発達性協調運動障害とは?セルフチェックリストと支援について
- 発達障害
- ASD(自閉症スペクトラム)
- ADHD(注意欠如多動性障害)
- LD(学習障害)
- 支援方法・家庭での過ごし方
「うちの子どもはなぜこんなに運動が苦手なの?」「不器用さが目立ち日常生活でも困ることが多い…」そんな悩みを抱えていませんか?特に、同年代の子どもと比べて運動面でのぎこちなさや苦手さが際立つと、悩んでしまうこともあるかもしれません。
ですが、そのような困りごとの背景には「発達性協調運動障害(DCD)」という発達特性が関係している可能性があります。
そこで本記事では、「発達性協調運動障害とは何か?」という基本的な理解から、チェックリストを活用した確認、ご家庭でできる支援や専門機関との連携まで解説していきます。
目次
- 発達性協調運動障害(DCD)とは?
- 発達性協調運動障害のチェックリストと支援
- まとめ
発達性協調運動障害(DCD)とは?
「発達性協調運動障害ってなに?」「うちの子どもにも関係あるの?」と思われる方も多いかもしれません。発達性協調運動障害(DCD)とは、歩く・走る・ボールを投げる・字を書くなどの基本的な動作が、年齢相応にうまくできない特性を指します。
見た目にはわかりづらく、周囲からは「不器用」「やる気がない」と誤解されることもありますが、実際には脳の情報処理の特性に起因する発達障害のひとつです。
ここでは、発達性協調運動障害の定義や主な特徴、関連する他の発達障害との違い、訓練やサポートを受けなかった場合の影響などについて解説していきます。
発達性協調運動障害の定義と特徴
発達性協調運動障害(DCD)は、手足や体全体の動きをうまく調整することが難しい発達障害の一つです。
この障害を持つ子どもは、歩く・走る・ボールを投げる・字を書くなどの基本的な動作が苦手で、日常生活での困難を感じることがあります。米国精神医学会の診断基準DSM-5-TRによるとDCDは、5〜11歳の子どもの約5〜8%に見られる傾向があり、決して珍しいものではありません。早期に特性を把握し、専門家に相談することで、子どもの成長をより良い方向に導くことが可能です。
どのような子どもに見られるのか
発達性協調運動障害(DCD)は、乳幼児期から学童期にかけて、さまざまな形で現れることがあります。以下は、年齢別に見られる主な特徴です。
乳幼児期
●寝返りやはいはい、歩行の開始が遅れる
●授乳時によくむせる
●座る姿勢が不安定
幼児期
●塗り絵やお絵かきが苦手
●スプーンやコップの使用が難しい
●三輪車やボール遊びがうまくできない
学童期
●体育の授業での活動が苦手
●字を書くのに時間がかかる
●着替えや給食の準備に時間がかかる
これらの特徴が見られる場合、DCDの可能性があります。早期に気づき、適切な支援を受けることで、子どもの生活の質を向上させることができます。
他の発達障害との違いや併存について
発達性協調運動障害(DCD)は、他の発達障害と併存することが多いとされています。
たとえば、先述の診断基準DSM-5-TRによると、
●自閉スペクトラム症(ASD)の約80%
●注意欠陥多動性障害(ADHD)の約30〜50%
●学習障害(LD)の約50%にDCD
が見られると報告されています。
これらの障害とDCDは、それぞれ異なる特性を持ちますが、併存することで子どもの困難が強まることがあります。そのため、専門家の診断を受け、個々の特性に応じた支援を行うことが大切です。
訓練やサポートを受けなかった場合の影響
発達性協調運動障害(DCD)をそのままにしておくと、子どもは自己肯定感の低下や友人関係の構築の難しさ、学校での生活の質の低下など、さまざまな困難を抱える可能性があります。
また、抑うつが見られやすいことも報告されています。これらの二次的な問題を防ぐためにも、早期にDCDの特性を理解し、適切な支援を行うことが重要です。家庭や学校、専門機関が連携して子どもを支えることで、安心して成長できる環境を整えることができます。
発達性協調運動障害のチェックリストと支援
もしかして発達性協調運動障害かもしれないけど、どう確かめればいいの?」「家庭ではどんなサポートができるの?」といった不安を感じてしまうかもしれません。
子どもが自分らしく安心して成長していくためには、早めに気づいてあげて、温かくサポートしていくことは、大事なことです。
そこで本項では、具体的なセルフチェックリストや気になる動きの具体例、チェックに当てはまったときの対応方法、ご家庭での関わり方の工夫などについてご紹介します。
発達性協調運動障害のセルフチェックリスト
発達性協調運動障害(DCD)は、一見わかりづらい特性も多いため、日常の行動を振り返るチェックリストが役立ちます。以下のような項目が当てはまるか、確認してみましょう。
●ボタンやチャックをとめるのに時間がかかる
●ハサミや鉛筆の操作が苦手
●自転車にうまく乗れない
●ボール遊びや縄跳びが極端に苦手
●服の着脱に手間取る
●転びやすい、よくぶつかる
●飲み込みが苦手、むせることが多い
●細かい力加減ができない、よく物を落とす
●左右の四肢や動作の大きさを調整することが苦手
●体が柔らかく姿勢が崩れやすい
●スポーツが苦手
3〜5項目以上が当てはまる場合、DCDの可能性も考えられます。ただし、自己判断ではなく、専門家の意見を聞くことも重要です。
具体例:こんな動きが気になるときは?
