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言語発達遅滞とは?原因や訓練方法と追いつく可能性を解説

2025.11.06
  • その他障害・疾患

お子さんが話す言葉が少ないと感じたり、呼びかけへの反応が薄かったりすると心配になるものです。その状態はもしかすると、「言語発達遅滞」かもしれません。大切なのは、できるだけ早く気づき、その後どのように対応するかです。

本記事では、言語発達遅滞の原因は何か、年齢別にはどんな発達が期待されるのか、そしてご家庭でどのような訓練ができるのかをご紹介します。同じような悩みをお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。

言語発達遅滞とは?まず知っておきたい基本のこと


発達のペースは子どもによってさまざまです。言葉の習得も例外ではなく、遅れ気味に見えることもあります。まずは、言語発達遅滞の基礎知識をご紹介します。

言語発達遅滞ってどういう状態なの?

言語発達遅滞とは、お子さんが話す力、理解する力が、同じ年齢の子どもに比べて遅れている状態のことです。

たとえば、3歳のお子さんであれば、一般的には2語文や簡単な会話ができるようになっています。しかし、言語発達遅滞のあるお子さんは、このような発達に達していないことがあります。

診断の目安は、幼児期で1年以上、学童期で2年以上の遅れが認められるときとされています。ただし、発達には個人差が大きいため、年齢だけで判断するのは難しいのが実情です。

言語発達遅滞には、理解する力(受容性)と表現する力(表出性)の両方、またはどちらか一方に遅れが見られます。理解に課題がある場合は相手の話を理解することが難しく、表現に課題があるなら、自分の思いや考えを言葉で伝えることが苦手です。

発達障害とどう違う?

言語発達遅滞と発達障害は、異なるものです。言語発達遅滞は「言葉が遅れている状態」を指し、発達障害は「脳の発達による困りごと全般」を指しています。言葉の遅れだけではなく、ほかにも困りごとがあるかどうかが、大きな違いです。

言語発達遅滞の原因とは?


言語発達遅滞の原因はひとつとは限りません。複数の要因が重なっていることがあり、その組み合わせはお子さんごとに違います。

聴覚機能の問題による言葉の遅れ

聴覚障害は言語発達遅滞の直接的な原因のひとつです。言葉は耳から聞いて学ぶため、聞こえに問題があると、言葉の習得が難しくなります。

たとえば、小児に多い滲出性中耳炎は、軽度から中等度の難聴を起こす病気です。この難聴により、お子さんは周囲の音や言葉が十分に聞き取れず、言葉の発達が遅れてしまいます。

もし聞こえの問題が疑われるなら、早めに耳鼻科を受診しましょう。聴覚の問題に気づき、早めに対処することが予防の観点から重要です。

知的障害や発達障害による言葉の遅れ

知的障害のお子さんは、知的な発達が全体的にゆっくりであり、ものごとを理解する力や覚える力の発達が遅れがちです。そのため、言葉を習得すること、すなわち、言語発達も遅れてしまいます。

また、発達障害の自閉スペクトラム症(ASD)では、人とのつながりを感じることが難しい、視線が合いにくい、呼びかけに反応しにくい、人と同じものに注意を向けることが難しいといったコミュニケーションの特徴があります。
そのため、コミュニケーション手段としての言語発達が遅れる場合があります。

まずはお子さんの状態を正確に把握することが、改善につながる第一歩です。

環境要因による言葉の遅れ

お子さんを取り巻く環境は、言語発達に大きく影響します。十分な会話や読み聞かせの機会がない、大人とのコミュニケーションが少ない、テレビやメディアに長時間さらされるといった状況では、言葉を学ぶために必要な刺激が不足しがちです。

一方、環境要因による言語発達遅滞は、改善できる可能性が高いとされています。環境を工夫し、親子の関わりを増やすことで、言語発達は進んでいきます。

年齢別に見た言語発達の目安

適切な時期に支援を受けるには、年齢別の発達目安を知ることが大切です。ここでは、言語発達遅滞のお子さんに見られる兆候や目安をご紹介します。

1歳半から3歳ごろはどれくらい話せていれば大丈夫?

