頭の中がうるさいと感じる子どもの悩みとADHDの関連

何度言っても、同じ間違いを繰り返してしまう。話しかけても、なんだか上の空で聞いているのか分からない。子どもの学習面や行動について、このような悩みを抱えてはいませんか。
一生懸命に説明しているのに、本人はぼーっとしていたり、急に全く関係のない話を始めたりすることもあります。そんなとき、保護者の方は、わざと無視しているのではないか、やる気がないのではないか、と、ついイライラを感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、子どもにその理由を聞いてみると、頭の中がうるさいから聞こえなかった、といった不思議な表現が返ってくることがあります。
実は、この頭の中がうるさいという感覚は、ADHD(注意欠如多動症)の特性を持つ子どもたちが抱えやすい、切実な悩みのひとつです。自分の意思とは関係なく、脳内で次から次へと新しい考えや記憶が溢れ出し、整理がつかなくなっている状態なのです。
この記事では、ADHDの子どもが感じている頭の中がうるさい状態の正体や、それがもたらすストレス、そして家庭でできる具体的な対処法について、専門的な視点からわかりやすく解説します。
ADHD特有の多動な思考とはどのような感覚か

ADHDは、日本語で注意欠如多動症と呼ばれます。身体をじっとさせていられない多動性についてはよく知られていますが、実は頭の中でも同じように思考の多動が起きています。
複数のテレビが同時についているような脳内状態
ADHDの子どもの頭の中を例えるなら、部屋の中で何台ものテレビが同時に、別々の番組を流しているような状態です。
ひとつのテレビ(今やるべきこと)に集中しようとしても、隣のテレビから流れるアニメの曲が気になったり、別のテレビのニュースの内容に反応してしまったりします。さらに、そのニュースから連想して、そういえば、昨日の給食はカレーだったな、明日は雨が降るのかな、というように、思考が連鎖的に広がって止まらなくなります。
このとき、本人にとってすべてのテレビの音量は同じです。どれが重要で、どれを無視すべきかという情報の取捨選択(選択的注意)が難しいため、常に情報の洪水にさらされている感覚になります。大人が集中しなさいと言っても、子どもにとっては、どのテレビに集中すればいいのか分からない、他のテレビがうるさくて、お母さんの声のテレビが聞こえない、という状態なのです。
この脳内テレビのスイッチを自分で切ることができないもどかしさが、頭の中がうるさいという独特の表現につながっています。
思考が止まらないことによる集中力低下とストレス
常に脳がフル回転している状態は、想像以上にエネルギーを消耗します。
私たちは通常、自分を客観視するメタ認知能力を働かせることで、今はこれに集中する時間だ、余計なことは考えないようにしよう、と自分をコントロールしています。しかし、発達の途上にある子どもの場合、この力がまだ十分に育っていないため、あふれ出す思考に振り回されてしまいやすいのです。
一日中、頭の中が騒がしい状態で過ごしていると、脳は常に疲労困憊の状態になります。そのため、夕方や夜になると電池が切れたように動けなくなったり、逆に些細な刺激がきっかけで感情が爆発してしまったりすることがあります。この疲れやすさは、なまけや努力不足ではなく、脳が24時間休まずに働き続けているために起こる、ADHD特性ゆえの現象です。
外部刺激に過敏に反応する感覚過敏の影響
頭の中がうるさい状態をさらに加速させるのが、感覚過敏の特性です。
ADHDの子どものなかには、音や光、肌に触れる感覚などに非常に敏感な子がたくさんいます。教室の時計のチクタクという音、遠くで走る車の音、隣の席の子が鉛筆を動かす音。これらすべての刺激を脳が拾い上げてしまい、思考の一部として取り込んでしまいます。
外の世界からの情報が過剰に入ってくることで、脳内の情報処理が追いつかなくなり、結果として脳内の騒がしさがさらに増大するという悪循環に陥ってしまうのです。
頭の中がうるさいことで寝れない時や日常生活のストレス

