子どもが癇癪を起こすのはなぜ?その原因と上手な接し方や工夫
- 支援方法・家庭での過ごし方
「急に怒って叫び出す」「床に寝転んで泣きわめく」そんな癇癪(かんしゃく)の場面に、戸惑いや不安を感じた経験はありませんか?
癇癪は多くの子どもに見られる行動ですが、「ただのわがままなの?」「育て方が悪いの?」と悩んでしまう保護者も少なくありません。
また、癇癪が頻繁に起こると、子どもへの対応に疲れ切ってしまうこともあるでしょう。
そこで本記事では、癇癪が起きる背景や原因、子どもと大人の癇癪の違いなどを解説するとともに、日常の中でできる接し方やご家庭での工夫についてもご紹介していきます。
目次
癇癪を起こすとは?わがままとは違うの?
「ただのわがまま?」と思われがちな癇癪ですが、実はそこには子どもなりの理由や背景があることも多いものです。
癇癪とは、子どもが強い感情をうまく言葉で伝えられないときに見られる、激しい泣きや怒りの行動のこと。まだ感情のコントロールが十分に育っていない年齢の子どもにとって、ごく自然な反応とも言えます。
まず本項では、癇癪がどのような状態なのか?わがままとはどう違うのか?などの原因や子どもと大人の癇癪の違いについて解説していきます。
癇癪を起こすとはどのような状態?
癇癪(かんしゃく)とは、感情が制御できずに突然「泣き叫ぶ」「物を投げる」「地団駄を踏む」など、感情のコントロールが難しく、怒りを抑えきれないような状態を指します。
これは単なるわがままではなく、子どもが自身の感情や欲求をうまく伝えられず、混乱してしまうような状態です。
多くの場合、イヤイヤ期の成長過程で見られる自然な現象で、1歳前後から始まり、2〜4歳にピークを迎え、5歳頃には落ち着く傾向があります。
子どもの癇癪と大人の癇癪の違い
子どもの癇癪
成長過程の中で、言葉や感情の伝え方が未熟なために起こります。欲求不満や環境の変化などが引き金になることが多く、成長とともに落ち着いていくのが一般的です。
大人の癇癪
感情の制御が大人として期待されるため、公共の場で突然怒鳴るなど、周囲に大きな影響を与えやすいです。ストレス、発達障害、精神疾患などが背景にある場合もあります。
周囲の受け止め方も異なり、子どもの場合は「成長の一環」と理解されやすく、大人の場合は社会的な対応が求められる場面が多いのが特徴です
子どもが癇癪を起こす主な原因
子どもの癇癪は、以下のような主な理由から起こることが多くあります:
●欲求不満:遊びを中断された、やりたいことができないなど
●疲労・眠気・空腹:体調不良やお腹が空いているときに限界がきているなど
●言葉で伝えられないフラストレーション:自分の気持ちや意図をうまく表現できないため、感情が爆発してしまうことがあるなど
これらは子どもの「SOSサイン」であり、周囲がその背景を理解し、安心して気持ちを出せる環境を整えることが大切です。
癇癪が起きやすい場面とは?
一般的に癇癪が起こりやすい場面や状況には、次のようなものがあります。
●環境変化や急な切り替えなど:遊びから片付け、外出前などの切替のタイミング
●欲求が満たされないとき:もう終わりと言われた時などに強く反応するなど
●疲れや眠気・空腹時:体力や感覚が限界に達したときに爆発しやすいです
●発達特性の影響:発達障害(ASD・ADHD)のある子どもは、感覚過敏やこだわりの強さから癇癪が起きやすくなるケースもあります。
このようなタイミングや背景を理解し、事前に声かけや環境調整を行うことで、癇癪を予防しやすくなる場合もあるため、理解するのは大事なことです。
癇癪は「わがまま」ではなく、子どもの内側にある感情のサインです。焦らずに見守りつつ、背景を理解し支えることが成長にもつながるでしょう。
癇癪を起こす子どもへの上手な接し方
癇癪の最中、どう対応すればいいのか迷った経験はありませんか?