1歳半では意味のある言葉が5~6語程度、「ママ」「パパ」「ワンワン」といった単語が出始めます。指さしでコミュニケーションが取れていれば、発達に問題はありません。

2歳前後になると、語彙数が200~300語に増え、「ジュース のむ」「ワンワン おいで」のような2語文で話すようになります。「これ なあに?」と質問も出始め、言葉の世界が広がる時期です。

そして3歳では、語彙数が約1,000語に達し、主語と述語を含む3語文が使えるようになります。「ママが おしごと いくの」「くるまの えほん よんで」といった表現で、より複雑な意思疎通ができるようになるのです。

逆に、これらの言葉や行動が見られない場合は、言語発達遅滞の可能性があります。できるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。

3歳から小学生ごろの言葉はどう発達する?

3歳から4歳のお子さんは、文章や言葉の組み立てがより複雑になっていきます。複数の述語を組み合わせた複文、代名詞・助詞といった文法が使えるようになり、大人とのやりとりがスムーズになります。

4歳から5歳では、お友達との関係が広がる時期です。グループ作りが見られ、言葉を使った自己主張や問題解決ができるようになります。また、発音がより正確になっていくのも特徴です。また、5歳から6歳になると、お子さんが自分の経験を物語として語り、相手に伝える力が発達します。

小学校に入る頃は、大人とスムーズにやりとりができるほど言語能力が発達します。ただ、それでも発達の遅れが見られる場合は、専門機関に相談するのもひとつの方法です。

言語発達遅滞のお子さんへの訓練と支援方法

言語発達遅滞への支援には、専門家の力と家庭での取り組みが大切になります。お子さんとの日常会話を増やすことが、言葉の成長を大きく助けるのです。ここでは、家庭で実践できる言語発達の訓練や支援方法をご紹介します。

普段の声かけはどうすればいいの?

声かけの基本は「ゆっくり」「はっきり」「みじかく」「くりかえし」の4つです。この4つを意識することで、言葉への興味が高まり、習得が進みます。

具体的には、お子さんが興味を示しているものに合わせた声かけが効果的です。おもちゃで遊んでいるときに「ぶーぶ のるよ」「ぶーぶ はしってるね」と、動作と一緒に声をかけてみましょう。

また、「たのしいね」「うれしいね」とお子さんの気持ちを代弁することも大切です。こうした声かけにより、言葉と行動の関連性が理解できるようになります。

遊びながら楽しく言葉を増やす訓練方法

家庭での遊びは、言語発達を促すおすすめのアプローチです。たとえば、指さし名前当てゲームを親子で楽しんでみましょう。「ワンワンはどれ?」と質問し、お子さんの反応を促します。

また、まねっこ遊びでは「ワンワン」「ニャーニャー」といった鳴き声を一緒に楽しみ、言葉のキャッチボールを体験させます。

共働きで忙しくてもできる工夫はある?

親子のやりとりを今以上に増やしてみましょう。たとえば、食事時に「今日は保育園で何かあった?」とお子さんの話を聞いたり、親自身の出来事を話したりします。朝の準備や入浴時間など、日常の中にやりとりを組み込むだけで、自然と言語発達を促せます。

限られた時間を活用する工夫として、10分程度の短い読み聞かせがおすすめです。毎日続けることで語彙が増えるほか、親子のつながりも深まります。

やってはいけないこととやった方がいいこと

避けるべき対応として、命令口調での指示や「なぜ?」を多用した問いかけがあります。「○○しなさい」という強制的な表現や、理由の説明を求めることは、お子さんのやる気を失わせてしまいます。代わりに「○○できるかな?」「いっしょにやってみよう」といった協力的な表現や、具体的で分かりやすい指示を心がけましょう。

また、お子さんの発言や行動を「一度は受け止める」ことが大切です。「ダメ」という否定より「こうしてみよう」と建設的に導き、小さな成長や努力をたくさん褒めてあげてください。

言語発達遅滞は追いつく?その後の経過について

「言葉が遅いといわれたけれどこのまま遅れたまま?」「小学校に入るまでに追いつくことはできる?」

こうした疑問をお持ちの親御さんは多いことでしょう。実際にはどのような経過をたどるのか、今後をどう見通すべきか解説します。

追いつく子は多いの?それともずっと遅れたまま?

