コラム コラム

オウム返しとは?子どもの発達との関係や対処法をやさしく解説

2025.07.08
  • 発達障害
  • ASD(自閉症スペクトラム)
  • 支援方法・家庭での過ごし方

「最近、子どもが話しかけるたびに同じ言葉を繰り返す…」そんな様子に不安を感じている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。このような行動は「オウム返し」と呼ばれ、発達の一過程として自然に見られることもあれば、発達障害などと関係している場合もあります。

言葉を覚える途中でよく見られるオウム返しですが、どのような時期に、どんな目的で現れるのかを知っておくことで、子どもへの理解と適切なサポートにつながります。

そこで本記事では「オウム返しとは何か?」という基本から、子どもの発達との関係、気になる場面の具体例、そして保護者としてできる対処法まで解説していきます。

目次

オウム返しとは?

「オウム返しって何だろう?」「どんな意味があるの?」と疑問に思った方へ向けて、まずはオウム返しの基本的な定義や特徴についてご紹介します。

子どもが大人の言葉をそのまま繰り返す様子は、一見するとコミュニケーションになっていないように思えるかもしれませんが、実は言葉の発達と深く関係した行動なのです。

まず本項では、オウム返しがどのような行動なのか?その定義や特徴について解説していきます。

オウム返しの定義や特徴

オウム返しとは、相手の発言をそのまま繰り返すコミュニケーションの手法です。

子どもだけでなくビジネスシーンでも使われることがあり、相手の言葉を繰り返すことで共感を示したり、会話をスムーズに進めたりする効果があります。小さな子どもの場合、大人や他の子どもが言った言葉を真似て言い返します。一般的には、言語を模倣して音やリズムに慣れるための、発達過程で自然なステップとして捉えられています。

整理オウム返しとの違い

整理オウム返しとは、キーワードをオウム返しするのではなく相手の言葉と同じ言葉を使って反応する手法です。

全ての言葉を同じように発言するため、整理して話すことから整理オウム返しと呼ばれています。
基本的なオウム返しは特定の言葉のみを返しますが、整理オウム返しは一言一句同じです。
そのため、全ての言葉を同じように発言するなら整理オウム返し、特定の言葉のみであればオウム返しと理解しておくとよいでしょう。

エコラリアとの違い

エコラリアとは、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害がある子どもたちが示す特有の行動です。

人の言葉を同じトーンやイントネーションで繰り返し、言葉の意味を理解せずそのまま発せられます。
中には言葉の意味を理解していることもあり、そうでない場合もあります。
言葉を同じトーンやイントネーションで繰り返すことから、オウム返しとは少し異なります。
もし、言葉のトーンやイントネーションが同じであれば、エコラリアである可能性が高いです。

子どもに見られるオウム返しの特徴

「じゃあ、どんな子どもにオウム返しが見られるの?」と心配される方も多いかもしれません。

オウム返しには、年齢や発達の段階によって現れやすいパターンがあります。また、発達障害(ASD)などと関連して見られるケースもあるため、観察と理解が必要です。

ここでは、幼児期・学齢期に多いオウム返しの具体例や、発達障害との関連性、言語発達との関係、またその背景について解説していきます。

幼児期と学齢期に多いオウム返しの例

幼児期

幼児(1歳半〜2歳頃)は、両親や保育士の言葉をそのまま繰り返すオウム返しを行いやすく、これは言葉の学習の自然なステップです。たとえば「おにぎり食べる?」と聞くと「食べる」。また「お片付けしようね」というとそのまま返します。これは言語習得の過程で重要な模倣学習です。

学齢期

学齢期に入ると、会話を引き延ばすために使う「共感オウム返し」や、確認として返すことも増え、「楽しい!」に「楽しい!」と返すなど、会話のキャッチボールに使われる自然なやりとりへと変化していきます。この変化は、言葉の発達とともに正常な現象です。

発達障害(ASDなど)との関連性

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、先述のエコラリアという形式でオウム返しを行うことが多いとされています。この場合、音声のリズムや言葉そのものを繰り返すことで安心感を得たり、コミュニケーションを試みたりする特徴があります。

エコラリアは、即時型(すぐに繰り返す)と遅延型(過去に聞いた言葉を後になって繰り返す)がありますが、いずれも意味の理解よりも音声習得や気持ちの安定の手段として現れることが多いです。言語発達の特性として捉える必要があります。

言語発達とオウム返しとの関係性

オウム返しは、幼少期の言葉の習得過程において重要な段階であり、言葉の音やイントネーションを覚え、理解するための練習です。多くの子どもが1歳半〜2歳頃にピークを迎え、その後は自発的な会話へと発展していく傾向があります。

言語理解が進むにつれ、オウム返しは自然と減少しますが、長く見られる場合には理解不足や自己刺激の目的を持つケースの可能性もあるため、ご家庭や専門家による様子観察が必要です。

子どもがオウム返しをする心理と背景

オウム返しは、単なる模倣ではなく、子どもが安心感や言葉の利用方法を理解するプロセスの一部としても現れることがあります。音声の反復は心地よさを与える自己刺激にもつながります。

また、コミュニケーションがうまく取れず「どう返せばいいかわからない」場合に、言われた言葉を繰り返すことで応答の意思を示していることもあります。親はまず受け止め、意味を伝えるモデルとして「そうだね」「○○したいの?」など優しく問いかけることで、表現への橋渡しとなります 。このように、言語が苦手な子どもの自然な発達手段です。

幼児教室・学習塾問合せ

オウム返しをするシーンとは?

