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【癇癪とは?】子どもと大人の癇癪もちの特徴と原因、対応について解説

2025.09.27
  • 発達障害
  • 支援方法・家庭での過ごし方

「些細なことで突然怒り出す」「思い通りにならないと手がつけられなくなる」など、子どもの癇癪(かんしゃく)に悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。
また、大人でも感情のコントロールが難しく、癇癪を起こす人に周りが困るケースもあります。

では「癇癪」とは具体的にどのような状態を言い、癇癪もちの人にはどのような特徴があるのでしょうか?
また、癇癪を起こす背景にはどのような原因があるのでしょうか?

そこで本記事では、癇癪持ちの特徴や子どもと大人の癇癪の違い、癇癪を起こす原因やその対応について解説していきます。

癇癪(かんしゃく)とは?癇癪を起こすとはどのような状態?

癇癪を起こす子どもの様子

癇癪とは、怒りや悲しみなどの強い感情をうまくコントロールできず、爆発的に感情が表に出てしまう状態のことをいいます。

「癇癪」というと、小さい子どもが自分の思い通りにならない時、ひっくり返り、泣いて怒る様子を思い浮かべるかもしれません。

癇癪を起こしている時は、突然「泣き叫ぶ」「物を投げる」「地団駄を踏む」「暴言を吐く」などの様子が見られ、感情を抑えられない状態になっています。

小さい子どもの場合は、感情の発達や言葉での表現が未熟なため、癇癪を起こすことは珍しくありません。

多くの場合、イヤイヤ期の成長過程で見られる自然な現象で、1歳前後から始まり、2〜4歳にピークを迎え、5歳頃には落ち着く傾向があります。

これは単なるわがままではなく、子どもが自身の感情や欲求をうまく伝えられず、混乱してしまうような状態です。

しかし、子どもが小学生以上になっても、大人になっても癇癪が頻繁に見られる場合は、性格や心理的要因、発達障害などの背景があることも考えられます。

では、癇癪を起こしやすい、「癇癪持ち」の人にはどのような特徴があるのでしょうか?

ここでは、癇癪を起こしやすい、「癇癪持ち」の人の一般的な特徴について詳しく解説し、子どもと大人それぞれの癇癪の違いについても解説していきます。

癇癪(かんしゃく)持ちの人の特徴

癇癪持ちの人には、子どもも大人も共通して、以下のような特徴が見られることがあります。

●​感情のコントロールが難しい
●些細なことで強い怒りを感じてしまう​
●ストレスへの耐性が低い
●衝動的な行動をとることが多い
●他者とのトラブルが頻繁に起こる
●自己中心的な思考傾向がある

子どもと大人の癇癪の違い

​子どもと大人の癇癪(かんしゃく)には、それぞれ特徴があり、周囲の捉え方も異なります。以下に、その違いをまとめました。​

子どもと大人の癇癪の違い 子どもの癇癪 大人の癇癪
特徴 感情のコントロールが未熟で、欲求不満や環境の変化に敏感に反応します。発達障害(ASDやADHD)を持つ子どもは、感情の起伏がより激しい場合があります。 感情のコントロールが難しく、怒りを抑制しにいため、衝動的な行動が見られることがあります。 ​発達障害が背景にある場合、感情のコントロールが特性上困難なことがあります。
捉え方 発達段階や成長過程の一部として理解されることが多く、保護者や教育者は個々の発達や成長に合わせて対応します。​発達障害の可能性がある場合は、専門的な支援や適切な対応が必要です。 大人としての社会的な期待や見地から、自己管理ができていないと見なされ、批判的に受け取られることがあります。​発達障害が原因の場合、職場や家庭での理解と適切なサポートが必要です。 ​


大人の癇癪の特徴

大人の癇癪は、先に記載したように、発達や成長過程の途中と見られる子どもの癇癪と異なり、自己管理ができていないと見なされる傾向にあります。
では、大人の癇癪は、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。

周りの状況や他の人の気持ちに気づきにくい

ささいなことがきっかけで、自分の怒りや悲しみなどの感情でいっぱいになり、周りの状況が見えなくなります。
癇癪が起きている場面では、他の人の気持ちなど客観的に考えることが難しい状況になり、自分の思考が正しいと自己中心的な思考に偏りがちです。

我慢するべき場面でも、感情を抑えられない

落ち着いて話し合うなど、冷静な対応を求められる場面であっても、怒りや悲しみなどの感情のコントロールが難しくなります。
暴言を吐いたり、ものに当たるなど、衝動的な行動が見られることもあります。

