「子どもが急に白目をむいて、全身がガクガク震え出した」
「顔色がみるみる青くなって、呼びかけても反応がない」
初めて熱性けいれんを目にした保護者の方は、このような状況に強い恐怖を感じてしまうものです。
とはいえ実際には、熱性けいれんは日本の乳幼児の約7〜10%が経験する症状です。初めて見れば誰でも恐怖を感じますが、医学的には「成長とともに自然に治まる、後遺症も残らない症状」とされています。
正しい対応を知っておけば、万が一のときも慌てずに対処できるでしょう。
この記事では、熱性けいれんとは何か、熱性けいれんの症状や原因、発作が起きたときの正しい対応方法について解説します。発達障害との関係や予防法、救急車を呼ぶべきタイミングについても触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。
赤ちゃんや子どもに起こる熱性けいれんとは?

熱性けいれんとは、生後6ヶ月から5歳までの赤ちゃんや子どもが、38℃以上の発熱にともなって起こすけいれん発作(ひきつけ)のことです。
日本小児神経学会の「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」によると、髄膜炎や脳炎など重い病気が原因のけいれんや、てんかんをお持ちの子どもの発作は、熱性けいれんには含まれません。
あくまでも発熱がきっかけで、一時的な症状として現れるのが熱性けいれんです。
おもな症状と予兆の違い
熱性けいれんの典型的な症状は、全身の筋肉がぎゅっと硬くなり、その後にガクガクと震える発作です。医学的には「強直間代発作」と呼ばれています。
発作中には以下のような様子が見られます。
- 白目をむく、または眼球が上を向く
- 唇や顔色が紫色になる(チアノーゼ)
- 口から泡をふく
- 呼びかけに反応しない
- 手足が突っ張る、またはガクガク震える
多くの場合、発作は2〜5分以内に自然に止まります。発作後はぐったりして眠ってしまうことが多いですが、しばらくすると意識が回復し、普段の状態に戻ります。
一方で、熱性けいれんには明確な「予兆」がないことが特徴です。
風邪やインフルエンザなどで発熱した際に、体温が急激に上昇するタイミングで突然起こることが多く、事前に予測することは困難とされています。
単純型と複雑型の違い
熱性けいれんは、医学的に「単純型」と「複雑型」の2つに分けられます。
この分類は、将来てんかんになりやすいかどうかを見るためのもので、発作そのものの危険性を示すわけではありません。
単純型熱性けいれんは、以下の3つの条件をすべて満たす発作です。
- けいれんが15分以内に自然に止まる
- 全身性のけいれんである(体の一部だけではない)
- 同じ発熱期間中に1回のみ発症する
熱性けいれんの大多数はこの単純型にあてはまります。
そして複雑型熱性けいれんは、以下のいずれかに当てはまる場合を指します。
- けいれんが15分以上続く
- 体の片側だけがけいれんする(焦点発作)
- 同じ発熱期間中に複数回繰り返す
複雑型は単純型と比べて、その後のてんかん発症リスクがやや高いとされていますが、それでも大多数の子どもは問題なく成長していきます。
いずれにしても大切なのは、発作時の様子をしっかり観察し、医師に正確に伝えることです。
脳への影響はある?
単純型熱性けいれんが「子どもの認知機能や知能発達に悪影響を与える」エビデンスは、現時点では見つかっていません。
英国で実施された大規模な追跡研究では、熱性けいれん既往児ときょうだいを比較しても、学習成績や発達に差がないことが報告されています。
「脳に障害が残る」のではなく、「90%以上の子どもは良好な予後が期待できる」というのが現在の医学的な見解です。
したがって、短時間の単純型熱性けいれんが、脳に後遺症のようなものを残す可能性は低いと考えられています。
しかし、てんかんになり、長引く発作を繰り返す場合は、脳に影響を与え、発達障害や知的障害など、大人になっても後遺症が残る場合もあります。
けいれんが長く続いているときや繰り返す場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
熱性けいれんを起こしやすい子どもとは?

