保育園や幼稚園で、お子さんが集団になじめないと先生からいわれて、不安に感じる保護者の方は少なくありません。
家庭では特に困ったことがなくても、園という集団生活のなかではなかなかうまくいかないことがあるものです。
そんなときに頼りになるのが「保育所等訪問支援」です。この制度では、専門知識を持つ支援員が、お子さんの通う園や小学校などを訪問し、園や集団に適応できるようサポートしています。
本記事では、保育所等訪問支援の対象になるお子さんや利用するまでの流れ、具体的な支援内容や費用をわかりやすく解説します。
園や小学校での活用方法やガイドライン、注意しておきたいポイントにも触れますので、ぜひ最後までお読みください。
保育所等訪問支援とは?

保育所等訪問支援は、発達や集団生活に不安のあるお子さんが通う保育園や学校に、専門職員が訪問してサポートをおこなう福祉サービスです。
お子さんが安心して集団生活に参加できるよう、環境づくりや関わり方を一緒に考えながら支援します。まずは、このサービスの基本的な仕組みを見ていきましょう。
集団生活を支援する福祉サービス
保育所等訪問支援は、児童福祉法にもとづく障害児通所支援のひとつです。平成24年4月に始まった制度で、障害や発達に特性のあるお子さんが地域の中で育ち、安心して成長できる環境をつくることを目的としています。
この福祉サービスの特徴は、お子さんが実際に通っている保育園や幼稚園、小学校などに支援員が訪問する点です。対象年齢は0歳から18歳までと幅広く、保育園の0歳児クラスから高校3年生まで利用できます。
専門職員が園や小学校などに訪問する
訪問する支援員は、保育士や理学療法士、作業療法士などの専門職です。障害児支援に関する実務経験が5年以上必要とされており、高い専門性にもとづくサポートを受けられます。
また、訪問先は、保育園や幼稚園、小・中学校、学童保育などさまざまです。1回の訪問時間はおよそ1〜2時間が目安で、子どもの様子を観察したり、活動の中で自然に関わりながら支援をおこないます。
直接支援と間接支援の2種類がある
保育所等訪問支援には、「直接支援」と「間接支援」の2つがあります。
直接支援は、お子さん本人に直接関わる支援です。支援員が集団活動の場に入り、お子さんが困っているときにそっと寄り添いながらサポートします。たとえば、朝の会でじっと座っていられないお子さんには、隣で一緒に手遊びをしたり、少しずつ座っていられる時間を増やしていくよう工夫します。
一方の間接支援は、園や学校の先生をサポートする支援です。支援員が、お子さんの発達特性や関わり方のコツを先生に伝え、より良い環境づくりを一緒に考えます。
訪問後には、保護者や先生とカンファレンス(話し合い)をおこない、お子さんの様子や今後の支援方針を共有します。園・家庭・支援員が協力しながら、お子さんが安心して過ごせる環境を整えていきます。
誰が利用できる?保育所等訪問支援の対象者

保育所等訪問支援は、集団生活で困りごとを抱えているお子さんが利用できるサービスです。ここでは、具体的にどのようなお子さんが対象となるのか見ていきます。
障害や発達に心配がある子ども
保育所等訪問支援の対象となるのは、障害や発達に不安があり、集団生活の中で専門的なサポートが必要なお子さんです。
具体的には、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの特性があるお子さん、または発達の気がかりがあるお子さんが対象になります。
申請は保護者が行い、市区町村が支援の必要性を判断します。
障害者手帳がなくても利用できるため、「少し気になる」「一度話してみたい」という段階でも、お住まいの市区町村の窓口に相談してみましょう。
保育園や小学校に通う子ども
保育所等訪問支援は、就学前から高校まで、幅広い年齢のお子さんを対象としています。所属する学級の種類に関係なく、どのような環境でも利用できるのが特徴です。お子さんの発達や学校生活に合わせて、適切なサポートをおこなっています。
小学校では、通常学級・特別支援学級に在籍しているお子さんも利用できます。授業や休み時間など、集団生活の中でうまくいきづらい場面があるときに、専門的な支援を受けられます。
保育所等訪問支援の内容とは?

