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遺伝とADHDの関係は?父親や母親から子どもに遺伝する確率

2026.02.14
  • 発達障害
  • ADHD(注意欠如多動性障害)
  • 支援方法・家庭での過ごし方

ADHDは遺伝するのか?ADHDと遺伝の関係性に不安を感じている方へ

自身がADHD傾向にあるとき、子育てでわが子の落ち着きのなさや不注意に直面すると、自分の育て方や遺伝のせいで苦労をさせているのではないかと自責の念を抱く保護者の方は少なくありません。周囲の子どもたちと馴染めず、興味の赴くままに行動してしまうわが子の姿を見て、孤独を感じることもあるでしょう。

しかし、ADHD(注意欠如多動症)は、親の愛情不足やしつけといった後天的な理由で生じるものではありません。たとえ遺伝的要素が関係していても、それは身長や目の色と同じく、生まれつき備わった脳のタイプにすぎません。この記事では、最新の科学的データに基づいた遺伝の確率を解説し、兄弟での特性の違いや、状況を改善していくための具体的な向き合い方を説明します。

父親や母親から子どもへ遺伝する確率

ADHDは個人の努力やしつけの問題ではないということを、ADHDと遺伝の関係からみていきましょう。

研究データから見るADHDの遺伝について

最新の行動遺伝学などのデータによれば、ADHDの遺伝率は約70〜80%と推定されています。これは親から子が発症する確率ではなく、集団内における個人差のうち、どの程度が遺伝的要因によるものかという統計的指標です。

ADHDは特定の単一遺伝子で決まるものではなく、微細な遺伝的変異が重なり合う多因子遺伝という概念が主流であり、全人類が持つ連続的なスペクトラムの延長線上にあるものです。遺伝の確率を不運と捉えるのではなく、多様な性質のひとつと捉え直すことが科学的にも妥当です。

父親や母親が特性を持っている場合に子どもに現れる傾向

親のどちらかがADHDである場合、その子どもに特性が現れる確率は約30〜50%程度とされます。一方で、残りの50〜70%の子どもには診断レベルの特性が現れないというデータもあります。たとえ特性を引き継いだとしても、親と全く同じ現れ方をすることは稀です。

父親は多動性が目立っても、子どもには不注意が強く出るといったように、現れ方は人それぞれです。親自身に特性があることは、過去の葛藤や工夫を共有し、子どもの最大の理解者になれるという大きな強みにもなり得ます。

遺伝だけで決まらない理由と生活環境の相互作用

ADHDの特性が個性に留まるか、障害として現れるかは、遺伝的素因だけで決まりません。環境や人間関係といった環境要因が複雑に絡み合っています。例えば、過集中という特性は、興味を追求できる自由な環境では才能となりますが、規律の厳しい環境では問題行動と見なされるかもしれません。

遺伝という設計図があっても、どのように現れるかは周囲の理解や適切な道具の使用、心理的安全基地の有無で変わります。早期の環境調整を行うことで、神経回路の発達を促し、生活上の困難さを最小限に抑えることが可能とされています。

兄弟でADHDの特性の出方に違いがある理由

同じ環境で育っているのに、兄弟で特性が大きく違うことに戸惑う声は非常に多く聞かれます。

兄弟でADHDの特性が重なる確率

兄弟のひとりがADHDである場合、もうひとりがADHDになる確率は約25〜35%です。一般集団より高い数値ですが、約3分の2以上の兄弟には特性が重ならないという点に注目すべきです。

同じ環境で育ち、半分ずつの遺伝子を共有していても、特性が一致しないことの方が多いのです。この事実は、育て方がADHDの直接的な原因ではないことを改めて裏付けています。

同じ親から生まれても得意や不得意が異なる理由

兄弟で差が出る最大の理由は、遺伝子の組み合わせが受精の瞬間に決まるランダムなパズルだからです。加えて、脳の発達における感覚の過敏さや報酬への反応も一人ひとり異なります。

さらに心理的側面として、兄弟は無意識に役割を分担しようとすることがあります。一方が活発なら一方は静かに振る舞うということもあるのです。兄弟を個別の背景を持つ存在として見ることが大切です。

ADHDとASDが兄弟で分かれるケース

最近の研究では、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)には遺伝的背景において共通部分が多いことが判明しています。そのため、家族のなかで兄はADHD、妹はASDといった異なる診断名がつくことは珍しくありません。ADHDの子には視覚的な管理、ASDの子には事前の予告といったように、個別に適切な対応をしていく姿勢が家族全体の安定に繋がります。

