些細なことを気にしすぎてしんどい子どもの心理

「お友達に変なふうに思われたかもしれない」「明日の発表で失敗したらどうしよう」 気にしすぎる性格の子どもの頭の中では、常にこのような不安のつぶやきが鳴り響いています。大人から見れば「そんなこと、誰も気にしていないよ」と思えるような小さなことでも、本人にとっては世界の終わりのように重大な問題として感じられているのです。
このような子どもの心理の背景には、外部からの刺激を人一倍強く受け取ってしまう感受性の強さがあります。目に見える風景、耳に入る音、人の表情のわずかな変化。これらを情報のシャットアウトができないまま、すべて正面から受け止めてしまうため、脳が常にフル回転して疲れ切っています。
また、自分自身の思考を客観視するメタ認知能力がまだ発達途上であることも影響しています。自分の不安を「あ、今自分は不安になっているな」と一歩引いて見ることができず、感情の渦に飲み込まれてしまうのです 。そのため、一度ネガティブな思考に陥ると、そこから自力で抜け出すことが難しく、しんどい状態が長く続いてしまいます。
学校や家庭でよく見られる気にしすぎる言動

気にしすぎる性格は、日常生活のさまざまな場面で具体的な困りごととして現れます。学校という集団生活の場では、その傾向がより顕著になりやすいといえます。
友達の何気ない一言をいつまでも引きずる
「さっきの言い方、怒ってたのかな?」「もしかして、嫌われちゃったかな?」 友達と交わした何気ない会話の、ほんの少しの違和感を、子どもはいつまでも反芻します。相手に悪気がなかったとしても、その言葉の裏を読みすぎてしまい、勝手に傷ついてしまうのです。
これは、相手の気持ちを推測しようとする力が強い反面、それが悪い方向への想像力に偏ってしまっている状態です。言葉を文字通りに受け取ることが難しい一方で、相手の顔色を伺いすぎてしまうという、繊細なコミュニケーションの難しさを抱えています。
先生に怒られるのが怖くて行動できない
「間違えたら怒られるかもしれない」「完璧にできないならやりたくない」 失敗を極端に恐れるあまり、新しいことに挑戦できなかったり、行動が消極的になったりすることがあります。学校の先生が他の子どもを叱っている姿を見ただけで、まるで自分が叱られているかのように動悸がしたり、怖くなったりすることもあります。
これは、周囲の刺激に敏感なため、ネガティブなエネルギーをダイレクトに吸収してしまうことが原因です。自分を客観視する力が強すぎるあまり、失敗した自分を他者がどう見るかを気にしすぎて、身動きが取れなくなっているのです。
先のことを悪い方へ想像して不安になる
「もし忘れ物をしたらどうしよう」「雨が降ったら遠足はどうなるの?」 まだ起きていない未来のことに対して、最悪のシナリオを想像して不安を膨らませてしまいます。見通しが立たない状況や、予定の変更に弱いという特徴は、子どもにとって大きなストレスとなります。
「もし〜だったらどうしよう」という不安は、脳が危険を察知して身を守ろうとする防御本能でもありますが、気にしすぎる性格の子どもの場合、このアラームが過剰に鳴り続けている状態です 。そのため、常に緊張状態で過ごしており、夕方や週末にはエネルギーが枯渇してぐったりしてしまうことも少なくありません。
気にしすぎる性格は直すべきか?HSPという気質の可能性

