思春期の特徴と親子のコミュニケーション

「あんなに素直で可愛かった息子が、急に口をきいてくれなくなった」「娘の機嫌がいつも悪くて、何を言っても反発される」「学校のことを聞いても『別に』としか返ってこない」
子どもが中学生や高校生になる頃、親子のコミュニケーションが急激に難しくなったと感じる保護者の方は非常に多いです。いわゆる思春期の訪れは、子どもが大人へと成長していくための通過儀礼のようなものです。しかし、頭では分かっていても、我が子の急変ぶりに戸惑い、どう接すればよいのか悩んでしまうのは当然のことです。
特に、お子さんに知的障害や発達障害の特性がある場合、その変化はより複雑に見えることがあります。言葉で自分の気持ちをうまく表現できないもどかしさが、強い反抗的な態度や、逆の引きこもりのような沈黙として現れることもあるからです。
この記事では、思春期特有の心と身体の変化、男子と女子それぞれの心理的特徴、そして発達障害があるお子さんへの適切な対応について解説します。親としてどのように見守り、関わっていけばよいのか、そのヒントをお伝えします。
思春期の特徴と心身の変化

思春期は、子どもから大人へと移行する過渡期であり、心と身体のバランスが最も崩れやすい時期です。まずは、この時期に共通して見られる特徴を理解しましょう。
第二次反抗期と身体的な成長
小学校高学年から中学生頃にかけて、第二次性徴と呼ばれる身体的な変化が訪れます。急激に身長が伸びたり、声変わりが始まったり、体つきが大人びてきたりします。自分自身の身体が変化していくことに、子ども自身の心が追いつかず、戸惑いや恥ずかしさを感じることがあります。
また、脳内ではホルモンバランスが激しく変動します。この影響で、わけもなくイライラしたり、不安になったり、感情の起伏が激しくなります。これが第二次反抗期と呼ばれる行動の背景にある生理的な要因です。本人も「イライラしたくないのにしてしまう」というコントロールできない感情に苦しんでいることが多いのです。
親からの自立と依存の葛藤
思春期の心理的な最大の特徴は親からの自立への欲求です。今まで親の言うことが絶対だった世界から、自分自身の価値観で生きたいという欲求が芽生えます。そのため、親からの指示や干渉に対して「うるさい」「放っておいて」と強く反発します。
しかし一方で、まだ経済的にも精神的にも完全に自立できるわけではありません。「甘えたいけれど、素直になれない」「親に頼りたいけれど、干渉されたくない」という、自立と依存の狭間で揺れ動く葛藤(アンビバレンス)を抱えています。この矛盾した態度が、親から見るとわがままや理不尽に映ることがありますが、これは心が成長しようともがいている証拠でもあります。
友達関係の重視と親との距離
思春期になると、生活の中心が家庭から学校や友人関係へとシフトします。親よりも友達の意見を重要視し、仲間内での評価や立ち位置を過剰に気にするようになります。「親と買い物に行くのが恥ずかしい」「部屋に入ってほしくない」と言い出すのもこの時期です。
これは親を嫌いになったわけではなく、親という安全基地から離れ、外の世界で自分の居場所を作ろうとする健全な発達プロセスです。親としては寂しさを感じる瞬間ですが、子どもが社会性を身につけている最中だと捉え、少し離れた距離から見守ることが求められます。
男子の心理と高校生の特徴