「うちの子どもはどんな時にオウム返しをするのか、いまいちわからない…」と感じる方もいるでしょう。

オウム返しは、特定の環境や心理状態、コミュニケーションの状況によって現れやすい行動です。安心感を求めていたり、言葉の意味がわからなかったりする中で、自然と出てくることもあります。

ここでは、子どもがどのような場面でオウム返しをしやすいのか、具体的なシーンをもとに解説していきます。

質疑応答をする時

質疑応答のシーンでは、相手からの質問をそのままの言葉で返すことがあります。たとえば、子どもに「今日のご飯は?」と聞くと「ご飯は?」と返してしまいます。「今日のご飯はカレー?ハンバーグ?」というように選択肢から選ぶなど、子どもが答えやすい質問にすることで、適切な回答を得やすくなります。

指示を出した時

大人や周囲の人が特定の指示を出すと、子どもは指示内容をそのまま返すことがあります。指示内容を具体的な内容に変更することで、子どもは内容を理解して行動へと反映させることができるでしょう。たとえば、「準備しなさい」を「カバンの中にノートを入れてね」などと、具体的に伝えるとよいでしょう。

日常会話をしている時

日常の会話中に子どもがオウム返しをするケースもあります。たとえば、大人が「楽しい!」と言えば、子どもも「楽しい!」と同じ言葉を言うことでコミュニケーションを取ろうとします。しかし、子どもは「楽しい」という言葉の意味を理解しておらず、そのままの言葉を返していることがあります。そのような時は、子どもが楽しそうにしている場面で「楽しいね」などと、言葉を繰り返すことで、少しずつ感情と言葉が結びついていきます。

幼児教室・学習塾問合せ

オウム返しの対処法

「オウム返しはどう対処すればいいの?」「やめさせた方がいいの?」という疑問を抱える保護者の方に向けて、最後に具体的な対応策をお伝えします。

オウム返しを頭ごなしに否定したり、やめさせようとするのではなく、子どもが何を伝えようとしているのか、どのような支援が必要なのかを見極めることが大切です。

本項では、ご家庭でできるやさしい関わり方や、場合によっては専門機関と連携する方法など、実践的な対処法をご紹介します。

積極的なコミュニケーションを意識する

子どもがオウム返しをしても、積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。

オウム返しを否定し続けると、子どもがコミュニケーションをとること自体が嫌になり、言葉が広がらないこともあります。オウム返しを受け入れながら、子どもがコミュニケーションを楽しめるようにすることはとても大切です。子どもが理解できるように、大人が質問の仕方や返し方を工夫していきましょう。

興味や関心があることに注目する

子どもの興味や関心があるものや遊びをきっかけに、コミュニケーション練習を始めることもおすすめです。

たとえば、新幹線が好きな子どもであれば、新幹線に乗った時に、「新幹線に乗って嬉しいね」など、子どもの感情と言葉を結びつける感情認識の練習を重ねていくとよいでしょう。これにより、ただ言葉を真似するのでなく、意味を理解しながら自然に話せるようになりやすくなります。

感情を理解できるようにサポートする

子どもが他の人の感情を理解できるようにサポートすることも大切です。

感情の理解が難しい子どもには、写真や絵を使いながら「○○な時は悲しいね」というように、ソーシャルスキルトレーニングなどで考えることや、具体的な場面や感情を認識できるようにすることで、他の人への感情の理解も進んでいきます。

気になる場合の相談先と支援の選び方

オウム返しが長期間続いたり、会話が成立しづらい場合は、早めに専門家や医療機関に相談することも検討しましょう。市区町村の発達障害者支援センターや児童発達支援センターなどで、言語や発達に関する相談を受けています。また、福祉サービスや支援については、自治体の子育て支援窓口にお気軽に問い合わせてみてもよいでしょう。

支援の選び方のポイント

福祉サービスや支援を受ける施設を選ぶとき、次のようなポイントで選ぶとよいでしょう。

●言語聴覚士(ST)や発達の専門家がいる施設かどうか
●児童発達支援や放課後等デイサービスで、どのような実践的なサポートが行われているか
●保育所等訪問支援で、園や学校とどのような連携サポートが行われているか

できるだけ実際に、見学や体験、問い合わせなどをして選ぶことをお薦めします。

まとめ

オウム返しとは、オウム返しとは、相手の発言をそのまま繰り返すコミュニケーションの手法です。

子どもにおいては、言葉の習得過程で自然に見られる一方、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害と関係して現れることもあります。幼児期には模倣学習の一環として現れ、学齢期には共感や確認の意味を持って使われることもあります。

オウム返しが長く続く場合には、子どもの心理的な安心感の表れや、言語理解の不足が背景にあることが多く、温かく見守りながら関わっていくことが大切です。

興味のある話題を通しての声かけや、感情理解のサポートを行い、必要に応じて支援機関や専門家と連携しながら、子どもに合った支援を探していきましょう。

参考元
各 支援機関 等

幼児教室・学習塾問合せ


ことばの発達の関連記事

二語文はいつから話すのが一般的?発達を促すサポートとは

2歳の子どもが喋らない原因・言葉の発育を促す方法を詳しく解説

1歳半で言葉が出ないのは大丈夫?言葉の発達目安と関わり方

幼児教室を詳しく見る

個別支援塾を詳しく見る

シェアする

フォローする

コラムトップへ
資料請求・見学 無料体験のお申し込み