「ギフテッド」「2E」という言葉を耳にする保護者が増えています。特に小学校に入る頃、子どもの学習や行動の“凸凹(でこぼこ)”に気づくケースは多く、「この子はギフテッド?発達障害?それとも2E?」と迷う家庭も少なくありません。
ギフテッドとは、特定の分野で非常に高い能力を発揮する子のこと。2Eとは「Gifted+発達障害」の両方の特性を持つ子を指します。しかし、その違いは分かりにくく、誤解も多いのが現状です。
本記事では、「ギフテッドと2Eの違い」「小学校で起こりやすい困りごと」「家庭での育て方」「WISC検査で分かること」「有名人の例から見る特徴」などを、できるだけわかりやすく、実例を交えて解説します。
ギフテッドとは?

まずはギフテッドの基礎をわかりやすく整理します。ギフテッド(Gifted)は、日本語では「才能のある子」と訳されます。
しかし、単に「頭がいい子」ではなく、以下のような特徴が見られます。
ギフテッドの主な特徴
ギフテッドには次のような特徴があります。
- 特定の分野に強烈な興味や集中力がある
- 理解力・思考力・想像力が突出している
- 大人顔負けの語彙力
- 直観的に本質をつかむ
- 感情・感覚が敏感
- 社会性やルールが苦手なこともある
ギフテッドは「多才な天才児」のイメージを持たれがちですが、実際には、強い能力の裏で、学校生活に困難を抱えることがあるのが大きな特徴です。
ギフテッドについて、詳しくはこちらの記事(https://www.stella-edu.com/column/c_gifted/)に書かれています。
2Eとは?

2E(Twice Exceptional:トゥーイー)とは、直訳すると「二重に特別な子」。
つまり、才能(ギフテッド性)と発達障害(困りごと)の両方を併せ持つ子を指します。
ギフテッドと発達障害を併せて2E
2Eは、例として次のような組み合わせがあります。
- 高い知能+ADHD(注意欠如多動症)
- 優れた記憶力+ASD(自閉スペクトラム症)
- 高い言語能力+学習障害(LD)
- 卓越した理解力+不器用さや感覚過敏
能力の高さが困難を覆い隠し、困難の方が強調されて能力が見えにくくなることもあります。
なぜ二重に特別なのか
理由は次の2つの「特別」があるからです。
- 非常に高い能力(ギフテッド性)
- 発達障害による困難(学習・行動・情緒)
この2つは表面上、正反対に見えます。
そのため、小学校の先生や親は「できるのに、なぜできないの?」と混乱し、誤解が生まれやすいのです。
ギフテッドと発達障害の違いを整理

では、ギフテッドと発達障害はどこが違うのでしょうか? 主な違いを紹介します。
主な違い
| 項目 | ギフテッド | 発達障害 |
| 能力の状態 | 特定分野で高い能力 | 認知や行動が偏る |
| 困りごと | 周囲とのズレ、刺激過敏、完璧主義 | 社会性・注意・学習・感覚などの課題 |
| 検査での傾向 | IQが非常に高い(130以上)ことも | IQはさまざま(凸凹が大きい) |
| 特性の出方 | 能力が強く現れる | 困難が強く現れる |
しかし、この境界は曖昧で、特に以下のような子どもは判別が難しいです。
- IQは高いが、注意が続かない
- 読解は得意だが文章を書くのが極端に苦手
- 得意不得意が極端
- 社会性が弱いが、知識量は膨大
これらの子どもが2Eである可能性があります。
小学校で気づかれることが多い理由

多くの2Eの子が、小学校入学後に「困りごと」が表面化します。困りごとの例を紹介します。
授業のペースが合わない
次のような理由から子どもたちは、授業のペースが合わないと感じます。
- 簡単すぎて退屈
- 興味がないと極端に動けない
- やり方が合わないと混乱
見た目の能力と実際の行動が一致しない
先生からは、「賢いのに、なぜプリントを解くのが終わらないの?」と見られてしまうことがあります。
友達関係でつまずきやすい
2Eの子どもは、次のような特性が影響します。
- 会話がかみ合わない
- こだわりが強い
- 感情が敏感
支援が入りづらい
特に検査などをしないと、能力の高さの裏にある困難が見えにくいため、支援が入りづらいのが2Eの特徴です。
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WISC検査で分かること

