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トークンエコノミー法とは?家庭でできる発達障害への活用例

2026.02.28
  • 発達障害
  • 支援方法・家庭での過ごし方

「何度言っても動いてくれない」「やる気が続かない」。そのような悩みを抱えながら、わが子への接し方を模索しておられる保護者の方は少なくありません。発達特性のある子どもの場合、努力不足というよりも、行動を始めたり続けたりする力の調整が難しいことが背景にある場合があります。

トークンエコノミー法とは、心理学の理論を土台にした行動支援の方法です。望ましい行動ができたときにシールやポイントなどを渡し、一定数がたまったらあらかじめ決めたごほうびと交換します。目に見える形で「できた」を積み重ねることで、行動と達成感を結びつけやすくなります。療育の現場でも活用されており、家庭でも取り入れやすい方法です。

本記事では、トークンエコノミー法の基本的な考え方と、発達障害のある子どもへの具体的な活用例、そして家庭で続けるための工夫について解説していきます。

トークンエコノミー法とは


トークンエコノミー法とは、望ましい行動が見られたときにトークンと呼ばれる代用貨幣を渡し、それを一定数集めることでごほうびと交換できるようにする行動療法です。
トークンには、シールやスタンプ、ポイントカード、おはじきなど、子どもが目で見て分かりやすいものが用いられます。たとえば「お手伝いをしたらシールを1枚」「10枚たまったら好きなおやつ」といった具合に、子どもにとってわかりやすく具体的な仕組みを作り、先にそれを提示しておくのです。
発達障害のある子どものなかには、「あとでね」「そのうちね」といった先の見通しをイメージすることが難しい場合があります。目に見える形で成果が示されると、自分の行動と結果のつながりを理解しやすくなるのです。その点で、家庭でも取り入れやすい支援方法といえます。

オペラント条件付けに基づくトークンエコノミー法の仕組み

トークンエコノミー法は、心理学者スキナーが提唱したオペラント条件付けという学習理論を土台にしています。
オペラント条件付けとは、行動の直後に起こる結果によって、その行動の頻度が変化するという考え方です。人は、ある行動の直後に良い結果が続くと、その行動をくり返しやすくなります。反対に、望ましくない結果が続くと、その行動は減っていきます。
トークンは、望ましい行動の直後に与えられる強化の役割を果たします。トークンそのものに大きな価値があるわけではありませんが、ごほうびと交換できるという約束があることで意味を持ちます。このような働きを、二次的な強化と呼びます。

トークンエコノミー法を構成する3つの要素

トークンエコノミー法は、三つの要素から成り立っています。

第一に、標的行動です。増やしたい行動を具体的に決めます。「おもちゃを箱に戻す」「宿題を1枚終える」など、子どもがすぐ理解できる内容にします

第二に、トークンです。シールやスタンプ、ポイントカードなど、集めること自体が負担にならないものを選びます。見やすく、扱いやすいことが大切です。

第三に、バックアップ強化子です。トークンと交換するごほうびを指します。子どもが心から楽しみにできる内容であることが、トークンを集めようとする意欲を支える鍵です。

トークンエコノミー法を活用した具体例


トークンエコノミー法は、家庭だけでなく、学校や療育の場面でも取り入れられています。特別な道具がなくても始められるため、生活の中に無理なく組み込むことができるからです。ここでは、具体的な例をご紹介します。

家庭で実践できるトークンエコノミー法の例

家庭では、日々の身支度や学習習慣づくりに活用しやすい方法です。
朝の準備に時間がかかる子どもには、「着替えができたらシールを1枚」「歯みがきが終わったらもう1枚」といった形で、小さな行動ごとに区切って設定します。5枚集まったら、好きな絵本を一緒に読む時間をつくるなど、物だけでなく体験をごほうびにするのも一案です。
夏休みや冬休みなど、長期休みの宿題にも応用できます。「ドリルを1ページ終えたらスタンプひとつ」と決め、一定数たまったら本人が選べる楽しみを用意します。先が見えにくい課題も、目に見える積み重ねがあることで取りかかりやすくなります。