癇癪を起こした後に落ち込むことがある

癇癪が落ち着いてから振り返り、後悔したり落ち込んだりすることがあります。
自己肯定感が低いことが背景にあり、癇癪を起こすことにより、人間関係の不和につながることもあります。

大人の癇癪

大人の癇癪はわがままな人と見られてしまうこともありますが、子どもの癇癪は2歳ごろのイヤイヤ期が大きく関わっています。
次に2歳前後のイヤイヤ期の特徴を具体的に見ていきます。

2歳児のイヤイヤ期の特徴

2歳前後は「イヤイヤ期」と呼ばれる時期で、自我が芽生え自己主張が強くなる特徴があります。
これは発達の大切な一歩であり、2〜3歳頃がイヤイヤ期のピークとされています。

この時期、子どもは「自分でしたい」「○○したくない」といった感情を声に出して表現する練習をしており、それが癇癪という形で表れることもしばしばあります。

2歳のイヤイヤ期の子どもは、具体的に次のような状況にあります。

言葉が未発達な時期に起こるもどかしさがある

2歳児は300〜500語程度の語彙があるとされていますが、自分が伝えたい言葉を十分に表現できず、もどかしい気持ちを抱えることが多くみられます。

自分の気持ちをうまく言葉で伝えられず、イライラや怒りになってしまうのです。
子どものもどかしい気持ちに寄り添い、大人が代弁することで、「わかってもらえた」という安心感が生まれ、落ち着きやすくなります 。

自己主張の芽生えと自分でやりたい気持ちがある

2歳児は「自分でできる!」という自己確立の芽生えが強くなり、自ら選びたい・やりたいと思う気持ちが高まります。

しかし、身体能力や言葉での表現の未熟さから思い通りに動けず、イライラした気持ちを癇癪で表現することがあります。
この時期は、大人が「これはいいけど、それは危ないからお母さんがするね」と線引きをしながら、子どもの“自分でやりたい”気持ちに寄り添って応援してあげることが大切です。

心身の発達の未熟さから、感情が抑えられないことがある

2歳児の癇癪は未成熟な脳(前頭前野)による感情調整の難しさから生じます。

例えば、疲れや空腹、眠気などで体が限界を迎えると、ちょっとしたことで感情が爆発しやすくなります。
これらは、体力がまだついておらず、このようなストレスへの対処もうまくできないことから生じます。
子どもの成長や発達ともに、このような感情の爆発は少なくなりますが、イヤイヤ期の時期には子どもの状況を理解し、大人が環境を整え、見守ることも必要です。
大人の理解が、親子の信頼関係の構築や子どもの安心感につながります。

癇癪を落ち着かせる関わり

このように、子どもと大人の癇癪には特徴や周囲の捉え方に違いがあります。

子どもの癇癪は成長や発達とともに落ち着いていくこともありますが、小学生以上になっても癇癪が続く場合は発達障害が隠れている場合もあるので注意が必要です。

では、小学生の子どもの癇癪にはどのような特徴があるのでしょうか。

小学生の癇癪の特徴

小学生の癇癪は、乳幼児期に比べて複雑化し、様々な要因が絡み合って起こります。
例えば、小学生の癇癪には以下のような特徴がみられます。

感情のコントロールが難しい

小学生になると思考力や言語能力が発達する一方で、自分の思い通りにならない状況での気持ちの整理や感情のコントロールの困難さが目立つ

こだわりが強い

小学校で集団のルールを守る場面が増え、自分のルールや習慣が崩されることに対して敏感に反応し、こだわりの強さが見られる

暗黙のルールや人の気持ちが理解しにくい

小学校生活や友達との関わりの中で、暗黙のルールを守ることや他者の気持ちを理解することを求められるが、理解できないことがある

ストレスを抱えやすい

小学校での集団生活や子ども同士の社会の中で、感覚の過敏さや不安を感じやすいなど、ストレスをためやすい傾向にある

このような特徴は発達障害がある子どもによく見られますが、癇癪があることが必ずしも、発達障害に結びつくわけでありません。
しかし、癇癪を起こす頻度や程度がひどい場合や気になる場合は、専門機関などに相談してみるとよいでしょう。

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癇癪を起こす原因

癇癪は、単なる「わがまま」や「甘え」ではなく、さまざまな要因や環境が絡み合って起こります。
例えば、生活習慣の乱れや欲求不満、ストレスなどが引き金となることがあります。
また、環境の変化やコミュニケーションの困難さも、癇癪の要因となることもあるでしょう。

