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大人の学習障害とは?仕事の困りごとと特性に合った接し方

2025.12.08
  • 発達障害
  • LD(学習障害)
  • 支援方法・家庭での過ごし方

学習障害(LD)のあるお子さんを育てる中で、「この子が大人になったときにどんな困りごとに直面するのだろう」と不安を感じる保護者の方は少なくありません。読み書きや計算が苦手な特性は、学校を卒業したあとも、仕事や生活の場面で影響を及ぼすことがあるからです。

お子さんが将来、自分らしく働き、充実した毎日を送るために大切なのは「できるだけ早い段階から特性に合った支援を整えていくこと」です。適切なサポートがあれば、お子さんは自分の得意なことを活かせます。そして、自信を持って社会に出ていけるでしょう。

この記事では、大人の学習障害について、仕事の場面で起こりやすい困りごとや周囲の関わり方・接し方を丁寧に解説します。診断基準やチェックポイントもわかりやすくご紹介しますので、学習障害を持つお子さんの将来を考えるときの参考にしてください。

学習障害とは何か?大人になるとどうなる

学習障害とは、知的な発達に遅れはないものの、特定の分野で著しい困難がみられる状態を指します。まずは、基礎知識をおさらします。

脳の機能的な特性

学習障害は、生まれつきの脳機能の特性により生じると考えられています。本人の努力が足りないわけではなく、脳の情報処理に偏りがあることが主な原因です。そのため、知的な能力が平均的かそれ以上であっても、特定の学習分野で強い苦手さを感じることがあります。

医学的には「限局性学習症(SLD)」と呼ばれ、教育の現場では「学習障害(LD)」という言葉が一般的に使われています。いずれも同じ状態を指しますが、周囲の理解や環境の整え方により、その特性を十分にカバーできます。

学習障害で見られる3つのタイプ

学習障害には主に3つのタイプがあります。


これらの特性はひとつだけ現れる場合もあれば、複数が重なることもあります。困りごとは人によって異なるため、お子さん一人ひとりの特性に合わせたきめ細かな支援が欠かせません。

ADHDなど他の発達特性と併存する?

学習障害は、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)など、他の発達特性と一緒にみられることが少なくありません。日本小児神経学会が公表している研究論文によると、ADHDのある人のおよそ30〜40%に学習障害が併存していると報告されています。

複数の特性が関わると、支援のポイントも複雑になります。そのため、専門機関でしっかりと評価を受け、それぞれの特性に合ったサポート方法を見極めていくことが大切です。

出典:一般社団法人 日本小児神経学会「一般社団法人 日本小児神経学会」

大人になると仕事でどう困る?


学習障害(LD)のあるお子さんが大人になると、職場でさまざまな場面で困りごとに直面することがあります。学校とは違い、社会に出ると読み書きや計算を避けるのが難しく、特性の影響が表れやすくなるためです。以下、仕事でよく見られる困りごとをご紹介します。

資料やメールを読むのが遅い

マニュアルや取引先からのメールを読む際に、内容を理解するまで時間がかかることがあります。文字を丁寧に追いながら読まなければならず、同じ文章を何度も読み返すことが少なくありません。

職場では、文字情報を音声で確認できる仕組みを取り入れると負担を減らせます。詳しくは後半で解説しますが、文書を短く整理したり、要点だけをまとめた資料を共有したりするのが有効です。

報告書やメモを書くのが苦手

書字表出障害があると、会議の議事録や業務報告書を書くときに苦手さを感じやすくなります。口頭で聞いた内容をすぐにメモできず、後から思い出して書こうとしても、その整理がなかなかできません。

文字を書くのに時間がかかるため、手書きの書類作成は負担が大きくなりがちです。こうした場合は、パソコンや音声入力の活用、定型文のテンプレートを使うなどの工夫で作業を進めやすくなります。

数字や時間の管理が難しい

算数障害がある場合、見積書の作成や経費の精算など、数字を扱う業務でつまずくことがあります。暗算が難しいため、簡単な計算でも電卓を使う機会が増えるでしょう。また、数字の桁を読み間違えたり、金額の大小を判断するのに時間がかかったりすることもあります。

