お子さんの検査結果で「ワーキングメモリが低めである」と伝えられたとき、不安を感じられた方も少なくないと思います。内容が分かりづらいだけに、「何に困るのか」「どんな支援が必要なのか」と戸惑うこともあるでしょう。
ワーキングメモリは、一言でいうと、情報を一時的に記憶し処理する力のことです。学校生活や家庭でのやりとりにも深く関わってきます。
本記事では、ワーキングメモリが低い原因や特性、発達障害との関係をわかりやすく解説しつつ、ご家庭で取り組める具体的な勉強法や対策をご紹介します。
ワーキングメモリとは?

まずは、ワーキングメモリがどのような働きをしているのか、基本から理解していきましょう。
ワーキングメモリの役割と働き
ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保ちながら処理する脳の働きです。料理中にレシピを見て次の手順を覚えながら手を動かす、電話番号を聞いてメモを取るまで覚えておくといった、日常的な場面で常に使われています。
学校でワーキングメモリが働くのは、先生が黒板に書いた宿題を見て連絡帳に書き写す作業などです。文字を目で追い、内容を頭に保ち、手を動かして書くという一連の流れすべてに、ワーキングメモリが関わっています。
耳から入った言葉を処理する部分、目で見たものを理解する部分、これらをまとめて優先順位をつける部分。脳の複数の場所が連携して働くことで、私たちは複雑な作業をこなすことができるのです。
子どもの成長とワーキングメモリの関係
ワーキングメモリは、年齢とともに成長します。例えば3歳の子どもに「お部屋に行って青い箱から赤い車を持ってきて」と頼んでも、部屋に着いたころには忘れていることがあります。これは発達段階として自然なことで、ワーキングメモリがまだ育ちきっていないからです。
一般的には小学校に入るころから、だんだんと複雑な指示も理解できるようになります。ただし、成長のペースは子どもによって異なります。背の伸び方に個人差があるように、脳の発達にも一人ひとりのリズムがあるのです。
ワーキングメモリが低い子の特徴

では実際に、ワーキングメモリが低いと、どのような困りごとが起きるのでしょうか。学習や日常生活など、具体的な場面を見ていきましょう。
学習でつまずきやすい場面
授業中、先生の説明を真剣に聞いていても、いざプリントに取りかかる段階になると手が止まってしまうということが起こります。これは理解力の問題ではなく、情報を頭の中にキープしたまま次の作業に移ることが難しいためです。
算数では特に顕著です。「68と37を足してください」なら解けるのに、「りんごが68個、みかんが37個あります。全部でいくつ」という文章題になると手が止まってしまいます。文章を読み、数字を取り出し、計算方法を考え、実際に計算するという流れを同時に処理することが大きな負担になっているのです。
漢字テストでも同様に、家で練習したときは完璧だったのにテストになると思い出せないなど、独特の傾向が見られます。緊張した場面で、限られたワーキングメモリがいっぱいになってしまうのです。
生活の中で見られる困りごと
ワーキングメモリが低いと、朝の支度に必要な一連の流れ、例えば着替えて、ご飯を食べて、歯を磨いて、持ち物を確認するという順番を覚えておくのが難しいです。途中で他のことに気を取られると、それまで何をしていたのか忘れてしまいます。
お手伝いを頼まれたときも、複数の作業を順番に行うことが難しく感じられます。お皿を運んで、テーブルを拭いて、箸を並べるという3つの指示を出されると、途中で混乱してしまうのです。
同じように、友達との約束も覚えておくのが難しいことがあります。その日あった出来事を順序立てて思い出し、言葉にするという作業は、想像以上に複雑なのです。
周囲が気づきにくい小さなサイン
黒板を写すという作業一つとっても、目で文字を追い、記憶し、手を動かし、書いた文字を確認し、また黒板を見て続きを探すという手順があり、私たちはこれらを無意識のうちにこなしています。ワーキングメモリの容量が小さいと、この作業だけで精一杯になり、先生の話まで同時に聞くことができません。
質問に答えないように見えても、実は答えを考えているうちに質問の内容自体を忘れてしまっているだけかもしれません。宿題を持ち帰らない、提出物の期限を守れないといった様子も、複数の情報を同時に管理することの難しさが背景にあるのです。
ワーキングメモリが低い原因

