幼稚園や保育園に通う子どもの保護者の方の中には、周りの子どもがひらがなを読んだり書いたりしているのを見て、「うちの子はまだできないけれど大丈夫かな」と不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ひらがなの習得には個人差があり、何歳から読めるようになるか、書けるようになるかは子どもによってさまざまです。この記事では、ひらがなや数字は何歳から読めるのか、書けるようになるのかという年齢別の発達目安から、効果的な教え方や練習方法まで詳しく解説します。
ひらがなは何歳から読めるようになる?年齢別の発達目安

子どもがひらがなを読めるようになる時期には個人差がありますが、一般的な発達の目安を知っておくことで、子どもの成長を見守る参考になります。ここでは年齢別にひらがなの読みの発達段階を解説します。
2歳から3歳ごろは文字を認識し始める時期
2歳から3歳ごろは、子どもが文字というものの存在に気づき始める時期です。この時期の子どもは、絵本の絵や写真に興味を持ち、保護者に「これなに?」と尋ねることが増えてきます。
まだひらがなを読めるわけではありませんが、文字を「絵とは違う何か」として認識し始めます。絵本を持って読んでいるふりをする姿が見られることもあり、これは文字への関心が芽生えている証拠です。
この段階では無理にひらがなを教える必要はなく、絵本の読み聞かせなどを通じて文字に触れる機会を自然に増やしていくことが大切です。
4歳から5歳ごろに読める子どもが増える理由
4歳から5歳ごろになると、ひらがなを読める子どもが急激に増えます。これは「音韻(おんいん)認識」という能力が発達するためです。
音韻認識とは、「りんご」という言葉が「り」「ん」「ご」という3つの音に分けられることを理解する力のことです。この力が発達することで、文字と音を結びつけて理解できるようになり、ひらがなを読めるようになっていきます。
文部科学省の調査によると、5歳児の約8割以上がひらがなの大部分を読めるようになるとされています。また、この時期にはお友達とお手紙ごっこをするなど、文字を使ったコミュニケーションにも興味を持ち始めます。
小学校入学前までにひらがなを読める子どもはどのくらい?
小学校入学前の時点で、多くの子どもがひらがなを読めるようになっています。文部科学省の資料によると、年長児(5〜6歳)の段階でひらがなをほぼすべて読める子どもの割合は非常に高くなっています。
ただし、これはあくまで統計上の傾向であり、入学時点でひらがなが読めなくても心配する必要はありません。小学校ではひらがなを一から教えるカリキュラムが組まれているため、入学後に習得する子どもも多くいます。
大切なのは、子どもが文字に対して苦手意識を持たないよう、楽しみながら学べる環境を整えることです。
何歳からひらがなを書けるようになる?

ひらがなを「読める」ことと「書ける」ことは別の能力です。一般的に、読めるようになってから書けるようになるという順序で発達していきます。ここでは、ひらがなを書ける時期の目安を解説します。
3歳から4歳ごろに書くことへ興味を持ち始める
3歳から4歳ごろになると、クレヨンや鉛筆を使って何かを書くことに興味を持ち始める子どもが増えてきます。最初は文字というよりも、線や丸などを描くことから始まります。
この時期に見られる特徴として、文字をまねして書こうとする姿があります。まだ正確に書けなくても、書くことへの意欲が芽生えていることは大きな成長の証です。
鏡文字(左右が反転した文字)を書くこともありますが、この時期にはよくあることなので心配する必要はありません。子どもの「書きたい」という気持ちを大切にして、温かく見守りましょう。
5歳以降は音韻認識が発達し書ける文字が増える
5歳以降になると、音韻認識の発達に伴って書ける文字が増えていきます。自分の名前を書けるようになったり、簡単なひらがなから順番に書けるようになったりします。
厚生労働省の資料によると、文字を読み書きできるための前提条件として、4〜5歳レベルの日常会話や語彙理解の言語発達が基盤となり、その上で音韻認識の力が必要とされています。
書く練習を始める際は、「く」「し」「つ」など一筆で書ける簡単な文字から始めると、子どもも取り組みやすくなります。
男女差はある?読み書きできる時期の傾向
ひらがなの読み書きの習得時期には男女差があることが、文部科学省の調査などで明らかになっています。一般的に、女の子の方が男の子よりも早い時期に読み書きができるようになる傾向があります。
これは、女の子の方が室内遊びを好む傾向が強く、絵本やお絵描きなど文字に触れる機会が多いことが一因と考えられています。
ただし、この男女差は5歳ごろから小さくなり、小学校入学後にはほとんどなくなることがわかっています。男の子の保護者の方は、周りの女の子と比べて焦る必要はありません。
ひらがなに興味を持たせて読める力を育てる工夫

