文部科学省の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」によると、通常学級に在籍する小中学生の8.8%に発達障害の可能性があるとされています。
この数字を見て驚かれたかもしれません。
しかし、こだわりがあるからといって病気や障害とは限りません。大切なのは、子どもの行動の背景を理解し、適切に対応することです。
この記事では、こだわりが強い子どもの特徴や原因を解説し、ご家庭でできる具体的な対応方法をお伝えします。子どもの個性を理解し、寄り添うヒントが見つかれば幸いです。
こだわりが強い子どもの特徴とは?

こだわりが強い子どもには、いくつかの共通した行動パターンが見られます。周囲から「頑固」「わがまま」と思われがちですが、本人にとっては安心を得るための大切な行動です。
同じ行動を繰り返す
「いつも通り」へのこだわりは、日常のあらゆる場面で現れます。
【生活習慣のこだわり】
- 朝の準備を必ず同じ順番で進める
- 決まった道順でしか登園・登校できない
- 同じ服やパジャマしか着られない
- 入浴の手順や順番を変えられない
【食事のこだわり】
- 決まったメニューしか食べられない
- 食器の配置や種類が変わると食べられない
- 特定の色や形の食べ物しか受け付けない
【外出時のこだわり】
- 商店街の特定のお店に必ず立ち寄る
- 決まった電車やバスにしか乗れない
- いつもと違うルートで帰れない
現れ方はお子さんによって異なりますが、根底にあるのは「予測できないことへの不安」です。
変化を嫌がる
予定変更や環境の変化に強い抵抗を示すこともあります。
たとえば「今日はおばあちゃんの家に行くよ」と当日伝えるとパニックを起こす、いつもと違うスーパーに行くと落ち着かなくなるなどです。
こうした抵抗は、大きな予定変更だけでなく日常のささいな場面で現れます。食卓の座る位置が変わると食事が進まない、テレビ番組の順番が変わると怒り出すといったケースもあります。
変化そのものが苦手なのではなく、「予測できない変化」に不安を感じているのです。事前に伝えておけば受け入れられることも少なくありません。
特定のものに執着する
擦り切れた古いズボンしか履かない、青い色の食器でないと食事ができない、特定のおもちゃを手放せないこだわりを持つ子がいます。ただ、その背景には本人なりの理由があるようです。
新しい長ズボンが履けないのは「ゆったりした布が肌に触れる感覚が気になる」から、白い食べ物が食べられないのは「色や食感に独自の基準がある」からかもしれません。
大人には気づきにくい感覚でも、子どもにとっては大きな違いです。
なぜこだわりが強くなるのか?

こだわりの強さは、本人の性格や親の育て方の問題ではありません。子どもの脳の特性にもとづいた行動と考えられています。
ポイントは、大きくわけて3つあります。
不安を和らげるため
予測できない状況は、子どもに強い不安を与えます。毎回同じ行動を好むのは、この不安を軽減するための方法です。
ある医師は、こだわりを「自分だけのスリッパ」、偏食を「芋虫やほかの人が食べたガムを食べろと言われているようなもの」とたとえています。
人が履いたスリッパに抵抗を感じるように、子どもにとって「いつもと違う」は耐えがたい感覚なのでしょう。
見通しが持てないため
「これから何が起こるのか」「自分は何をするのか」を把握できない状況は、子どもに強い不安をもたらします。先の予測ができないと、環境の変化に対応しづらくなるためです。
発達に特性のある子どもは、周囲の状況を瞬時に理解したり、気持ちを切り替えたりするのに時間がかかることがあります。
裏を返すと、見通しが持てれば安心感が生まれ、自信をもって行動できるようになります。
感覚の過敏さが影響する
感覚過敏がある子どもは、特定の刺激に普通よりも強く反応します。わかりやすい例が、音です。
一般的な子どもの脳が「音量50のスピーカー」だとしたら、感覚過敏のある子どもは「音量70のスピーカー」のような状態とされます。小さな音も大きく聞こえてしまいます。
また、感覚過敏は音だけではありません。服のタグがチクチクして着られない(触覚)、蛍光灯の光が眩しすぎる(視覚)、特定の食感が苦手で食べられない(味覚)など、さまざまなタイプがあります。
このような不快な刺激を避けるため、感覚過敏がある子どもは「いつも通り」にこだわる傾向があると考えられています。
発達障害とこだわりの関係とは?

