通学する学校が支援学校なら、お住まいの都道府県の教育委員会に、地域の小・中学校なら、お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせるとよいでしょう。

特別支援学級と通級指導教室による違い

特別支援学級に在籍している場合は、給食費や学用品費など幅広い費目が支給対象となることが一般的です。一方、通常の学級に在籍しながら週に数時間だけ別の教室で指導を受ける通級指導教室の場合は、通級に伴う交通費など、対象となる費目が限定される場合もあります。

また、通級の場合は自治体によって認定基準が大きく異なります。障害者手帳を持っていることが条件の場合もあれば、手帳がなくても学校長が認めた場合に対象となることもありますので、就学相談などで確認をしましょう。

特別児童扶養手当や就学援助との違い

よく混同される制度に特別児童扶養手当や就学援助がありますが、これは別の制度です。

特別児童扶養手当は、障害のある児童を養育している保護者に支給される手当で、障害者手帳の等級や診断書に基づいて判定されます。一方、特別支援教育就学奨励費は、就学に際して必要な経費を補助するものであり、手帳の有無にかかわらず、特別支援学級への在籍や学校長の認定、そして世帯の所得状況によって決定されます。両方の要件を満たしていれば、併給することも可能です。

就学援助については、特別支援学校の生徒は該当しませんが、地域の小中学校に通う生徒は該当することがあります。
障害の有無にかかわらず、生活保護や住民税非課税家庭など経済的に困っている家庭が対象となります。
就学援助の方が特別支援教育就学奨励費より手厚いサポートを受けられるため、就学援助に該当する家庭は申請することをおすすめします。
なお、就学援助の認定がおりたときは、給食費や修学旅行費など特別支援教育就学奨励費と重なる項目については、就学援助の方から支給されます。

特別支援教育就学奨励費はいくらもらえるのか

最も気になるのは、実際にいくらもらえるのか、何が対象になるのかという点でしょう。支給額は世帯の年収と、購入した物の実費によって決まります。

支給対象となる費目の具体例

世帯や所得により、基準額が異なり、経済的に支援が必要な家庭ほど手厚く、余裕のある家庭は一部のみ、という傾斜配分になっています。

補助の対象となる経費は多岐にわたります。代表的なものとして、以下の費目が挙げられます。

・学校給食費
毎月の給食費の実費または半額。

・通学費
電車やバスの定期代など。付き添いが必要な場合は保護者の交通費も対象になることがあります。

・修学旅行費
宿泊を伴う旅行の費用。交通費や宿泊費が含まれます。

・学用品購入費
ノート、筆記用具、体操服、水着、鍵盤ハーモニカなど、学校で使用するもの。

・新入学児童生徒学用品費
入学時に必要なランドセル、制服、雨具などの購入費。

これらは一律に現金が配られるのではなく、実際にかかった費用(実費)を後から支給される形が基本です。上限額が設定されている費目もあるため、いくら高いものを買っても全額戻ってくるわけではありません。

世帯年収による所得制限と段階

支給される金額や割合は、保護者の経済状態(世帯収入)に応じて、以下の3つの区分(支弁区分)に分けられます。愛知県の例を見てみましょう。

・第1区分(全額支給)
生活保護基準の需要額の1.5倍未満の世帯など。補助対象となる経費のほぼ全額が支給されます。

・第2区分(一部半額)
生活保護基準の需要額の1.5倍以上2.5倍未満の世帯。

給食費や学用品費などは実費の2分の1が支給されます。ただし、通学費や修学旅行費については、実費(全額)が出る場合と半額の場合があります。

・第3区分(一部のみ)
生活保護基準の需要額の2.5倍以上の世帯。

所得が比較的高いため、給食費や日常の学用品費は支給対象外(自己負担)となります。しかし、修学旅行費や職場実習費、通学費などは支給対象として残ることが多いです。

このように、年収が上がると支給される費目が減ったり、支給割合が半分になったりする仕組みです。

実際にもらえる金額のイメージと新入学準備金

具体的な金額のイメージとしては、第1区分であれば給食費が年間約5万円、学用品費が数万円戻ってくるため、家計へのメリットは非常に大きいです。第2区分でも、給食費の半額や、修学旅行費の補助があるため、数万円単位の支給が見込めます。

特に大きいのが新入学児童生徒学用品費です。これはランドセルや制服など、入学直前の高額出費をカバーするもので、数万円(自治体により異なる)が支給されます。

受給することにデメリットはあるのか

お金が戻ってくるのは助かりますが、デメリットはないのかと心配になる方もいるかもしれません。

プライバシーと周囲への知られ方

受給していることが他の保護者に知られてしまうのではないかという不安です。基本的に、申請書類は学校へ提出しますが、封筒に入れて提出するなどプライバシーには配慮されています。また、支給も原則として保護者の銀行口座への振り込みで行われるため、集金袋のやり取りなどで周囲に知られることはありません。ただし、学用品を購入した際の領収書を提出する必要があるため、担任の先生との事務的なやり取りは発生します。

