「ほかの子どもとちょっと違う気がする」「空気が読めないと言われてしまう」そんな子どもの様子に戸惑いや不安を感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。
アスペルガー症候群は、コミュニケーションやこだわりのある行動などに特有の傾向が見られる発達障害の一つです。しかし、正しく理解すれば、子どもの強みを伸ばしながら、よりよい関わり方を見つけていくことも十分にできます。
そこで本記事では、アスペルガー症候群の基本的な概要や原因、その特徴、子どもへの接し方やご家庭でできる支援方法まで、わかりやすく解説していきます。
アスペルガー症候群とは?
「アスペルガー症候群」という言葉自体は耳にしたことがあっても、どのような状態を指すのか、今一つピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
従来は単独の診断名として使われていましたが、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」の一部として位置づけられています。
ここではまず、アスペルガー症候群の基本的な概要や原因、自閉スペクトラム症との関係性について整理していきます。
アスペルガー症候群の概要
アスペルガー症候群は、知的や言語発達には大きな遅れがないものの、社交面やコミュニケーションの部分で特性が現れる発達特性の一つです。表情やジェスチャーから相手の気持ちを読み取るのが苦手、独自のこだわりや習慣を好む、時に強い感覚過敏を示すことがあります。
そのため、周囲からは「変わっている」などと感じられることもありますが、興味のあるテーマには深く集中できる才能を持つことも少なくありません。発達障害の中でも「高機能型」と呼ばれることもあり、就学後や成人してから気づかれるケースも多いです。
アスペルガー症候群の原因
アスペルガー症候群の明確な単一の原因はまだ特定されていませんが、先天的な脳の機能特性が大きく関わっていると考えられています。特に遺伝的要因の関与が大きく、親子や双子間で同様の特性が見られることもあります。
また、胎内環境や出産時の影響なども複合的に関与しているとされ、育て方が原因ではありません。現在は、こうした先天的な背景と成長環境が相互に影響し合いながら、その特性が現れると理解されています。
自閉スペクトラム症との位置づけ
アスペルガー症候群は、現在ではDSM-5や日本の診断基準において「自閉スペクトラム症(ASD)」という広い枠組みの一部とされています。
以前は知的や言語発達に遅れがない点で区別されていましたが、今ではスペクトラムの重症度や特性の現れ方の違いとして捉えられています。本質的には、社会的コミュニケーションの特性や反復的なこだわりなどが共通し、個々の困りごとや強みの現れ方の違いが重視されるようになっています。
アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群を持つ子どもには、いくつか共通した行動や感じ方の傾向があります。
「人との距離感がうまくつかめない」「同じことに強くこだわる」「音や感触に敏感」など、一見すると個性的な行動の中に、発達特性が隠れていることもあるのです。
ここでは、コミュニケーションの特徴や感覚の違い、興味・関心の傾向など、アスペルガー症候群に見られやすい特徴を紹介します。
コミュニケーション面の特徴
アスペルガー症候群は、言葉の発達や知的障害は見られなくても、「人との会話がうまくかみ合わない」ことなどがよくあります。
たとえば、相手の気持ちや表情を読み取るのが難しく、自分が言いたいことをストレートに伝えてしまいがちです。また、微妙な声のトーンや非言語的な合図(アイコンタクト・ジェスチャー)が苦手で、会話中にぎくしゃくした印象を与えることもあります。大人になっても抽象的な指示や場の空気が理解できず困る場合があります。
こだわり行動や興味の偏り
アスペルガー症候群は、特定の趣味や興味に強く没頭し、同じ話題や物事について繰り返し語ったり、取り組んだりする傾向があります。
ルールやルーチンが変わることを極端に嫌うため、予定が急に変わると強いストレスを感じることもあります。ただし、この強い集中力は、得意な分野では大きな才能となります。
感覚過敏の傾向がある
アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症では、感覚過敏がよく見られます。
たとえば、衣服のタグが気になる、人混みの音に耐えられない、蛍光灯が眩しすぎて目が痛くなるなど、過敏に感じることもあります。こうした感覚の偏りが不快さやパニックを引き起こす原因となることもあるのです。
得意・不得意のアンバランスさ
アスペルガー症候群傾向のある子どもや大人は、得意な分野と苦手な分野の差が大きいのが特徴です。
記憶力や専門知識に秀でる一方、日常生活で必要な調整力や細やかな動きが苦手なことがあります。知的には平均〜高い一方で、処理速度や不注意の面が不得意なことが多く、能力ギャップによる行き違いが起こりやすいです。
子どもによく見られる特徴
●友達との遊びや会話がかみ合いにくい
●空気が読めず、突然話題を変えてしまうことがある
●特定の遊びや興味に没頭する(車、恐竜、地図など)
●予定変更や新しい環境への適応が苦手
●感覚過敏(音・光・触覚など)によりパニックを起こすことがある
●学校生活で集団行動に馴染めず孤立する場合がある
●ルールへの強いこだわりや順序への執着がある