遺伝を気にしすぎるよりも大切な脳の特性の理解

原因に悩み続けるより、子どもの脳がどのような仕組みで世界を捉えているのかを理解する方が解決の近道となります。

やる気スイッチや実行機能の働き方の違い

ADHDの脳内では、自分をコントロールする実行機能に独特なスタイルが見られます。特に脳の報酬系という仕組みに時間的遅延が起きやすく、将来の報酬を待つことが苦手です。今すぐ得られる楽しい刺激に強く反応してしまうため、宿題を後回しにするといった行動に繋がります。本人のやる気の問題ではなく、脳のやる気スイッチが入る条件が周囲と異なっているだけなのです。

感覚統合の視点から見る落ち着きなさの理由

じっとしていられない行動の背景には、感覚を脳内で整理する感覚統合の働きが関係しています。感覚の交通整理がうまくいかず、周囲の音が大きく聞こえすぎたり、逆に身体感覚を確認しようと激しく動いたりする子がいます。

外からは落ち着きがないように見えても、本人にとっては過剰な情報を整理したり足りない刺激を補おうとしたりする必死な適応行動である場合が多いのです。例えば、バランスボールを椅子の代わりに使ったり、重みのあるひざ掛けを利用したりすることで、脳が求める固有受容覚を補い、集中力を高める工夫も効果的です。このニーズを理解し、適切に満たしてあげることが落ち着きを取り戻す第一歩になります。

脳のタイプに合わせた環境調整がもたらす効果

脳の特性を無理に変えるのではなく、環境を整えることで本人の力が発揮されやすくなります。気が散りやすい子なら机の周りの視覚情報を減らすパーテーションを活用する、言葉よりイラストで示すといった工夫です。これらは生活するうえでバリアとなる壁を取り除くために必要な合理的配慮です。特性を否定せず、使いやすい環境を提供することで成功体験が増え、自己肯定感が強化されていきます。

家庭でできるADHDの子どもへの具体的な支援方法

保護者が関わり方を少し変えるだけで、親子関係は大きく改善します。大切なのは、否定的な言葉を減らし、肯定的な経験を積み上げることです。

メタ認知能力を育てて自分の行動を客観的に見る練習

メタ認知能力とは、自分の思考や行動を一段高いところから客観的に認識する力です。ADHDの子どもは目の前の刺激に没頭しやすいため、この客観視が難しくなる傾向があります。

家庭では、子どもが何かを達成した瞬間に、その要因を一緒に分析する時間を持ちましょう。例えば、忘れ物をせずに登校できた日に「どうして今日は忘れなかったのかな?」と優しく問いかけます。「昨日の夜に準備したから」「玄関にカバンを置いたから」といった具体的な気づきを言語化させることが重要です。失敗した際も「何がいけなかったの」と責めるのではなく、「次はどうすれば防げるかな?」と作戦会議のようなスタイルで話します。

自分自身の行動をモニターし、自分なりの攻略法を蓄積していくことが、将来の自律に向けて大切です。自分をコントロールする練習を繰り返すことで、特性を否定するのではなく、特性と上手に付き合う知恵が育まれます。

小さな成功を積み重ねるためのスモールステップの設定

ADHDの子どもにとって、大きな目標や抽象的な指示は、どこから手をつけてよいか分からず、脳がフリーズしてしまう原因になります。そこで、ひとつの課題を絶対に失敗しないレベルまで細かく分解するスモールステップが不可欠です。

例えば、宿題に取り掛かれない子に対して「宿題をやりなさい」と言うのではなく、「まず鉛筆を持って」「名前を書いて」「最初の1問だけ解いてみよう」と、極限までハードルを下げます。各ステップができるごとに「鉛筆持てたね!」「1問できたね!」とその都度褒めることで、脳内の報酬系が刺激され、次の行動への意欲が湧きやすくなります。

小さな完了報告を積み重ねることで、子どもは「自分はできる」という効力感を得られ、学習や生活へのモチベーションが維持されます。

SSTを遊びに取り入れる

ADHDの子どもは、衝動性や状況の読み取りの苦手さから、対人関係でトラブルを抱えやすい側面があります。社会的なルールやマナーを学ぶSST(ソーシャルスキルトレーニング)を、日常生活のなかの遊びとして取り入れましょう。

