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満腹中枢のない病気とは?子どもの症状や顔つきと太る原因を解説

2026.03.01
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「どれだけ食べても満腹にならない病気がある」という話を聞いたことはありませんか。通常は一定量を食べると脳の満腹中枢が働き「お腹がいっぱい」と感じますが、生まれつきその機能がうまく働かない病気があります。代表的なのが、国の指定難病でもあるプラダーウィリー症候群です。

満腹感を得にくいため過食や肥満につながりやすく、発達の遅れや特徴的な顔つき、行動面の特性など、子どもの成長にさまざまな影響がみられます。この記事では、病気の概要をはじめ、子どもに見られる症状や太る原因、診断や治療について分かりやすく解説しました。子どもの発達や健康に不安を感じている方は、参考にしてください。

満腹中枢のない病気とは?プラダーウィリー症候群を解説

プラダーウィリー症候群は、生まれつきの遺伝子の異常によって起こる病気です。国の指定難病に含まれています。脳の視床下部という部分の働きに影響が出るため、満腹感をうまく感じ取ることができません。その結果、食事量を自分で調整することが難しくなり、周囲の管理がなければ過食や急激な体重増加につながりやすい傾向があります。また、食欲を抑えようとすること自体が強いストレスになる場合もあります。

さらに、この病気は食欲の問題だけにとどまりません。筋力の弱さや発達の遅れ、知的発達への影響、感情のコントロールの難しさなど、成長のさまざまな面に関わります。そのため、医療的な治療とあわせて、生活面での工夫や継続的な支援が重要になるのです。早い段階から特性を理解し、周囲が協力して環境を整えていくことが、子どもの安定した成長につながります。

プラダーウィリー症候群はなぜ起こる?遺伝子異常が原因

プラダーウィリー症候群は、15番染色体に関係する遺伝子の働きがうまくいかないことで起こる病気です。人は通常、15番染色体を父親と母親から1本ずつ受け継ぎますが、このうち「父親から受け継ぐはずの遺伝子」が十分に働かないことが発症のきっかけになります。

その原因はいくつかあります。父親由来の染色体の一部が生まれつき欠けている場合もあれば、本来は父親と母親から1本ずつ受け継ぐところを、母親の染色体を2本受け継いでいる場合もあります。また、遺伝子の働きを調整する仕組みに異常があり、父親由来の遺伝子が「オフ」のままになってしまうのも原因の一つです。

いずれのタイプでも共通しているのは、父親由来の重要な遺伝子が十分に働かないという点です。その影響が、満腹感を感じにくいといった症状や、発達面の特徴として現れると考えられています。専門的な仕組みは複雑ですが、「父親側の遺伝子がうまく機能しないことが原因」と理解すると分かりやすいでしょう。

どのくらいの確率で発症するのか

プラダーウィリー症候群の発症頻度は、およそ1万人から1万5千人に1人の割合とされています。性別による差はなく、男女ともに同じ確率で発症する可能性があります。

多くの場合は突然変異によって起こるため、家族に同じ病気の人がいなくても発症することがあります。ただし、遺伝子異常のタイプによっては、次の子どもに影響が出る可能性もあるため、遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。

参考 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/4769

満腹中枢のない病気で見られる症状を年齢別に紹介

プラダーウィリー症候群の症状は、成長とともに姿を変えていきます。満腹中枢が働きにくいと聞くと、幼い頃から強い食欲が続くように思われがちです。けれども実際には、新生児期に目立つのは過食ではなく、食欲の弱さであることも少なくありません。

このように、時期によって現れ方には違いがあります。年齢ごとの傾向を押さえておくことが、変化を理解する手がかりとなるのです。ここでは、成長段階に沿って主な症状を見ていきましょう。

新生児期は筋緊張低下や哺乳困難が見られる

新生児期に見られる症状のなかでも、とくに目につきやすいのが筋肉の緊張の弱さです。抱き上げたときに体がくたっとしていて、思いのほか柔らかく感じられることがあります。手足の動きもどこか頼りなく、力強さに欠ける印象を受けるでしょう。

こうした筋緊張の低下は、授乳にも影響を及ぼします。母乳やミルクを吸う力が弱いため、うまく飲めない場合があります。十分な量を摂取できず、状況によっては経管栄養が必要になることもあるのです。さらに、泣き声が小さい、あるいはあまり泣かないといった様子が見られることもあります。そのため、日々の様子のなかで「何か違う」と感じ、異変に気づく保護者も少なくありません。

乳幼児期は発達の遅れや低身長が目立ち始める

乳幼児期に入ると、運動面や言葉の発達にゆっくりとした様子が見られることがあります。首がすわる、歩き始めるといった節目の動作も、同年代の子どもと比べると時間がかかる傾向です。成長の階段を一段ずつ上っていくものの、その歩みはやや穏やかだと感じられる場面もあるでしょう。

