ネグレクトを受けた子どもの特徴とは?周囲の支援方法について
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「子どもが十分な食事を取れていないように見える」「衣服がいつも汚れていて、適切なケアを受けていない気がする」など周囲にネグレクトを受けている可能性のある子どもがいた場合、どのように接し、支援すればよいのか悩むこともあるでしょう。
ネグレクト(育児放棄)は、心身の発達に深刻な影響を及ぼします。しかし、適切な支援を理解したうえで実施することで、健やかに成長する手助けをすることができます。
本記事では、ネグレクトを受けた子どもに見られる特徴を解説し、周囲の大人ができる具体的な支援方法についてご紹介します。
目次
- ネグレクトを受けた子どもの特徴
- ネグレクトを受けた子どもの支援
- ネグレクトを受けた子どもに関するまとめ
ネグレクトを受けた子どもの特徴
ネグレクトを受けた子どもは、身体面・心理面・行動面・社会面にさまざまな影響を受けることがあります。しかし、身体的虐待とは違い、外傷がないために気づかれにくいのが特徴です。
そのため、「何となく様子が気になる」と思ったときに、子どもの状態を注意深く観察し、適切な対応をとることが重要なのです。
まず本項では、ネグレクトを受けた子どもに見られる具体的な特徴について詳しく解説していきます。
ネグレクトとは?
ネグレクトとは、保護者が子どもの基本的な生活ニーズを満たさない育児放棄のことで、深刻な児童虐待(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)の一種とされています。
具体的には、家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなどが該当します。
ネグレクトと他の虐待との違い
ネグレクトは、児童虐待の一つではありますが、子どもの基本的な生活ニーズを無視する行為であり、身体的虐待や心理的虐待、性的虐待とは少し異なります。
身体的虐待は、殴る・蹴るなどの直接的な暴力を指し、心理的虐待は言葉や態度で子どもを傷つける行為、性的虐待は性的行為を強要することを指します。一方、ネグレクトはこれらの虐待的な行為を行いませんが、子どもの育児を放棄することが特徴です。
参考元:こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai
身体面にあらわれる特徴
ネグレクトを受けた子どもは、以下のような身体的特徴を示すことがあります。
・栄養不良や発育不全
十分な食事が与えられていない場合、体重増加や減少などの不良や栄養失調などが見られます。
・不衛生な状態
清潔な衣服を着せてもらえず、入浴もさせてもらえないため、身体が不潔な状態が続くことがあります。
・必要な医療の放置
病気やけがをしても適切な医療を受けられず、慢性的な健康問題を抱え続けていることがあります。
心理面にあらわれる特徴
ネグレクトは、子どもの心理面にも深刻な影響を及ぼします。
・感情表現が難しい
愛情や関心を受けられないことで、感情を適切に表現することが難しくなり、引きこもりや攻撃的な行動を示す傾向があります。
・自尊心が低くなる
自分が大切にされていないと感じることで、自己評価が低くなり、自尊心や自己肯定感が欠如する傾向があります。
行動面にあらわれる特徴
ネグレクトを受けた子どもは、以下のような行動にも特徴を示すことがあります。
・問題行動が多くなる
集中力の欠如や多動、攻撃性、衝動性など、目に見えるような問題行動が現れる傾向があります。
・学習意欲が低くなる
学習への興味や意欲も低下し、学業成績の著しい不振などが見られる傾向もあります。
社会面にあらわれる特徴
ネグレクトは、子どもの社会的な発達にも悪い影響を及ぼします。
・社会的スキルの欠如
他人との適切な関わり方を周囲から学べず、社交性に欠けていく傾向があります。
・学校生活に支障が出る
遅刻や欠席が増えたり、素行が悪くなったり、学校での適応が難しくなる傾向があります。
これらのような兆候が感じられる子どもがいたら、しっかりと観察し、必要な対応やサポート、支援機関との連携などが求められます。
ネグレクトを受けた子どもの支援
「ネグレクトを受けた子どもにどう接すればいいのか」「どんな支援をすれば、安心できる環境を提供できるのか」など対応の仕方がわからず、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本項では、ネグレクトを受けた子どもに対する具体的な支援方法について解説していきます。
