SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?効果的な対象者や手法を解説
- 発達障害の療法
「うちの子どもが友だちとうまく関われないのはなぜ?」このような悩みを抱える保護者の方は、SST(ソーシャルスキルトレーニング)という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
ですが、「実際に何をするもの?」「どんな子どもに向いているの?」という疑問が残っている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、SST(ソーシャルスキルトレーニング)とはどのようなトレーニングなのか?どのような効果があり、どのような子どもが対象になるのか?などについて解説していきます。
目次
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)はこんな問題を抱えている子どもに効果がある
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)を行う上で大事なこと
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)の手法
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)用のワークシートとは
- 小学生向けSST(ソーシャルスキルトレーニング)用のゲームの紹介
- 中学生向けSST(ソーシャルスキルトレーニング)用のゲームの紹介
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)を受けられる施設
- まとめ
SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?
SST(ソーシャルスキルトレーニング)※は、社会生活や対人関係を円滑に送るために必要なスキルを身につけるためのトレーニングです。あいさつやお願いの仕方、気持ちの伝え方など、社会で必要なスキルを練習します。
経験が少なかったり、ルールとして定着しづらいなどそれらが苦手な子どもでも、繰り返し・安心して学べる環境があれば少しずつ身につきます。
ここでは、SSTの基本的な内容や目的、3つの効果について解説していきます。
※SSTはSocial Skill Trainingの略称で、以降本文ではSSTと記載
SSTの基本的な意味と目的
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、子どもが社会生活を送る上で必要な「人との関わり方」や「気持ちの伝え方」などのスキルを、遊びやロールプレイを通じて楽しく学ぶトレーニングです。
特に、発達に特性のある子どもたちにとって、社会性の習得は自然に身につくものではなく、繰り返しの練習が効果的とされています。
SSTの目的は、以下のような力を育むことです。
対人関係スキル:挨拶や会話の仕方、相手の気持ちを理解する力
自己管理スキル:感情のコントロールや衝動の抑制
問題解決スキル:トラブル時の対処法や適切な判断力
これらのスキルを身につけることで、子どもたちは自信を持って社会生活を送ることができるようになります。
SSTで育つ「3つの力」
SSTを通じて、子どもたちは以下の「3つの力」を育むことが期待されます。
コミュニケーション力
相手の話を聞く、適切なタイミングで話す、表情や声のトーンを使って気持ちを伝えるなどのスキルが向上します。
感情のコントロール力
怒りや不安などの感情を適切に表現し、落ち着いて対応する方法を学びます。
問題解決力
トラブルや困難な状況に直面した際に、冷静に対処し、解決策を見つける力が養われます。
これらの力は、子どもたちが学校やご家庭、地域社会で円滑な人間関係を築くために欠かせないものです。SSTは、子どもたちが安心して学べる環境を提供し、これらのスキルを自然に身につける手助けをします。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)はこんな問題を抱えている子どもに効果がある
SSTは社会生活において必要なルールを学ぶことや人間関係を築くためのスキルを学びづらい子どもが対象になります。たとえば、以下のような子どもなどが対象となるでしょう。
・言葉だけは複雑な内容が理解できない
・周りの様子を察する(空気を読む)のが難しい
・得意と不得意なことに大きく偏りがある
・感情や行動のコントロールが苦手
・不安が強い
・経験不足になりやすい
発達障害や知的障害のある子どもや、心理的な要因で社会生活に不安が大きい子どもなども対象となります。中でも対人スキルや感情のコントロールについては、テーマとして取り上げられることも多いでしょう。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)を行う上で大事なこと
SSTは、子どもの社会性を育む上でとても有効な手法です。
ですが、進め方によっては子どもが戸惑ったり、逆に苦手意識を持ってしまうこともあります。
ここでは、SSTを効果的に、そして子どもが安心して取り組めるようにするために、特に大切にしたい3つの視点をご紹介します。
無理をさせず「楽しい」をベースに進めること