言語面でも変化が表れます。言葉を話し始める時期が後ろにずれ込んだり、発音がはっきりしなかったりする様子がみられます。知的発達には幅があり一概には言えませんが、なかには知的障害を伴うケースも報告されています。さらに、成長ホルモンの分泌が十分でない影響により、身長の伸びがゆるやかになる点も特徴の一つといえるでしょう。

小児期以降は過食や肥満が深刻になりやすい

過食の傾向は、多くの場合、2歳から4歳頃にかけて目立ち始めます。それまで食が細かった子どもが、急に食べ物へ強い関心を示し始めるのです。周囲が戸惑うほど食へのこだわりが強まるケースも少なくありません。

満腹感を得にくいことから、食事量を自分でうまく調整できない傾向があります。その結果、体重が増えやすい状態が続きやすくなるのです。食べ物を探し回ったり、人目を避けて口にしたりする行動が見られる場合もあるでしょう。肥満に伴う合併症を防ぐ観点からも、早い段階での食事管理と継続的な医療的支援が欠かせません。

満腹中枢のない病気には顔つきに特徴がある?

プラダーウィリー症候群では、顔立ちや体つきにいくつか共通してみられる傾向があります。ただし、その現れ方には個人差があり、外見だけで診断できるものではありません。気になる点がある場合は、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

アーモンド形の目や細い上唇など外見的な特徴

顔立ちの特徴としてよく挙げられるのが、アーモンド形と表現される目元です。目がやや切れ長に見えることがあります。

そのほか、上唇が薄めで口角が下がって見える、額がやや狭い、鼻筋が細いといった傾向が指摘されています。ただし、成長とともに印象が変わることも少なくありません。

また、肌や髪、瞳の色が家族よりもやや明るい場合があります。これは遺伝子の働きに関連していると考えられています。

手足が小さいなど身体面に見られる特徴

身体面では、手足がやや小さめであることが特徴のひとつです。手のひらや足の大きさが同年代の子どもより小ぶりで、指も少し短めに見えることがあります。見た目の違いとして気づかれることも少なくありません。

また、体の成長に関わる働きが弱いために、性器の発達がゆっくりになる場合があります。男の子では精巣が陰のうに下りてこないことや、陰茎の発育が十分でないことがあります。女の子でも、外性器の発達がゆるやかなケースがみられます。

そのほか、背骨が横に曲がる「脊柱側弯症」を伴うこともあります。成長とともに変化する可能性があるため、必要に応じて整形外科で定期的に様子をみていくことが大切です。

なぜ子どもが太る?満腹中枢のない病気と肥満の関係

プラダーウィリー症候群の子どもが太りやすい背景には、単なる「食べ過ぎ」だけでは片づけられない事情があります。食欲をコントロールする満腹中枢の働きが弱いため、食事をしても十分な満足感を得にくいのです。

それに加えて、体が消費するエネルギー量が少なめであるなど、代謝の面でも太りやすい条件がそろっています。さらに、食べ物へのこだわりが強くなりやすいといった行動面の特徴も重なります。こうした複数の要素が影響し合い、体重が増えやすい状態につながるのです。

満腹感を得られず食べ続けてしまう

この病気では、脳の視床下部の機能に異常があるとされています。視床下部は食欲や満腹感を調整する役割を担っていますが、その働きが十分でないため、食事をしても満腹感が得にくくなるのです。

食後であっても空腹感が続くため、さらに食べ物を求めてしまいます。本人にとっては空腹が解消されていない感覚が続いているため、周囲が制止することが強いストレスにつながることが少なくありません。

基礎代謝が低くエネルギーを消費しにくい

プラダーウィリー症候群の子どもは筋肉量が少なめであり、基礎代謝も低めです。基礎代謝は安静時でも消費されるエネルギーを指しますが、この値が低いと消費エネルギーも少なくなります。

その結果、一般的な子どもと同程度の食事量であっても、余分なエネルギーが脂肪として蓄積しやすくなります。食事制限だけでは体重管理が難しい場合があるのは、こうした体質的な背景が関係しているのです。

食べ物への強いこだわりや執着が生まれる

食べ物に対する関心が非常に強くなることも、この病気の特徴のひとつです。食事の時間を繰り返し確認したり、食べ物の在りかを気にしたりする様子が見られることがあります。

場合によっては、ゴミ箱や冷蔵庫から食べ物を探す行動につながることも少なくありません。こうした行動は意志の弱さによるものではなく、病気の特性によるものと理解することが重要です。家庭では環境を整えながら、医療や専門職と連携して支援を続けていく必要があります。

満腹中枢のない病気に見られる行動面や精神面の特徴

プラダーウィリー症候群では、過食に目が向けられがちですが、行動面や精神面にもいくつかの特徴がみられます。あらかじめ傾向を理解しておくことで、周囲の関わり方を工夫しやすくなるでしょう。