保育所等訪問支援では、お子さん本人への支援と、先生へのサポートの両面から支援をおこないます。ここでは、主な支援内容を解説します。
ガイドラインに基づいた専門的なサポート
保育所等訪問支援は、国の「保育所等訪問支援ガイドライン」にもとづいて実施されます。このガイドラインには、すべてのお子さんが園や学校で安心して過ごせるよう、支援の方向性や連携の方法が定められています。
支援の軸となるのは「インクルージョン(共に育つ)」という考え方です。この考え方は、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが一緒に学び育つ環境を大切にするものです。支援員はお子さん一人ひとりの個性を大切にしながら、先生やご家庭と協力してサポートします。
子どもが集団になじむための支援
お子さんが集団生活に慣れていけるよう、支援員は日常の活動の中で関わりを深めていきます。
直接支援を行う場合、例えば、遊びの時間には支援員がそばで一緒に動きながら声をかけ、興味や関心を引き出していきます。そうしたやり取りを積み重ねることで、自然に友だちとの関係を広げていくのです。
コミュニケーションに課題があるお子さんには、絵カードや身振り手振りなど、その子の発達に合った方法で自分の気持ちを伝えられるよう支援します。
このような丁寧な関わりを通して、お子さんが自分のペースで集団に溶け込み、笑顔で過ごせる時間が少しずつ増えていきます。
園や小学校の先生へのアドバイス
訪問支援員は、園や学校の先生に対しても専門的なアドバイスをおこないます。お子さんの発達段階や特性を理解してもらうため、日々の関わり方や声かけの工夫などを専門家の視点で伝えています。
また、お子さんがより過ごしやすい環境を整えるための提案も、支援員の大切な仕事です。たとえば、座席の位置を工夫したり、教室内の音や光などの刺激を調整したりと、具体的な方法を先生と一緒に考えます。
訪問後は、先生や保護者とカンファレンス(話し合い)を開き、訪問時の様子や今後の支援方針を丁寧に共有します。支援員・先生・保護者が同じ方向を向くことで、お子さんが安心して成長できる環境が少しずつ整っていきます。
申請の流れは?保育所等訪問支援の利用方法
保育所等訪問支援を利用するには、いくつかの手続きが必要です。以下、申請から利用開始までの流れを順にご説明します。
市区町村の窓口で相談する
まずは、お住まいの市区町村役所にある窓口に相談します。名称は自治体によって異なりますが、障害福祉課や子育て支援課などが担当です。
窓口では、お子さんの状況や困りごとを丁寧に聞き取り、制度の説明と利用の可否を確認します。申請から利用開始までは、1〜2か月ほどかかるのが一般的です。
通所受給者証を申請する
続いて「通所受給者証」を申請します。これは、児童発達支援や保育所等訪問支援などの障害児通所支援サービスを利用するための“許可証”のようなものです。
申請には、支給申請書・支援計画案・所得証明などの書類が必要となる場合があります。申請に必要な書類は、市区町村に確認しておくとよいでしょう。
有効期限は最長1年で、継続利用には更新手続きが必要です。
事業所と契約して支援計画を立てる
通所受給者証が届いたら、保育所等訪問支援を実施する事業所と契約します。事業所は、市区町村で紹介を受けたり、お近くの事業所を利用したりするとよいでしょう。支援員の資格や経験、訪問実績などを比較しながら、信頼できる事業所を選びましょう。
契約後は、事業所が「個別支援計画」を作成します。この計画に書かれたお子さんに合った支援内容や今後の方針を、事業所、保護者、訪問先の園や学校で共有します。
定期的な訪問支援が始まる
支援が開始すると、訪問支援員が園や学校を訪れ、お子さんの様子や現場の環境を丁寧に確認します。
通常、訪問支援は、2週間に1回ほどのペースでおこなわれます。訪問後は、保護者へ当日の様子や今後の支援の方向性を丁寧に報告し、次の支援に生かしていきます。
保育所等訪問支援を利用するとデメリットはある?

