大人でも起こり得る「聴覚過敏」。その疑いがある場合にどこで診断できるか、どんなテストを受けるか、「聴覚過敏」と診断された場合にできる日常生活で対処方法まで詳しく解説します。
聴覚過敏とは?大人でも起こりうる症状

聴覚過敏とは、他の人にとっては気にならない音を非常に大きく、不快に、あるいは痛みとして感じてしまう状態です。
典型的な症状
「人混みのざわざわした声が刺すように聞こえる」
「食器のぶつかる音が耳に響いてつらい」
「職場の機械音が頭痛を引き起こす」
といった症状が典型的です。
聴覚過敏は子どもに多いと思われがちですが、大人でもストレス、メンタル疾患、耳の病気、音の暴露、脳疲労、発達特性などをきっかけに、突然発症するケースも珍しくありません。
聴覚過敏の原因

聴覚過敏を引き起こす背景は実に様々です。次のような原因が考えられます。
耳の病気や身体的要因
- 中耳炎、メニエール病※
- 突発性難聴の回復期
- イヤホン・騒音による内耳の疲労
- 片頭痛との関連
※メニエール病とは、聴覚やバランス感覚をコントロールしている内耳がむくむことで、内リンパ水腫と呼ばれる状態になる疾患です。激しいめまいやふらつき、難聴、耳鳴りを繰り返すのが特徴です。
神経や脳機能の要因
- 自律神経の乱れ
- 聴覚情報処理(APD)に関連する問題
- 感覚過敏(発達特性)
メンタル面
- うつ病
- 不安障害
- ストレス過多
- HSP傾向
原因が複雑に絡み合っていることも多いため、自己判断だけでは不十分であり、専門機関での確認が重要です。
聴覚過敏の疑いがある場合どこで診断できる?

「病院に行きたいけれど、何科に行けばいいのか分からない」という質問がとても多いです。
結論として、まず受診するのは耳鼻咽喉科が基本です。ただし症状の背景によっては別の専門領域が関わることもあります。
耳鼻咽喉科
おすすめの初診先で、最も一般的な選択肢です。
耳鼻咽喉科では。次のような聴覚過敏に関連する医学的問題を確認できます。
- 聴力検査
- 不快閾値(UCL)検査
- 耳の病気のチェック
特に「聴覚過敏専門」「聴覚外来」という表記がある病院はより専門性が高い場合があります。
心療内科や精神科
メンタル要因が疑われる場合は、こちらも候補になります。
例えば、次のようなものが背景にあるケースでは、心療内科の治療によって症状が軽減することがあります。
- ストレス
- 不安障害
- うつ状態
- 聴覚情報の処理に影響する精神的負担
脳神経外科
頭痛(特に片頭痛)との関連がある場合に検討されます。
片頭痛と聴覚過敏は強い相関があるため、頭痛専門外来で診断を進めることもあります。
発達障害外来や専門クリニック
感覚過敏が強い、幼少期から刺激に敏感、職場の音が耐えられない、といった背景がある場合、発達特性の一部として聴覚過敏が現れているケースがあります。
大人の発達障害外来では問診や心理検査等で総合的に評価してもらえます。
聴覚過敏は病院でどんなテストを受ける?

聴覚過敏の疑いがある場合、医療機関では次のような検査が行われます。
聴力検査
聴力の感度を調べる基本的な検査で、純音聴力検査とも呼ばれます。難聴との関連も確認できます。
不快閾値検査
音の刺激に対して「聞こえる」という反応が起こる、もっとも小さいレベルを聴覚の「閾値」といいます。「閾(しきい)」とは建物の敷居のことですが、これは常用漢字ではありません。したがって「域値」と当て字を使うことが多いのですが、本来、扉や戸などのいちばん下に敷いてある枠のことを意味するので、正しくは「閾値」というのです。
「不快閾値」とは、どの程度の音量で不快さを感じるかを測る聴覚過敏の重要なテストです。聴覚過敏の人は、一般的に通常の人よりも低い音量で不快に感じる傾向があります。
耳の内部の確認
耳の内部(鼓膜や内耳など)に炎症や疾患がないかチェックします。
問診
問診では、次のようなことを詳しく聞かれます。
- いつから症状が出ているか
- どんな音がつらいか
- 仕事や生活の環境
- ストレスの有無
- 片頭痛や自律神経の乱れの有無
なお、発達特性やメンタル面が疑われる場合は、心理検査や精神科での追加評価も行われます。
病院に行く前にできるセルフチェック方法