頭の中がうるさいという感覚は、単に集中できないだけでなく、子どもの心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
静かな場所でも脳が冴えて寝付けない夜のしんどさ
特に深刻なのが、睡眠への影響です。昼間は周囲の雑音に紛れていた脳内の騒がしさが、夜、布団に入って静かになった途端に際立ってしまうことがあります。
暗い部屋で横になると、今日あった嫌な出来事の反芻や、明日への不安、さらには全く関係のない空想や音楽が次々と湧き出てきます。脳が覚醒状態のまま冴えわたってしまい、寝たいのに寝れない状態。身体は疲れているのにどうしても脳のスイッチが切れないのです。
早く寝なさいと言われても、本人の力ではどうすることもできません。寝付けないことへの焦りがさらにストレスとなり、寝不足による日中のイライラや集中力低下を招き、それがまた夜の脳内活動を活発にするという負のループに陥ることも少なくありません。
指示が届かず怒られる経験による自己肯定感の低下
日常生活においても、思考の多動は大きな壁となります。
例えば、親や先生が大切な話をしている最中に、脳内で別のことを考え始めると、子どもはそちらに意識を奪われてしまいます。その結果、指示を聞き逃し、行動が遅れたり間違えたりして、周囲から、またやっていない、不真面目だ、と怒られてしまう機会が増えてしまいます。
本人に悪気はないにもかかわらず、叱られる経験ばかりが積み重なることで、自分は何をやってもダメなんだ、という無力感を抱き、自己肯定感が著しく低下してしまう恐れがあります。
自分の考えを優先してしまい友達から孤立する不安
友達とのコミュニケーションにおいても、頭の中のうるささは影響を与えます。
相手の話を聞いているつもりでも、脳内に浮かんだ別のアイデアに意識が飛んでしまい、会話のキャッチボールが成立しなくなることがあります。また、自分の興味があることが浮かぶと、相手の話を遮ってでも話したくなってしまう衝動性が抑えられず、結果として自分勝手な印象を与えてしまうこともあります。
このような行動が続くと、友達との関係がぎくしゃくし、集団の中で孤立してしまう不安を感じる子どもも少なくありません。
不快な感覚を和らげるために家庭でできる具体的な対処法

脳内の騒がしさを完全に消すことは難しくても、その不快な感覚を和らげ、日常生活を送りやすくするための工夫や対処法は家庭でも実践できます。
マインドフルネスや呼吸法で今に意識を向ける
頭の中がうるさいときは、意識が過去の反省や未来の不安に飛び散っている状態です。これを今、この瞬間に引き戻すために、簡単なマインドフルネスや呼吸法を取り入れてみましょう。
例えば、ゆっくりと深く息を吐き出すことに集中する、あるいは自分の足の裏が地面に触れている感覚を意識する、といったことから始めます。今を感じる練習を積み重ねることで、暴走しがちな思考にブレーキをかける力を少しずつ育てていくことができます。
メモやホワイトボードを活用した思考の視覚化
脳内にあふれる情報を脳の外に出すことも非常に有効です。
頭の中だけで整理しようとするとワーキングメモリ(作業記憶)がパンクしてしまうため、気になっていることや、やるべきことをメモやホワイトボードに書き出してみましょう。視覚化することで、情報の洪水に優先順位をつけることができ、脳の負担を大幅に減らすことができます。
親子で一緒に今考えていることリストを作るのも良い方法です。やりたいこと、やるべきこと、気になることに分けて書き出すことで、これは後で考えればいいことだ、と客観的に整理でき、脳内の混乱が静まっていきます。
思考が止まらず寝れない子どものための環境づくりと入眠儀式
寝れない夜の対処法としては、脳への刺激を徹底的に減らす環境調整が大切です。
- 気になるものを減らす
おもちゃやゲームなどは見えないように片づけ、気になるものを減らすようにします。 - 光と音の遮断
遮光カーテンで部屋を暗くし、気になる物音は耳栓や、一定の周波数の音(ホワイトノイズ)で緩和します。 - 入眠儀式
毎日同じ手順で寝る準備を行います。例えば、パジャマに着替えたら温かい麦茶を飲む、好きな絵本を1冊だけ読む、といったルーティンを固定することで、脳がリラックスモードに切り替わりやすくなります。 - 身体の感覚へのアプローチ
重いブランケット(加重毛布)を使ったり、ゆっくり身体をさすったりすることで、固有受容覚を刺激し、安心感を得られるようにします。
特性による生きづらさを解消するために専門機関へ相談する

