子どもがスプーンをうまく使えず、手づかみで食べてしまう姿を見ると、「どうやって教えればいいの?」と悩む保護者の方は多いのではないでしょうか。また、スプーンの持ち方が変なまま直らないと、将来の箸の使い方や食事マナーにも影響するのではと心配になりますよね。
この記事では、子どもの発達段階に合わせたスプーンの持ち方の教え方や、持ち方が直らないときの対処法について詳しく解説します。焦らず、子どものペースに合わせた練習方法を見つけていきましょう。
スプーンの持ち方は発達段階に合わせて変わる

スプーンの持ち方は、子どもの手や指の発達段階に応じて自然と変化していきます。最初から大人と同じ持ち方を求めるのではなく、成長に合った持ち方を順番に習得させることが大切です。
子どもがスプーンの持ち方を覚え始める時期は1歳頃が目安
子どもがスプーンに興味を持ち始めるのは、一般的に生後10〜12か月頃が目安とされています。食べ物を触りたそうにしていたり、大人が使っているスプーンを自分で持ちたがったりする様子が見られたら、スプーンを持たせてみるタイミングです。
ただし、スプーンを使い始める時期には個人差があります。早くに興味を持つ子もいれば、ゆっくり興味を持つ子もいます。子どもが「自分で食べたい」という意欲を見せたタイミングで、スプーンを持たせてあげましょう。
なお、スプーンの練習を始める前に、手づかみ食べを十分に経験させることも大切です。手づかみ食べは、自分の意思で食べ物を口に運ぶという発達段階においてとても重要なプロセスであり、好奇心や五感を刺激することで脳の発達にも良い影響を与えると言われています。
発達段階に合ったスプーンの持ち方を無理なく練習させよう
スプーンの持ち方は、発達段階に応じて「上手持ち(手のひら握り)」「下手持ち(指握り)」「三点持ち(3つ指握り)」と変化していきます。いきなり正しい持ち方を教えようとしても、手首や指先の発達が追いついていないとうまくいきません。
子どもの発達段階を無視して持ち方を矯正しようとすると、食事の時間が嫌いになってしまうこともあります。まずは今の発達段階でできる持ち方を認め、少しずつステップアップしていくことが、スプーンの持ち方を上手に教えるコツです。
食事は楽しく、おいしく食べることが基本で一番大事です。子どもの様子を見ながら、始める時期を見極めましょう。
発達段階別スプーンの持ち方を3ステップで解説

ここでは、スプーンの持ち方を発達段階別に3つのステップで解説します。子どもが今どの段階にいるのかを確認しながら、次のステップへの移行を意識してみてください。
ステップ1 上手持ちでスプーンの持ち方に慣れる
スプーンを使い始めた1歳〜1歳半頃の子どもは、まず「上手持ち(うわてもち)」からスタートします。上手持ちとは、スプーンの柄を上からわしづかみにする持ち方で、「手のひら握り」とも呼ばれます。
この持ち方は、まだ指先の動きや手を上向きに返す動作が未熟な子どもにとって、成長に合った自然な形です。肘を曲げたり腕全体を動かしたりして、スプーンを口に運びます。
上手持ちの時期に大切なのは、スプーンを持つこと自体に慣れさせることです。食べ物をうまくすくえなかったり、こぼしてしまったりしても叱らず、「スプーン持てたね」「自分で食べられたね」とたくさん褒めてあげましょう。
この段階では、以下のようなサポートが効果的です。
• 大人がスプーンの使い方の見本を見せる
• 大人が手を添えてスプーンですくい、口に運ぶ
• スプーンに一口分だけ乗せて、自分で口に持っていけるようにする
• 少し深めの、縁の高い食器に少しだけ取り分け、すくう経験ができるようにする
スプーンを握るときは、親指がスプーンの柄の外に出るようにして、柄を包むようにしっかり握らせましょう。