そこで、癇癪を起こす主な原因を「生活習慣」「心理的要因」「環境要因」「コミュニケーションの問題」の視点から解説していきます。

生活習慣の問題

基本的な生活習慣の睡眠や食事のリズムが乱れると、情緒の安定が損なわれ、癇癪を起こしやすくなります。​

​たとえば、睡眠不足や不規則な食事は、集中力や気分に影響を与え、イライラしやすい状態を招くことがあります。規則正しい生活リズムは、心身の健康を支える基盤です。​そのため、適切な睡眠時間の確保やバランスの良い食事、そして適度な運動を取り入れることが重要です。​これらの生活習慣の改善は、子どもにとって情緒の安定に繋がり、癇癪の頻度を減少させる効果が期待できます。​

欲求不満など心理的な問題

子どもは自分の欲求や感情を上手に表現することが難しい場合があり、その結果、欲求不満やストレスが溜まり、癇癪として現れることがあります。​

たとえば、自分の思い通りにならない状況や、期待していたことが叶わない場合、強いフラストレーションを感じ、癇癪が起こりやすくなる場合があります。
また、自己肯定感の低さや不安感も、癇癪の一つの原因です。
子どもの場合、周囲の大人は、子どもが自分の気持ちを言葉で表現できるように子どもの感情に寄り添い、共感する姿勢を持つことが大切です。

環境の変化など外的な要因の問題

普段の生活環境や周囲の外的状況の変化も、癇癪の原因となることがあります。

​たとえば、家庭内の緊張状態や人間関係の不和、友人関係のトラブルなどが挙げられます。​
また、引越しなどの生活環境の変化や、子どもにとっては転校や進級などの学校の環境の変化、大人は転勤や転職などの職場の変化などが大きなストレスとなることがあります。
子どもの場合、周りの大人が子どもの話によく耳を傾け、感じているストレスや不安を理解し、適切なサポートをしてあげましょう。

勉強のイライラから起こる癇癪

コミュニケーションの問題

周囲との人間関係がうまくいかない時や、コミュニケーションが円滑に進まない時に、フラストレーションが溜まり、癇癪の原因になることがあります。

​特に、言葉の発達が未熟な幼児期や、発達障害を持つ子どもは、意思疎通や言葉での表現が難しい場合が多くみられます。
このような場合、非言語的なサインや行動を注意深く観察し、代わりに言語化していくことで、子どもが気持ちを受け止めてもらえたという安心感につながります。
また、絵カードやジェスチャーなど、個々の子どもに合わせたコミュニケーションの利用も、子どもが自分の気持ちを表現しやすくなります。​

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癇癪を起こす子どもへの対応

では、子どもが癇癪を起こした時に、どのように対応するとよいか悩んだことはありませんか。
つい叱ってしまったり、なだめようとしてもうまくいかなかったこともあるでしょう。
子どもが癇癪を起こした時の対応には「避けた方がよいこと」と「効果的な関わり方」があります。

ここでは、癇癪の最中に避けたい対応や、落ち着いて関わるためのポイント、癇癪がおさまった後に大切な声かけなど、具体的な接し方のヒントをご紹介します。

子どもが癇癪を起こした時のNG対応

癇癪が起きているとき、ついやってしまいがちな対応には注意が必要です。
次のような言動は、かえって子どもの感情を悪化させる可能性があります。

頭ごなしに叱る

「ほら、言ったでしょう!」などと叱ってしまうと、子どもは余計に混乱し癇癪が長引くことがあります。

感情的に叱責する

大人が声を荒げてしまうと、子どもは恐怖や混乱を感じ、落ち着くまでに時間がかかり、癇癪の引き金にもなります。

無視して放置する

全く反応せず放置すると、「このままでも大丈夫」と誤認させてしまう場合があります。

ご褒美・罰でコントロールしようとする

「泣けばお菓子がもらえる」と学ばせると、癇癪が逆に習慣化してしまう恐れがあります。

癇癪時は、子どもの安全を第一にし、無理に感情を抑えようとせず、ゆっくりと見守る姿勢が大切です。

子どもの癇癪中の接し方のポイント

では、どのように接していけばよいのでしょうか。
癇癪中は、子どもの心の混乱を理解しつつも、冷静で落ち着いた対応が求められます。
次のようなポイントを意識するとよいでしょう。

