きょうだい児とは?家庭でできる配慮と支援の考え方を解説
- 発達障害
- ASD(自閉症スペクトラム)
- 知的障害
- その他障害・疾患
- ADHD(注意欠如多動性障害)
- ダウン症
- LD(学習障害)
- 支援方法・家庭での過ごし方
「障害のある兄弟姉妹がいる子どもは、どんな思いを抱えているんだろう」「もう一人の子どもにもきちんと向き合えているのかな…」そんな悩みや不安を感じている保護者の方は多いかもしれません。
特別な支援が必要な子どもに注力する中で、他のきょうだいへの配慮が難しくなることもあるでしょう。しかし、そのような環境で成長する「きょうだい児」には、特有の気持ちや影響があることも少しずつ知られるようになってきました。
そこで本記事では、きょうだい児の基本的な理解から、ご家庭での関わり方やサポートまで解説していきます。
目次
- きょうだい児とは?
- きょうだい児への影響とは?
- きょうだい児を支えるために
- まとめ
きょうだい児とは?
「きょうだい児って何のことを指すの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。きょうだい児とは、障害や重い病気を持つ兄弟姉妹と共に育つ子どもたちのことを指します。
特に幼少期から障害のあるきょうだいと共に生活する中で、見えない役割や我慢を抱えることも少なくありません。親としては精一杯子どもたちに向き合っているつもりでも、きょうだい児が感じる寂しさや不安は、なかなか表に出てこないこともあるのです。
そこで本項では、きょうだい児とはどのような存在なのか、その特徴や抱えている葛藤について解説していきます。
きょうだい児とはどんな子ども?
きょうだい児とは、障害や重い病気を持つ兄弟姉妹と共に育つ子どもたちを指します。
この表現では「兄弟」「姉妹」などの漢字を使わず、すべての組み合わせを包括的に示すためにひらがなで「きょうだい」と表記します。 きょうだい児は、幼少期から特別なケアが必要な兄弟姉妹と共に生活する中で、独自の経験や役割を担うことが多くなる子どもです。
きょうだい児が抱えやすい気持ちや葛藤
きょうだい児は、以下のような感情や葛藤を抱えやすいとされています。
孤独感や寂しさ
親の関心が障害を持つ兄弟姉妹に向かいやすく、自分が後回しにされていると感じることがあります。
責任感やプレッシャー
幼い頃から兄弟姉妹の世話を任されることで、「自分がしっかりしなければ」という思いを抱くことがあります。
自己犠牲の精神
家族の負担を減らすために、自分のやりたいことや進路を諦めることがあります。
周囲の理解不足によるストレス
友人や社会からの理解が得られず、悩みを共有できない孤立感を感じることがあります。
これらの感情は、きょうだい児の精神的な健康や自己肯定感に影響を及ぼす可能性があるため、周囲の理解とサポートが重要です。
きょうだい児が置かれやすい環境の特徴
きょうだい児は、以下のような環境に置かれていることが多いのが特徴です。
親の関心の偏り
障害を持つ兄弟姉妹へのケアに親の時間やエネルギーが集中し、きょうだい児への注意が不足しがちです。
生活が制限される
兄弟姉妹の状態により、家族全体の行動が制限され、きょうだい児自身の活動や経験の機会が減少することがあります。
将来への不安
親が高齢になった後の兄弟姉妹のケアを自分が担うのではないかという不安を抱えることがあります。
これらの環境要因は、きょうだい児の成長や将来の選択に影響を与える可能性があるため、家族や社会全体での理解と支援が求められます。
きょうだい児への影響とは?