実際の生活の中で「ちょっと気になるな」と思われる動きには、DCDの特徴が隠れていることもあります。
たとえば…
●鉛筆がうまく握れず字を書くことに抵抗感がある
●ジャングルジムやうんていを怖がって避ける
●食事の際、箸やスプーンの操作がぎこちない
●体育の授業で他の子どもと大きく差がある
●鞄の中を整理するのが苦手で忘れ物が多い
これらは、「やる気がない」や「不器用」というより、運動や感覚の協調に困難がある可能性があります。気になる場合は、無理に矯正せず、専門家に相談することが安心です。
チェックに当てはまった場合のサポート
チェックリストに当てはまる項目が多かった場合は、まず保護者が子どもの行動に対する理解を深めることが第一歩です。その上で、次のようなサポートが考えられます。
●小児科や発達外来での相談・診断
●作業療法士による評価や支援
●学校の特別支援教育コーディネーターとの連携
保護者が早めに動くことで、子ども自身も「困っていることに気づいてもらえた」という安心感を得られます。医療や教育の専門職と連携して進めることで、適切な支援につながりやすくなるでしょう。
ご家庭でできるサポートの工夫と声かけ
家庭の中でも、ちょっとした工夫や声かけで子どもをサポートすることができます。
工夫のポイント
●動作を分解してゆっくり教える
(例:靴ひもを「通す」「引く」に分けて説明)
●成功体験を積ませるため、できることから取り組ませる
●無理に完璧を求めず、達成したことをほめる
声かけの例
●「焦らなくていいよ、ゆっくりで大丈夫」
●「がんばってるの、ちゃんと見てるよ」
●「少しずつ上手になってきたね」
日常生活の中で、子どもが安心してチャレンジできる環境づくりが何よりも大切です。
相談できる主な支援機関や専門職とは?
発達性協調運動障害が疑われる場合、どこに相談すればよいか迷うこともあるかもしれません。以下のような機関・専門職に相談することができます。
相談先の例
●小児科/発達外来:医療的な評価と紹介を受けられます
●作業療法士:具体的な動作訓練や支援を担当します
●保健センター:乳幼児健診の場などで相談が可能
●特別支援教育センターや教育相談室:学校と連携して支援を調整
困ったときは、まず地域の保健センターや学校の先生に相談してみるのも一つの方法です。
まとめ
発達性協調運動障害(DCD)は、年齢相応の運動や動作がうまくできず、日常生活で不便を感じやすい発達障害のひとつです。歩く、書く、ボタンを留める、ボール遊びが苦手といった特徴があり、乳幼児期から学童期にかけてさまざまな形で現れます。
他の発達障害(ASDやADHD、LD)と併存することも多く、気づかれずにそのままにしておくと、自己肯定感の低下や二次的な心理的困難につながる恐れもあります。
ご家庭での簡単なチェックリストや気になる行動の例を通して早期に気づき、適切な支援へとつなげることが大切です。
支援の方法としては、作業療法士による訓練、家庭での丁寧な関わり方、専門機関との連携があり、無理をさせず小さな成功体験を積み重ねることが子どもの自信につながります。保護者が理解し、温かく見守ることが、子どもにとっての大きな支えになるはずです。
参考元
各 支援機関 等