コラム コラム

子どもの熱せん妄はなぜ起こるのか?その理由と適切な対処法

2025.12.01
  • その他障害・疾患
  • 支援方法・家庭での過ごし方

子どもが高熱を出したとき、突然大声で泣き叫んだり、意味が通じないような話しをしたり、何かを怖がるような仕草をすることがあります。このような状態を「熱せん妄」と呼びます。突然のいつもと違う行動に驚き、どう対応すればよいのか戸惑う保護者の方も多いのではないでしょうか。

熱せん妄は、脳が高熱の影響を受けて一時的に混乱することで起こると考えられており、通常は短時間で治まることがほとんどです。しかし、重篤な病気との区別が難しい場合もあり、適切な対処を知っておくことが大切です。

そこで本記事では、熱せん妄が起こる理由や症状などをわかりやすく解説するとともに、症状が現れた際の適切な対処法についてもご紹介します。

熱せん妄とは?

発熱した子供を抱く母親
熱せん妄(ねつせんもう)とは、高熱が出た際に一時的に意識の混乱やいつもと違う行動が見られる状態を指します。
通常は短時間(数分〜30分程度)で落ち着き、翌朝には症状を覚えていないことがほとんどです。そのため、過度に心配する必要はありませんが、症状が長時間続く場合や意識が戻らない場合は、病院を受診することが推奨されます。

熱せん妄を起こす原因

発熱している子供
熱せん妄の明確な原因は完全には解明されていませんが、高熱により脳内のホルモンバランスが崩れることが一因と考えられています。
高熱時に大脳の温度が上がり、脳の細胞からノルアドレナリンやドーパミンなどの化学物質が過剰に放出されることで、神経の症状が引き起こされるとされています。 また、子供は神経系が未熟であり、体温調節機能も大人ほど発達していないため、高熱による影響を受けやすいとされています。

熱せん妄の主な症状

体温計で熱を測っている子供
熱せん妄の症状には以下のようなものがあります。​

  • 意味が通じないことを言う
  • 幻覚や幻聴があり怖がったり笑い出したりする
  • 食べ物ではないものを口に入れようとする
  • 急に部屋の中を歩き回る
  • 窓を開けて外に出ようとする

これらの症状は、脳症の初期症状とも似ているため、区別が難しいことがあります。​脳症の場合、いつもと違う行動が長時間続いたり、意識障害やけいれんを伴うことが多いとされています。 ​そのため、症状が長引く場合や重篤な場合は、医療機関への受診が必要です。

熱せん妄を起こしやすい年齢

寝込んでいる女の子
年齢の低い子供は熱を出しやすく、特に1歳から4歳の幼児期に熱せん妄を発症するケースが多い傾向にあります。 ​

成長とともに神経系が発達し、高熱を出す機会も減少するため、徐々に発生頻度は低くなるでしょう。また、体質的に熱を出しやすい子どもや、免疫反応が強い子供は、熱せん妄を起こしやすい傾向があるとされています。 以前に熱せん妄を経験したことがある子供は、再発する可能性もあります。​

子供が熱せん妄を起こした時の対処法

看病する母親

子どもが熱せん妄を起こすと、突然のいつもと違う行動に驚き、不安になる保護者の方も多いでしょう。しかし、適切な対処を知っていれば、落ち着いて対応することができます。

熱せん妄は通常、一時的なもので時間が経つと自然に治まりますが、適切なケアを行うことで子どもが安心し、早く落ち着くことにつながります。また、症状が長引く場合や他の異常が見られる場合は、医療機関を受診する判断も重要です。

本項では、熱せん妄が起こった際に家庭でできる具体的な対処法を、わかりやすく解説していきます。

必ず大人がそばで見守る

熱せん妄が起こると、子供が急に起き上がったり、怖い物から逃げたりする行動をとることがあります。なかには、窓から飛び出そうとしたというケースも報告されているため、高熱の際には大人がそばで見守るようにしましょう。

寝る場所にも工夫し、高熱の際にはベランダに面していない部屋を使用するなど、予期せぬ事故を予防することも大切です。

体を冷やす

熱せん妄は高熱が原因と考えられているため、高すぎる熱を適切に解熱することも大切です。熱が上がりきっているのであれば、解熱剤を服用したり氷枕を使用したりして熱が上がりすぎないようにしましょう。

また、体に熱がこもらないようにすることも大切です。
子どもを薄着にし、汗をかいている場合は速やかに着替えさせましょう。また、首やわきの下、太ももの付け根などの太い血管が通る部位を氷枕や保冷剤で冷やすのも効果的です。ただし、子どもが嫌がる場合は無理に冷やさず、快適さを優先してください。

安心できる声かけや触れ合いをする

熱せん妄の症状が現れた際は、子どもの安全を確保しつつ、そばで静かに見守ることも大切です。

焦って、子どもへの声かけの際に強く揺さぶったり大声で叱ったりしないようにしましょう。
熱せん妄中の子どもは混乱しているため、無理に抱きしめたり、大声で呼びかけたりすると逆効果になることがあります。優しく声をかける程度にし、触れられるのを嫌がる場合は少し距離を取るのも有効です。