SSTはあくまで「社会性を育てる練習の場」であり、成功体験を重ねることが最も重要です。
無理に課題をやらせるのではなく、子どもが「またやりたい」と思えるような雰囲気づくりを意識しましょう。遊びやゲームを取り入れたり、少しでもできたことをしっかり認めることが、意欲や自信につながるはずです。
それぞれに合った進め方やテーマを選ぶこと
子ども一人ひとりに特性や困りごとが異なるように、SSTの進め方も個別に調整することが大切です。
たとえば、「あいさつ」が難しい子もいれば、「断ること」が苦手な子もいて、それぞれ違う特徴を持っています。子どもが本当に必要としているテーマに焦点をあて、各子どもの理解しやすい方法で丁寧にサポートすることがポイントです。
結果より「取り組む姿勢」をしっかり見守ること
SSTは、短期間で急に成果が出るものではありません。
うまくできなかった日があっても、取り組もうとする気持ちや姿勢を大切に見守ることが、長期的な成長につながります。結果だけを見て判断するのではなく、「がんばったね」「今日は最後まで座っていられたね」など、プロセス自体を認める声かけが、子どもにとっての安心感につながるでしょう。
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SST(ソーシャルスキルトレーニング)の手法
SSTは、実施する人が「対象となる人に何を達成してほしいのか」という目標を意識することで、多様なことがらが題材になります。できたことはしっかりと褒め、できなかったときも具体的にどうしたら良いのかを伝えることを教えます。
子どもについては、課題に応じて以下のようなポイントを組み合わせていきます。
集団の大きさを変えて学ぶ
SSTは、マンツーマンで個別で行うだけではなく、数人の集団で学ぶなど、さまざまな形式がとられます。たとえば、個別であれば、本人が特に困っている部分を深めていくことができます。また、集団では一緒に参加する子ども同士がモデルになったり、自分とは異なる意見を聞く機会にもなるでしょう。
教材やロールプレイを使って学ぶ
新しいものごとを学ぶときに、学びやすい方法はそれぞれ異なります。ソーシャルスキルの内容を伝えるときには、それぞれの子どもが理解しやすいように工夫をします。机上で知識を学ぶ際には、ワークシートや絵カードなどの教材を用いて学ぶ方法があります。また、出来事が、短いお話として書かれているソーシャルストーリーを用いることもあります。
こういった教材で学んだことを、劇のように身体を動かして演じて、より実感を持たせる方法(ロールプレイ)もあります。それぞれに応じた手立てを用いることで、学んでほしい内容を確実に理解できるようにしていきます。
遊びや共同作業の中でも学ぶ
ゲームや工作、調理など、誰かと共同で活動をしながら、決まったルールを確認したり、相談や役割分担について学んだりします。勝ち負けがあるゲームでは、負けたという結果を受け止め、感情をコントロールするという目的でも行うことができます。
外出した先で学ぶ
飲食店でのマナーや公共交通機関でのマナーなどは、教材やロールプレイで学んだ後に、実際に体験して実践することで、さらに学びを深めることになります。
ソーシャルスキルを本人に合った方法で学び、不安が少ない状況で成功経験を積むことは自信にも繋がります。また、たとえば「絵になっているとわかりやすい」「体験してみると理解しやすい」など自己理解に繋がっていくことも期待されます。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)用のワークシートとは
SST用のワークシートは、個々のスキル向上をサポートする重要なツールです。
SSTでよく使われており、自己紹介や感情表現、質問の仕方を学ぶための具体的な課題が書かれています。
各ワークシートに書かれた絵や文を見ながら、問題に答えることで、子どもが実際のコミュニケーションに必要なスキルや自分の気持ちや他者の気持ちを理解する力を養うことができます。
小学生向けSST(ソーシャルスキルトレーニング)用のゲームの紹介
小学生のSSTには、ゲーム感覚で楽しみながらコミュニケーション能力を育む方法が効果的です。以下に、教室で手軽に実施できるSSTのアイデアをいくつかご紹介します。
1. どんじゃんけん
二つのチームに分かれ、各チームから一人ずつスタートします。相手チームのメンバーと出会ったらじゃんけんを行い、勝った方が先に進みます。負けた方はスタート地点に戻り、次のメンバーが出発します。相手の陣地に先に到達したチームが勝利となります。
2. 作戦ゴリラ
このゲームでは、子どもたちがゴリラのキャラクターになりきり、特定の課題やミッションを協力して解決します。たとえば、「みんなで協力してバナナを集めよう」といった目標を設定し、コミュニケーションや協力の大切さを学びます。
3. 手話を使ってあいさつしよう
手話を使って「おはよう」や「ありがとう」といった簡単なあいさつを練習します。視覚的なコミュニケーションを通じて、相手への思いやりや表現力を養います。
4. 箱の中身はな〜んだ?
一人が箱の中に入っている物を見ずに触り、その感触を頼りに何が入っているかを当てるゲームです。周囲の子どもたちはヒントを出し合い、答えを導きます。これにより、質問力や推測力、協力する姿勢を育てます。
5. 隠してるものな〜んだ?