言語発達遅滞のお子さんが追いつく割合は、遅滞のタイプにより異なるとされています。ある学術論文によると、発語のみに問題がある「発語遅滞群」では約46.2%が経過観察により改善しています。

これに対し、「理解」と「表出」の両方に困難がある「言語理解遅滞群」では改善率が26.1%と、より低くなるとのことです。

一方で、時間とともに発語遅滞群の改善が進むこともわかっています。同資料によると、その改善率は1年で約60%、1年半で73%、2年後には84.6%でした。焦らず見守ることも、大切な治療の一つといえます。

参考 秋田大学教育文化学部「特異的言語発達遅滞の予後決定因子に関する研究」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/42/4/42_4_311/_pdf/-char/ja

追いつく子と時間がかかる子の違いは?

追いつくスピードを左右するのは、言葉の理解ができているかどうかです。発語だけが遅れていて、理解は年齢相応の「表出性言語障害」のお子さんは、早期療育などにより改善する可能性はあります。

一方、言葉の理解そのものに困難がある「受容性言語障害」の場合、表出性言語障害に比べ、より専門的な支援が必要です。お子さんのタイプを理解し、早期に適切な支援を受けることが望ましいです。

小学生になってからも支援は続けられる?

小学生からの支援としては、たとえば、通級指導教室(ことばの教室)があります。
通級指導教室を利用すれば、通常学級での学習と友達との交流を保ちながら、週に数時間の支援を受けられます。
また、小学生になり理解が進んでから、言語訓練を受けるのもひとつの方法です。

言語発達がゆっくりなお子さんは、幼児期に話し言葉が追いついたように見えても、小学生で読み書きに困難が見られることもあります。
状況に合わせて、専門家への相談や、お子さんに合った支援を受けることが望ましいです。

よくある質問

ここでは、子どもの言語発達遅滞に関する代表的な質問について、専門的な知見をもとにお答えします。

言語発達遅滞は治るの?治らないの?

軽度の「表出性言語障害」では、約半数のお子さんが言語障害を残さず、自然に回復するという研究報告があります。しかし実際は、回復のスピードは障害の程度、家庭での取り組み、支援の開始時期などに左右されます。

ポイントは「治る」「治らない」という単純な考え方ではありません。お子さんが持つ力を引き出し、社会生活に必要なコミュニケーション能力を育ててあげることが、もっとも大切です。

どこに相談すればいいかわからないときは?

相談先はお子さんの状況によって異なります。まずは、市区町村の福祉課に訪問するか、ホームページで確認してから連絡してみましょう。1歳半健診や3歳児健診で言葉の遅れを指摘された場合、保健師さんに相談すると、地域のことばの教室や療育施設などの紹介をしてくれます。

発達障害やサービスに関する相談が必要になったら、地域にある発達障害者支援センターに相談してもよいでしょう。診断がなくても利用でき、ご家族からの相談も受けつけています。

また、療育が必要な就学前のお子さんは、児童発達支援のサービスを受けることができます。
ステラ幼児教室では、お子さんに合わせたオーダーメイドの授業で、お子さんの成長をサポートします。お気軽にご相談ください。

言語発達遅滞が気になるときのまとめ

言語発達遅滞は、お子さんの話す力や理解する力が年齢に比べて遅れている状態です。

しかし、適切な支援により改善する可能性があります。聴覚の問題・発達障害・環境要因など、その原因は多岐にわたりますが、早期に対応することで言葉の力を十分に伸ばすことができます。ご家庭での声かけや遊びを通じた自然な関わりが、言語発達を促す大きな力になります。

ご家庭でも、日常生活の中に意識的にやりとりを組み込むことで、お子さんの言葉は着実に育ちます。

不安が大きい場合や、ご家庭での工夫だけでは難しいと感じたら、ステラ幼児教室にお気軽にご相談ください。お子さんの困りごとを丁寧に理解し、安心できる環境で言葉の発達をサポートいたします。

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