きょうだい児は、家庭の中で特別な役割や空気を感じ取りながら成長していきます。そのため、心理的・行動的にさまざまな影響を受けることが多いです。
たとえば、親に気を遣って本音を言えなかったり、反対に注目されたい気持ちから反抗的になったりすることもあります。一方で、やさしさや共感力など、きょうだい児ならではの強みを育んでいく姿も見られるでしょう。
ここでは、きょうだい児がどのような影響を受けて成長していくのか、年齢や発達段階に応じた感じ方の違いもふまえて、解説していきます。
不安・寂しさ・罪悪感など心理的影響
きょうだい児は、親の関心が障害のある兄弟姉妹に向かいやすいため、以下のような心理的な影響を受けていることが多いです。
●不安:将来、兄弟姉妹の面倒を自分が見ることになるのではという心配
●寂しさ:自分への注目が少なく、孤独を感じること
●罪悪感:兄弟姉妹に対して嫉妬や怒りを感じることへの自己嫌悪
これらの感情は自然なものであり、決して悪いことではありません。大切なのは、子どもがこのように抱えている気持ちを安心して話せる環境を作ることです。
自己抑制・反抗・無関心など行動的影響
きょうだい児は、家庭内の状況に応じて以下のような行動的な影響を受けていることがあります。
●自己抑制:自分の欲求や感情を抑え、親に負担をかけないようにする
●反抗:注意を引くために反抗的な態度をとってしまう
●無関心:家庭の問題から距離を置こうとしてしまう
これらの行動は、子どもが自分なりに状況に適応しようとする結果です。親としては、子どものサインを見逃さず、適切なサポートや機会を提供することが重要でしょう。
きょうだい児特有の成長や優しさもある
一方で、きょうだい児は以下のような前向きな特性を育むことも多いです。
●思いやり:他者の気持ちを理解し、助けようとする利他的な心
●責任感:家族の一員としての自覚と責任を持つ
●忍耐力:困難な状況でも自分で考えて耐え抜く力
これらの特性は、将来の人間関係や社会生活において大きな強みとなります。親としては、子どもの努力や成長をしっかりと認め、励ますことも大切です。
年齢や発達段階による感じ方の違い
きょうだい児の感じ方や反応は、年齢や発達段階によっても異なります。
●幼児期:状況を十分に理解できず、漠然とした不安を抱くことがある
●学童期:周囲との違いを意識し、戸惑いや恥ずかしさを感じることがある
●思春期:自立心が芽生え、家族との関係に葛藤を抱くことがある
各段階での子どもの気持ちに寄り添い、理解を深めながら適切なサポートを心がけることが重要です。
きょうだい児を支えるために
きょうだい児が安心して自分らしく成長するためには、家庭でのちょっとした関わり方や周囲の理解が大きな支えとなります。「つい後回しになってしまっているかもしれない」と不安に感じている保護者の方も大丈夫です。
日々の声かけや時間の使い方、そして外部のサポートや支援制度の活用など、ご家庭でできることはたくさんあります。
ここでは、ご家庭でできる具体的なサポート方法や相談できる場所、そして地域や学校との連携の大切さについて解説していきます。
家庭でできる関わり方と声かけの工夫
家庭内での関わり方や声かけ一つで、きょうだい児の心の安定や自己肯定感を高めることができます。まずは、きょうだい児の気持ちや行動に対して、具体的に褒めることを心がけましょう。
たとえば、「お手伝いしてくれて助かったよ」「優しく接してくれて嬉しいな」といった言葉がけなどが効果的です。また、きょうだい児が感じている不安や悩みに耳を傾け、「いつでも話していいんだよ」と安心感を与えることも大切でしょう。努力や協力を認める言葉をかけることで、きょうだい児の役割を肯定的に捉えられるようサポートしましょう。
ひとりの子どもとして向き合う時間をつくる
きょうだい児は、自己犠牲の精神が強く、自分自身の気持ちや欲求を後回しにしがちなため、きょうだい児一人ひとりと向き合う時間を意識的に作ることが重要です。
たとえば、週に一度はきょうだい児と二人きりで過ごす時間を設け、好きな遊びやお出かけを楽しむなど、個別の特別な時間を共有しましょう。このような時間を通じて、きょうだい児は自分も大切にされていると感じ、自己肯定感を育むことができます。その際には、話にじっくり耳を傾け、日頃の思いや悩みを共有することで、信頼関係を深められます。
外部のサポートや「きょうだい会」の活用
家庭内でのサポートだけではなく、外部の支援を活用することも、きょうだい児の心のケアに有効です。各地には、きょうだい児同士が交流し、共感し合える支援団体が存在します。
たとえば、「全国きょうだいの会」や「きょうだい支援を広める会」などがあり、同じ立場の子どもたちが集まり、経験を共有する場を提供しています。これらの会に参加することで、きょうだい児は自分だけではないと感じ、孤独感の軽減や新たな友人関係の構築につながります。参加を検討される際には、各団体の詳細を確認し、子どもに合ったサポートを選択すると良いでしょう。
保育園・学校・周囲の大人との連携も大切に
きょうだい児を支えるためには、家庭だけではなく、保育園や学校、地域の大人たちとの連携も欠かせません。担任の先生や保育士に、家庭の状況やきょうだい児の心情について共有し、理解を求めることで、教育現場でも適切な配慮が期待できます。
たとえば、学校での個人面談や連絡帳を活用して、きょうだい児の様子や変化を伝え合うことが有効です。また、地域の子育て支援センターや相談窓口を利用し、専門家のアドバイスを受けることも、きょうだい児の健やかな成長をサポートする上で重要でしょう。周囲の大人たちが一丸となってきょうだい児を見守り、支える環境を整えることで、子どもたちは安心して日々を過ごすことができるはずです。
まとめ
きょうだい児とは、障害や重い病気を持つ兄弟姉妹と共に育つ子どもたちのことを指します。
親の関心が偏りやすい環境の中で、きょうだい児は寂しさや不安、責任感など様々な感情を抱えながら成長していくことが少なくありません。心理面・行動面でのネガティブな影響を受けやすい一方で、共感力や思いやりなどの強みを育むことも多いです。
保護者は、声かけや個別の時間づくり、外部支援や学校との連携など、日常の中でできる支えを意識することが大切です。周囲が理解し、きょうだい児が安心して過ごせる環境を整えることが、子どもの健やかな成長につながるでしょう。
参考元
各支援機関 等