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アスペルガー症候群とは?子どもの特徴や支援方法をやさしく解説

2025.07.10
  • 発達障害
  • ASD(自閉症スペクトラム)
  • 障害診断について
  • 支援方法・家庭での過ごし方

「ほかの子どもとちょっと違う気がする」「空気が読めないと言われてしまう」そんな子どもの様子に戸惑いや不安を感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。

アスペルガー症候群は、コミュニケーションやこだわりのある行動などに特有の傾向が見られる発達障害の一つです。しかし、正しく理解すれば、子どもの強みを伸ばしながら、よりよい関わり方を見つけていくことも十分にできます。

そこで本記事では、アスペルガー症候群の基本的な概要や原因、その特徴、子どもへの接し方やご家庭でできる支援方法まで、わかりやすく解説していきます。

目次

アスペルガー症候群とは?

「アスペルガー症候群」という言葉自体は耳にしたことがあっても、どのような状態を指すのか、今一つピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

従来は単独の診断名として使われていましたが、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」の一部として位置づけられています。

ここではまず、アスペルガー症候群の基本的な概要や原因、自閉スペクトラム症との関係性について整理していきます。

アスペルガー症候群の概要

アスペルガー症候群は、知的や言語発達には大きな遅れがないものの、社交面やコミュニケーションの部分で特性が現れる発達特性の一つです。表情やジェスチャーから相手の気持ちを読み取るのが苦手、独自のこだわりや習慣を好む、時に強い感覚過敏を示すことがあります。

そのため、周囲からは「変わっている」などと感じられることもありますが、興味のあるテーマには深く集中できる才能を持つことも少なくありません。発達障害の中でも「高機能型」と呼ばれることもあり、就学後や成人してから気づかれるケースも多いです。

アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群の明確な単一の原因はまだ特定されていませんが、先天的な脳の機能特性が大きく関わっていると考えられています。特に遺伝的要因の関与が大きく、親子や双子間で同様の特性が見られることもあります。

また、胎内環境や出産時の影響なども複合的に関与しているとされ、育て方が原因ではありません。現在は、こうした先天的な背景と成長環境が相互に影響し合いながら、その特性が現れると理解されています。

自閉スペクトラム症との位置づけ

アスペルガー症候群は、現在ではDSM-5や日本の診断基準において「自閉スペクトラム症(ASD)」という広い枠組みの一部とされています。

以前は知的や言語発達に遅れがない点で区別されていましたが、今ではスペクトラムの重症度や特性の現れ方の違いとして捉えられています。本質的には、社会的コミュニケーションの特性や反復的なこだわりなどが共通し、個々の困りごとや強みの現れ方の違いが重視されるようになっています。

自閉症スペクトラムについての記事はこちら

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アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群を持つ子どもには、いくつか共通した行動や感じ方の傾向があります。

「人との距離感がうまくつかめない」「同じことに強くこだわる」「音や感触に敏感」など、一見すると個性的な行動の中に、発達特性が隠れていることもあるのです。

ここでは、コミュニケーションの特徴や感覚の違い、興味・関心の傾向など、アスペルガー症候群に見られやすい特徴を紹介します。

コミュニケーション面の特徴

アスペルガー症候群は、言葉の発達や知的障害は見られなくても、「人との会話がうまくかみ合わない」ことなどがよくあります。

たとえば、相手の気持ちや表情を読み取るのが難しく、自分が言いたいことをストレートに伝えてしまいがちです。また、微妙な声のトーンや非言語的な合図(アイコンタクト・ジェスチャー)が苦手で、会話中にぎくしゃくした印象を与えることもあります。大人になっても抽象的な指示や場の空気が理解できず困る場合があります。

こだわり行動や興味の偏り

アスペルガー症候群は、特定の趣味や興味に強く没頭し、同じ話題や物事について繰り返し語ったり、取り組んだりする傾向があります。

ルールやルーチンが変わることを極端に嫌うため、予定が急に変わると強いストレスを感じることもあります。ただし、この強い集中力は、得意な分野では大きな才能となります。

感覚過敏の傾向がある

アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症では、感覚過敏がよく見られます。

たとえば、衣服のタグが気になる、人混みの音に耐えられない、蛍光灯が眩しすぎて目が痛くなるなど、過敏に感じることもあります。こうした感覚の偏りが不快さやパニックを引き起こす原因となることもあるのです。

得意・不得意のアンバランスさ

アスペルガー症候群傾向のある子どもや大人は、得意な分野と苦手な分野の差が大きいのが特徴です。

記憶力や専門知識に秀でる一方、日常生活で必要な調整力や細やかな動きが苦手なことがあります。知的には平均〜高い一方で、処理速度や不注意の面が不得意なことが多く、能力ギャップによる行き違いが起こりやすいです。