つい叱ってしまったり、なだめようとしてもうまくいかず、疲れてしまうこともあるでしょう。しかし、癇癪中の対応には「やってはいけないこと」と「効果的な関わり方」があります。
ここでは、癇癪の最中に避けたい対応や、落ち着いて関わるためのポイント、癇癪がおさまった後に大切な声かけなど、具体的な接し方のヒントをご紹介します。
癇癪中にしてはいけないNG対応
癇癪が起きているとき、ついやってしまいがちな対応には注意が必要です。以下のような言動は、かえって子どもの感情を悪化させる可能性があります。
頭ごなしに叱る
「ほら、言ったでしょう!」などと叱ってしまうと、子どもは余計に混乱し癇癪が長引くことがあります。
感情的に叱責する
親が声を荒げてしまうと、子どもは恐怖や混乱を感じ、落ち着くまでに時間がかかり、癇癪の引き金にもなります。
無視して放置する
全く反応せず放置すると、「このままでも大丈夫」と誤認させてしまう場合があります。
ご褒美・罰でコントロールしようとする
「泣けばお菓子がもらえる」と学ばせると、癇癪が逆に習慣化してしまう恐れがあります。
癇癪時は、子どもの安全を第一にし、無理に感情を抑えようとせず、ゆっくりと見守る姿勢が大切です。
癇癪中の接し方のポイント
では、どのように接していけばいいのかと思うでしょう。癇癪中は、子どもの心の混乱を理解しつつも、冷静で落ち着いた対応が求められます。
まずは安全を確保する
物や角から距離を置き、頭を打たせないようクッションなどで守ってあげましょう。
共感的に代弁する
「悲しかったね」「欲しかったんだね」と気持ちを代弁すると、「分かってもらえた」と感じ、心が落ち着きやすくなります。
選択肢を提示する
「あと10数えてから走る?」など具体的な選択肢を与えることで、子どもが安心して行動できます。
難しいところですが、親が冷静でいることで子ども自身も感情を鎮めるヒントを得やすくなります。
癇癪が収まったあとにすべき対応
癇癪がおさまるタイミングは、子どもの「自分で落ち着いた」という達成感を支える大切な時間です。以下のような対応や声かけを意識しましょう。
すぐに共感して褒める
「泣き止んでえらいね」「よく待てたね」と具体的に声をかけることで、“できた”体験を積み重ねましょう。
落ち着いた状態を伝える
「今、落ち着いているよ」と言葉にして安心を確認。抽象的な指示ではなく、子どもに自覚を促す会話が効果的です。
長い説教は避ける
長いお説教はネガティブ感情を引きずらせ、再び癇癪のきっかけになる可能性があります。
代替行動を教える
「悲しいときは”ぎゅっ”ってしようね」と代わりの表現を親子で話し合いましょう。
このように、癇癪後は「できたこと」に目を向け、子どもと親子関係の信頼を深める機会にすることが大切です。
癇癪を減らすためにご家庭でできる工夫
「どうすれば癇癪が少なくなるのだろう…」と考えている方も多いのではないでしょうか。
癇癪をゼロにすることは難しいですが、日々の暮らしの中でちょっとした工夫を重ねることで、子ども自身が気持ちを落ち着かせる環境をつくることができます。
ここでは、癇癪を減らすためにご家庭でもできる工夫をご紹介していきます。
予測できるスケジュールをつくる
癇癪は“突然の変化”や“見通しのなさ”が原因になることがあります。ご家庭では、以下の方法で一日の流れを可視化し、安心感を育てましょう。
視覚的スケジュール
絵カードやボードに「起床」「遊ぶ」「ご飯」「お風呂」などを順序にして見える化することで、子どもが「次に何をするか」を理解しやすくなります。その結果、予想外の変更による不安や癇癪が減る傾向があります。
「消し込み」機能
終わったスケジュールを自分で取り外して「やった!」という体験を積むことで、自主性と自信を育みます。
予定変更の前に知らせる
「もうすぐおわりだよ」「この次はご飯だよ」などと声かけして、次の予定を予測させることで、子どもの不安を軽減します
成功体験を増やす声かけと環境調整
子どもが自分でできる経験を増やすことで、自己肯定感を育て、癇癪を減らします。下記のようなことを意識してみましょう。
小さな成功を見逃さず褒める
「自分でお片付けできたね」「こぼさず食べられたね」と具体的な褒め言葉が子どもの心に響きます。
環境を安心できるものに整える
過剰な刺激は癇癪の引き金になることがあるため、刺激を減らしたり、気持ちを伝えるツール(絵カードなど)を利用すると効果的です。
身近な体験から学ぶ
親が「順番を待つ」「一緒にやってみよう」と自然に見本を示すことで、子どもにも“自分でやってみる”という気持ちが生まれます。
感情のコントロール力を育てる関わり方
感情のコントロール力は、ゆっくり育てられるもの。癇癪を減らす関わり方をご紹介します。
感情を言葉にする
「悲しかったね」と代弁することで、子どもは自分の気持ちを理解しやすくなります。これを「感情ラベリング」と呼び、自己理解の第一歩となります。
客観的に見つめる癖を促す
「お友だちに同じことが起きたら?」など、他者視点で考える練習をすることで、気持ちを整理する力が育ちます。
対処の簡単なスキルを教える
深呼吸や「ふぅ〜」と息を吐くなど、簡単な練習を日常に取り入れることで、気持ちの揺れを自分で鎮める習慣につながります。
まとめ
子どもの癇癪(かんしゃく)は、感情をうまく表現できないことから起きる自然な行動であり、「わがまま」や「育て方の問題」とは異なる場合が多いのが一般的です。
特に幼児期は言葉や感情の調整力が未熟なため、欲求不満や疲労、環境の変化などをきっかけに激しく泣いたり怒ったりすることがあります。
癇癪が起きた際には、頭ごなしに叱るのではなく、まずは子どもの安全を確保し、共感や落ち着いた対応を心がけることが大切です。また、癇癪後には気持ちの切り替えや代替行動の提案などを通して、子ども自身が気持ちを「落ち着かせる」経験を積むことが成長にもつながります。
癇癪を予防するためには、予測しやすいスケジュールづくり、成功体験を増やす声かけ、感情を言語化する関わり方など、日常の中での環境調整や丁寧なコミュニケーションが重要です。
参考元
各支援機関 等