また、スプーンの使い始めは、スプーンに食べ物が乗ったまま、スプーンをひっくり返して口に入れてしまう「返しスプーン」になってしまう場合があります。しっかり食べ物を乗せたまま口に入れ、口を閉めて食べ物を唇で取れるように、口の動きも合わせて根気強く伝えていきましょう。
ステップ2 下手持ちで三点持ちへ移行する準備をする
上手持ちに慣れて食事をこぼすことが減り、自分で食べられるようになったら、次は「下手持ち(したてもち)」への移行を促していきます。1歳半〜2歳頃が目安です。下手持ちとは、スプーンの柄を下から握る持ち方で、「指握り」とも呼ばれます。
下手持ちをするためには、手首を内側から外側にひねる動作が必要です。この動作は発達とともにできるようになりますが、個人差があります。
下手持ちへの移行がうまくいかない場合は、日常の遊びの中で手首をひねる動作を取り入れてみましょう。たとえば、以下のような遊びが効果的です。
• 手遊び歌で手首をキラキラさせる動き
• 洗濯ばさみでつまむ遊び
• シールをはがして貼る遊び
• 砂場でスコップを使ってすくう遊び
• 水遊びでコップに水を注ぐ動作
食事の時間に無理に下手持ちをさせようとするよりも、遊びを通じて手首の動きを発達させることで、自然と下手持ちができるようになっていきます。
ステップ3 三点持ちをマスターする
下手持ちが上手にできるようになったら、いよいよ「三点持ち」への移行です。2歳後半〜3歳頃が目安となります。三点持ちとは、親指、人差し指、中指の3本の指でスプーンの柄を支える持ち方で、「鉛筆持ち」「えんぴつ持ち」「バキューン持ち」とも呼ばれます。
三点持ちを教えるときは、「バキューンの手を作ってみて」と声をかけると子どもにもわかりやすいです。親指と人差し指を立ててピストルの形を作り、その形のままスプーンの柄を乗せて持たせます。
三点持ちができるようになる時期には個人差があります。うまくできなくても焦らず、「バキューンの持ち方できるかな?」と食事の最初だけ声をかけるなど、少しずつ練習を進めていきましょう。
三点持ちが安定してくると、指先で細かい動きをコントロールできるようになり、食べ物をすくいあげる動きができるようになります。食べこぼしも減り、きれいに食事ができるようになります。
この段階では、遊びながら握力や手先の動きを促すことも効果的です。ブロック遊びや粘土遊びなどを積極的に取り入れてみましょう。
三点持ちができると箸への移行がスムーズになる

スプーンの三点持ちをしっかりマスターすることは、将来の箸への移行にもつながります。なぜ三点持ちが箸の練習に役立つのかを解説します。
スプーンの三点持ちと箸持ちは指先を使う動作が共通
スプーンの三点持ちと箸の持ち方には、共通点があります。どちらも親指、人差し指、中指の3本の指を使って道具を操作する点です。
三点持ちでスプーンを使うことで、指先の細かい動きや力の入れ具合をコントロールする力が養われます。この経験が、箸を使うときの土台となるのです。
逆に、上手持ちや下手持ちのままスプーンを使い続けていると、指先を使う経験が不足し、箸への移行が難しくなることがあります。また、五指が十分に発達する前に箸を持ち始めると、違った持ち方を覚えてしまうこともあり、後から矯正するのは難しくなります。
箸への移行は三点持ちが安定してから始める
箸の練習を始める時期は、スプーンの三点持ちが安定してからが理想的です。スプーンやフォークで上手に食べられるようになってから、個人差はありますが3歳を過ぎた頃から始めてもよいでしょう。
箸を上手に使えるようになるまでにはある程度の時間が必要です。褒めたり、励ましたり、時には一休みしながら、上手になっていく過程を一緒に楽しみましょう。小学校に入る頃までに使えるようになれば十分と考え、気長に見守っていくことが大切です。
箸を選ぶときは、子どもの手の大きさに合った長さを選びましょう。目安として、手の大きさ+3cmくらいの長さが持ちやすいとされています。
スプーンの持ち方が直らないときはどうする?