WISC検査(ウィスク検査)で分かることは何なのでしょうか。その検査で分かることを見ていきましょう。
ギフテッドや2Eの判断材料
WISC検査は、子どもの認知特性を詳細に見ることができる知能検査です。
ギフテッドや2Eの判別にとても役立ちます。
WISC検査でわかる4つの指標
WISC検査を通してわかることには、4つの指標があります。
- 言語理解(VC)
- 知覚推理/視空間(PR/VS)
- ワーキングメモリ(WM)
- 処理速度(PS)
ギフテッドの子は、VCとPRが突出して高いことが多いです。
一方で2Eの子は、次のような傾向がよく見られます。
- VCとPRは高い
- しかしWMやPSが極端に低い
このでこぼこのプロフィールが、2Eを理解する鍵となります。
ギフテッドと2Eの主な特徴

以下の項目で、それぞれの特徴をより具体的に説明します。
ギフテッドの特徴
ギフテッドの子どもには次のような特徴があります。
- 深い思考・高い理解力を持っている
- 興味がある分野には驚くほど集中する
- 感受性が強く、共感力が高い
- 常識やルールに疑問を持ちやすい
- 完璧主義
- 年齢のわりに大人びている
- 退屈に弱い
- 細部に気づく
- 物事の本質を理解するのが早い
2Eの特徴
(ギフテッド+発達障害)には次のような特徴があります。
- 読解は得意だが、書字が苦手
- 高い知能なのに指示が通りにくい
- 知識は豊富だが友達関係が苦手
- 興味の偏りが極端
- こだわりが強くパニックになりやすい
- 授業中に集中できない
- 感覚過敏(音、光、触覚など)
- 片付けが極端に苦手
- 宿題ができない
- できるときとできないときの差が激しい
この「二面性」が、2Eの子どもを理解する上で最も重要です。
ギフテッド2Eに多い有名人の例

海外ではギフテッド2Eの概念が浸透しており、「発達障害と天才性を併せ持つ有名人」が多く紹介されています。
ここでは、ギフテッド2Eとして知られる有名人と、その人の一般に広く語られている逸話を紹介します。
- アルベルト・アインシュタイン(言語発達の遅れ/天才物理学者)
- トーマス・エジソン(注意の偏り/発明家)
- スティーブ・ジョブズ(強いこだわり/卓越した創造性)
- ビル・ゲイツ(強い集中力と社会性の弱さが若い頃に指摘された)
- 岡潔(数学者) (感受性が非常に強く、独特の思考体系)
「発達障害だから成功した」「ギフテッドだからすごい」という単純な話ではなく、強みを理解し、適切な支援を受ければ力を最大限発揮できるということを象徴する存在だと言えます。
家庭でできるギフテッド2Eの育て方

2Eの子を育てると、「できるのにできない」「賢いのに苦手が多い」というギャップに悩みがちです。
ここでは、2Eの子どもの家庭での育て方のポイントを紹介します。
得意を伸ばし苦手を責めない
2Eの子は、得意と苦手の差が大きいのが特徴です。
苦手を叱るより、得意を伸ばす方が、自己肯定感も伸びます。
興味を尊重する
2Eの子どもは次のような興味を持っていることがありますが、興味は偏っていても構いません。
- 宇宙
- 電車
- 歴史
- プログラミング
- 生き物
興味は学習や才能を伸ばす「原動力」です。
具体的な行動指示を出す
ギフテッド2Eは、抽象的な指示が苦手なことがあります。
例:
✕「片付けて」
〇「本を棚に入れて、机の上を空にしよう」
と声を掛けるようにしましょう。
感情のフォローを大切に
2Eの子どもは感受性が強く、失敗に敏感です。
次のように感情のフォローをしてあげることが、安心感につながります。
- 否定しない
- 強みを言語化する
- 気持ちを言葉にしてあげる
必要なら専門家に相談
小学校で困りごとが増えてきたら、次のようなものを利用しましょう。
- 発達相談
- WISC検査
- 心理士との面談
支援を受けることで学校生活が格段に楽になります。
ギフテッド2Eと発達障害の違いのまとめ
この記事では、ギフテッド2Eと発達障害の違いをわかりやすく解説しました。ギフテッド2Eと発達障害の違いをまとめると、次のようになります。
ギフテッドは特定の分野で非常に高い能力を持ち、2Eとはギフテッド+発達障害の両方の特性を持つことです。
ギフテッドは小学校で困りごとが表面化しやすいです。WISC検査で認知の凸凹が明確になります。有名人にもギフテッドの例は多いです。
ギフテッドの育て方では「強みを伸ばし、弱みを責めない」ことが大切です。
子どもは、誰もが「個性」や「違い」を持っています。ギフテッドや2Eは、そのちがいが少し特徴的なだけです。
理解して関わることで、能力は驚くほど伸びていきます。
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