こうした困りごとには、スケジュールアプリの活用やリマインダー機能の利用、計算ツールの導入などが効果的です。適切な作業環境を整えることで、安心して仕事に取り組みやすくなります。

生活面でも困りごとが現れる

学習障害の影響が私生活に広がることもあります。たとえば、郵便物や契約書の内容を理解するのに時間がかかったり、支払いの期限を逃してしまったりするケースです。買い物の金額比較や家計管理が難しい人もいます。

日常の中でうまくいかないことが重なると、自信を失いやすくなり、うつ病や不安障害などの二次的な問題につながる可能性があります。したがって、周囲が理解し支えていくことが、安心して生活を続けるために大事なことなのです。

大人になる前に学習障害をチェックする方法

「もしかして……」と感じたときは、できるだけ早く専門機関に相談してみましょう。そこで特性を確認することで、お子さんに合った学び方や支援の方向性が見えてきます。

どこでチェックを受けられる?

学習障害のチェックは、医療機関や教育の相談機関などで受けられます。まずは、児童精神科や小児神経科のある病院で、専門的な検査および診断を受けてください。発達障害者支援センターや教育委員会の相談窓口でも、学習面のつまずきについて丁寧に話を聞いてもらえます。

どうしても悩んだら、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。必要に応じて専門機関を紹介してもらえるはずです。

どんな検査でチェックする?

学習障害の診断では、主に「知能検査」と「学力検査」を行います。知能検査では、WISC-V(ウィスク・ファイブ)などの検査を使い、言葉の理解力、目で見た情報を処理する力、考える力などを詳しく調べます。お子さんの得意な部分と苦手な部分を把握することで、特性をより正確に理解できます。

あわせて行う学力検査では、読み書きや計算などの力を確認します。これは、同年代の子どもたちと比べてどのくらい差があるかを見極める検査です。その結果に加えて学校や家庭での様子、発達の経過も総合的に判断します。

大人になってから気づくケースも多い

学習障害は、子どものころには目立たず、大人になってから気づかれることもあります。学生時代は、得意な教科で苦手を補ったり、周囲のサポートに助けられたりして、特性が見過ごされてしまうことがあるためです。

だからこそ、早い段階で特性を理解し、適切な支援や環境を整えておくことが大切です。お子さんに合わせた接し方やサポートがあれば、その子らしい力を発揮しながら生活していけるでしょう。

大人の学習障害と仕事を続けるためのコツ


学習障害があっても、工夫やサポートによって仕事を続けています。ここでは、学習障害を持つ大人が仕事を続けるためのコツをご紹介します。

音声読み上げやマーカーを仕事で活用する

読字障害がある場合、音声で情報を確認できる仕組みを取り入れると仕事をスムーズに進められます。

たとえば、JAWSやNVDAなどの音声読み上げソフトを使えば、メールや資料の内容を耳で確認できます。文字を追うよりも理解しやすく、読字障害を持つ人に重宝されています。同様に、スマートフォンに搭載されている読み上げ機能や専用アプリを使っても良いでしょう。

また、紙の資料を読むときは、読んだ箇所に蛍光マーカーを引くと進み具合が一目で分かります。小さな工夫を積み重ねることで業務負担が軽くなり、内容理解が進みやすくなるでしょう。

他には、リーディングトラッカー(リーディングスリット)を利用し、読む部分以外を隠し、読みやすくする方法もあります。

ステラ個別支援塾では、リーディングトラッカーなどお子さんに合わせた教具や方法を使用し、学習をサポートしています。

仕事で音声入力やテンプレートを使う

書字表出障害がある人は、音声入力を取り入れると仕事が楽になります。

たとえば、Microsoft Wordの「ディクテーション」機能を使えば、話した言葉が自動的に文字に変換されます。キーボード入力や手書きの負担を大きく減らせるのが魅力です。同様にMicrosoft 365版のTeams会議では「ライブトランスクリプション」により、発言内容をリアルタイムで文字に起こせます。