家庭での工夫を続けても、本人のしんどさが強い場合や、学校生活に支障が出ている場合は、早めに専門機関の門を叩くことをおすすめします。
専門的なアセスメントで子どもの困りごとを可視化
まずは、自治体の発達支援センターや児童精神科などで、専門的な検査(WISC5などの知能検査)を受けることを検討しましょう。
これらの検査は単にIQを測るためだけのものではなく、子どもの得意なことと苦手なことを客観的に分析するためのものです。耳からの情報はすぐに忘れてしまうが、目で見たものは正確に覚えられる、といった特性が数値として明確になることで、その子に合った具体的なサポート方針が明確になります。
診断名がつくことへの抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、検査はレッテルを貼るためではなく、子どもを適切に守るための手段です。
また、脳への刺激が多すぎ、日常生活に支障が出ている場合は、医師に相談し、薬を出してもらうこともひとつの方法です。
薬の効果により脳への刺激が少なくなり、日常生活が送りやすくなるケースもあります。
メタ認知能力を高めて自分の脳の状態に気づく指導
専門的な療育の場では、自分自身の思考を客観視するメタ認知能力を育てるアプローチが行われます。
子ども自身が自分の頭が今どうなっているかに気づくための対話を重視しています。単に集中しなさいと叱るのではなく、今は脳内のテレビが何台ついているかな、どの番組が一番うるさい、といった具体的な問いかけを通じて、自分の状態をモニタリングする力を養います。
自分を客観的に見る力がついてくると、子どもは、あ、今自分は別のことを考え始めたな、と自覚し、自律的に深呼吸をして意識を戻すといった自己コントロールができるようになっていきます。この自分自身の脳の扱い方を学ぶことは、一生モノの力となります。
SSTで自分の特性と上手に付きあうスキルを習得
SST(ソーシャルスキルトレーニング)では、対人関係での具体的な立ち振る舞いを練習します。
友達が話しているときに、別の考えが浮かんできたらどうするか、といった具体的な場面を設定し、ロールプレイを通じて練習します。今は相手の話を聞くテレビの音を大きくしよう、といったイメージを持つことで、社会の中で円滑に過ごすためのスキルを体験的に学ぶことができます。成功体験を積み重ねることで、孤立感や不安を解消し、自信を取り戻すことができます。
頭の中がうるさいADHDの思考についてのまとめ
頭の中がうるさいという子どもの訴えは、本人が外の世界に適応しようと一生懸命に闘っている証拠でもあります。多くの思考が同時に湧き出ることは、見方を変えれば豊かな想像力や多角的な視点という素晴らしい才能の種でもあります。
保護者の方がその感覚を否定せず、それはしんどかったね、と丸ごと受け止めてあげることが、子どもの心にとって何よりの安全基地となります。家庭での環境調整や、受給者証を活用した療育支援や、本人に合った民間のサポートを組み合わせることで、子どもは自分の特性を強みに変え、自分らしく輝く方法を見つけていくことができます。
ひとりで抱え込まず、専門家とともに歩むことで、親子ともに笑顔で過ごせる時間が増えていくはずです。子どもの可能性を信じて、一歩ずつ進んでいきましょう。
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