感覚鈍麻とは?子どもの発達と関わる特徴や支援の方法を解説
- 発達障害
- ASD(自閉症スペクトラム)
- 支援方法・家庭での過ごし方
「うちの子どもは痛みに気づかないことが多い」「温度や音に反応しづらい気がする」このような感覚にまつわる違和感を抱えている保護者の方もいるかもしれません。
そうした状態は「感覚鈍麻」と呼ばれ、子どもの発達の一部として見られることがあります。子どもが生活する上での困りごとにつながることもあるため、適切な理解と支援が大切です。
そこで本記事では、感覚鈍麻の基本的な理解から、日常生活で起こりやすい困りごと、ご家庭や専門機関での支援方法まで解説していきます。
目次
- 感覚鈍麻とはどんな状態?発達との関係
- 感覚鈍麻があるとどんなことに困るのか
- 感覚鈍麻のある子どもへの関わり方と支援のヒント
- まとめ
-
感覚鈍麻とはどんな状態?発達との関係
「感覚鈍麻」という言葉を初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。感覚鈍麻とは、視覚・聴覚・触覚などの刺激に対して、子どもが通常よりも感じにくい、あるいは反応が鈍くなる状態のことを指します。
保護者としては、どのような状態が「感覚鈍麻」に当たるのか、どう見分ければいいのか、戸惑うこともあるでしょう。
そこで本項では、感覚鈍麻の基本的な定義や、どのように子どもの発達に関係してくるのかについて解説していきます。
感覚鈍麻とは?
感覚鈍麻とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などの感覚に対する反応が通常よりも鈍くなる状態を指します。主に感覚受容器や脳の情報処理の偏りが原因で、刺激に対する反応が弱くなることがあります。
また、発達障害のある子どもに感覚鈍麻が見られることがあり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。たとえば、痛みを感じにくいために怪我に気づかない、音や光に対する反応が鈍いなどの特徴が見られます。感覚鈍麻は、発達障害の特性の一つとして、注意深く観察し、状態に応じて専門機関に相談することが必要です。
よくある子どものサイン
感覚鈍麻がある子どもは、外部からの刺激に対する反応が鈍く、以下のような行動が見られることがあります。
●痛みに対する反応が鈍い(怪我をしても痛がらない、気づかない)
●音や光への反応が薄い(大きな音や明るい光に対しても無反応)
●触覚への反応が鈍い(触られても気づかない、反応が薄い)
●味覚や嗅覚の鈍さ(味や匂いに対する反応が鈍く、食べ物の好き嫌いが少ない)
●動きが鈍い(身体の動きがぎこちなく、不器用に見える)これらのサインは、感覚鈍麻の可能性を示すものであり、日常生活に支障をきたす場合は、専門機関に相談することが推奨されます。
感覚過敏との違いとは?
感覚鈍麻と感覚過敏は、感覚に対する反応の違いによって区別されます。
感覚鈍麻
刺激に対する反応が鈍く、痛みや音、光などを感じにくい状態。
感覚過敏
刺激に対する反応が過剰で、痛みや音、光などに敏感に反応する状態。
これらは同じ人に同時に存在することもあり、感覚の種類によって過敏と鈍麻が混在する場合もあります。たとえば、聴覚は過敏で触覚は鈍麻であるなど、感覚の特性は個人差が大きく、日常生活に影響を与えることがあります。感覚の違いを理解し、適切な対応をすることが大切です。
感覚鈍麻があるとどんなことに困るのか
「痛みを訴えないから、かえって心配」「いつもボーッとしているようで、反応が少ない」このような子どもの様子に戸惑いを感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。
感覚鈍麻があると、日常生活・学習・運動など、さまざまな場面で困りごとが起こりやすくなることもあるため、適切な理解とサポートが必要です。
ここでは、感覚鈍麻のある子どもがどんな場面で困りやすいのか、またそれがどのように生活に影響していくのかについて、具体的に解説します。
日常生活で起こりやすい困りごと
感覚鈍麻がある子どもは、日常生活の中で以下のような困りごとを抱えることがあります。
・痛みに気づきにくい
転んでも痛がらない、けがをしても気づかないことがあります。・温度変化への反応が鈍い
寒さや暑さを感じにくく、適切な衣服の調整が難しい場合があります。・食事中の感覚の違和感
味や食感に鈍感で、好き嫌いが極端に少ない場合もあります。・身の回りの整理整頓が苦手
物の位置や順序を把握するのが難しかったり鈍感で、片付けが苦手なことがあります。これらの困りごとは、子どもの自己肯定感や社会性にも影響を及ぼす可能性があるため、早期に気づき、適切なサポートを行うことが大切です。
学習面や運動面への影響について
感覚鈍麻は、学習や運動の面でも影響を及ぼすことがあります。
・書字の困難
鉛筆の握り方や筆圧の調整が難しく、文字がうまく書けないことがあります。・図形の理解が難しい
形や空間認識の感覚が鈍く、図形問題や地図の読み取りに苦手意識を持つことがあります。・運動のぎこちなさ
ボールを投げる・受け取る、縄跳びなどの協調運動が苦手で、体育の授業や遊びに参加しづらくなることがあります。これらの影響は、子どもの学習意欲や友人関係にも関わってくるため、周囲の理解と適切な支援が重要です。