子どもの安全と健康の確保
ネグレクトを受けた子どもの安全と健康を確保することが、最優先にすべきことです。
まず、子どもが危険な状況にある場合は、児童相談所(189番)や警察に連絡し、安全な環境を確保することが重要です。また、十分な食事や医療を受けられず、健康状態が悪化しているケースも多いため、医療機関で健康チェックを受け、必要な治療を行うことも必要でしょう。
サポートする側も一人で抱え込まず、児童相談所や支援機関と連携しながら、子どもの成長を支えていくことが大切です。
具体的な支援機関と連携し相談する
ネグレクトを受けた子どもを支援するためには、適切な専門機関と連携し、相談するのも重要なことです。以下のような公的機関や専門団体が支援を行っています。
・児童相談所
全国共通の児童相談所ダイヤル「189(いちはやく)」に電話することで、最寄りの児童相談所につながり、24時間相談可能です。子どもの安全確保や必要な支援を受けるための第一歩として活用できます。
・市町村の児童家庭相談窓口
各自治体には、子どもや子育てに関する相談を受け付ける窓口があります。「各市町村+子育て相談」などで検索し、それぞれに合った適切な窓口を見つけることができます。
・NPO法人や支援企業
たとえば、認定NPO法人児童虐待防止協会(APCA)は、児童虐待防止のための活動を行っています。こうした団体とも連携し、情報や支援を得ることが可能です。
これらの機関と連携することで、子どもの心身のケアや生活環境の改善、必要に応じた法的手続きを進めることができます。専門家の力を借りることで、子どもにとって最善な支援につながるでしょう。
安心感を与える接し方と居場所づくり
ネグレクトを受けた子どもは、信頼関係の欠如や不安感を抱えていることが多いため、安心感を与える接し方や居場所づくりが重要です。以下のようなポイントがあります。
・温かいコミュニケーション
子どもの話に耳を傾け、感情を受け止めて傾聴する姿勢を持ちましょう。否定せず、共感することを続けることで、子どもは少しずつ安心感を抱きます。
・安定した生活リズムの提供
規則正しい生活習慣をサポートし、日常生活に安定感をもたらすことで、子どもの心も落ち着いてくるはずです。
・安全で安心できる居場所の提供
地域の子ども食堂や学習支援の場など、子どもが安心して過ごせる場所を活用することも有効です。これらの居場所は、子どもの社会性や自己肯定感を育む場として機能します。
・専門家との連携
心理的なケアが必要な場合、臨床心理士や心理カウンセラーと連携し、適切なサポートを提供することも重要です。専門的な視点からの支援は、子どもの心の回復に大きな効果をもたらします。
子どもにとって安心できる環境を整えることは、心の傷を癒し、健やかな成長を促すために欠かせません。周囲の大人が温かく見守り、支える続けることで、子どもは再び信頼と安心を取り戻すことができます。
ネグレクトを受けた子どもに関するまとめ
ネグレクトとは、保護者が子どもの基本的な生活ニーズを満たさない育児放棄のことで、子どもの心身に深刻な影響を及ぼします。身体的な栄養不良や不衛生な状態、心理面での自尊心の低下、学習意欲の低下や問題行動、社会性の欠如などが見られることがあります。しかし、身体的虐待と異なり、外傷がないため気づかれにくいのが特徴です。そのため、子どもの様子に違和感を覚えたら、注意深く観察し、適切な対応をとることが重要でしょう。
支援やサポートとして、まずは子どもの安全と健康を確保し、児童相談所(189番)や関連機関と連携することが必要です。また、信頼関係を築き、安心感を与える接し方を意識することも大切になります。地域の支援機関やNPO法人を活用して、子どもが安心して過ごせる居場所を提供することも方法の一つです。
周囲の大人が温かく寄り添い、専門機関と協力しながら支援を続けることで、子どもは安心感を取り戻し、健やかに成長することへつながっていきます。
参考元
こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/dl/120502_11.pdf
日本小児科学会
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240716g_tebiki_3_5.pdf