空間認識能力とは?子どもの発達に欠かせない能力と伸ばし方
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「うちの子どもはなぜかボールをキャッチできない」「図形の問題がとても苦手」「服をたたむのにいつも手こずる」こんな悩みを感じたことはありませんか?それは、もしかすると「空間認識能力」が関係しているかもしれません。
空間認識能力とは、物の位置や形、大きさ、距離などを正しく把握し、頭の中でイメージして行動に移す力のこと。子どもが運動や学習、日常生活をスムーズにこなすために、欠かせない基礎的な力のひとつです。
本記事では、空間認識能力の基本的な意味から、育ちにくい場合に見られる特徴、そしてご家庭でできる遊びやサポート方法まで解説していきます。
目次
- 空間認識能力とは?
- 空間認識能力が育ちにくいとどうなる?
- 空間認識能力を育てる遊びとご家庭でできるサポート
- まとめ
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空間認識能力とは?
「空間認識能力ってよく聞くけれど、実際にはどんな力なの?」と疑問を感じている保護者の方も多いかもしれません。
子どもが物を並べたり、書いたり、動かしたりするときに必要な力のひとつですが、目に見えにくいため、気づきにくいのが特徴です。
ここでは、空間認識能力の具体的な意味や、子どものどのような行動に関係しているのかについて解説していきます。
空間認識能力とはどんな能力?
空間認識能力とは、物体の位置や形、大きさ、距離などを正確に把握し、頭の中で立体的にイメージする力のことを指します。
たとえば、子どもが積み木を組み立てる際に、どのブロックをどこに置けば安定するかを考えるとき、この能力が働いています。空間認識能力が高いと、物事の構造を理解する力や、身体を上手に動かす力が育まれます。現代では、スマートフォンやタブレットの使用が増え、立体的な遊びが減少しているため、意識的にこの能力を育てることが大切です。
空間認識が必要な場面とは?
空間認識能力は、日常生活のさまざまな場面で必要とされます。たとえば、以下のような状況が挙げられます。
スポーツや運動面
ボールをキャッチする、縄跳びをするなど、身体を動かす際に必要です。
学習面
図形の問題を解く、地図を読むなど、視覚的な情報を理解する際に役立ちます。
生活面
家具の配置を考える、物を整理するなど、空間を把握する力が求められます。
これらの場面でスムーズに行動するためには、空間認識能力が欠かせません。子どもがこれらの活動に苦手意識を持っている場合、空間認識能力の発達が関係している可能性があります。
空間認識能力の発達段階とは?
空間認識能力は、子どもの成長とともに徐々に発達していきます。一般的な発達段階は以下の通りです。
乳幼児期(0〜2歳頃)
視力が未発達で、距離感を測るのが難しい時期です。生後3〜4ヶ月頃から、両目を使って遠近感を感じるようになります。
幼児期(3〜4歳頃)
視力が発達し、距離感や遠近感が分かるようになります。この頃から空間認識能力が少しずつ高まってきます。
学童期(5〜9歳頃)
物を立体的に捉える力が発達し、ボールを追いかけたり縄跳びをしたりすることができるようになります。
一般的に10歳を過ぎた頃には、空間認識能力が完成すると言われています。子どもの発達スピードはそれぞれですが、これらの段階を参考に、子どもの成長を見守っていきましょう。
空間認識能力が育ちにくいとどうなる?
空間認識能力が十分に育っていないと、子どもは日常生活や学習の中で「なんとなく苦手」「うまくできない」と感じる場面が多くなっていきます。
ですが、空間認識能力は見た目だけではわかりづらく、周囲の大人が気づきにくいのがこの課題の難しさです。
ここでは、空間認識能力が育ちにくい場合によく見られる困りごとや、学習・生活への具体的な影響、そして発達性協調運動障害(DCD)との関係についても取り上げます。
よくある困りごとの例
空間認識能力がまだ十分に育っていない子どもは、日常生活や学習の中でさまざまな困りごとに直面することがあります。たとえば、以下のような例が挙げられるでしょう。
●運動面での不器用さ
ボールを投げたりキャッチしたりするのが苦手で、体育の授業や遊びを楽しみづらくなることがあります。●衣服の着脱の困難
ボタンを留める、靴ひもを結ぶなどの動作が難しく、身支度に時間がかかることがあります。●整理整頓の難しさ
物の配置や順序を把握するのが苦手で、片付けや整理がうまくできないことがあります。●文字の書きづらさ
文字の大きさや間隔を調整するのが難しく、書字が不揃いになることがあります。これらの困りごとは、子どもの自己肯定感や学習意欲に影響を及ぼす可能性もあるため、早期に気づき、適切なサポートを行うことが大切です。