感覚の鈍感さからくる影響について
感覚鈍麻がある子どもは、前庭感覚(バランス感覚)と固有感覚(身体の位置や動きの感覚)なども鈍感ですが、下記のような影響や特徴があります。
前庭感覚が鈍感の場合
・じっとしていられず、体を動かしてしまう
・姿勢をよくして座れない
・ブランコなどの動く遊具が好きで離れようとしない
・高いところに上りたがるなど、姿勢のバランスが崩れたり、より刺激を求めたがったりする傾向があります。
固有感覚が鈍感な場合
・ものの扱いが乱暴で力の加減ができない
・友達を強くたたくなど、トラブルになることがある
・友達との距離が近すぎることがわかりにくいなど、自分の体を思うようにコントロールできないという傾向があります。
感覚鈍麻と発達障害との関連性
感覚鈍麻は、発達障害の一部として現れている場合もあります。
たとえば、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の子どもには、感覚過敏や感覚鈍麻などの感覚の問題が見られることが多いとされています。また、発達性協調運動障害(DCD)と呼ばれる障害では、運動の不器用さや感覚の処理の難しさが特徴であり、感覚鈍麻が関係している場合があります。
これらの障害は、子どもの発達や日常生活に影響を及ぼすため、専門家による評価や適切な支援が必要です。
参考:論文「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1200050369.pdf感覚鈍麻のある子どもへの関わり方と支援のヒント
「感覚鈍麻の傾向があるかもしれないけど、自分たちでできることはあるのかな?」「どこに相談したらいいのかわからない」そんな悩みを抱える保護者の方にとって、日常生活の中での小さな工夫や支援の情報はとても大切です。
感覚鈍麻は、ご家庭での遊びやサポート、専門機関などもうまく活用することで、子どもの感覚を育む手助けができます
ここでは、ご家庭でできるサポートの工夫や、感覚統合を促す遊び、相談できる機関について、ご紹介していきます。
ご家庭で出来るサポートの例
感覚鈍麻のある子どもには、日常生活の中で感覚刺激を意識的に取り入れることが効果的です。以下のような活動を通じて、感覚の気づきを促すことができます。
触覚刺激
さまざまな素材(布、スポンジ、ブラシなど)を使って肌に触れる遊びを取り入れる。
温度感覚
ぬるま湯や冷たい水を使った手洗いや足湯を行い、温度の違いを感じさせる。
重さや圧力
適度な重さのブランケットを使って体に圧力をかけることで、安心感を与える。
これらの活動を日常生活に取り入れることで、子どもの感覚への気づきを促し、感覚統合の発達を支援することができます。
感覚統合を促す遊びや運動
感覚統合を促すためには、遊びや運動を通じて多様な感覚刺激を提供することが有効です。以下のような活動が推奨されています。
バランス遊び
平均台やバランスボールを使って、体のバランス感覚を養う。
触覚遊び
砂場遊びや粘土遊びを通じて、手の感覚を刺激する。
ジャンプ運動
トランポリンや縄跳びで、前庭感覚や深部感覚を刺激する。
これらの活動は、子どもが楽しみながら感覚統合を促進するのに役立ちます。特に、日常生活の中で自然に取り入れられる遊びを選ぶことで、継続的な支援が可能となります。
専門機関での支援や相談先
感覚鈍麻のある子どもへの支援には、専門機関の協力が重要です。以下のような機関が相談先として挙げられます。
児童発達支援センター
発達に関する専門的な支援を提供し、個別のニーズに応じた療育を行います。
基幹相談支援センター
地域の相談支援の中核的な役割を担い、障害のある方やその家族への総合的な相談支援を行います。
医療機関のリハビリテーション科
作業療法士や理学療法士が、感覚統合に関する評価や訓練を提供します。
これらの機関では、子どもの発達状況に応じた専門的な支援が受けられます。早期に相談することで、適切な支援計画を立てられるでしょう。
まとめ
感覚鈍麻とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などの刺激に対する反応が通常より鈍くなる状態で、子どもの発達に影響を及ぼすことがあります。
たとえば、痛みに気づきにくい、音や光への反応が薄いといった特徴が見られ、日常生活では衣服の調整や片付けが難しい、食感や味の違いがわかりにくいなどの困りごとが生じます。また、学習や運動面でも、書字の困難や協調運動の苦手さが見られ、自己肯定感や友人関係に影響することもあります。
感覚鈍麻は自閉スペクトラム症(ASD)や発達性協調運動障害(DCD)などの発達障害と関係することもあるため、適切な評価と支援が大切です。
ご家庭では感覚を刺激する遊びや運動を取り入れることが効果的であり、必要に応じて児童発達支援センターや医療機関など専門機関への相談も検討しましょう。子どもに寄り添い、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
参考元
各支援機関 医療機関 等
論文「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1200050369.pdf