ひらがなを教える前に大切なのは、子どもが文字に興味を持つことです。興味がないまま無理に教えても、苦手意識を持ってしまう可能性があります。ここでは、ひらがなへの興味を育てる工夫を紹介します。
絵本の読み聞かせで文字への関心を育てる
絵本の読み聞かせは、ひらがなへの興味を育てる最も効果的な方法の一つです。保護者が楽しそうに絵本を読む姿を見ることで、子どもは「文字を読むって楽しそう」と感じるようになります。
読み聞かせをする際のポイントは、子どもと並んで座り、文字が見える位置で読むことです。向かい合って読むよりも、子どもが自然と文字を目にする機会が増えます。
毎日の習慣として読み聞かせを続けることで、子どもは少しずつ文字への関心を深めていきます。「これなんて読むの?」と質問してきたら、ひらがなを教えるチャンスです。
カルタやしりとりなど遊びながら教える方法
遊びを通じてひらがなに触れることで、子どもは楽しみながら自然と文字を覚えていきます。カルタは、読み札を聞いて絵札を取る遊びの中で、ひらがなと音の結びつきを学ぶことができます。
しりとりも効果的な遊びです。「りんご→ごりら→らっぱ」と言葉をつなげていく中で、言葉が音の組み合わせでできていることを体感できます。これは音韻認識の発達を促し、ひらがなの習得につながります。
また、ひらがな積み木やひらがなパズルなどの知育玩具を活用するのもおすすめです。遊びの中で繰り返しひらがなに触れることで、無理なく覚えていくことができます。
日常生活の中で看板や文字に触れさせる
街の中には、ひらがなを含めたたくさんの文字があふれています。お散歩や買い物の際に、看板や商品のパッケージに書かれた文字を一緒に読んでみましょう。
「あ、あそこに〇〇ちゃんの名前と同じ文字があるね」など、子どもの名前に含まれる文字を見つけると、興味を持ちやすくなります。好きなキャラクターの名前や、よく行くお店の名前なども、ひらがなを覚えるきっかけになります。
日常生活の中で自然と文字に触れる機会を増やすことで、子どもは「文字が読めると便利だな」「楽しいな」と感じるようになっていきます。
ひらがなを教えるときに効果的な練習方法

子どもがひらがなに興味を持ち始めたら、効果的な練習方法で読み書きの力を伸ばしていきましょう。ここでは、年齢や発達段階に合わせた練習方法を紹介します。
まずは読む練習から始める
ひらがなを教える際は、書く練習よりも先に読む練習から始めるのが基本です。文字の形と音を結びつけて理解することが、書くことの土台になるためです。
読む練習では、あいうえお順に一文字ずつ覚えていく方法が効果的です。フラッシュカードを使って繰り返し見せたり、ひらがな表を部屋に貼って日常的に目にする環境を作ったりするとよいでしょう。
一度にすべてを覚えようとせず、「あ行」「か行」と少しずつ進めていくことで、子どもも無理なく取り組むことができます。
自分の名前など身近な単語から教える
ひらがなを教える際は、子どもにとって身近な単語から始めると興味を持ちやすくなります。特に効果的なのは、自分の名前です。
自分の名前に含まれる文字は、子どもにとって特別な意味を持ちます。名前が読めるようになると、自分の持ち物や靴箱などを識別できるようになり、「文字が読めると便利だ」という実感を持つことができます。
その他にも、家族の名前やペットの名前、好きな食べ物の名前など、子どもが親しみを持っているものから教えていくと、学習へのモチベーションが高まります。
簡単な文字から書く練習を始めよう
書く練習を始める際は、画数が少なく形がシンプルな文字から取り組むのがおすすめです。「く」「し」「つ」「へ」など、一筆で書ける文字は子どもにとって書きやすく、達成感を得やすいです。
反対に、「あ」「お」「ぬ」「ね」などの複雑な文字は難しいため、後回しにしても問題ありません。すべての文字を完璧に書けなくても、書けた文字を一つずつ増やしていくことが大切です。
書く練習をする際は、お手本を見ながらなぞり書きから始め、徐々に自分で書けるようにしていくとスムーズです。
運筆力を育てるなぐり書きやお絵描きも練習に有効
ひらがなを上手に書くためには、鉛筆を思い通りに動かす「運筆力」が必要です。運筆力を育てるためには、なぐり書きやお絵描きが効果的な練習になります。
2歳から3歳ごろは、クレヨンや太めの鉛筆を使って自由に線を描く練習をしましょう。丸や直線、波線などを描くことで、手先の器用さが育っていきます。
迷路やぬりえなども運筆力を高める良い練習になります。楽しみながら手を動かす経験を積み重ねることで、ひらがなを書くための土台ができていきます。
ひらがなを教えるときにやってはいけないNG行動