学習面・生活面への影響
空間認識能力の未発達は、学習面や生活面にも影響を及ぼすことがあります。具体的には、以下のような課題が見られます。
学習面
●図形や地図の理解が難しく、算数や社会の学習に支障をきたすことがあります
●文字の位置や間隔を把握するのが難しく、書字が不揃いになることがあります
●板書を写すのに時間がかかり、授業についていけないことがあります生活面
●衣服の着脱や食事の動作がぎこちなく、日常生活に支障がでることがあります
●片付けや整理整頓が苦手で、物をなくしやすいことがあります
●運動が苦手で、友達との遊びに参加しづらくなることがありますこれらの影響は、子どもの自信や社会性にも関わってくるため、周囲の理解と適切なサポートが重要です。
発達性協調運動障害(DCD)との関係性
空間認識能力の未発達は、発達性協調運動障害(DCD)と関連している可能性もあります。DCDとは、運動の協調性や正確性、空間認識能力などが低下している状態であり、これによって学業や社会的な活動に支障が生じることがあり、DCDの子どもは、以下のような特徴が見られることがあります。
運動面の難しさ
ボールを投げたりキャッチしたりするのが苦手で、体育の授業やスポーツなどの遊びに参加しづらくなることがあります。
細かい運動の不器用さ
字を書く、はさみを使うなどの細かい動作が難しく、学習に支障をきたすことがあります。
日常生活の難しさ
衣服の着脱や食事の際の動作がぎこちなく、日常生活に支障をきたすことがあります。
DCDは、子どもの5〜6%に影響を及ぼすとされており、早期の発見と支援が重要ですが、専門家による評価や適切なトレーニングを通じて、子どもの能力を伸ばすことは可能です。
空間認識能力を育てる遊びとご家庭でできるサポート
「空間認識能力が弱いかもしれない」と感じても、何から始めたらいいのかわからず迷ってしまうこともありますよね。
ですが、ご家庭でも空間認識能力の促進につながる、ちょっとした遊びや声かけがあり、その中には子どもの力を育てるヒントがたくさんあります。
ここでは、空間認識を高めることへつながる遊びや運動の工夫、さらに日常生活の中で自然に取り入れられるサポート方法についてご紹介します。
空間認識を高めるための遊び
空間認識能力は、子どもが物の位置や形、大きさ、距離などを把握し、頭の中で立体的にイメージする力です。子どもの空間認識能力を育むためには、日常の遊びが効果的です。
●積み木遊び
さまざまな形のブロックを組み合わせて遊ぶことで、形やバランスを学びます。
●パズル
ピースをはめ込むことで、形や位置関係を理解します。
●お絵かきや折り紙
空間を意識しながら描いたり折ったりすることで、立体感を養います。これらの遊びを通じて、子どもは楽しみながら自然と空間認識能力を高めていきます。
運動を通じた空間感覚の育て方
運動は、空間認識能力を育てる上で非常に重要です。身体を動かすことで、子どもは自分の位置や動きを感じ取り、周囲との関係を理解します。
●ボール遊び
投げたりキャッチしたりすることで、距離感やタイミングを学びます。
●縄跳びやケンケンパ
リズム感やバランス感覚を養うことができます。
●鬼ごっこやかくれんぼ
空間を把握しながら動くことで、位置関係の理解に役立ちます。これらの遊びを通じて、子どもは身体を使って空間を感じ取り、認識する力を育てていきます。
日常生活で取り入れられる工夫
日常生活の中にも、空間認識能力を育てる工夫を取り入れることができます。
●お手伝い
食器を並べる、洗濯物をたたむなど、物の位置や形を意識する作業を通じて、空間感覚を養います。
●お片付け
おもちゃを決まった場所に戻すことで、位置関係や整理整頓の感覚を育てます。
●料理
食材を切る、盛り付けるなど、形や配置を考える作業が空間認識を高めます。これらの活動を通じて、子どもは日常の中で自然と空間認識能力を育てていくことができます。
まとめ
空間認識能力とは、物の位置や形、大きさ、距離などを正しく把握し、頭の中で立体的にイメージする力のことです。
子どもが運動や学習、日常生活をスムーズに行うために欠かせない土台となる力です。この能力が育ちにくいと、運動の不器用さや衣服の着脱の難しさ、整理整頓の苦手さ、字の不揃いなど、さまざまな困りごとが現れます。また中には、発達性協調運動障害(DCD)とも関係がある場合もあります。
一方で、空間認識能力は家庭での遊びや関わりを通して伸ばすことができます。積み木やパズル、折り紙などの遊びや、ボール遊び、縄跳び、鬼ごっこなどの運動、さらに食器並べやお片付け、料理などの生活習慣も効果的です。
大切なのは、子ども自身が「楽しい」と感じながら取り組める環境づくり。日常の中に少しずつ取り入れることで、自然に力を育てていくことができます。
参考元
各 支援機関 等