まずは安全を確保する

物や角から距離を置き、頭を打たせないようクッションなどで守ってあげましょう。

共感的に代弁する

「悲しかったね」「欲しかったんだね」と気持ちを代弁すると、「分かってもらえた」と感じ、心が落ち着きやすくなります。

選択肢を提示する

「あと10数えてから走る?」など具体的な選択肢を与えることで、子どもが安心して行動できます。

大人が冷静に対応することで、子ども自身も感情を鎮めるヒントを得やすくなります。

子どもの癇癪が収まったあとにするとよい対応

癇癪がおさまるタイミングは、子どもの「自分で落ち着いた」という達成感を支える大切な時間です。
以下のような対応や声かけを意識しましょう。

すぐに共感して褒める

「泣き止んでえらいね」「よく待てたね」と具体的に声をかけることで、“できた”体験を積み重ねましょう。

長い説教は避ける

長いお説教はネガティブ感情を引きずらせ、再び癇癪のきっかけになる可能性があります。

代替行動を教える

「嫌な気持ちになった時には○○しようね」と代わりの表現や行動を提示するとよいでしょう。

このように、癇癪後は「できたこと」に目を向け、子どもと信頼関係を深める機会にすることが大切です。

癇癪のあとに子どもに言い聞かせる

癇癪を減らすためにできる工夫

子どもの癇癪に対し「どうすれば癇癪が少なくなるのだろう…」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

癇癪をゼロにすることは難しいですが、日々の暮らしの中でちょっとした工夫を重ねることで、気持ちを落ち着かせる環境をつくることができます。

ここでは、子どもから大人まで使える、癇癪を減らすためにできる工夫をご紹介していきます。

予測できるスケジュールをつくる

癇癪は“突然の変化”や“見通しのなさ”が原因となることがあります。
一日の流れを可視化し、不安を軽減し、安心感を持てるようにしましょう。

視覚的スケジュール

絵カードやボードに「起床」「ご飯」「お風呂」などのスケジュールを順序にして見える化することで、「次に何をするか」を理解しやすくなります。その結果、予想外の変更による不安や癇癪が減る傾向があります。

「消し込み」機能

終わったスケジュールを自分で取り外して「できた」という体験を積むことで、自主性と自信を育みます。

予定変更の前に知らせてもらう

予定の変更が事前にわかった場合は、早めに知らせてもらい、心づもりができるようにするだけでも余裕が生まれます。

成功体験を増やす環境調整

自分でできる経験を増やすことで、自己肯定感を育て、癇癪を減らします。次のようなことを意識してみましょう。

小さな成功を見逃さず褒める

「○○できたね」と具体的に褒めることが効果的です。また、目標をスモールステップに設定するとよいでしょう。

環境を安心できるものに整える

過剰な刺激は癇癪の引き金になることがあるため、気になる刺激を減らし、安心できる環境を整えましょう。

感情のコントロール力を育てる

自分の感情を出すこと自体は悪いことではなく、自分を表現するために必要なことです。
感情を抑えるのではなく、感情をコントロールでできる力を身につけていくことが大切です。
子どもの場合は周囲の大人が関わりかける中で育てていくとよいでしょう。
大人の場合は、次のようなことを意識して行っていくとよいでしょう。

感情を言葉にする

「○○だったんだね」と感情を周りの人から言葉にしてもらうことで、自分の感情に気が付くことができます。これを「感情ラベリング」と呼び、自己理解の第一歩となります。

客観的に見つめる癖を促す

「このような時に他の人はどう思うか」など、視点を変えて考える練習をすることで、客観的に見る癖や、気持ちを整理する力が育ちます。

簡単な対処法を教える

深呼吸をしたり、刺激のある環境から離れるなど、簡単な練習を日常に取り入れることで、気持ちの揺れを自分で鎮める習慣につながります。

まとめ:癇癪の原因を知り、個々に合わせた理解と対応を

癇癪とは、怒りや悲しみなど強い感情を抑えきれず爆発的に表出する状態を言います。
特に2歳ごろのイヤイヤ期の子どもは、言葉で感情をうまく表現できないことからよく見られますが、小学生以上の子どもや、大人でも見られる場合は心理的・発達的背景が関係していることもあります。

癇癪は必ずしも発達障害によるものとは限りません。
また、癇癪は「わがまま」で起こるのではなく、発達・心理・環境要因が複雑に絡んで起こります。
癇癪に対する適切な理解と対応で、心の安定や感情をコントロール力を育てることができます。

癇癪の頻度が多い時や、小学生以上になってもなかなか改善されないなど気になる時は、専門機関に相談してもよいでしょう。

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