書き順を間違えやすい漢字について

小学生の子どもが、漢字の書き順を何度も間違えてしまう。「どうしてこの子は書き順を覚えられないのだろう」「教え方が悪いのかな」「学校の授業についていけていないのかもしれない」。子育てに熱心な保護者の方ほど、そのような不安を感じてしまうことは少なくありません。
何度注意しても直らないと、つい叱ってしまい、子どもも漢字学習そのものに苦手意識を持ってしまう悪循環に陥ることもあります。
しかし、書き順を間違えやすいのには、本人のやる気や努力不足ではない、いくつかの理由が隠れているかもしれません。
この記事では、小学生が漢字の書き順を間違えやすい理由を深掘りします。また、意外と大人も間違えている漢字クイズや、書き順の土台となるひらがなとの関連、家庭でできる覚え方のコツまで詳しく解説します。
小学生が書き順を間違えやすい理由とは

子どもが書き順を間違えるのには、いくつかの理由が考えられます。その理由を知ることで、家庭でのサポートのヒントが見つかるかもしれません。
そもそも漢字の書き順はなぜ大切か
まず、なぜ書き順が大切なのでしょうか。 書き順は、その漢字を「最も合理的で、美しく、早く書ける順番」として、長年の歴史の中で決められてきたルールです。
1.字形が整う(美しく書ける)
正しい書き順で書くことは、漢字の骨組み(バランス)を意識することにつながります。自然と字形が整い、誰が見ても読みやすい文字になります。
2.早く書ける
書き順は、筆記具(筆や鉛筆)の動きが最もスムーズになるように考えられています。流れを止めずに書けるため、結果として早く書くことができます。
3.覚える助けになる
書き順には一定のルール(原則)があります。そのルールを覚えてしまえば、初めて習う漢字でも「おそらくこう書くだろう」と推測ができるようになり、記憶の助けになります。
4.辞書で引くときに必要
漢字辞典の多くは「総画数」や「部首」で引きますが、部首以外の部分の画数を正しく数えるためにも、書き順の知識は重要です。
このように、書き順は漢字学習の土台となる大切な要素です。
ひらがなの運筆が基礎
意外かもしれませんが、漢字の書き順の間違いは、その前段階であるひらがなの運筆(鉛筆の運び方)が正しく身についていないことに起因する場合があります。
たとえば、ひらがなの「あ」や「め」、「ぬ」や「ね」など、複雑な曲線や「むすび」の動きがあります。これらの書き順や「とめ・はね・はらい」が曖昧なままひらがなを覚えると、そのクセが漢字学習にも影響します。
漢字は、直線だけでなく曲線や「はらい」「はね」の集合体です。ひらがなの段階で正しい鉛筆の運び方を身につけていないと、漢字を書く際も自己流の書きやすい順序で書いてしまい、結果として間違った書き順が定着してしまうのです。
漢字のルールを知らない
漢字の書き順には、いくつかの基本的なルール(原則)があります。
・上から下へ(例:「三」)
・左から右へ(例:「川」)
・横画と縦画が交差するときは、横画が先(例:「十」)
・「つきぬける」縦画や横画は、最後に書く(例:「中」「書」)
・「そとがまえ」と「なか」がある場合は、「そとがまえ」を先に書く(例:「国」「回」)
小学校低学年では、これらのルールを理屈で教わるというよりは、一文字ずつ書き順を丸ごと覚えることが多いです。そのため、ルールを意識しないまま、なんとなく書いていると、新しい漢字が出てくるたびに、その場限りの自己流の順序で書いてしまうのです。
視覚的な覚え方をしている
子ども、とくに小学生の低学年は、文字を意味を持つ記号としてではなく、形(絵)として視覚的に捉える傾向があります。
たとえば「木」という漢字を、一本の縦棒と、一本の横棒、左右の「はらい」が集まった「絵」として記憶します。 この場合、書き順(どの線から書くか)は重要ではなく、「それらしい形」が描ければ良いと認識してしまいます。
この「形(絵)としての丸暗記」がクセになると、画数が増えたり、似たパーツを持つ漢字(例:「右」と「左」、「聞」と「間」)が出てきたりしたときに、混乱して間違った書き順で書いてしまうのです。
大人も間違える書き順。間違えやすい漢字クイズ

書き順を間違えているのは、小学生だけではありません。実は大人も「ずっとこの書き順だと思っていた」と、間違ったまま覚えている漢字がたくさんあります。 ここでいくつかクイズとして紹介します。あなたは正しく書けますか。
書き順クイズあなたは正しく書けますか
第1問:「右」と「左」1画目はどれだと思いますか?
・「右」の1画目:左上の「ノ(はらい)」
・「左」の1画目:横線
第2問:「必」 全部で5画です。1画目はどこから書きますか。
・1画目:真ん中の「点」
第3問:「上」「下」 1画目はどちらでしょう。
・「上」の1画目:縦棒
・「下」の1画目:横棒
「上」は縦から、「下」は横から書き始めます。
第4問:「馬」の漢字の1画目はどこでしょう。
・1画目:縦線が1画目です。上の横線と間違える方が多いです。
なぜ大人も間違えやすいのか
大人が書き順を間違えやすい最大の理由は、子どものころに間違って覚えたまま、誰も指摘してくれなかったからです。 一度、間違った書き順で書くことに慣れてしまうと、それが自分の正しい書き順として定着してしまいます。
また、現代ではPCやスマートフォンの普及により、大人が手で漢字を書く機会そのものが激減しました。 変換すれば漢字が出てくるため、書き順を意識することがなくなりました。その結果、子どものころに曖昧に覚えていた部分が、さらに曖昧になっているのです。
大人も間違えるのですから、小学生が間違えるのはある意味当然とも言えます。大切なのは、間違いを責めることではなく、正しい書き順を楽しく覚える工夫をすることです。
家庭でできる正しい書き順を覚えるコツ