こだわりの強さは、発達障害の特徴の一つとして知られています。ですが、それだけで発達障害と判断されることはありません。
自閉スペクトラム症との関係
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、脳の特性により変化への対応や状況の切り替えに時間がかかります。予測できない状況に強い不安を感じ、できるだけ同じ状況を求めるので極端なこだわりや、日常動作への融通の効かない執着として現れるのです。
実際、弘前大学の研究では、5歳児における有病率は約3.22%(クラスに1人程度)と報告されています。子どものこだわりが強い場合は、専門家に相談してみましょう。
参考:弘前大学「【プレスリリース】5歳における自閉スペクトラム症の有病率は推定3%以上であることを解明(医学研究科)」
注意欠如多動症との関係
注意欠如多動症(ADHD)の子どもにも、こだわりのような行動が見られることがあります。
興味のあることに過度に集中する「過集中」により特定の対象から離れられなくなったり、やりたいことを我慢できない「衝動性」により思い通りにならないと激しく抵抗したりするため、ASDのこだわりと似た行動として現れるのです。
ASDとADHDの両方の特性を持つ子どもは少なくありません。行動の背景にある理由を正しく理解した上で、専門家に相談してみましょう。
病気や障害とは限らない
「こだわりが強い=発達障害や病気」ではありません。発達障害の診断には、社会的コミュニケーションの困難や限定的・反復的な行動パターンに加えて、日常生活に重大な支障をきたしている必要があります。
たとえば道順が変わると行動不能になる、こだわりのために学校に行けなくなる、勝ち負けへのこだわりが強すぎて友人と遊べなくなるといった状況です。
このような支障がなく、ほかの発達課題も見られない場合は、病気や発達障害と心配せず、その子の個性として受け止めていきましょう。
家庭でできるこだわりへの対応とは?

こだわりを無理にやめさせようとすると、かえって強くなることがあります。無理矢理の抑制は、不安症状や抑うつなどの二次障害を引き起こすリスクもあるため注意が必要です。
見通しを伝えて安心させる
「これから何が起こるか」を事前に伝えることで、子どもの不安を軽減できます。ただし、言葉だけでは伝わりにくい場面もあるでしょう。
たとえば「あと5分したら片付けね」と伝えるとき、同時にタイマーを見せてみてください。抽象的な「5分」が目に見える形になることで、子どもは納得しやすくなります。時計やイラストなど「見える道具」を組み合わせるのがポイントです。
予定の変更がある場合は、できるだけ早めに伝えましょう。
「水曜日はおばあちゃんの家に行くよ」と1週間前から繰り返し説明します。このとき、おばあちゃんの家の写真を見せると、子どもは行き先をイメージしやすくなり、心の準備ができます。
いずれもすぐに効果が出るとは限りません。しかし、療育の現場では、事前説明と「できたときの褒め」を続けた結果、年長頃には気持ちを切り替えやすくなった事例が報告されています。
焦らず続けることが大切です。
代わりの選択肢を用意する
「これはダメ」と否定するのではなく、代わりの選択肢を提示してみてください。「赤いシャツと青いシャツ、どっちにする?」と2択に絞ることで、子ども自身が選ぶ経験を積めます。
ただし、選択肢が多すぎると混乱を招きます。まずは2つの選択肢から始め、徐々に幅を広げていきましょう。
選択肢を提示するときは、どちらを選んでも問題ない内容にしておくことがポイントです。「本当はこっちを選んでほしい」という気持ちがあると、子どもは敏感に察知します。
子どもが自分で決められたときは、「選べてすごいね」と具体的に褒めてください。「自分で決められた」という成功体験が、自己肯定感を育てます。
少しずつ変化に慣れさせる
急激な変更ではなく、段階的に変化に慣れさせることが大切です。順番へのこだわりが強い子どもの場合、「明日は少し変えてみよう」と1週間前から予告してみましょう。
教えるときのポイントは、スモールステップです。
具体的には、いきなり「毎日違う道で帰る」のではなく、「週に1回だけ違う道を試す」から始めます。その小さな「できた!」を積み重ねることが、子どもの自信につながります。
実際、毎日同じ道でないと泣いていた子が練習を半年続けた結果、別の道を歩けるようになった報告があります。
時間はかかりますが、着実に成長しているのです。
こだわりを強みに変えるには?