手続きの繁雑さと得られる支援

もうひとつの懸念点は、手続きの手間です。年度初めに世帯状況等調書や収入を証明する書類(源泉徴収票など)を提出する必要があります。また、これが一番のハードルですが、学用品を購入するたびにレシートや領収書を保管し、指定の用紙に貼り付けて提出しなければなりません。

レシートをうっかり捨ててしまった。スーパーで夕飯の材料と一緒にノートを買ってしまい、レシートが一緒になってしまった。

こうしたミスで申請できなくなるケースがよくあります。学用品を買うときは、必ず学用品だけで会計を分け、レシートをもらう癖をつける必要があります。また、レシートには品名(ノート、上履き等)が具体的に記載されている必要があります。お品代や文具等といった曖昧な表記では認められないことがあるため注意が必要です。この事務作業を面倒に感じる方もいますが、年間で数万円から十数万円単位の補助を受けられるメリットを考えれば、十分にやる価値のある手続きと言えます。

将来への影響や記録について

この制度を利用したことが、子どもの将来の進学や就職に不利に働くことはありません。あくまで保護者の経済的負担を軽減するための教育支援制度であり、個人の信用情報や進路指導の記録にマイナスの要素として残るものではないので安心してください。

申請から支給日までの流れ

では、実際にどのようなスケジュールで動けばよいのでしょうか。子どもが地域の小中学校に通う場合の例を見ていきましょう。

申請のタイミングと提出書類

多くの自治体では、入学説明会や4月の年度初めに学校から案内が配られます。申請を希望する場合は、学校から配布される特別支援教育就学奨励費世帯状況等調書に必要事項を記入します。この調書には、家族全員の氏名や収入状況などを記入し、会社員であれば源泉徴収票、自営業であれば確定申告書の控えや課税証明書などを添付して提出します。学校長を通じて教育委員会へ提出され、そこで審査が行われて区分(第1〜3区分)が決定されます。

支給日はいつになることが多いか

支給のタイミング、つまり支給日は自治体によって異なりますが、毎月ではなく、学期ごとや数回に分けてまとめて振り込まれるのが一般的です。愛知県では、原則として保護者の口座へ7月、12月、3月の年3回に分けて支給するとされています。つまり、4月に買ったランドセル代や毎月の給食費が、すぐに戻ってくるわけではありません。一旦は家計から立て替えて支払い、数ヶ月後にまとめて戻ってくるというサイクルになります。

領収書の保管と注意点

支給を受けるためには、実際にその学用品を購入したことを証明しなければなりません。4月以降に購入したランドセル、体操服、ノート、筆記用具などのレシートや領収書は、絶対に捨てずに保管しておいてください。ネット通販で購入する場合も同様です。Amazonや楽天などの購入履歴画面を印刷したものではなく、正式な領収書のデータを出力して添付する必要があります。宛名は保護者名または児童名にしてもらいましょう。

中学生や高校生への支援

小学校を卒業した後、中学生や高校生になったときの支援はどうなるのでしょうか。

義務教育である中学校は継続して申請が可能

中学校も義務教育ですので、特別支援学級などに在籍している場合は、小学校と同様にこの制度の対象となります。手続きの流れも基本的には同じで、年度ごとに申請を行います。部活動の遠征費や修学旅行費など、中学校ならではの出費も対象になる場合があるため、引き続き活用したい制度です。

特別支援学校高等部での受給は本科のみ

高校生にあたる特別支援学校高等部は、本科は対象となりますが、専攻科は対象外となります。

通常の高校に進学する場合の公的支援

通常の高校の場合、所得に応じて授業料が実質無料になる高等学校等就学支援金や、低所得世帯向けの高校生等奨学給付金といった別の制度を利用することになります。進学先によって利用できる制度の名前や内容がガラリと変わるため、進路選びの際には、その学校に行ったらどんな支援が受けられるのかについても確認しておくと安心です。

特別支援教育就学奨励費についてのまとめ

特別支援教育就学奨励費は、障害のある子どもの学びを支えるための大切な権利です。年収による制限や区分の決定はありますが、多くの家庭で給食費や学用品費の一部または全額が補助されます。特に、入学時の準備金や修学旅行費といったまとまった出費に対するサポートは、家計にとって非常に心強いものです。

手続きが少し手間に感じるかもしれませんが、毎日の通学や学習に必要な経費をサポートしてもらえることは、子どもが安心して学校生活を送るための基盤となります。学校から案内が来たら内容をよく確認し、不明点は担任の先生や事務職員、教育委員会に相談して、活用できる支援はしっかりと受け取りましょう。

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【参考】
特別支援学校への就学奨励に関する法律
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/07061116/003/045.htm

特別支援教育就学奨励費について(名古屋市) 
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/141141_162175_misc.pdf

特別支援教育就学奨励費(名古屋市)https://www.city.nagoya.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/017/016/r7_00j_oshirase.pdf.pdf

特別支援教育就学奨励費負担等説明資料 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/22/1405876_3.pdf

教育奨励制度(幼稚園~高等学校)についての一覧表
https://www.city.nagoya.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/766/r7seidoichiran.pdf

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