それでは、なぜワーキングメモリが低くなるのでしょうか。その原因を理解することで、適切な対応が見えてきます。
生まれつきの脳の特性
ワーキングメモリの容量は、生まれつき決まっている部分が大きいです。
脳の前頭葉という場所が情報を一時的に保管し、整理し、必要に応じて取り出す作業を担当しています。この部分の発達具合や神経回路のつながり方の一部は、遺伝子レベルですでに決まっているのです。
目の色や髪質に個性があるように、脳の働き方にも一人ひとりの個性があります。これを「障害」や「欠点」として捉えるのではなく、その子の特性として理解することが大切です。
育つ環境や経験が与える影響
生まれ持った特性に加えて、環境も多少は影響を与えます。睡眠不足が続いていると、日中のワーキングメモリの働きが鈍くなることが研究で示されています。朝ごはんを食べずに学校に行くと、脳に必要なエネルギーが不足し、集中力が続きません。
家庭でのストレスも見逃せない原因のひとつです。慢性的なストレスは、ワーキングメモリの働きを低下させることがわかっています。リラックスできる環境があってこそ、脳は本来の力を発揮できるのです。
また、人と会話したり外で遊んだりする経験が少ないと、ワーキングメモリを使う機会そのものが減ってしまい、育つべきものが育ちません。
ワーキングメモリと発達障害の関係

ワーキングメモリの特性は、発達障害とどのように関わっているのでしょうか。最も関わりが深いADHDを中心に解説していきます。
ADHDに見られる特徴
発達障害のひとつであるADHD(注意欠如多動症)のあるお子さんの多くに、ワーキングメモリが低い傾向がみられます。ワーキングメモリが低いと必ず発達障害があるというわけではありませんが、ADHDのじっと座っていられない、すぐに気が散る、思いついたらすぐ行動してしまうといった特徴の背景に、ワーキングメモリの働きが関係しています。
宿題をやっていて窓の外に鳥が飛んでいるのが見えた瞬間、「宿題をやる」という目標が頭から消えてしまいます。戻ってきたときには、どこまでやったのかも分からなくなっているのです。
ADHDのあるお子さんには、環境調整や学習方法の工夫がとても効果的です。ワーキングメモリの負担を減らす方法を身につけることで、日常生活がぐっと楽になります。
学習障害とのつながり
読むことが極端に苦手、計算がどうしてもできないなどといった学習障害(LD)があるお子さんの中にも、ワーキングメモリの特性が関わっているケースがあります。
文字を読むという行為は非常に複雑です。文字を目で追い、音に変換し、単語として認識し、文の意味を理解するといういくつもの行為を、無意識のうちに順序だてて行っています。ワーキングメモリの容量が限られていると、一文字一文字は読めても、文章全体の意味が分からなくなってしまうのです。
算数の文章題も同様です。問題文を読み、状況をイメージし、何を求められているか理解し、計算方法を決め、実際に計算するという複雑な工程を頭の中だけでこなすことは、学習障害のお子さんにとっては大きな負担となるのです。
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発達検査で分かること
発達検査の一つであるWISC検査では、「ワーキングメモリ指標」という項目で、同年齢の子どもたちの平均と比べてお子さんがどのあたりにいるのかが分かります。
ただし、数値はあくまでも目安です。むしろ注目すべきは、他の能力とのバランスです。言葉の理解は得意なのにワーキングメモリだけ苦手、視覚的な情報処理は得意だけど聴覚的な情報は苦手であるなど、いろいろな凸凹や特徴が見えることで、どんな支援が効果的かが具体的に分かってくるのです。
家庭でできるワーキングメモリ対策

