発達障害の割合と推移の現状

「最近、発達障害という言葉をよく聞くようになった」「クラスに何人か、サポートが必要な子がいるみたいだ」
子育てをしていると、発達障害という言葉が以前よりも身近になったと感じる保護者の方は多いのではないでしょうか。実際に、文部科学省の調査でも、発達障害の可能性がある子どもの割合は増加傾向にあります。
「うちの子も診断を受けたけれど、これって珍しいことなの?」「通常学級にも、同じような悩みを持つ子はいるのだろうか」
自分だけが取り残されているような不安を感じているかもしれませんが、数字を見てみると、発達障害やその傾向(グレーゾーン)は、決して特別な少数派ではないことが分かります。
この記事では、文部科学省の最新データをもとに、発達障害の割合や推移、通常学級の現状について解説します。また、不登校や高学歴との関連性、そして子どもに合った支援の選び方についても詳しく紹介します。
文科省データで見る発達障害の割合と推移

発達障害の子どもはどのくらいいるのでしょうか。公的なデータをもとに、その実態と背景を紐解いていきます。
通常学級に在籍する発達障害の可能性がある児童生徒
2022年(令和4年)、文部科学省は「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」の結果を発表しました。この調査によると、小・中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、学習面や行動面で著しい困難を示すとされた割合は8.8%でした。
これは、およそ35人学級であれば、クラスに約3人は支援を必要とする子どもがいる計算になります。2012年の前回調査では6.5%だったため、10年間で約2.3ポイント増加したことになります。この数字は、医師の診断を受けた数ではなく、担任教師などの回答に基づく割合ですが、教育現場において支援を必要とする子どもが確実に増えていることを示しています。
割合が増加している背景と理由
なぜ、これほどまでに割合が増加しているのでしょうか。単純に「発達障害の子どもが増えた」という生物学的な理由だけではありません。大きな要因として、社会全体の認知の広がりが挙げられます。
以前であれば落ち着きがない子、変わった子として見過ごされていた特性が、発達障害に関する知識が普及したことで、支援が必要な特性として気づかれるようになったのです。また、学校現場でも特別支援教育の体制整備が進み、先生方が子どもの困難さに気づきやすくなったことも背景にあります。つまり、数字の増加は、これまで支援が届いていなかった子どもたちが、可視化されるようになった結果とも言えます。
大人になってから気づくケースの増加
割合の増加は、子どもだけの話ではありません。大人の発達障害という言葉が広く知られるようになり、大人になってから診断を受ける人も増えています。
子どもの頃は、親や先生のサポートがあったり、環境が合っていたりして何とか適応できていた人が、就職して複雑な業務や人間関係に直面した途端、適応できなくなるケースです。幼少期に見過ごされてきた隠れ発達障害の人たちが、社会に出てから顕在化していることも、全体的な割合の増加に関係していると考えられます。
通常学級にいるグレーゾーンの子どもたち