熱性けいれんには、発症しやすい子どもの特徴がいくつかあります。
生後6ヶ月から5歳の赤ちゃんと子ども
熱性けいれんは、生後6ヶ月から5歳ごろまでの乳幼児期に起こります。もっとも多いのは1歳代で、約80%の子どもが3歳までに初めての発作を経験するといわれています。
6歳を過ぎるとほとんど見られなくなりますが、まれに8〜9歳で発症することもあります。ただし、これはごく例外的なケースです。
家族歴がある子ども
熱性けいれんには、明らかな家族集積性があるとされます。
「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」によると、両親のいずれかが熱性けいれんの既往を持つ場合、子どもの発症率は約25%とのことです。
両親ともに既往がある場合は一般よりリスクが高まりますが、具体的な発症率には報告ごとに幅があります。
ただし、ひとつの遺伝子で決まるわけではなく、いくつかの「遺伝的な要素と環境」が組み合わさって発症すると考えられています。
家族歴があるからといって、必ずしも熱性けいれんを起こすわけではありません。
初めて熱を出した子ども
生後まもない赤ちゃんの時期の突発性発疹やインフルエンザなど、「初めての高熱」が熱性けいれんのきっかけになることは少なくありません。
なぜなら、乳幼児の脳は急激な体温上昇に対応しにくいためです。
特にインフルエンザの場合は、「発熱から発作までの時間が長い」という特徴があり、発症後24時間以降でもけいれんを起こした報告があります。
参考:インフルエンザに伴う熱性けいれんの臨床像についての検討
発達障害との関係はある?
単純型熱性けいれんが、それ自体の影響で知能や学習能力を低下させる根拠はありません。
ただ、発作が長引く、繰り返す、片側だけのけいれんといった場合はてんかん発作の可能性もあるため、小児科医と相談し、経過観察を受けましょう。
熱性けいれんが起きたらどうする?

初めて子どものけいれんを目にすると、多くの保護者がパニックになってしまいます。大切なのは、正しい対応方法を事前に知っておくことです。
けいれんが始まったらすぐにすること
発作が始まったら、まず以下の対応を行いましょう。
1. 子どもの顔と体を横向きにする
吐物や唾液が気道に入らないよう、横向きの姿勢にします。これがもっとも大切な対応です。
2. 首周りの衣服を緩める
呼吸を楽にするため、襟元のボタンを外したり、きつい服を緩めたりしましょう。
3. 発作の持続時間を計測する
時計やスマートフォンで発作が始まった時間を確認し、何分続いたかを記録します。この情報は医師に伝えるときに役立ちます。
4. 余裕があれば動画を撮影する
気道確保ができて余裕が生まれたら、スマートフォンで動画撮影ができると医師の診断に役立ちます。冷静に、そのときの状況を記録してください。
観察すべきポイント
発作中および発作後には、以下のポイントを観察しておきましょう。
- けいれんの持続時間(何分続いたか)
- 全身性か片側性か(体の一部だけか全身か)
- 意識の回復状態(発作後、呼びかけに応答するか)
- 呼吸の状態や顔色の変化
これらの情報は、医師が単純型か複雑型かを見分けるうえで大切な手がかりになります。
パニックになりがちな状況でも、できる範囲で観察しようとする姿勢が最善なのです。
けいれん中にやってはいけないこと
冷やす 氷水をかけたり、氷を当てたりしても発作は止まりません。かえって危険です。
目の前でけいれんする我が子に「何かしてあげたい」と思うのは当然ですが、発作中は安全を確保して見守りましょう。
救急車を呼ぶべきタイミング
以下のいずれかにあてはまる場合は、119番に電話してください。
- けいれんが5分以上続く
- 発作が停止した後も意識が戻らない
- 呼吸や脈が明らかに異常
- 同一発熱期間中に発作を繰り返す
5分以内に自然に発作が止まり、その後の意識が戻ったときは、落ち着いて医療機関を受診しても構いません。
ただ、多くの小児科医は「初めてで不安なら救急車を呼んで良い」「救急車を呼んだことを責めることはない」と保護者に伝えています。
迷ったときは、遠慮せず救急車を呼んでください。
家庭でできる熱性けいれんの予防方法とは?

