「プリント出しておいてね」と優しく声をかけた瞬間、「うるせえ!」「うざい」という返事がきた。思わず、言葉を失った経験のある保護者も多いのではないでしょうか?
こうした言葉遣いの背景には、友達からの影響、注目を集めたい気持ち、そして発達段階における自然な変化が隠れています。原因を知ることで、感情的にならずに対応できるでしょう。
今回は、2歳から小学生までの年齢別の特徴と、家庭で実践できる「言葉遣いの直し方」をわかりやすく解説します。子どもとの関わり方を見直す一歩として、ぜひ参考にしてください。
子どもの言葉遣いが悪くなる原因とは?

子どもの言葉遣いが急に悪くなったとき、多くの親御さんは「育て方が悪かったのか」と不安になります。
しかし心配しすぎる必要はありません。言葉遣いの変化は、子どもの成長過程で自然に起こる現象だからです。
園や学校など周囲の環境から覚える
子どもは周囲の大人や友達の表情・態度を手がかりにして、自分の行動を調整します。この心理学的な現象は「社会的参照」と呼ばれています。
保育園や幼稚園、小学校に通い始めると、この傾向が活発になります。
たとえば、友達が「すげー!」「やべー!」と言って盛り上がっている場面を見れば、「この言葉を使えば注目される」「かっこいいと思われる」と学びます。
特に、乱暴な言葉を使ったときに友達が笑ってくれた経験は、強く記憶に残るものです。「友達から認められた」という実感が、その言葉を繰り返し使う動機になると考えられています。
親や家族の言葉遣いの真似
子どもは、親や家族の言葉遣いをよく観察しています。心理学では、こうした「大人の行動を見て真似る学習」を「モデリング学習」といいます。
たとえば、親御さんが友人との会話で「本当に馬鹿じゃないの」と話したとしましょう。すると子どもは、同じ表現を友達に対して使うようになるのです。
これは問題行動ではありません。子どもは「親がこういう言葉を使っている」という事実を観察し、自分の言葉に取り入れているだけです。
ポイントは、子どもが言葉を「良い・悪い」で判断していないことにあります。
親が「大丈夫、なんとかなるよ」と前向きな言葉を使えば前向きな姿勢に、「どうせムリ」と後ろ向きな言葉を使えば後ろ向きな思考を、そのまま吸収しているのです。
注目してほしい気持ちの表れ
忙しい親御さんに構ってもらえないとき、子どもは「悪い言葉を使えば親が飛んでくる」と学習することがあります。
たとえ叱られるとしても、子どもにとっては「親から注目を得られた」という成功体験があるわけです。こうしたやり取りが繰り返されると、「注目が欲しい=悪い言葉を使う」という条件付けが形成されます。
こうした悪循環を断ち切るには、発想の転換が必要です。
「悪いことをすれば構ってもらえる」から「良い行動で注目を得られる」へ、子どもが実感できる環境をつくりましょう。それが根本的な解決につながります。
言葉遣いが悪くなるのは何歳から?