思春期の現れ方は、性別や年齢によっても傾向が異なります。ここでは、男子と女子、中学生と高校生それぞれの特徴を見ていきます。
男子特有の沈黙や攻撃的な態度
男子の場合、思春期の葛藤が沈黙や物理的な行動として現れることが多いです。女子に比べて言語能力の発達がゆっくりな傾向があるため、自分の複雑な感情を言葉にして説明するのが苦手です。その結果、むしゃくしゃした気持ちをどう表現して良いか分からず、親との会話を拒絶して自室にこもったり、壁や物に当たったりする行動に出やすくなります。
母親に対しては、異性としての意識も芽生えるため、距離感がより難しくなります。マザコンと思われるのを極端に嫌がり、わざと冷たく接することで男としての自立を示そうとすることもあります。
女子に見られる心理的特徴と人間関係
一方、女子の場合は、友人関係における同調圧力やコミュニケーションの複雑さに悩みやすい傾向があります。グループから外れないように周りに合わせたり、友人同士の微妙な人間関係のトラブルに巻き込まれたりすることで、大きなストレスを抱えがちです。
家庭では、母親に対して批判的になる一方で、友達のような関係を求めたりと、距離感が密着しすぎたり反発したりを繰り返します。言葉が達者なため、口喧嘩になると親を論理的に追い詰めたり、傷つく言葉を投げかけたりすることもありますが、その裏には分かってほしいという強い共感への欲求が隠れています。
中学生と高校生の心理的な変化と将来
年齢による変化も見逃せません。中学生の頃は、ホルモンバランスの変化によるわけのわからないイライラや、友人関係などの今ここにある世界の悩みが中心です。一方、高校生になると、もう少し視点が広がり、将来に対する現実的な不安や焦りが強くなります。
「自分は何になりたいのか」「大学には行けるのか」「社会でやっていけるのか」といったアイデンティティの確立に関わる悩みが増えてきます。発達障害がある子の場合、「周りのみんなは進路を決めているのに、自分だけ決められない」「アルバイトがうまくいかない」といった具体的な挫折経験を通して、将来への不安がより一層強まる時期でもあります。
知的障害や発達障害と思春期

知的障害や発達障害(ADHD、ASDなど)のある子どもにとって、思春期は定型発達の子どもたちとの違いを痛感させられる、非常に苦しい時期になることがあります。
特性による生きづらさが強まる時期
幼少期は少し変わった子、個性的で済まされていた特性が、思春期に入り集団生活のルールが厳しくなると、許容されにくくなります。勉強の内容が難しくなり、ついていけなくなる学習面での遅れ。部活動や委員会活動などで求められる、高度な協調性や段取り力。これらの場面で失敗を繰り返し、「なぜ自分だけできないんだろう」と劣等感を抱きやすくなります。
特に、知的障害が軽度の場合や、いわゆるグレーゾーンの子どもは、支援級ではなく通常級に在籍していることも多く、周囲からの支援が得にくいまま孤立してしまうケースが少なくありません。
コミュニケーションのすれ違いと孤立
思春期の人間関係は、空気を読む、暗黙の了解、察するといった高度なコミュニケーションスキルが求められます。ASDの特性がある子は、この見えないルールを理解するのが苦手です。悪気なく発言したことがきっかけでいじめの対象になったり、グループから排除されたりすることがあります。
また、ADHDの特性がある子は、衝動的な発言や、約束を忘れるといった行動で友人の信頼を失いやすく、結果として孤立を深めてしまうことがあります。家庭内でも、親の「ちゃんとしなさい」という注意に対して、特性ゆえにできない自分を責め、それが爆発的な反抗となって現れることがあります。
二次障害や不登校のリスク
こうした学校や家庭での失敗体験の積み重ね、孤立感、将来への不安が重なると、自己肯定感が著しく低下します。その結果、心身のバランスを崩し、うつ状態、不安障害、起立性調節障害といった二次障害を引き起こしたり、学校に行くエネルギーを失って不登校になったりするリスクが高まります。
思春期の発達障害のある子にとって、最も守るべきは学力よりも自己肯定感と心の健康です。二次障害を防ぐためには、家庭が安心して休める場所であることが何よりも重要になります。
思春期の子どもに対するコミュニケーション