例えば、おもちゃを貸してほしい時に、いきなり奪うのではなく「かして」と声をかける練習をロールプレイングで行います。「お店屋さんごっこ」や「ヒーローごっこ」のなかで、適切なセリフや行動を繰り返すことで、言葉の型を身体で覚えさせます。また、負けて悔しくて泣いてしまう子には、「負けた時にどう振る舞うか」をゲームの前に事前に相談しておく予告も効果的です。

叱られて正しい行動を学ぶのではなく、安全な環境で成功のパターンを練習し、上手くいったときに思い切り褒められる経験が、社会性の発達を力強く後押しします。家庭での練習は、実際の集団生活での自信に直結します。

指示を視覚化して言葉による注意や叱責を減らす工夫

言葉による指示は消えてしまうため、不注意の子には届きにくいことがあります。情報の視覚化は非常に有効です。準備リストをイラスト付きで貼る、順番をカードで示すといった工夫をしましょう。子どもが親に聞かなくても掲示物を見て自分で動ける仕組みを作れば、叱責の回数を劇的に減らせます。

また、15分までと指示するより、残り時間が色で減っていくタイムタイマーを使うと、時間の経過を視覚的に捉えやすくなります。これは保護者のストレス軽減にも直結し、家庭の雰囲気を穏やかに保つ助けとなります。

家庭だけで抱え込まず専門機関へ相談する大切さ

子育ての悩みは孤独を深めがちですが、早い段階で専門家の知恵を借りることは賢明な選択です。

早期発見と早期療育が子どもの将来に与えるメリット

早期療育の最大のメリットは二次障害を防げる点です。失敗を繰り返し叱られ続けることで自己肯定感が低下し、不登校や抑うつなどの困難を抱えてしまうのを防ぎます。幼少期から特性に合った工夫を学び、成功体験を積んでおくことで、子どもは自分はダメな人間だという誤ったイメージを持たずに成長できます。脳の柔軟な時期にコツを身につけることは、一生モノの財産となります。

受給者証を取得して療育サービスを利用する

専門的なサポートを受けるためには受給者証の取得が有効です。これは、児童発達支援や放課後等デイサービスなどを利用するために自治体から交付されるものです。受給者証があれば、利用料の9割が公費負担され、経済的負担を抑えながら療育支援を受けることが可能になります。

ステラ幼児教室のような個別支援が果たす役割

ステラ幼児教室では、一人ひとりの凸凹に合わせたオーダーメイドの支援を提供しています。集団のなかでは困った子と見なされがちな特性も、個別指導ではユニークな発想を持つ子として輝きます。専門スタッフが子どもの行動を分析し、最適なアプローチを提案します。また、療育施設は保護者の伴走者でもあります。社会のリソースを活用することで、子育てはもっと楽になります。

思春期に向けた心の準備と自己肯定感の維持

成長に伴い多動性は落ち着くことが多いですが、学習の遅れや自意識による葛藤が強まる時期です。家庭が外で失敗しても受け入れられる安全基地であれば、子どもは何度でも立ち上がることができます。学習面は第三者に任せ、親は情緒のサポートに徹するという役割分担も有効です。周囲に助けを求めるヘルプ出しのスキルを育てることも、自立に向けた大切な準備となります。

ADHDと遺伝についてのまとめ

ADHDは遺伝するのか、ADHDと遺伝との関係をこれまでみてきました。ADHDと遺伝の関係は非常に密接ですが、それは決して避けられない運命を意味するものではありません。遺伝という土台の上に、どのような豊かな人生を築いていけるかは、周囲の理解と適切なサポートという環境の力でいくらでも変えていくことができます。最後に、これまでの重要なポイントを振り返りましょう。

・遺伝はあくまで要因のひとつ
高い遺伝率でも、環境調整で人生はポジティブに変えられます。

・親のせいではない
自分を責めるエネルギーを、今の環境をどう整えるかという未来に向けましょう。

・兄弟はそれぞれの性質を持つ
遺伝子の組み合わせはランダムです。一人ひとりの現在の困りごとに焦点を当ててください。

・専門家をチームに引き入れる
受給者証を活用し、専門機関を頼りましょう。ひとりで抱え込まないことが、親子共倒れを防ぐ唯一の方法です。

ADHDという特性は、見方を変えれば独創性や行動力の源泉にもなります。遺伝という言葉に縛られず、個性を正しく理解し、生きづらさを取り除いてあげましょう。保護者が最大の理解者であることが、子どもにとって何よりの支えとなります。支援の輪を広げながら、明るい未来を共に作っていきましょう。

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