書き順の間違いに気づいたら、早めに修正してあげたいものです。しかし、ただ「違う」と指摘するだけでは、子どもの意欲を削いでしまいます。家庭で楽しく取り組めるコツを紹介します。
まずはひらがなの書き順を親子で確認
前述の通り、漢字の前にひらがなの運筆が大切です。 まずは、ひらがなの五十音の書き順を、親子で一緒になぞってみてください。とくに「あ」「お」「む」「す」「ね」「れ」など、曲線がある文字の書き順が曖昧になっていないか確認しましょう。
ひらがなのドリルやアプリを使い、クイズ感覚で復習するのもおすすめです。
漢字の成り立ちや部首で覚える
漢字を「丸暗記」するのではなく、意味や物語と関連づけて覚える方法です。
たとえば「休」という漢字は、「人(にんべん)」が「木」に寄りかかって「休んでいる」様子からできています。だから「にんべん」を先に書いて、「木」を書く、というように伝えます。
また、「さんずい(海、池、活など)」や「きへん(林、森、校など)」のように、同じ部首(パーツ)を持つ漢字を集めて、「このパーツ(部首)の書き順はいつもこうだね」とルールを見つけるのも効果的です。
身体を使って覚える
頭だけで覚えようとすると、子どもはすぐに飽きてしまいます。身体全体を使って、感覚的に覚える方法を取り入れましょう。
おすすめは「空書き(そらがき)」です。 鉛筆を持たず、指を鉛筆に見立てて、空中に大きく正しい書き順で漢字を書きます。 保護者の方がお手本を見せ、「いち、にい、さん…」と画数を声に出しながら一緒に書くと、より効果的です。腕全体を大きく動かすことで、書き順が身体の動きとして記憶に定着しやすくなります。
また、保護者の方が大きな文字で書いたお手本を、子どもが指や色鉛筆でなぞり書きをするのも良い方法です。
一度にたくさん覚えずにスモールステップを意識
書き順を間違えやすいからといって、一度にたくさんの漢字を練習させようとするのは逆効果です。 子どもが集中できる時間は長くありません。
今日はこの漢字だけと決め、その代わり、正しい書き順で書けるまで空書きやなぞり書きを丁寧に行います。
そして、正しく書けたら、たくさん褒めてあげてください。 「書き順、バッチリだね」「キレイに書けた」という成功体験が、次の学習意欲につながります。
書き順の間違いが続く小学生への支援

家庭でさまざまな工夫をしても、書き順の間違いがなかなか直らない。あるいは、文字そのものを覚えるのが極端に苦手。そのような場合、背景に別の要因が隠れている可能性もあります。
家庭学習だけでは難しいケース
以下のような様子が見られる場合は、家庭学習だけで解決しようとせず、専門家への相談を検討することも大切です。
・正しい書き順を何度教えても、すぐに元の書き順に戻ってしまう
・文字の形そのものを認識するのが苦手そう(例:「め」と「ぬ」をよく間違える)
・鏡文字(左右反転した文字)が小学生になっても続く
・漢字だけでなく、ひらがなの読み書きにも時間がかかる
・文章を読むと、行を飛ばしたり、同じ場所を何度も読んだりする
ディスレクシアの可能性
上記のような困難さが著しい場合、ディスレクシア(読み書き障害)という学習障害(LD)の一種である可能性も考えられます。
読み書き障害は、知的発達に遅れはないにもかかわらず、文字の読み書きに限定して困難が生じる発達障害のひとつです。 これは、本人の努力不足によるものではなく、脳の特性によるものです。
もし「うちの子は、読み書きだけが極端に苦手かもしれない」と感じたら、一人で抱え込まず、学校の先生や、自治体の相談窓口、専門の医療機関に相談してみてください。
発達障害や発達遅れの子の学習サポート
ディスレクシア(読み書き障害)のほか、ADHD(注意欠如多動症)の不注意特性により、文字の学習(書き順を含む)につまずきが見られるケースもあります。大切なのは、その子の特性に合わせたサポートを行うことです。
集団での一斉指導では、なかなかその子のペースに合わせることが難しい場合もあります。 そのようなときは、一人ひとりの発達段階や認知特性に合わせて、専門的な指導が受けられる個別支援塾などの利用もひとつの方法です。
ステラ個別支援塾では、子どものなぜできないのかの背景をアセスメント(評価)し、その子に合った学習方法をスモールステップで提供しています。
小学生が書き順を間違えやすい理由についてのまとめ
小学生が漢字の書き順を間違えやすい背景には、ひらがなの運筆の定着不足や、漢字のルールを知らないこと、形を丸暗記していることが理由として考えられます。
書き順は、大人も意外と間違えているものです。クイズにするなど、家庭で楽しく復習することが大切です。 「空書き」や「なぞり書き」など、身体を使って覚える方法も効果的です。
もし、さまざまな工夫をしても書き順の間違いが続いたり、文字学習そのものに強い困難さが見られたりする場合は、読み書き障害(ディスレクシア)など、発達特性の可能性も考えられます。
家庭だけで抱え込まず、学校や専門機関と連携し、その子に合ったサポート方法を見つけていくことが重要です。
ステラ個別支援塾では、一人ひとりの子どもに合わせたオーダーメイドの授業で、学習をサポートします。
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