保育所等訪問支援はデメリットよりも多くのメリットがある制度ですが、利用にあたって知っておきたい注意点もあります。いくつか見ていきましょう。
園の理解と協力が必要になる
保育所等訪問支援を利用するときに大切なのは、受け入れ先である園や学校の理解と協力です。この制度は平成24年に始まった比較的新しい仕組みのため、保育士や教員の間で十分に知られていないことがあります。
訪問支援の目的やメリットが伝わっていないと、受け入れに時間がかかるでしょう。そのような場合は、相談支援事業所や事業所の職員が園や学校に丁寧に説明をおこないます。
その際、訪問支援が先生の負担を減らし、園全体の支援体制を強化する取り組みであることを伝えると、理解が得られやすくなるでしょう。
事業所が少なく予約が取りにくい地域もある
お住まいの地域によっては、保育所等訪問支援を行う事業所が少なく、予約が混み合うことがあります。
すぐに利用できないと不安に感じるかもしれませんが、焦らずに市区町村の窓口へ相談してみましょう。複数の事業所に申し込んだり、キャンセル待ちを申し込むのもおすすめです。
こうした注意点があるものの、保育所等訪問支援についてはデメリットよりもメリットがそれを上回ります。実際の集団生活の場でお子さんの困難を直接観察し、その場でアプローチできるのは、ほかの療育サービスでは得られない利点です。
保育所等訪問支援に関するよくある質問
保育所等訪問支援について、保護者の方からよく寄せられる質問をまとめました。
どのくらいの頻度で訪問してもらえる?
保育所等訪問支援の訪問頻度は、基本的には2週間から1か月に1回程度です。お子さんの状態や訪問先施設の状況に応じて柔軟に調整でき、必要であれば月に2回以上の支援を受けられます。
費用はどのくらいかかる?
保育所等訪問支援の利用料は、サービス提供費用のうち1割が自己負担となります。ただし、世帯所得に応じて月額の上限が定められており、それを超えて支払う必要はありません。
- 非課税世帯:無料(0円)
- 課税世帯(所得割28万円未満):月額4,600円
- その他の課税世帯:月額37,200円
また、満3歳から就学前の3年間は「幼児教育・保育の無償化」の対象となり、自己負担はありません。
また、名古屋市のように、市区町村の助成により3歳未満のお子さんも無償化となる場合もあります。費用についての詳細は、お住いの市区町村で確認しておくとよいでしょう。
どのくらいの期間使える?
保育所等訪問支援には、利用できる期間の上限はありません。18歳までのお子さんが対象で、通っている保育園や学校などの施設に在籍している間は利用を続けられます。
また、通所受給者証の有効期限は最長1年間ですが、更新手続きをすれば継続して支援を受けられます。お子さんの成長に合わせて、無理なく長く続けられる仕組みです。
保育所等訪問支援についてのまとめ
保育所等訪問支援は、発達や集団生活に不安のあるお子さんが通う園や学校に、専門職員が訪問して支援する福祉サービスです。直接支援と間接支援を組み合わせながら、お子さんが安心して集団生活を送れるよう環境づくりをおこないます。
利用を希望する際は、まず市区町村の窓口で相談し、「通所受給者証」を申請します。申請から利用開始までは1〜2か月ほどかかるため、早めの手続きがおすすめです。費用は世帯所得に応じて上限が定められており、満3歳から就学前の3年間は無償化の対象となります。市区町村の助成により、3歳未満のお子さんも無償化となる場合もあるので、市区町村に確認するとよいでしょう。
お子さんの集団生活での困りごとに向き合うのは、保護者の方にとって大きな負担かもしれません。しかし、ひとりで抱え込む必要はないのです。保育所等訪問支援をはじめとする専門的なサポートを活用しながら、お子さんの成長を見守っていきましょう。
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