言葉遣いの変化は、子どもの言語発達と密接に関係しています。
2歳から3歳は語彙が増える時期
2歳から3歳は、言語発達において極めて重要な時期です。日本小児保健協会の「Denver II発達判定法」によると、1歳で2〜5語だった語彙数は、2歳で200〜300語、3歳では1,000語前後にまで増加するとしています。
この「語彙爆発」の時期こそが、良い言葉も悪い言葉も区別なく吸収してしまう理由なのです。
また、2歳から3歳頃の子どもは、大人の言葉遣いを積極的に真似る段階に入っています。悪い言葉を覚えるのは「困った子」ではなく、「学ぶ力が活発な子」といえるでしょう。
4歳から5歳は友達との関わりが影響する
4歳から5歳は、言語能力の発達と社会的スキルの習得が密接に結びついた時期です。自分の意思を明確に伝えられるようになり、言葉遊びやなぞなぞ、しりとりなども楽しむようになります。
この時期から、友達が使う言葉の影響が強くなってきます。スポンジが水を吸い込むように、周囲の言葉をどんどん取り込んでいくのです。
たとえば、園や学校で「やべー」「うぜー」といった言葉を友達が使っていると、子どもも同じように使いたくなります。これは仲間意識の表れであり、社会性の発達という観点では正常です。
そして5歳児になると、先生や友達との関わりの中で「勝ち負け」を意識し始め、競争意識が芽生えます。この頃に「すげー」「最強」といった強い表現を好むようになるのは、自己表現の一環といえるでしょう。
言葉遣いが悪い女の子の特徴とは?
「女の子なのに言葉遣いが乱暴で……」と悩む保護者は意外に多いものです。実は、女の子は言語能力が高いからこそ、周囲の言葉を吸収しやすい傾向があります。
女の子が使いがちな言葉
一般的に、女の子は男の子よりも脳成熟が早く、言語能力が高くなりやすい傾向があります。しかし、言語能力が高いからといって、言葉遣いが必ず丁寧というわけではありません。
むしろ、言語能力が高いがゆえに、吸収する言葉の量も多くなります。その中には乱暴な表現も含まれているのです。
女の子が使いがちな言葉の例としては、以下のようなものがあります。
- 「うるさい!何も言うなって言ってんだろ!」
- 「それが分からないから聞いてんだって!」
- 「ママ!まだ?」
- 「なんで私ばっかり!」
- 「無理!」
いずれも7歳前後の中間反抗期の女の子から聞かれます。
ですが、口応えは単なる反抗ではなく、子どもなりのSOSのサインであることも多いのです。子どもは不安と闘っており、その不安を言葉で表現しているのかもしれません。
女の子と話すときに心がけたいこと
女の子は、周囲の大人の言葉遣いをよく観察し、敏感に反応します。声かけのポイントは以下のとおりです。
| ポイント | 避けたい例 | おすすめの声かけ |
|---|---|---|
| 肯定形で伝える | 「走らないで」「うるさい」 | 「歩いて移動しようね」「小さな声でお話ししようか」 |
| 自己決定を促す | 「ご飯だから片づけて」 | 「そろそろご飯だけど、どうする?」 |
| 感情を言葉にする | 叱るだけで終わる | 「悲しかったね」「悔しかったね」 |
女の子は感情を豊かに表現する傾向があります。「悲しかったね」「悔しかったね」と日常的に声かけすれば、子どもは自分の気持ちを正しい言葉で表現できるようになります。
言葉遣いが悪い子どもへの直し方とは?

子どもの言葉遣いを改善するには、いくつかの方法があります。ここでは、家庭でできる具体的なアプローチをご紹介します。
正しい言葉遣いを教える
子どもが乱暴な言葉を使ったとき、すぐに叱るのではなく、まず正しい言い方を教えることが大切です。以下のように言い換えてみましょう。
| 子どもの言葉 | 言い換えの声かけ |
|---|---|
| 「うるせー」 | 「『静かにして』って言おうね」 |
| 「よこせ」 | 「『貸して』って言うともっと素敵だよ」 |
| 「どけ」 | 「『通してください』って言ってみようか」 |
| 「うざい」 | 「『今は一人にして』って伝えてみよう」 |
ポイントは、「こう言うといいよ」と代わりの表現を示すことです。
子どもは悪意をもって乱暴な言葉を使っているわけではありません。単に正しい言い方を知らないか、状況に応じた使い分けができていないだけです。焦らず見守ってあげましょう。
過剰に反応せず落ち着いて対応する
親御さんが強く反応・激怒すると、「親を反応させることができた」という成功体験になり、逆効果です。感情的な叱責は、その行動を強化してしまいます。
効果的なのは、冷静で一貫性のある対応です。落ち着いたトーンで「その言い方は良くないね」と短く伝え、正しい言い方を教えます。
言い直せたら「そう、その言い方が素敵だね」と褒めてあげましょう。この繰り返しで「丁寧な言葉を使うと褒められる」と学んでいきます。
理由を伝えて納得してもらう
「ダメ」と言うだけでは、なぜその言葉遣いが良くないのか理解できません。4歳以上の子どもであれば、「その言い方をされたら、相手はどんな気持ちになると思う?」と問いかけてみましょう。
さらに、場面による使い分けを教えます。「友達同士では『すげー』って言ってもいいけど、先生やおじいちゃんには『すごいですね』って言おうね」と、状況に応じた言葉の選び方を教えていきます。
大人が納得して動くように、子どもにも納得できる理由が必要です。
言葉遣いが悪い子へのNG対応とは?