大まかな目安として、次の項目が複数当てはまる場合は、聴覚過敏の可能性があります。
- 普通の会話音でも耳に刺さるように聞こえる
- 子どもの声・食器の音など特定の音が非常につらい
- 人混みやスーパーに入ると疲れやすい
- 音にびっくりしやすい
- 最近ストレスや疲労感が強い
- 職場で音の刺激が多い環境にいる
- 頭痛や自律神経の乱れを感じる
- 長時間のイヤホン使用が習慣化している
もし日常生活に支障があるほどの症状がある場合は、早めの受診がおすすめです。
日常生活でできる聴覚過敏への対応方法

病院での治療と同時に、生活環境の調整も重要です。ここでは日常生活でできる推奨される対応方法を紹介します。
イヤーマフや耳栓を使う
外出時は完全遮音ではなく、適度に軽減するタイプが推奨されます。
完全に音を遮断すると、逆に音に敏感になってしまうことがあるためです。
職場環境の調整
- デスクを音の少ない場所に移動
- 周囲に相談して機械音から距離を取る
- ノイズキャンセリング機能の利用
業務に支障がある場合、産業医や上司への相談も有効です。
ストレスや疲労の軽減
自律神経の乱れが音の過敏さを悪化させることがあります。
ストレスや疲労が原因の場合、次のようなことが効果的です。
- 睡眠改善
- 休憩時間の確保
- 休息の質を高める
- 深呼吸や軽い運動
音に慣らすトレーニング
サウンドセラピーは医療機関で行われることもある方法です。
環境音を小さく流し「音に対して過敏になりすぎている状態」を緩やかに改善します。
自分で行う場合は、次のような自然音アプリをトレーニングに用いることがあります。
- 川の音
- 雨音
- ホワイトノイズ
病院に行くべきタイミング

次のようなケースは、早めの受診をおすすめします。
- 日常生活に支障がある
- 音を聞くと頭痛・めまい・吐き気がする
- 仕事に集中できない
- 急に音がつらくなった
- 片頭痛を伴う
- 他人との会話が困難になっている
我慢を続けると、ストレスや疲労が積み重なり、症状がさらに悪化することがあります。上記のようなケースが表れたら、受診を検討してください。
診断後の治療は?

治療方法は原因により異なりますが、一般的には次のような方法が取られます。
耳の病気が原因の場合
耳の病気が原因の場合は、適切な薬物治療や処置を行います。
ストレスやメンタル要因が強い場合
ストレスやメンタル要因が強い場合は、次のような治療が効果的です。
- 心療内科でのカウンセリング
- 薬物療法
- 自律神経の調整
発達特性が背景にある場合
発達特性が背景にある場合は、次のようなものを組み合わせて治療します。
- 環境調整
- 感覚刺激への慣れ
- 心理支援
環境調整は例えば、人混みの騒々しさにしんどくなる場合、「イヤマフをする」「人が多い時間を避けて外出する」などの対処をします。
感覚刺激への慣れは、トイレの水を流す音やエアータオルの音が苦手な場合、少しずつ音に慣れていくなどの例が挙げられるでしょう。
また、心理支援は、初めてのことに対し不安が強い場合、あらかじめ情報を伝えておくなどの支援があります。
子どもの発達障害による聴覚過敏が気になる場合、ステラ幼児教室にご相談ください。
ステラ幼児教室では、子どもの発達特性に応じて、個別にサポートしています。
大人でも起こりうる聴覚過敏に対応しよう
聴覚過敏は、他人に理解されにくい症状ゆえに悩みを抱えやすい特徴があります。
しかし、「どこで診断できるのか」、「どんなテストがあるのか」、「日常での対策方法」を知っておくことで、負担を大きく減らすことができます。
聴覚過敏の疑いがある場合には、まずは耳鼻咽喉科で相談するのがおすすめです。
必要に応じて、心療内科・脳神経外科・発達外来など、他の専門領域につなげてもらえることもあります。
聴覚過敏は決して「気のせい」ではなく、適切な対処で改善が期待できるものです。つらいと感じたらひとりで抱え込まず、早めに専門家に相談してみてください。
子どもの発達障害による聴覚過敏が気になる場合、ステラ幼児教室にご相談ください。
ステラ幼児教室では、子どもの発達特性に応じて、個別にサポートしています。