腫れ物に触るような扱いになりがちな思春期の子どもに対し、親はどのように関わればよいのでしょうか。大切なのは押すことよりも引いて見守る姿勢です。
話さない子どもへの接し方のコツ
「学校どうだった?」「誰と遊んだの?」「テスト勉強したの?」 親としては心配でつい質問攻めにしてしまいますが、思春期の子どもにとって、これらはすべて干渉と感じられます。話さない子どもに対して、無理に口を開かせようとするのは逆効果です。
有効なのは、返事を求めない挨拶とアイメッセージです。「おはよう」「おかえり」「おやすみ」といった基本的な挨拶は、無視されても淡々と続けます。これはあなたの存在を認めていますよというサインになります。また、「お母さんは、あなたが元気だと嬉しい」「ご飯を食べてくれると安心する」といったように、親の気持ち(I=私)を主語にして伝えると、押し付けがましさが減り、子どもの心に届きやすくなります。
過干渉を避けて見守る姿勢
子どもが失敗しないように先回りして口出しをする過干渉は、子どもの自立心を阻害します。特に発達障害がある子の場合、親は心配のあまり手や口を出しすぎがちですが、思春期は失敗する権利を子どもに返す時期でもあります。
「勉強しなさい」という指示出しを減らし、本人が困って助けを求めてきたときに初めて手を差し伸べる。この待つ姿勢は親にとって忍耐が必要ですが、適度な距離(境界線)を保つことが、結果として親子関係の改善につながります。
肯定的な言葉で自己肯定感を支える
外の世界で傷つき、自信を失っているかもしれない子どもにとって、家は唯一の安全地帯であるべきです。「部屋が汚い」「スマホばかり見て」と欠点を指摘するのではなく、できている部分に目を向けます。
「学校に行ったね」「ご飯を食べたね」「お風呂に入ったね」そんな当たり前のことでも、肯定的な言葉をかけ続けることで、子どもは自分はここにいていいんだという安心感を得ます。自己肯定感が回復してくれば、自然と次のステップへ進むエネルギーが湧いてきます。
学習の遅れや進路に悩む場合の対応

思春期の子どもを持つ親御さんにとって、勉強の遅れや進路の問題は大きな悩みです。しかし、焦りは禁物です。
勉強の強要が逆効果になる理由
反抗期にある子どもに勉強を強制することは、親子関係を決定的に悪化させる最大のリスク要因です。「勉強しないと将来困るよ」という正論は、子ども自身が一番よく分かっています。分かっているけれど、どうしていいか分からない、やる気が出ない、というのが本音です。そこで親が正論を振りかざすと、子どもは、親は自分の味方ではないと感じ、心を閉ざしてしまいます。まずは関係性の修復を優先し、勉強の話は信頼関係が戻ってから、もしくは第三者に任せるのが賢明です。
個性に合わせた学習環境の重要性
中学生になると、学習内容の難易度が上がり、スピードも速くなります。発達障害の特性がある場合、一斉指導の塾では、板書が間に合わない、先生の説明が聞き取れない、質問できないといったつまずきが生じやすくなります。みんなと同じやり方で頑張らせようとしても、特性に合っていなければ成果が出ず、自信を失うだけです。その子の認知特性(見て覚えるのが得意、聞いて覚えるのが得意など)やペースに合わせた学習環境を選び直すことが、遠回りのようで近道になります。
発達に合わせた個別支援塾の活用
思春期の子どもは、親の言うことは聞かなくても、信頼できる第三者(メンター)の言葉なら素直に聞くことがあります。学習支援や進路指導を、家庭だけで抱え込む必要はありません。
例えば、ステラ個別支援塾のような、発達障害や発達の遅れがある子ども専門の塾では、単に勉強を教えるだけでなく、その子の特性を理解した講師が、信頼関係を作りながらサポートを行います。「先生となら話せる」「ここなら勉強できる」という居場所ができることは、思春期の子どもにとって大きな支えとなります。親以外の大人との信頼関係を通して、社会性を育み、将来への希望を見出していくことができます。
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思春期の特徴についてのまとめ
思春期は、身体も心も劇的に変化する、人生で最も不安定で、かつ重要な時期です。男子特有の沈黙や攻撃性、女子の人間関係の悩み、そして発達障害がある場合に見られる孤立感や生きづらさ。これらはすべて、大人になるための生みの苦しみとも言えます。
この時期の子どもに必要なのは、管理や指導をする親ではなく、どんな時でも味方でいてくれる、どっしりとした親の存在です。コミュニケーションがうまくいかないときは、少し距離を置き、焦らず見守りましょう。そして、学習や進路の悩みは、専門家の力を借りながら、その子に合った道を探していけば大丈夫です。
嵐のような思春期も、いつかは必ず過ぎ去ります。今はつらいかもしれませんが、子どもの成長を信じて、一日一日を乗り越えていきましょう。
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