子どもによく見られる特徴

●友達との遊びや会話がかみ合いにくい
●空気が読めず、突然話題を変えてしまうことがある
●特定の遊びや興味に没頭する(車、恐竜、地図など)
●予定変更や新しい環境への適応が苦手
●感覚過敏(音・光・触覚など)によりパニックを起こすことがある
●学校生活で集団行動に馴染めず孤立する場合がある
●ルールへの強いこだわりや順序への執着がある

大人によく見られる特徴

●会話のキャッチボールが続かず、一方的に話しがち
●職場の暗黙のルールや曖昧な指示の理解が難しい
●感覚過敏によるストレスが日常生活に影響を及ぼす
●社会的な距離感がつかみにくく、人間関係に摩擦が生じやすい
●繰り返しのルーチンや慣れた作業を好み、新しい対応にストレスを感じる
●高い集中力や専門的な知識に秀でている場合がある
●自分の特性への気づきが遅れ、二次障害(うつ・不安)を抱えることがある

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アスペルガー症候群の対応や支援法

「実際、どう関わればいいのか分からない」「注意しても注意されていることも伝わらない」と悩む保護者は少なくありません。

アスペルガー症候群のある子どもには、その子どもなりの感じ方やペースがあり、そこに寄り添った対応が必要です。

ここでは、子どもの特性を尊重する声かけや環境づくり、自己肯定感を育てる関わり方、さらに保護者自身が無理をしないための相談先までご紹介します。

安心できる環境づくり

アスペルガー症候群の子どもは、過剰な環境への刺激や不意に起こる変化に戸惑いやすい傾向があります。そのため、ご家庭や学習の場では「見通し」が立つような環境づくりが不可欠です。

具体的には…

●ルーティン表やタイマーで日課を見える化する
●照明・音・人の出入りを調整できる静かな空間を用意する
●変更がある時には事前に短く伝えて理解を促す
●曖昧な表現は伝わりにくいため、具体的に伝える
(例「走らないで」ではなく「歩いてね」と言うなど)

などです。合理的配慮として日本の支援制度でも重視されており、他者と無理なく関わる基盤になります。

自己肯定感を育てる関わり

得意分野に注目し、小さな成功体験を積むことが、自己肯定感を育む鍵となります。

たとえば、理系・暗記・細部へのこだわりなど、子どもの興味に基づく学習や活動の機会を意図的に用意し、「できた!」「すごいね」と具体的に褒める関わり方が大切です。このような支援スタイルは精神療法でも推奨されており、前向きな自己受容を促す効果があるとされています。

保護者側のケアと相談や支援とは

アスペルガー症候群のある子どもを育てる中で、専門機関や支援者に相談することもとても大切です。保護者が安心し、気持ちにゆとりを持つことは、子どもへの関わりにも良い影響を与えます。

また、同じような立場の保護者とつながれる「ペアレント・トレーニング」や「親の会」などに参加することで、共感し合える時間や、具体的な対応のヒントを得られることもあります。困ったときに頼れる支援先をいくつか知っておくだけでも、気持ちの支えになるでしょう。

相談先の一例

名称 概要 対応/支援内容 相談方法
発達障害者支援センター 各都道府県に設置されている支援機関 発達障害に関する相談、支援方法のアドバイス、関係機関との連携 来所・電話・地域によってはメール相談
保健センター・市区町村の子育て相談窓口 地域の保健師や心理士が対応 育児や発達に関する不安の相談、医療機関への紹介 電話・窓口・訪問など
児童発達支援事業所・放課後等デイサービス 18歳未満の子どもを対象にした福祉サービス 療育や日常生活支援、保護者支援 事前見学・契約後の通所
精神保健福祉センター 心理的・精神的な相談機関(都道府県単位 発達に関する心理相談、精神科受診の案内など 電話・来所(予約制が多い)
ペアレント・トレーニング(各地) 保護者向けの学習・支援プログラム 行動理解、子どもとの関わり方、悩み共有 支援センターや発達外来などで実施



こうした相談先は、「困ってから」ではなく「少し気になるな」という時点でも活用して大丈夫です。保護者の心を支える場所を見つけることは、子どもの育ちを安心して見守るための第一歩です。遠慮せず、必要なタイミングで支援を受け取ってください。

まとめ

アスペルガー症候群は、知的な遅れがない一方で、コミュニケーションや感覚の特性、こだわり行動などが見られる発達障害の一つです。現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」の一部とされ、特性の現れ方は人それぞれ異なります。

子どもとの関わりでは、「その子どもらしさ」を受け止める声かけや、安心できる環境の工夫、得意を伸ばしていく支援が大切です。また、保護者自身もひとりで抱え込まず、支援機関や相談窓口を頼ることが心の安定につながります。

正しい理解と周囲の支援があれば、アスペルガー症候群の子どもたちが自分らしく成長していくことは十分に可能です。

参考元
各 支援機関 等

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