療育や学校で取り組むトークンエコノミー法の例

療育の場では、社会的な行動を育てる目的で用いられることがあります。たとえば、順番を待つことができたときや、自分の気持ちを言葉で伝えられたときに、トークンを渡します。具体的な行動に焦点を当てることで、何が望ましいのかを理解しやすくなります。
学校では、授業中に手を挙げて発言できたときや、係の仕事を最後までやり遂げたときにポイントを与える方法があります。学級全体で共有すると、互いの頑張りを認め合う雰囲気が生まれることもあります。
いずれの場面でも大切なのは、子どもにとって達成可能な行動を選ぶことと、約束を分かりやすく伝えることです。無理のない設定が、継続の土台になります。

ステラ個別支援塾でも、「トークンエコノミー法」を活用しています。
「ポイントカードで、子どもの学習意欲向上!」https://www.stella-edu.com/blog/13523/

トークンエコノミー法で期待できるメリット

トークンエコノミー法は、発達障害のある子どもの支援において、いくつかの大切な利点があります。

発達障害がある子どもの達成感ややる気を引き出せる

発達特性のある子どもは、注意や指摘を受ける場面が増えやすく、「できていない点」に意識が向きがちです。その積み重ねが自信の低下につながることもあります。
トークンエコノミー法では、できた行動を具体的に認め、その都度トークンを渡します。小さな成功を重ねることで、「自分はできる」という感覚が育ちます。この実感が、次の行動への意欲を支えます。

目に見える形で成果がわかる

言葉による励ましは大切ですが、抽象的な表現だけでは伝わりにくい場合もあります。特に見通しを立てることが苦手な子どもにとっては、「がんばったね」という言葉だけでは何がどれくらいできたのか、また努力の量やゴールまでの距離が分かりにくいことがあります。
トークンエコノミー法では、努力の積み重ねの成果として、シールやスタンプが増えていく様子がはっきりと目に見えます。「あと3枚でごほうびがもらえる」と目で見て分かることで、目標が具体的になります。見通しを持って取り組むことができ、安心感にもつながります。

トークンエコノミー法は親子の成功体験につながる

トークンエコノミー法は、子どもだけでなく保護者にとっても成功体験になります。
望ましい行動が増えると、叱る場面が自然と減り、認めて褒める場面が増えていきます。家庭の雰囲気が少し和らぐこともあります。
保護者にとっても、「うまくいった」と感じられる経験は大きな支えになります。その積み重ねが、次の工夫や挑戦への意欲につながります。
無理のない形で続けることが、親子双方の安心につながります。

トークンエコノミー法のデメリットと注意点

トークンエコノミー法は効果的な方法として広く知られていますが、使い方を誤ると逆効果になることもあります。メリットだけでなく、弱点や注意点も理解したうえで取り入れることが大切です。

ごほうび依存になりやすい

いちばん気をつけたいのは、ごほうびがないと行動しなくなる状態です。「シールがもらえないならやらない」と子どもが感じてしまうと、本来目指しているはずの習慣化にはつながりません。
トークンはあくまで行動を後押しするための手段です。最終的な目的は、トークンがなくても自然に行動できるようになることです。その点を忘れずに進める必要があります。

デメリットを防ぐトークンエコノミー法の工夫

ごほうび依存を防ぐためには、いくつかの工夫が必要です。
まず、行動が安定してきたら、トークンを渡す回数を少しずつ減らします。最初は毎回だったものを、2回に1回、3回に1回というように間隔をあけていきます。急にやめるのではなく、ゆるやかに減らすことがポイントです。
また、物だけをごほうびにしないことも大切です。一緒に遊ぶ時間や好きな場所へ出かける機会など、体験型のごほうびを取り入れると、関わりそのものが強化になります。

最終的には、ほめ言葉や達成感だけで行動が続く状態を目指します。

トークンエコノミー法とレスポンスコストの違い

トークンエコノミー法と似た方法にレスポンスコストがあります。これは望ましくない行動があったときにトークンを取り上げるやり方です。たとえば約束を守れなかったらシールを1枚減らす、といった使い方をします。
ただし、発達障害のある子どもに対しては慎重さが求められます。失う不安や悔しさが強くなり、かえって気持ちが不安定になる場合があります。

まずはできたことを積み重ねる関わりを基本にし、マイナスよりもプラスの働きかけを中心にするほうが安心です。

発達障害の子どもにトークンエコノミー法を実践するコツ

発達障害のある子どもにトークンエコノミー法を取り入れるときは、その子の特性を踏まえた工夫が欠かせません。同じ年齢でも感じ方や得意不得意は大きく違います。画一的なやり方ではうまくいかないこともあります。