こだわりの強さは、適切な環境で育てると大きな才能に変わることがあります。「弱点」ではなく「強み」として捉える視点が大切です。
好きなことを伸ばす視点を持つ
近年、「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という考え方が広まっています。これは脳や神経の違いを障害ではなく、人それぞれの多様性として捉える視点です。
その視点に立つと、こだわりの強さは「弱点」ではなく「強み」になり得ます。細部へのこだわりは品質を守る力に、特定分野への深い興味は専門性を高める土台になります。
実際に、幼少期から電車に強いこだわりを持っていた子どもが、成長後に鉄道会社で時刻表の編成を担当しているケースもあります。「変わったこだわり」と思われていたものが、社会で求められるスキルになったのです。
子どもの得意なことを見つけ、伸ばしていく。その姿勢が将来の可能性を広げます。
専門機関に相談する
強みに変える方法で悩んでいるなら、専門機関への相談をおすすめします。
たとえば、発達障害者支援センターは、都道府県・指定都市に設置されており、診断の有無を問わず無料で相談できます。
市区町村の福祉課や子育て支援課でも相談を受け付けています。「様子を見よう」と迷うよりも、まずは相談してみましょう。それが子どもを支える第一歩になります。
なお、相談したからといって、すぐに診断や療育が始まるわけではありません。「うちの子に合った関わり方を知りたい」という気持ちで気軽に足を運んでみてください。
よくある質問
最後に、こだわりの強さに関するよくある質問と回答をまとめました。
大人になっても続きますか?
こだわりは成長とともに変化していきます。幼少期には数十個あったこだわりが、成長するにつれて数個に減っていくことも珍しくありません。
重要なのは、こだわり自体がなくなるのではなく、こだわりと付き合う「柔軟性」が育つ点です。幼い頃は「絶対にこうでなければダメ」だったものが、成長とともに「できればこうがいい」という程度に変わり、大人になると代替案を受け入れられるようになります。
大人に向けて成長とともに、こだわりが崩れてもパニックを起こさず、状況に応じて対応できる力が育っていくのです。
個性を活かして生きるには?
こだわりの強さは、活かし方次第で大きな強みになります。細部へのこだわりは丁寧で高品質な仕事を生み、特定分野への深い興味は専門家として活躍する力になるためです。
できるだけ早く子どもの特性を理解し、それが活きる環境を整えてあげましょう。「障害を治す」のではなく、「個性を理解して伸ばす」という視点を持ってみてください。
【まとめ】こだわりの強さに寄り添おう
こだわりが強い子どもへの対応は、「見通しを伝える」「代わりの選択肢を用意する」「少しずつ変化に慣れさせる」の3つが基本です。すぐに効果が出なくても、焦らず続けることで、子どもは柔軟性を身につけていきます。
「家庭での対応だけでは難しい」と感じたら、早めに専門機関に相談することをおすすめします。親御さんが、ひとりで抱え込む必要はありません。
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