また、定型的な報告書やメールの作成、あらかじめテンプレートを準備しておくと便利です。必要な部分だけを修正すればよいので、文書を一から作成する手間を省けます。業務内容に合ったテンプレートを上司や同僚と一緒に整えることで、仕事がよりスムーズに進むでしょう。

障害者手帳で配慮を受ける

障害者保健福祉手帳を取得すると、職場で合理的な配慮を受けやすくなります。障害者雇用枠で働けるようになり、企業側が特性を理解したうえで、業務の内容や働き方を調整し、接し方に配慮してくれることもあります。

手帳の申請には、初診日から6か月以上が経過している必要があります。職業訓練や就職後の支援など、さまざまな公的サポートを利用できるのもポイントです。

特性を理解と接し方を知ってもらう

職場で自分の特性を理解と接し方を知ってもらうには、困っていることを具体的に伝えることが大切です。そのうえで、「こうしてもらえると助かります」といった代替手段を一緒に提案すると、相手も受け入れやすくなります。

また、苦手なことだけでなく、得意な面も積極的に共有します。口頭での説明や視覚的な整理が得意なら、その強みを生かせる業務を担当するのが理想です。

相談先はどこ?学習障害の支援機関


学習障害を持つ方やご家庭が利用できる相談先や支援機関が複数存在します。専門家のアドバイスを受けながら、本人に合った支援を見つけましょう。

ハローワークの専門窓口

ハローワークには、障害のある方の就職を専門的に支援する窓口があります。学習障害のある方の就職活動をサポートし、特性に配慮した求人を紹介してもらえるでしょう。別途、職業相談や職業訓練の案内も受けられるため、安心して次のステップを考えられます。

また、障害者手帳を持っており、障害者雇用枠での就職を希望する場合は、企業とのマッチングや職場実習の調整もしてくれます。就職後も定期的なフォローアップがあるため、働き続けるための支援を継続的に受けられる窓口です。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、仕事と生活の両面からサポートを行う公的な支援機関です。
就職に関する相談はもちろん、生活リズムの整え方や金銭管理、人間関係のストレス対処といった、生活スキルの向上も支援対象となっています。

ここでは仕事を始める前の準備段階から相談に乗ってもらえるほか、就労後も定着支援として定期的な面談を受けられるのが特徴です。企業への働きかけや、職場環境の調整、上司への助言なども行われ、職場と本人の双方が安心して働ける環境づくりを支えています。

障害者就業・生活支援センターは、障害者手帳を持っていなくても利用できるところもありますが、原則、障害者手帳を持っている人の利用に限られるところもあります。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す人をサポートするための訓練施設です。ビジネスマナーやパソコンスキルはもちろん、報告・連絡・相談の方法や、職場でのコミュニケーションなど、実践的なスキルを身につけられます。

発達障害のひとつとして理解される学習障害に対応した独自のトレーニングプログラムを備えている事業所もあります。模擬的な職場環境で作業を体験したり、実際の企業でインターンを行ったりしながら、自分に合った仕事や働き方を見つけていけます。
就労移行支援の利用は、障害者手帳の取得は必須ではありませんが、障害者雇用枠で就職を希望する場合は、手帳の取得が必要です。。

大人の学習障害についてのまとめ

学習障害(LD)とは、読み書きや計算など特定の分野で困難が見られる特性です。しかし、適切な支援と工夫を重ねることで、大人になっても自分らしく働けます。現時点で気になる方は、できるだけ早い段階でお子さんの特性を理解し、支援を考えましょう。専門機関でチェックを受けることで、お子さんの得意・苦手を正しく把握できます。そして、必要なサポートへつなげやすくなるのです。

ステラ個別支援塾では、学習障害のあるお子さん一人ひとりの特性を丁寧に見極め、読み書きや計算の苦手さに配慮した指導を行っています。 得意分野を伸ばしながら、自信を持って学び続けられるようサポートします。お子さんの将来に不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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