親としては、わが子が楽になれるように「この性格を直してあげたい」と思うかもしれません。しかし、近年の研究では、こうした繊細さは直すべき欠点ではなく、生まれ持った「気質」であることが分かってきました。
5人に1人が持つHSPの特徴
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは、視覚や聴覚、他人の感情など、さまざまな刺激に対して非常に敏感な反応を示す人たちのことです。これは病気や障害ではなく、全人口の約20%、つまり5人に1人が持っているとされる先天的な気質です。
子どもの場合は、HSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)と呼ばれます。HSPには、以下の4つの大きな特徴(DOES)があるとされています。
1.D(Depth of Processing)
深く処理する。物事を深く考え、本質を見抜く。
2.O(Overstimulation)
過剰に刺激を受けやすい。疲れやすく、人混みが苦手。
3.E(Emotional reactivity and empathy)
感情的な反応が強く、共感力が高い。
4.S(Sensing the Subtle)
些細な刺激を察知する。わずかな音や光、においに気づく。
脳の扁桃体が活発で恐怖や不安を感じやすい
HSPの人がなぜこれほどまでに敏感なのかというと、脳内の「扁桃体」という部分の働きが、非HSPの人に比べて活発であることが関係しています。扁桃体は、恐怖や不安といった感情を司り、危険を察知する役割を持っています。
扁桃体が活発であるということは、いわば高性能なセンサーを常に稼働させているようなものです。些細な刺激に対しても脳が「危険だ!」とアラームを鳴らしやすいため、不安を感じやすく、気にしすぎる性格として現れるのです。これは脳の機能によるものであり、努力や根性で変えられるものではありません。
直すのではなく自分の特性として理解する
気にしすぎる性格を「直したい」と思うかもしれません。大切なのは、気にしすぎる性格を直そうと格闘するのではなく、まずは「自分にはこういう特性があるのだ」と受け入れることです。「直したい」と思い、直そうとすればするほど、できない自分を責めることになり、自己肯定感が低下してしまいます。
気にしすぎる性格は、裏を返せば人の気持ちに深く共感できる、リスクを事前に察知して慎重に行動できる、物事の細かな美しさに気づけるという、素晴らしい才能でもあります。この特性と上手に付き合い、しんどい場面での対処法を身につけていくことが、自分らしく生きるための第一歩となります。
★HSPについての記事はこちら
【感受性が強い子どもの特徴とは?原因や接し方について解説】
【とても繊細な人~「HSP」の性質と、「HSP」の子ども(「HSC」)の理解について】
病気や発達障害が原因になっているケース

本人がしんどいと感じるほど気にしすぎる状態が続く場合、単なる気質だけでなく、背景に専門的なサポートが必要な病気や発達障害が隠れていることがあります。
不安障害や強迫性障害などの精神疾患
「失敗したらどうしよう」という不安が日常生活に支障をきたすほど強くなると、不安障害という診断がつくことがあります。また、「手が汚れているのではないか」といった特定の考えが離れず、確認や手洗いを何度も繰り返してしまう強迫性障害も、気にしすぎる性格と混同されやすい疾患です。
これらの精神疾患は、本人の努力不足ではなく、脳内の神経伝達物質のバランスなどが関係しています。放置すると、自分を責める気持ちが強くなり、うつ状態などの二次障害を引き起こすリスクも高まります。
HSPと発達障害との違い
HSP(感受性が強い気質)と発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)は、一見すると些細なことが気になるという点で似ていますが、その背景は異なります。
・自閉スペクトラム症(ASD)
対人関係の構築が苦手であったり、特定の物事への強いこだわりがあったりするのが主な特徴です。感覚過敏によって特定の音や光を過剰に気にする姿が見られますが、これは相手の気持ちを察しすぎて疲れるHSPとは、情報の処理プロセスが異なるといわれています。
・注意欠如多動症(ADHD)
不注意や衝動性が主な特性です。ADHDの子どもは、ミスをして叱られる経験が重なりやすいため、「また失敗するのではないか」という不安から、物事を過剰に気にするようになるケースがあります。
これらは併発していることも多く、専門家でも見極めには慎重な観察が必要です。
気にしすぎてしんどい時の心の守り方