「何度教えてもスプーンの持ち方が直らない」と悩む保護者の方も多いでしょう。ここでは、持ち方が直らない原因と対処法について解説します。
スプーンの持ち方が直らない原因を発達段階から確認しよう
スプーンの持ち方が直らない原因として、まず考えられるのは発達段階とのミスマッチです。子どもの手首や指先の発達が、求めている持ち方に追いついていない可能性があります。
たとえば、まだ手首をひねる動作が十分にできない段階で三点持ちを求めても、子どもにとっては難しすぎる課題となります。
また、以下のような原因も考えられます。
• スプーンのサイズや形状が手に合っていない
• 握る力が弱い、または強すぎる
• 食事中に集中力が続かない
• 早くに始めすぎて違った持ち方が定着してしまった
まずは今の子どもの発達段階を確認し、その段階に合った持ち方ができているかをチェックしてみましょう。
手首や指先が発達する遊びで三点持ちへの移行を促す
スプーンの持ち方が直らないときは、食事の場面だけで練習するのではなく、日常の遊びの中で手首や指先を使う経験を増やすことが効果的です。
以下のような遊びがおすすめです。
• 粘土遊び:指先でこねる、丸める、つまむ動作で指先の力がつく
• ひも通し:親指と人差し指でつまむ動作の練習になる
• 積み木やブロック:指先でつかんで積む動作が発達を促す
• シール貼り:指先の細かい動きをコントロールする力がつく
• 砂場遊び:スコップですくう動作がスプーンの練習につながる
• 洗濯ばさみでつまむ遊び:指先の力と手首の動きを促す
これらの遊びを通じて手指の発達が進むと、スプーンの持ち方も自然と改善されていくことがあります。
無理強いせず子どもペースで練習する
スプーンの持ち方が直らないからといって、食事のたびに注意したり、無理やり持ち方を直そうとしたりするのは逆効果です。
食事の時間が「叱られる時間」になってしまうと、子どもは食事自体を嫌がるようになることもあります。また、保護者がイライラしていると、その雰囲気が子どもにも伝わり、余計に緊張してうまくいかなくなることもあります。
練習は食事の最初の数分だけにする、機嫌のいいときだけ声をかけるなど、子どもにプレッシャーをかけすぎない工夫をしましょう。スプーンで遊び始めてしまったら無理強いはせず、大人が食べさせてあげることも大切です。
少しでも上手にできたら、すかさず一緒に喜び褒めることで、子どものやる気を引き出すことができます。「自分で食べるっておいしい、楽しい」という気持ちを育てていきましょう。
それでも直らないときは専門家に相談することも選択肢の一つ
発達段階に合った練習をしていても、なかなかスプーンの持ち方が改善しない場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
手指の発達に遅れがある場合や、感覚の過敏さなどが原因となっている場合は、作業療法士などの専門家のサポートを受けることで改善が見られることがあります。
お住まいの地域の保健センターや、かかりつけの小児科医に相談すると、適切な支援機関を紹介してもらえます。ひとりで悩まず、専門家の力を借りることも大切な選択肢です。
大人になるまでに知っておきたいスプーンの使い方とマナー

スプーンの持ち方や使い方は、大人にとっても食事の印象を左右するものです。正しい所作は、教養や品格を感じさせます。ここでは、社会人として恥ずかしくないスプーンの使い方と、フォーマルな場でも通用するポイントを、子どもに教える前に改めて確認しておきます。
知っておきたいスプーンの使い方とマナー
基本は「鉛筆持ち(三点持ち)」。親指・人差し指・中指で支えることで、自然で上品な動きになり、会食や改まった食事の場でも好印象です。一方、手のひらで握る「握り持ち」は幼く見えやすいため避けましょう。
また、
●左から右へ静かにすくう
●姿勢を正しく保つ
●食後はスプーンを皿の上に横向きに置く
といった点も、大人として意識したい基本的なマナーです。
日常の食事から正しい使い方を心がけることで、自然と美しい所作が身につきます。
大人でも意識すればスプーンの持ち方を改善できる
「子どもの頃に正しい持ち方を習わなかった」という大人の方でも、意識して練習すれば持ち方を改善することは可能です。
大人の場合は、長年の習慣が身についているため、子どもよりも時間がかかることがありますが、毎日の食事で意識し続けることで少しずつ改善していきます。
子どもにスプーンの持ち方を教える機会に、保護者自身の持ち方も見直してみるのもよいでしょう。親子で一緒に正しい持ち方を練習することで、子どもにとってもよいお手本になります。
スプーンの持ち方を練習するアイテム選びとコツ

スプーンの持ち方を練習するには、道具選びも重要です。子どもに合ったスプーンの選び方や、練習を楽しくするコツを紹介します。