8.8%という数字の中には、明確な診断がついている子もいれば、診断基準までは満たさないものの、特性によって困りごとを抱えているグレーゾーンの子どもたちも含まれています。
グレーゾーンとはどのような状態か
グレーゾーンとは、医学的な診断基準(DSM-5など)を完全には満たさないものの、発達障害の傾向や特性が見られる状態を指す通称です。障害と健常の間に明確な境界線があるわけではなく、グラデーションのように連続しています。
グレーゾーンの子どもは、調子が良いときは問題なく過ごせることもあれば、環境や体調によっては強い困難を示すこともあります。診断がつかないため、公的な支援(受給者証の利用など)の対象になりにくく、家庭や学校での個別の配慮に頼らざるを得ないという難しさがあります。
通常学級での困りごとと学習の遅れ
通常学級に在籍するグレーゾーンの子どもたちは、一斉指導の環境で多くのストレスを感じています。
・学習面
全体への指示が聞き取れない、板書が間に合わない、特定の教科だけ極端に苦手(LD傾向)。
・行動面
じっとしていられない、衝動的に発言してしまう(ADHD傾向)、集団行動の列に入れない。
・対人面
空気が読めない、冗談が通じない、マイペースすぎて浮いてしまう(ASD傾向)。
これらのつまずきが積み重なると、学年が上がるにつれて学習の遅れが顕著になり、授業についていけなくなるリスクが高まります。
周囲の理解不足による孤立
診断名があれば、障害の特性だから配慮が必要と理解されやすいですが、グレーゾーンの場合はやればできるはず、怠けているだけと誤解されがちです。
例えば、一生懸命ノートを取ろうとしているのに、手先の不器用さから字が乱れてしまい、ふざけていると叱られてしまうことがあります。また、友だちの輪に入りたいのに、タイミングがつかめず立ち尽くしている姿が、無関心と映ってしまうこともあります。本人の頑張りたいという気持ちと、周囲のやる気がないという評価のズレが、子どもの心を深く傷つけていくのです。先生や親から「もっと頑張りなさい」と叱責され続けることで、本人は自信を喪失し、クラス内での孤立を深めてしまうケースも少なくありません。グレーゾーンの子どもは、支援の網からこぼれ落ちやすいです。
発達障害と不登校の密接な関係

文部科学省のデータから見えてくるもう一つの重要な事実は、発達障害と不登校の密接な関係です。
不登校児童生徒における発達障害の割合
不登校の小中学生は年々増加していますが、その背景に発達障害の特性が隠れているケースは非常に多いと言われています。文部科学省の過去の調査や、専門家の指摘によると、不登校の子どものうち、何らかの発達障害やその傾向(グレーゾーン)を持っている割合は、3割から4割、あるいはそれ以上とも推測されています。
不登校は、単なる学校嫌いではなく、本人の特性と学校環境が合わなくなった結果として起こるSOSのサインである場合が多いのです。
学校に行けなくなる心理的要因
なぜ、発達障害の子どもは学校に行けなくなってしまうのでしょうか。
・感覚過敏
教室のざわめき、チャイムの音、給食のにおいなどが苦痛で、教室にいるだけでエネルギーを消耗してしまう。
・対人関係のトラブル
悪気のない発言で友達を怒らせてしまったり、集団のルールが理解できずにいじめの対象になったりする。
・学習性無力感
頑張ってもできない、叱られてばかりという経験を繰り返し、「どうせ自分はダメだ」と無気力になってしまう。
特に注意が必要なのが、学校では必死に普通を演じて適応しようとする過剰適応のケースです。学校では問題児どころか優等生で通っているため、先生も異変に気づきません。しかし、家に帰った途端に糸が切れ、激しい癇癪を起こしたり、動けなくなったりします。親御さんが学校での様子と家での様子のギャップに戸惑っている間に、子どもは限界を迎えてしまうのです。
二次障害としての不登校リスク
適切な支援がないまま無理に登校を続けさせると、自己肯定感が低下し、うつ病や不安障害、起立性調節障害といった二次障害を発症するリスクが高まります。不登校は、この二次障害のひとつの現れでもあります。一度二次障害に陥ると、回復には長い時間がかかります。だからこそ、「学校に行きたくない」というサインが出た時点で、背景に発達の特性がないかを見極め、環境を調整することが重要になります。
高学歴と発達障害の意外な関係