子どもにひらがなを教える際には、避けるべき行動があります。間違った関わり方をすると、子どもが文字に対して苦手意識を持ってしまう可能性があるため注意が必要です。
無理やり覚えさせたり間違いを叱るのは逆効果
子どもが興味を示していないのに、無理やりひらがなを覚えさせようとするのは逆効果です。「勉強させられている」という感覚を持つと、文字への苦手意識につながってしまいます。
また、間違えたときに叱ったり、がっかりした様子を見せたりすることも避けましょう。子どもは保護者の反応に敏感です。ネガティブな反応を受けると、「間違えるのが怖い」「ひらがなは嫌だ」という気持ちを持ってしまいます。
間違いは成長の過程で当然起こることです。間違えても責めずに、できたことを褒めて自信をつけさせてあげましょう。
他の子どもと比較するのはやめよう
「〇〇ちゃんはもうひらがなが書けるのに」「お兄ちゃんはこの年齢では読めていたのに」など、他の子どもと比較することは絶対に避けましょう。
ひらがなの習得時期には大きな個人差があります。早く覚える子もいれば、ゆっくり覚える子もいます。比較されることで子どもはプレッシャーを感じ、自信を失ってしまいます。
大切なのは、子ども自身の成長を認めてあげることです。昨日よりひとつでも読める文字が増えていたら、しっかり褒めてあげましょう。
ひらがなより先に数字を覚える?文字と数字の習得順序
子どもの発達において、ひらがなと数字はどちらを先に覚えるのでしょうか。一般的には、数字の方がひらがなよりも先に認識できるようになる傾向があります。
これは、数字が10種類(0〜9)と少なく、形もシンプルであるためです。また、日常生活の中でエレベーターのボタンや時計、カレンダーなど、数字に触れる機会が多いことも関係しています。
ただし、これも個人差があり、ひらがなに先に興味を持つ子どももいます。どちらが先でも問題はありませんので、子どもが興味を持った方から教えていくとよいでしょう。
ひらがなと数字、どちらも「読める」「書ける」ようになることで、子どもの世界は大きく広がります。焦らず、子どもの興味に合わせて進めていきましょう。
ひらがなが読めない書けない場合は発達障害の可能性がある?
周りの子どもと比べてひらがなの習得が遅いと、「発達障害があるのでは」と心配になる保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、LD(学習障害)やSLD(限局性学習症)と呼ばれる発達障害の中には、文字の読み書きに困難を示すタイプがあります。しかし、幼児期にひらがなが読めない、書けないというだけで発達障害と判断することはできません。
ひらがなの習得時期には大きな個人差があり、小学校入学後に急速に伸びる子どもも多くいます。就学前の段階で過度に心配する必要はありません。
気になる場合は専門家へ相談を
それでも気になる場合は、ひとりで悩まずに専門家へ相談することをおすすめします。お住まいの地域の保健センターや、幼稚園・保育園の先生、小児科医などに相談してみましょう。
専門家に相談することで、子どもの発達状況を客観的に評価してもらうことができます。必要であれば、適切な支援につなげてもらうことも可能です。
発達に関する相談は、早めに行うことで適切なサポートを受けやすくなります。気になることがあれば、遠慮なく相談してみてください。
【まとめ】焦らず子どものペースで練習を続けよう
ひらがなは何歳から読めるのか、書けるようになるのかについて、年齢別の発達目安や効果的な教え方、練習方法を解説してきました。
ひらがなの習得には個人差があり、早い子もいればゆっくりな子もいます。大切なのは、周りと比較して焦るのではなく、子ども自身のペースを尊重することです。
読み書きの技術を身につけることも大切ですが、それ以上に「文字って楽しい」「読めるようになってうれしい」という気持ちを育てることが重要です。子どもの「できた!」という喜びを一緒に分かち合いながら、楽しくひらがな学習を進めていきましょう。
子どもの発達や学習について気になることがある場合は、専門家への相談も検討してみてください。ひとりで抱え込まず、周囲のサポートを受けながら、子どもの成長を見守っていきましょう。
ステラ幼児教室では、子ども一人ひとりに合わせた個別授業で、子どもの発達と成長をサポートします。
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参考:
文部科学省「幼児教育、幼小接続に関する現状について」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/25/1358061_03_01.pdf
厚生労働省「吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気づく『チェックリスト』活用マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000521776.pdf
東京都教育委員会「就学前教育カリキュラム」
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/pre_school/files/curriculum2/ikkatsu.pdf