ここでは、家庭でできる予防方法と、その効果について解説します。
予防薬の使い方と注意点
熱性けいれんの予防薬として使われるのが、ジアゼパム坐剤(商品名:ダイアップ)です。発熱に気づいた時点で投与することで、けいれんの予防効果があります。
ただし、予防薬が必要になるケースは限られています。日本小児神経学会のガイドラインでは、以下のような場合に予防薬の使用を推奨しています。
- 15分以上続く発作(遷延性発作)があった場合
- 再発リスクが高い条件が複数あり、熱性けいれんが2回以上繰り返した場合
逆に、単純型かつ初めて熱性けいれんを発症した場合は、予防薬の使用は推奨されていません。
単純型は後遺症なく治まることが多く、予防効果と副作用(眠気、ふらつきなど)を比較すると、薬を使わない方が子どもの負担が少ないと考えられているためです。
頭や身体を冷やすのは有効?
「熱を下げればけいれんを防げる」と考える保護者の方は多いですが、実は冷却や解熱剤では熱性けいれんを予防できません。
日本小児神経学会は、解熱剤の有無で熱性けいれんの再発率に差がないとしています。そのため、「解熱剤の効果が切れたときにけいれんを起こしやすくなる」という心配も、科学的根拠はありません。
解熱剤の本来の役割は、発熱による不快感や食欲低下を軽減することです。
熱を下げるために使うのは問題ありませんが、けいれん予防での使用は避けてください。
保育園に伝えるべきこと
熱性けいれんの既往がある子どもが保育園に通う場合は、以下を事前に共有しておきましょう。
- 熱性けいれんの既往があること
- 過去の発作の様子(持続時間、回数など)
- 発作時の対応方法
- 予防薬の有無と使用タイミング
- かかりつけ医の連絡先と保護者の緊急連絡先
これで万が一、園内で発作が起きた際に、冷静に対処してもらえます。子どもの安全だけでなく、親御さん自身も安心なはずです。
熱性けいれんに関するよくある質問

熱性けいれんについて、保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
熱性けいれんで死亡することはある?
死亡や脳損傷の危険性は極めて低いとされています。ただし、15分以上けいれんが止まらない場合は注意が必要なため、すぐに救急車を呼んでください。
再発する確率はどのくらい?
約30〜70%といわれています。ただし基本的に、子どもは生涯を通じて1回のみで、その後発症しないとされています。
参考:「エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン 2017」
大人も熱性けいれんになることがある?
熱性けいれんの定義は通常、生後6ヶ月から5歳までの乳幼児を対象としているため、大人は対象となりません。
ただし、インフルエンザ流行期には5〜11歳の子どもでも、高熱にともなって似たようなけいれんが起こることがあります。この場合は「有熱性発作」として、医師に診てもらいましょう。
大人になって初めてけいれん発作が起きた場合は、病気が隠れている場合があるので早めに医療機関に相談しましょう。
寝ているときに症状に気づかなかったらどうなる?
全身性の熱性けいれんは、体がぎゅっと硬くなり規則的にガクガク震えるため、保護者が見落とすことはほとんどありません。発作中は白目をむいたり、顔色が紫色になったりと見た目の変化もはっきりしているので、すぐに気づくはずです。
ただし、体の一部のみがけいれんする焦点発作の場合は、気づきにくいでしょう。
発作後には数時間から数日間、異常な眠気が続くこともあります。発熱中の子どもの様子がいつもと違うと感じたら、医療機関への相談をおすすめします。
子どもの熱性けいれんについてのまとめ
熱性けいれんは、日本の乳幼児の約7〜10%に見られる比較的よくある症状です。初めて目にすると驚いてしまいますが、単純型であれば脳への影響はないとされています。
万が一、発作が起きたときは、子どもを横向きにして気道を確保し、発作の持続時間を計測することが大切です。
口に物を入れたり、体を強く揺さぶったりすることは避けてください。5分以上続く場合や意識が戻らない場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
「もしまた起きたらどうしよう」という不安は、すぐには消えないかもしれません。それでも、対応方法を知っているだけで、気持ちの余裕が少し違ってくるでしょう。
子どもの発達や成長で気になることがあれば、専門家に相談することも大切です。
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お子さまの発達や成長で不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。
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