一人が物を隠し、他の子どもたちがそれが何かを質問しながら当てるゲームです。質問と回答を通じて、コミュニケーション能力や論理的思考を鍛えます。
これらのゲームを通じて、子どもたちは楽しみながらソーシャルスキルを身につけることができます。特に低学年のうちに、これらの活動を取り入れることで、コミュニケーション力や協調性を効果的に育むことが期待できます。
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中学生向けSST(ソーシャルスキルトレーニング)用のゲームの紹介
中学生SSTには、ゲームを活用して、楽しみながらコミュニケーション能力や問題解決力を育むことができるものがあります。以下に、中学生向けのSSTに適したゲームをいくつかご紹介します。
1. フレンドシップアドベンチャー
このボードゲームは、小学校高学年から中学生が対象です。授業中や休み時間、部活動などで直面する困りごとをテーマにしています。プレイヤーは冒険を進めながら、ストレスマネジメント、助けを求める、アサーション(自己主張)、対立解消といったソーシャルスキルを学びます。
2. サイコロジーゲーム 中学生セット
日本で初めて開発されたカウンセリング現場向けのボードゲームで、カードに書かれた質問に答えながらすごろくを進めるゲームです。カードに対して答えるので、「相手の質問に答えないといけない」という心理的プレッシャーを感じることなく進めることができます。
3. おしゃべりバトルカードゲーム ペチャリブレ
幻冬舎が手掛けるトーク型カードゲームで、プレイヤーはキャラクターカードとアイテムカードを組み合わせ、自分のキャラクターの強さを即興でアピールします。即興で話す力や表現力を楽しみながら鍛えることができます。
発達障害のことも立ちが苦手なことが多い「場面に応じて臨機応変に話す」「即興で対応する」というスキルをゲームを楽しみながら伸ばすことができます。
勝負の判定は、周囲でトークバトルを聞いていた他のプレイヤーです。
4. 子どもが思わず動きだす! ソーシャルスキルモンスター
臨床心理学・特別支援教育の専門家が監修した書籍で、問題行動を「モンスター」と見立て、その対処法を子どもたちと一緒に考える内容です。ゲーム感覚で問題解決力や自己理解を深めることができます。
モンスターの例
・注意されたときに怒りたくなるのは「おこりんご」のせい
・悲しい気持ちが制御できずタスクを進められないのは「かなC(かなしい)」のせい
・助けがほしいのに何もできないのは「モヤモヤ」のせい
5. イロトカタチ
色と形を組み合わせて遊ぶカードゲームで、コミュニケーションや協調性を育む効果があります。ルールを守りながら他者と協力することで、社会性の向上が期待できます。
これらのゲームを通じて、中学生は楽しみながらソーシャルスキルを身につけることができます。ゲーム形式のSSTは、直接的な指導よりも受け入れやすく、効果的な学習手段となるでしょう。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)を受けられる施設
SSTは、医療機関や児童療育施設、児童発達支援施設などで指導員やセラピストが個別や少人数集団で行うこともあるでしょう。また、幼稚園、保育園、学校などでは、保育士や教員が指導を行っていきます。また、家庭生活で行える内容もあります。
名古屋のSSTを提供する施設
名古屋市内でSSTを提供している施設をいくつかご紹介します。
●ニコニコこどもクリニック
0歳から15歳までを対象に、カウンセリングやSST、心理検査などを実施しています。
●名古屋第二赤十字病院
0歳から15歳(中学3年生)までを対象に、カウンセリングやSST、心理検査などを提供しています。
他に、児童発達支援や放課後等デイサービスなどでも、ソーシャルスキルトレーニングを受けられる施設があります。
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大阪のSSTを提供する施設
大阪市内でSSTを提供している施設をいくつかご紹介します。
●大阪児童福祉事業協会 アフターケア事業部
児童福祉施設や里親入所中の子どもを対象に、冠婚葬祭での必要な知識の学習やあいさつ、基本的な礼儀作法を実習で学べるSSTプログラムを提供しています。ロールプレイやグループディスカッションを通して、自身を客観的に捉え直し、また社会で孤立してしまわないよう、お互い励ましあえる関係づくりを支援しています。
●大阪YMCAサポートクラス
幼児期から青年期まで発達障害を持つ子どもをサポートし、様々なクラスの中でソーシャルスキルトレーニングが取り入れられています。
他に、児童発達支援や放課後等デイサービスなどでも、ソーシャルスキルトレーニングを受けられる施設があります。
まとめ
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、あいさつや気持ちの伝え方、感情のコントロールなど、社会生活や対人関係を円滑に送るために必要なスキルを身につけるためのトレーニングです。発達障害やグレーゾーンのある子どもをはじめ、対人関係や自己表現に不安を抱える子どもにも効果的とされています。
SSTでは、個別・集団形式、ロールプレイやワークシート、ゲームなど多彩な方法が用いられ、楽しみながら学べるのが特徴です。また、小学生・中学生向けの具体的なゲーム例や、名古屋・大阪の支援施設情報なども本記事では紹介しました。
SSTは、子どもの「できた!」という経験を積み重ね、自信や自己理解を育む力強いサポートとなります。社会性の不安を感じたときは、ぜひSSTの活用を検討してみてください。
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