心が不安でいっぱいになったとき、子ども自身が自分の心を守るための技術を身につけることは、将来にわたって大きな助けになります。
事実と感情を分けて考える練習をする
気にしすぎる子どもは、起きた出来事(事実)と、それに対する自分の不安(感情)が混ざり合ってパニックになりやすい傾向があります。ここで役に立つのがメタ認知能力です。
メタ認知能力とは、自分を客観的に見る力のことです 。例えば、友達と目が合わなかったとき、「嫌われているんだ(感情)」と思い込むのではなく、「友達は別の方向を見ていただけかもしれない(事実)」と、もうひとりの自分が自分を観察する練習をします。この力が育つと、感情の波をうまくコントロールできるようになります。
不安な気持ちをノートに書き出して可視化する
頭の中だけで考えると不安は無限に広がります。そんなときは、今感じていることをそのまま紙に書き出すアウトプットが効果的です。「忘れ物をしたら恥ずかしい」「発表で声が震えたらどうしよう」など、心の中のモヤモヤを言葉にして可視化することで、実体のない不安を整理できます。書き出した後に「じゃあ、どうすれば良いかな?」と一緒に作戦を立てることで、具体的な解決策に意識を向けられるようになります。
★メタ認知能力について、詳しい記事はこちら【メタ認知能力とは?子どもの学習と対人関係を伸ばす鍛え方】
自分だけの逃げ場所やリセット方法を持つ
感覚過敏や不安で心がパンパンになったときは、物理的に刺激を遮断できる場所が必要です。療育の現場では「カームダウンスペース」と呼ばれる、ひとりになれる静かな場所を確保することが推奨されています。
家庭内でも、押し入れの中やテントの中など、子どもが「ここは絶対に安全だ」と思える場所を作ってあげてください。また、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめる、好きな音楽を聴くといった、自分なりのリセット方法をひとつ持っておくだけでも、安心感は大きく変わります。
気にしすぎる性格の子どもを支える接し方と環境調整

お母さんが子どもの一番の理解者でいることは、何よりも強い心の薬になります。
直したいという気持ちを否定せず共感する
子どもが「もう気にしすぎるのは嫌だ」「直したい」と言ったとき、「そんなことないよ、良いところだよ」とすぐに励ましたくなるかもしれません。しかし、本人がしんどいと感じているときは、まずはその苦しみに共感することが大切です。
「そう思うくらい、頑張ってきたんだね」「ドキドキしちゃうときもあるよね」と、否定せずに受け止めることで、子どもは「分かってもらえた」と安心します。この安心感が心の安全基地となり、少しずつ外の世界に向き合うエネルギーを貯めていくことができるのです。
家庭を刺激の少ない安全基地にする
外で気を張り詰めている子どもにとって、家は情報のノイズが少ない場所である必要があります。
・視覚的刺激を減らす
机の上を片付け、集中を削ぐものを視界に入れないようにします。
・肯定的な言葉を増やす
失敗を叱るのではなく、できたプロセスを具体的に褒めるようにします。
・予定を事前に伝える
見通しが立たない不安を減らすため、スケジュールを写真やイラストで見せて予告しておくことも有効です。
個性に合わせた学習環境を選び直す
集団生活の中での気にしすぎが強く、不登校のリスクや二次障害が心配される場合は、学びの場を柔軟に考えることもひとつの選択肢です。
画一的なペースが求められる集団指導では、些細な遅れが気になり、自信を失ってしまうこともあります 一方で、その子のペースや特性に合わせてくれる個別支援の場であれば、無理なく「分かった」「できた」という成功体験を積み重ねることができます。
ステラ個別支援塾では、一人ひとりの特性に合わせた個別指導で、子どもの「できた」や自信を育みます。
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気にしすぎる性格についてのまとめ
気にしすぎる性格は、本人が生まれ持った繊細なアンテナを持っている証拠です。それは決して悪いことではなく、豊かな感性や慎重さという素晴らしい個性でもあります。
大切なのは、その性格を無理に直そうとすることではありません。子ども自身が自分の特性を理解し、しんどいときに自分を助ける方法を身につけること、そして周囲の大人が適切な環境を整えてあげることです。
もし、家庭での工夫だけでは限界を感じたり、発達の特性が気になったりする場合は、ひとりで抱え込まずに専門機関へ相談してください。ステラ個別支援塾では、一人ひとりの認知特性に合わせたサポートを通じて、子どもが自信を持って成長できる環境を提供しています。
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