子どもが不安や恐怖を感じている場合、手を握ったり背中をさすったりして安心させてあげましょう。ただし、子どもが触れられることを嫌がる場合は、無理に接触せず、優しく声をかけるなどして落ち着かせてください。

【熱せん妄ではない可能性も】医療機関を受診した方がよい症状

聴診器
通常、熱せん妄の症状は数分から数時間以内に治まりますが、以下のような場合は速やかに医療機関を受診してください。​

  • いつもと違う行動が1時間以上続く​
  • 呼びかけに全く反応しない
  • 視線が合わないなどの意識障害がある​
  • けいれんを起こしている
  • 症状改善後に再びいつもと違う行動を起こした

これらの症状は、脳症などの重篤な状態の可能性も考えられるため、早めの対応が必要です。以上の対処法を参考に、子どもの熱せん妄に適切に対応してください。​何よりも冷静に、子どもの安心と安全を第一に考えることが大切です。​

熱せん妄に関するQ&A

Q&Aのブロック
最後に熱せん妄に関するさまざまな疑問にお答えします。

中学生でも熱せん妄になることはある?

基本的に10歳以下の子供に見られやすい熱せん妄ですが、高熱が出れば中学生や高校生でも熱せん妄を起こす可能性はあります。

「もう中学生だから大丈夫でしょう」という理由で目を離さず、高熱の際は大人が付き添うようにしましょう。

大人も熱せん妄になることはある?

大人でも高熱が続けば熱せん妄になる可能性があります。インフルエンザや感染症など、高熱の症状がみられる場合は十分注意しましょう。

また、熱せん妄だと思っていたら脳症を発症していたというケースもあります。症状をよく観察し、必要に応じて医療機関の受診を検討することも大切です。

熱せん妄で救急車を呼んでもいいの?

熱せん妄は一般的に数分から数時間以内に症状が治まるのが特徴です。まずは慌てずに症状を確認して様子をみましょう。

しかし、意識障害(呼びかけに応じない、熱せん妄のような症状が1時間以上連続して続いている、)や熱けいれんを起こしている場合は、状況に応じて救急車を要請することも検討してください。

Q.発達障害児は熱せん妄を起こしやすいって本当?

発達障害児は、健常児よりも高熱に対する反応が強く出やすい子供が多いです。そのため、熱せん妄になりやすいのではないかと言われています。

高熱が出た際には解熱剤を用意しておく、発熱時に一人にしないなど、熱せん妄を防げるように準備しておくとよいでしょう。

Q.熱せん妄にカロナールを使ってもいいの?

カロナールはアセトアミノフェン系の解熱剤で、作用が穏やかなため子供の発熱時の第一選択薬とされています。

医師の指示にしたがって高熱時にはカロナールを服用させるとよいでしょう。

一方で、アセトアミノフェン系以外の解熱剤(アスピリンやイブプロフェン等)は15歳以下の子供への投与が原則禁止されています。特に、インフルエンザ由来の高熱時に服用した場合、脳症のリスクが上昇する可能性が指摘されています。

子供への服用を禁忌としている市販薬や子供本人以外に処方された解熱剤を自己判断で服用させることは非常に危険です。

必ず、医師または薬剤師の指示に従い、解熱剤を適切に使用しましょう。

熱せん妄が起こる原因と対処法のまとめ

熱せん妄とは、高熱時に子どもが一時的に意識の混乱やいつもと違う行動を示す状態を指します。特に1歳から4歳頃に多く見られ、突然泣き叫んだり、幻覚を見たりすることが特徴です。これは脳が高熱の影響を受け、ノルアドレナリンやドーパミンのバランスが崩れることで発生すると考えられています。通常は短時間で治まりますが、長引く場合やけいれんを伴う場合は、医療機関の受診が必要です。

対処法としては、薄着にして体温を適度に冷やす、こまめな水分補給で脱水を防ぐ、症状が落ち着くまで近くで見守ることが大切です。子どもが不安を感じている場合は、優しく声をかけたり、手を握るなどして安心させましょう。一般的には一過性のものですが、いつもと違う行動が1時間以上続く、意識が戻らない、けいれんがある場合は速やかに医療機関を受診してください。

熱せん妄は多くの子どもに起こり得る現象ですが、適切な知識や対応を知っておくことで冷静に対処できます。子どもの安心と安全を第一に考え、落ち着いて見守ることが重要です。

参考元
グレイス病院
https://www.mcs.or.jp/images/NewsPDF/NewsPDF_2zGzyv8YpMm3ummYXEh9gH5WavZj392d_1.pdf
J STAGE 論文「高熱に際しせん妄が出現した症例の鑑別診断」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/35/4/35_4_310/_pdf

幼児教室・学習塾問合せ

幼児教室を詳しく見る

個別支援塾を詳しく見る

シェアする

フォローする

コラムトップへ
資料請求・見学 無料体験のお申し込み