発達障害というと、勉強ができないというイメージを持たれることがありますが、実際には高い学力を持つ子どもたちの中にも、発達障害の特性を持つ子は多く存在します。
勉強はできるが生きづらい子どもたち
知的な遅れがなく、むしろ平均以上の知能を持っている発達障害の子どもを高機能と表現することがあります。また、優れた才能と発達障害の特性を併せ持つ「2E(Twice-Exceptional:二重の特別支援を必要とする)」と呼ばれる子どもたちもいます。
彼らは、記憶力が抜群に良かったり、特定の分野で大人顔負けの知識を持っていたりします。そのため、ペーパーテストの成績は優秀で、難関校と呼ばれる中学や高校に進学することも珍しくありません。
高学歴ゆえに診断が遅れる理由
成績が良いことは素晴らしいことですが、それが逆に支援を遅らせる要因になることがあります。「勉強ができるのだから、問題はないはずだ」「少し変わっているけれど、個性的な天才肌なのだろう」と、親や教師が楽観視してしまうのです。
しかし、本人は、忘れ物がどうしても直らない、雑談に入れず友達ができない、スケジュールの管理ができないといった生活面や社会性の課題に人知れず苦しんでいます。周囲の期待値が高いため、できないことを相談できず、一人で抱え込んでしまう傾向があります。
受験や就職で直面する壁
高学歴の発達障害者が大きな壁に直面するのは、環境が変化するタイミングです。偏差値の高い学校に入学したものの、校則が自由になった途端に自己管理ができずに留年してしまう。あるいは、一流大学を卒業して就職したものの、マニュアルのない業務や臨機応変な対応、同僚との連携がうまくいかず、適応障害を起こして退職してしまう。
学歴というものさしだけでは測れない、社会適応の難しさが、大人になってから顕在化するケースは後を絶ちません。
子どもに合わせた支援と学習環境

発達障害の割合が増え、その実態が明らかになる中で、子どもたちへの支援のあり方も多様化しています。大切なのは、周りと同じにすることではなく、その子に合った環境を選ぶことです。
早期発見と療育の重要性
8.8%という数字は、誰にとっても他人事ではないことを示しています。様子を見ましょう、と問題を先送りにして、子どもが自信を失ってから動き出すのでは遅すぎます。早期に特性に気づき、療育などの支援につなげることで、子どもは自分の特性との付き合い方を学び、苦手をカバーするスキルを身につけることができます。早期発見は、レッテルを貼るためではなく、子どもを守るための手段です。
個性に合わせた学習環境の選択
現在では、学びの場も多様化しています。通常の学級だけでなく、一部の授業を少人数で受ける通級指導教室、子どものペースに合わせて手厚い支援を行う特別支援学級、さらには学校外のフリースクールなどがあります。普通であることに固執せず、子どもが安心して過ごせ、能力を発揮できる場所はどこかを柔軟に考えることが大切です。
発達障害を専門にした個別支援塾の活用
学校の授業についていけない、集団塾では質問できない、といった悩みがある場合は、学校外の専門的な学習支援を活用するのもひとつの方法です。
例えば、ステラ個別支援塾のような、発達障害やグレーゾーンの子どもを専門にした個別指導塾では、一人ひとりの認知特性(見て覚えるのが得意、聞いて覚えるのが得意など)に合わせた指導を行います。単に勉強を教えるだけでなく、スケジュールの立て方やノートの取り方といった学習スキルの指導、メンタル面のサポートも行います。「分かった」「できた」という成功体験を積み重ねる場所があることは、子どもの自己肯定感を支える大きな柱となります。
発達障害の割合と推移についてのまとめ
文科省のデータが示す通り、通常学級に在籍する発達障害の可能性がある子どもの割合は年々増加傾向にあります。これは、発達障害が特別なことではなく、私たちの身近にあるありふれた個性の一つであることを意味しています。
しかし、グレーゾーンや高学歴の子どもたちのように、一見すると分かりにくい困難さを抱え、支援の網からこぼれ落ちてしまうケースも依然として多くあります。数字の増減だけに一喜一憂するのではなく、その数字の向こう側にいる一人ひとりの子どもの困り感に目を向けることが大切です。
適切な環境と理解ある支援があれば、発達障害のある子どもたちは、そのユニークな能力を発揮して輝くことができます。もし子どもの発達に不安を感じたら、ひとりで悩まず、専門機関やステラ個別支援塾のような専門家に相談してみてください。
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