ここでは、発達障害のある子どもに対するトークンエコノミー法の取り入れ方のコツをご紹介します。

発達障害の特性に合わせた目標設定

発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などがあり、それぞれ行動の特徴が異なります。目標はそれぞれの特性に合わせ、具体的で、はっきりとした行動に落とし込めるよう設定することが大切です。
たとえば、ADHDの子どもであれば、長時間じっとしていることは負担が大きい場合があります。この場合「5分間座っていられたらトークン」など、短い時間で達成できる目標から始めます。
ASDの子どもには、あいまいな言い方は伝わりにくいことがあります。曖昧な表現を避け、「おもちゃを箱に入れる」など具体的な行動を示すことが大切です。
これらはほんの小さな違いに見えますが、結果に大きく影響します。

トークンエコノミー法をスモールステップで進める方法

トークンエコノミー法を成功させるポイントは、スモールステップで進めることです。
最初から高い目標を掲げると、達成できなかった経験だけが残ってしまいます。まずは確実にできるレベルから始めます。少し物足りないと感じるくらいでちょうどよい場合もあります。
ごほうびまでの道のりも短めに設定します。最初はシール3枚で交換できるようにし、うまく回り始めたら5枚、10枚と段階的に増やします。急にハードルを上げると意欲が落ちることがあるため、様子を見ながら調整します。

子どもの行動をメッセージと捉える

トークンエコノミー法を実践する際は、子どもの行動を「メッセージ」として捉える視点が大切です。
思うようにいかないときほど、行動の背景を考える視点を持ちましょう。やらない、怒る、投げ出すといった行動も、その子なりのサインであることがあります。
目標が難しすぎないか、ごほうびに魅力を感じているか、疲れていないかなどを振り返ってみます。原因がひとつとは限りません。うまくいかない場面も含めて対話を重ねながら、少しずつ調整していく姿勢が結果につながります。

トークンエコノミー法がうまくいかないときの見直し方

トークンエコノミー法を始めてみたものの、思ったほど効果が出ないことは珍しくありません。そんなときは方法そのものを否定するのではなく、どこに原因があるのかをひとつずつ見直していきましょう。
ここでは、うまくいかない原因となりやすいポイントをご紹介します。

目標を再設定する

うまくいかない原因として多いのは、目標の立て方です。
目標が曖昧だと、子どもは何をすればトークンがもらえるのか分かりません。「いい子にする」ではなく「食事中は座っている」のように、行動が目に見える形にすると良いでしょう。
また、目標が高すぎると意欲は続きません。この場合、より簡単なステップに分解します。「宿題を全部終わらせる」が難しいなら、「1問解く」「5分取り組む」といった小さな単位に分けます。
できたという実感を積み重ねるほうが、結果的に近道になることもあります。

ごほうびを見直す

ごほうびに魅力がなければ、子どもはトークンを集める意欲を持てません。
子どもが本当に欲しいものは何か、一緒に話し合って決めましょう。大人が「これがいいだろう」と思うものと、子どもが欲しいものは違うことがあります。
また、同じごほうびが続くと飽きてしまうこともあります。いくつか候補を用意し、その中から選べるようにするだけでも意欲は変わるものです。小さな調整ですが、反応ががらりと変わることもあります。

【まとめ】トークンエコノミー法で子どもの成長をサポートしよう


トークンエコノミー法は、行動が増える仕組みを利用したシンプルな方法です。できたことを形にして示すことで、子どもは達成感を積み重ねやすくなります。発達障害のある子どもの支援でも、やる気を引き出す手段として広く取り入れられています。
家庭で行う場合は、その子の特性に合った目標を立てることが出発点になります。いきなり大きな変化を求めるのではなく、小さな成功を重ねていくほうが続きやすい傾向があります。うまくできたときにしっかり認める姿勢も欠かせません。

一方で、ごほうびだけが目的にならないよう配慮も必要です。少しずつトークンの回数を減らし、最終的には声かけや達成感そのものが励みになる形を目指します。
思うように進まないときは、目標が合っているか、ごほうびに魅力があるかを改めて確認します。試行錯誤を重ねながら、その子に合うやり方を見つけていき、子どもの成長をサポートしていきましょう。

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