かんしゃくやパニックを起こしやすい

感情の調整が難しく、思い通りにならない場面で強い不安や怒りを示すことがあります。予定の変更や予想外の出来事に直面すると、泣き続けたり興奮が収まらなくなったりすることも多いです。

とくに食事に関わる制限が加わると、反応が強く出ることがあります。これは性格の問題というより、脳の機能的な特性が影響していると考えられています。

こだわりが強く切り替えが難しい

特定の物事に対するこだわりが強く、活動の切り替えに時間がかかることがあります。一度決めた手順を変えられることに強い抵抗を示すことが多いです。

同じ質問を何度も繰り返す、日課が崩れると不安定になるといった様子がみられることもあります。こうした特性は発達障害と共通する面もあり、環境調整や専門的な支援によって負担を和らげていくことが大切です。

満腹中枢のない病気はどう診断される?

プラダーウィリー症候群が疑われる場合、発達の様子や身体的な特徴を総合的にみながら判断していきます。筋緊張の弱さや発達の遅れ、体つきの特徴などが手がかりです。

そのうえで、確定診断のために遺伝子検査を行います。検査によって原因となる遺伝子の変化を確認するのです。

できるだけ早い段階で診断がつけば、成長ホルモン治療や食事管理などの医療的支援につなげやすくなります。家庭や園・学校でのサポート体制も整えやすくなり、将来を見据えた準備も進めやすくなるでしょう。

遺伝子検査で確定診断を行う

確定診断には、血液を用いた遺伝学的検査が行われます。採取した血液から15番染色体の状態を詳しく調べ、特定の領域に異常がないかを確認するものです。

新生児期に強い筋緊張の低下や哺乳のむずかしさがみられる場合、医師が本症を疑い、検査を勧めることがあります。こうした所見がきっかけとなるケースは少なくありません。診断が早期に確定すれば、成長ホルモン療法などの治療を適切なタイミングで開始できますし、生活面での支援体制も整えやすくなります。

気になる症状が続くときには、小児科や専門医への相談が大切です。経過を丁寧に追いながら、必要な支援へとつなげていく姿勢が求められます。

満腹中枢のない病気に有効な治療法や対処法

現時点では、プラダーウィリー症候群を根本的に治す方法は見つかっていません。しかし、さまざまな治療法やサポートを組み合わせることで、症状を軽減し、子どもの生活の質を高めることは可能です。

成長ホルモン療法で身長や筋力の改善を目指す

プラダーウィリー症候群の子どもには、成長ホルモン療法が広く行われています。成長ホルモンを注射で補充することで、身長の伸びを促進するだけでなく、筋肉量の増加や体脂肪の減少にも効果が期待できます。

成長ホルモン療法は、できるだけ早い時期から開始することが望ましいです。治療を受けることで、運動能力の向上や代謝の改善にもつながり、肥満の予防にも役立ちます。

食事管理と運動療法で体重をコントロールする

満腹中枢のない病気である以上、食事管理は生涯にわたって必要になります。一般的な子どもよりも必要カロリーが少ないため、栄養バランスを考えながら適切な量を設定することが重要です。

管理栄養士と相談しながら、個々の子どもに合った食事プランを作成しましょう。また、適度な運動を習慣づけることで、筋力を維持し、消費カロリーを増やすことも大切です。

療育や発達支援で社会性を育てる

プラダーウィリー症候群の子どもには、発達の遅れや行動面の特性に対する支援も欠かせません。療育や発達支援を通じて、コミュニケーション能力や社会性を育てていくことが大切です。

言語療法や作業療法、理学療法など、子どもの状態に合わせたリハビリテーションを受けることで、できることを少しずつ増やしていくことができます。専門家と連携しながら、子どもの成長を長期的にサポートしていきましょう。

【まとめ】満腹中枢のない病気を理解し子どもの成長を支えよう


プラダーウィリー症候群は、生まれつきの遺伝子の変化によって起こる病気です。おなかがいっぱいだと感じにくいため、食べ過ぎや体重の増えすぎが心配になります。また、発達がゆっくりだったり、行動に特徴がみられたりすることもあります。

顔立ちや体つきに似た傾向が出る場合もありますが、そのあらわれ方は子どもによってさまざまです。少しでも気になる様子があれば、早めに医療機関へ相談することが安心につながります。必要に応じて遺伝子検査を行い、診断をはっきりさせます。

今のところ病気そのものを完全に治す方法はありません。ただし、成長ホルモンの治療や食事の工夫、療育などを続けることで、よりよい生活を目指すことができます。正しい理解を持ち、周囲の力を上手に借りながら、一歩ずつできることから取り組んでいきましょう。

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