ワーキングメモリが低いと言われたお子さんに対し、ご家庭ですぐに取り入れられる具体的な対策をご紹介します。
情報を整理しやすくする工夫
お子さんに何かを頼むとき、一度に複数の指示を出していませんか。まずは一つだけ伝えましょう。「部屋を片付けよう。机の上だけでいいよ」。それができたら、「よくできたね。次は宿題だね」と次の指示を出します。
学習でも同じです。問題集を開いて「ここからここまで」ではなく、「まず1番だけやってみよう」と区切ります。買い物に行くときも、口頭で伝えるだけでなく、紙に書いて持たせてあげましょう。
視覚的なサポートを使う
朝の支度チェックリストを作ってみてください。写真やイラスト付きで「顔を洗う」「着替える」「朝ごはんを食べる」と並べ、終わったらシールを貼ってみます。これだけで朝の混乱が驚くほど減るはずです。
タイマーを使って「この針が0になったら次のことをしようね」と約束するのも有効です。残り時間が目で見て分かる道具を使うと、子どもは見通しを持って行動できます。
勉強でも、漢字を覚えるときは部首ごとに色を変える、計算の途中式は必ず書いてみてください。過程を「見える化」することで、頭の中だけで処理する負担が減るのです。
集中しやすい環境づくり
机の上に必要なものだけを置き、他のものは引き出しにしまいましょう。壁に貼ってあるポスターも、場合によっては刺激になります。視界に入る範囲をシンプルにすることで、目の前の課題に集中しやすくなります。
音の環境も重要です。可能であれば静かな部屋を用意するか、時間を決めてテレビを消す時間を作りましょう。
そしてしっかりと休憩を入れると良いでしょう。意外かもしれませんが「30分勉強したら5分休憩」といったリズムを作るだけで、効率が上がるお子さんが一定数おられます。
日々の学習に役立つ勉強法のコツ
学習効果を高めるために、ワーキングメモリの特徴に合わせた対策や勉強法を取り入れてみましょう。
負担を減らす学習の組み立て方
新しい漢字を10個覚える宿題が出たら、まず3個だけに絞りましょう。その3個を完璧に覚えたら、次の3個に進みます。こうして少しずつ積み重ねることで、確実に身につけることができるでしょう。
算数でも、今日は足し算だけ、明日は引き算だけというように、一つの要素に集中して練習します。復習のタイミングも工夫しましょう。今日学んだことを寝る前にもう一度見る、翌朝起きたときにもう一度確認する。こうした繰り返しで長期記憶に変わっていきます。
ノートやメモを上手に使う勉強法
ワーキングメモリが低いお子さんにとって、暗算は大きな負担です。筆算を面倒がらずに書く習慣をつけましょう。途中式を書くことで、計算ミスも減ります。
国語の読解では、余白をメモ帳代わりに使いましょう。登場人物の名前と関係を書いておく、重要だと思った文に線を引くなど、思いついたことは書き残す習慣づけが大切です。こうすることで内容を思い出しやすくなります。
付箋紙も便利です。思いついたこと、忘れそうなことをすぐ書いて目につく場所に貼ると良いでしょう。「明日体操服」「漢字ドリル持っていく」といったことも、書いて貼っておけば忘れません。
家庭学習で親ができるサポート
宿題を始める前に、「今日は何があるの?」と一緒に確認する時間を作りましょう。やることを一つずつ確認することで、お子さんは見通しを持てます。
学習中も、適度に声をかけます。「今どこまで進んだ?」「あと何問ある?」こうした問いかけで、お子さんは現在地を確認できます。
間違えたときは、「ここまではできてるね。この部分で迷ったのかな?」と一緒に原因を探ります。責めるのではなく、次はどうすればいいか一緒に考える姿勢が、お子さんの自己肯定感を守ります。
ワーキングメモリを鍛える習慣
日常生活の中で、楽しみながらワーキングメモリを育てる対策法があります。
日常生活で自然にトレーニングする方法
特別なドリルを買ったり、特別な勉強法を取り入れなくても、毎日の暮らしの中にトレーニングの機会はあります。
夕飯の準備を一緒にやってみませんか。「じゃがいもを3個洗って、皮をむいて、小さく切って」という一連の流れは、まさにワーキングメモリのトレーニングです。
スーパーでの買い物も楽しいトレーニングになります。「牛乳とバナナとパン、覚えられる?」と3つくらいから始めて、売り場で探してもらいましょう。成功したら、次は4つ、5つと増やしていきます。
しりとりや連想ゲーム、カードゲームの神経衰弱も効果的です。楽しみながら自然と鍛えられます。勝ち負けを気にせず、一緒に楽しむ雰囲気を大切にしてください。
何より大切なのは、お子さんが楽しんでいるかどうかです。日常の中で自然に、そして笑顔で続けられることが一番の近道です。
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