発達段階に合った握りやすいスプーンを選ぶポイント
スプーンの持ち方を練習するには、子どもの手に合ったスプーンを選ぶことが大切です。以下のポイントを参考に選んでみてください。
• 柄の太さ:細すぎると握りにくいため、太めのものが握りやすい
• 柄の長さ:握ったときに手から少しはみ出るくらいの長さが適切
• すくう部分の大きさ:子どもの口のサイズに合った小さめのものを選ぶ
• 重さ:軽すぎず重すぎない、適度な重さのものが使いやすい
• フォークを選ぶ場合:先端が丸いものが安全
また、食器選びも大切です。底面が広く、立ち上がりのある食器を使うと、子どもがスプーンですくいやすくなります。
補助グッズを活用して三点持ちへの移行をサポートする
三点持ちの練習がうまくいかない場合は、補助グッズを活用する方法もあります。
市販されている補助グッズには、指を置く位置がわかりやすくなっているスプーンや、柄にリングがついていて正しい位置に指を入れられるタイプのものなどがあります。
また、家庭でできる工夫として、スプーンの柄にダブルクリップをつけて親指を乗せる位置の目印にする方法もあります。クリップの上に親指を乗せ、真ん中に人差し指を乗せて持つと、三点持ちの形を覚えやすくなります。
ただし、補助グッズに頼りすぎると、グッズなしでは持てなくなってしまうこともあります。補助グッズはあくまで練習のサポートとして使い、徐々に通常のスプーンに移行していくことを目指しましょう。
食事以外でもすくう動作を遊びで練習してみよう
スプーンの持ち方の練習は、食事の場面だけでなく、遊びの中でも取り入れることができます。
たとえば、以下のような遊びがスプーンの練習につながります。
• おままごとでスプーンを使って食べ物を運ぶ
• 砂場でスプーンを使って砂をすくう
• 水遊びでスプーンを使って水を移し替える
• ビーズやポンポンをスプーンですくってカップに入れるゲーム
• スポンジやマカロニ、おはじき、大豆などをスプーンでカップからカップへ移す遊び
遊びの中では食べこぼしを気にする必要がないため、子どもものびのびと練習できます。楽しみながら繰り返すことで、自然とスプーンの扱い方が上達していきます。
練習を楽しくする声かけと褒め方のコツ
スプーンの持ち方の練習を続けるためには、子どものモチベーションを保つ声かけが大切です。
効果的な声かけのポイントは、具体的に褒めることです。「上手だね」という漠然とした褒め方よりも、「バキューンの持ち方できたね」「自分でお口まで運べたね」「こぼさずに食べられたね」など、何ができたのかを具体的に伝えましょう。
また、結果だけでなく過程を褒めることも大切です。たとえこぼしてしまっても、「自分で持とうとしたね」「最後まで頑張ったね」と、挑戦したこと自体を認めてあげましょう。
反対に避けたいのは、他の子どもと比較したり、「なんでできないの」と責めたりする声かけです。子ども一人ひとりの発達ペースは異なるため、その子自身の成長を見守る姿勢が大切です。
「使ってみたい」「上手に持ちたい」という気持ちを大切に育てていきましょう。
【まとめ】スプーンの持ち方は発達段階に合わせて焦らず練習しよう
スプーンの持ち方は、子どもの発達段階に合わせて「上手持ち(手のひら握り)」「下手持ち(指握り)」「三点持ち(3つ指握り)」と変化していきます。最初から正しい持ち方を求めるのではなく、今の発達段階に合った持ち方を認めながら、少しずつステップアップしていくことが大切です。
持ち方が直らないときは、発達段階とのミスマッチがないか確認し、日常の遊びの中で手首や指先を使う経験を増やしてみましょう。食事の時間に無理強いするのではなく、子どものペースに合わせて練習を進めることで、楽しみながらスプーンの使い方を習得していくことができます。
スプーン・フォークも箸も、始める時期に「いつから」という決まりはありません。食事は楽しく、おいしく食べることが基本で一番大事です。子どもの様子を見ながら始める時期を見極め、興味を持ったときが始めどきと考えましょう。
スプーンの三点持ちをマスターすることは、将来の箸への移行や食事マナーの習得にもつながります。焦らず、子どもの成長を見守りながら、一緒に練習を進めていきましょう。
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参考:
千葉市 スプーンが正しく持てるようになるまでの配慮とポイント
https://www.city.chiba.jp/kodomomirai/yojikyoiku/shido/documents/supu-nnomochikata.pdf
参考:福知山市「スプーンの持ち方の変化」 https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/site/kosodate/70239.html