良かれと思ってやっている対応が、実は逆効果になっていることがあります。以下を意識してみてください。
感情的に叱る
「何度言ったらわかるの!」「いい加減にしなさい!」と感情的に叱ると、子どもにとって「親が大きな反応をしてくれた」という成功体験になってしまいます。親御さんが怒っている状態では、「なぜ怒られているのか」を理解できません。
感情的に叱る姿そのものが、子どもにとっての言語モデルになってしまいます。
子どもの言葉を真似してからかう
「『うるせー』だって。すごい言葉使うねー」と子どもの言葉を真似したり、からかったりすることは避けましょう。
子どもによっては、親御さんにからかわれたと感じると自己肯定感が下がります。「僕の言葉はおかしいんだ」「私はダメな子なんだ」という否定的な自己イメージを持つようになってしまいます。
頭ごなしに否定してしまう
「そんな言葉使っちゃダメ!」と頭ごなしに否定するだけでは、子どもは理解できません。
なぜダメなのか、代わりにどんな言葉を使えばいいのかが分からなければ、行動を変えることはできないのです。
言葉遣いが悪い子のよくある質問

保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
悪い言葉の例はなんですか?
幼児期から小学校低学年でよく見られる悪い言葉の例は以下のとおりです。
- 乱暴な言葉:「うるせー」「うざい」「死ね」「殺す」
- 命令形の言葉:「よこせ」「どけ」「やれ」
- 相手を馬鹿にする言葉:「バカ」「アホ」「きもい」
- 下品な言葉:「くそ」「うんこ」(幼児期に多い)
幼児期に「うんこ」「おしり」といった言葉を連発するのは発達段階上よくあることで、これは成長とともに自然に収まっていきます。
親の育て方が原因になりますか?
子どもの言葉遣いが悪いことは、親御さんの育て方の失敗ではありません。子どもは家庭だけでなく、園や学校、友達、 class=”line_sky”メディアなど、さまざまな環境から言葉を学んでいます。
「私の言葉遣いが悪かったから」と自分を責めるのはやめてください。
「これから一緒に良い言葉遣いを身につけていこう」という前向きな姿勢で向き合いましょう。親も子も完璧ではありません。
共働きで注意する時間が取れないときは?
言葉遣いの改善に必要なのは、長い時間ではなく質の高いコミュニケーションです。限られた時間の中でできることとしては、以下のような工夫があります。
- 朝・帰宅後の流れを整える
- 寝る前の短い時間を大切にする
- 学校の先生や地域の大人にも協力してもらう
言葉遣いは一朝一夕には変わりませんが、親御さんの言葉と関わり方が、子どもの成長を支えます。
何度注意しても直らないのはなぜ?
「何度言っても直らない」という悩みには、いくつかの理由があります。
| 理由 | 解説 |
|---|---|
| 脳の発達段階 | 幼児期は短期記憶が未発達。今日注意されたことを明日忘れるのは正常 |
| 家庭以外の影響 | 学校で友達が同じ言葉を使っていればそちらの影響を受ける |
| 成長に必要な時期 | 反抗期や悪い言葉を面白がる時期は、発達上必要なプロセス |
どれも「しつけの失敗」ではなく「発達段階上の正常な現象」です。子どもの能力や親御さんの育て方に問題があるわけではありません。
種をまいてすぐに花が咲かないのと同じで、言葉遣いの改善には時間がかかります。根気強く、温かく見守り続けましょう。
子どもの言葉遣いについてのまとめ
今は強い言葉に悩んでいても、適切に向き合えば、子どもは丁寧な言葉遣いを身につけるはずです。
そのために大切なのは、感情的に叱るのではなく、正しい言葉を教え、落ち着いて対応することです。その子の発達段階や個性に応じて、言葉の使い方は少しずつ変わってきます。
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