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子どもが感情のコントロールができない原因は?対応を解説

2025.12.13
  • 発達障害
  • 支援方法・家庭での過ごし方

「ちょっとしたことで怒り出してしまう」「一度泣き始めると、なかなか止まらない」

子どものこうした様子に、戸惑いを感じていませんか?思い通りにならないと物を投げたり、ゲームで負けて相手を叩いてしまったりする姿を見て、心配になる保護者の方も多いでしょう。

子どもが感情のコントロールを苦手とするのは、その子なりの理由があります。大切なのは、子どもの気持ちに寄り添いながら、一緒に感情と向き合う力を育てていくことです。

本記事では、子どもが感情のコントロールを苦手とする原因と、ご家庭で実践できる対応方法をわかりやすく解説します。

なぜ子どもは感情のコントロールができないのか?

子どもが感情をうまくコントロールできないのには、脳の発達段階やストレス、睡眠不足など、いくつもの理由が関わっています。その背景について、詳しく見ていきましょう。

感情が爆発しやすく切り替えが難しい

子どもが感情のコントロールを苦手とする一番の理由は、脳の「前頭葉」がまだ発達の途中にあるためです。

前頭葉は感情の制御や判断を担う部分ですが、完全に成熟するまでには時間がかかるとされます。小学校に入る頃から少しずつ相手の気持ちを考えたり、場の空気を読んだりする力が芽生えますが、その時点ではまだ十分に発達していません。

そもそも、人間が感情をコントロールするには「扁桃体」と「前頭前野」という2つの領域が関わっています。扁桃体は感情を生み出す“アクセル”、前頭前野はそれを抑える“ブレーキ”のような役割です。

子どもが感情的になるときは、アクセルが強く踏まれているのに対し、ブレーキがまだ十分に働かない状態といえます。そのため、泣いたり怒鳴ったりといった激しい反応が表れやすくなるのです。

ストレスや睡眠不足が影響している

十分な睡眠が得られないと、感情のコントロール能力は著しく低下します。

ある研究データによると、平均的な夜間睡眠時間が9時間以下の子どもは、十分な睡眠が取れている子どもと比べて、そわそわしながら話を聞きにくくなる傾向が1.26倍、我慢強くいられなくなる傾向が1.27倍高いことがわかっています。

さらに、寝る時刻が遅くなるほど、自己肯定感が低下する傾向も報告されています。21時より前に寝ている子どもでは57%が自分のことが好きと答えているのに対し、23時から24時に寝ている子どもは39%に低下しています。

このほか、日常生活での小さなストレスの積み重ねも、感情が爆発しやすくなる原因です。園や学校での活動、人間関係、家庭でのルールなど、さまざまな要因がストレスとなり、その限界を超えたときに爆発してしまいます。

出典:Scientific Reports「Association between sleep habits/disorders and emotional/behavioral problems among Japanese children」

一時的なものか継続的なものかを見極める

思い通りにならずに泣いたり怒ったりするのは、子どもの成長過程でよくあることです。特定の出来事をきっかけに、数日程度イライラした状態が続く場合は、一時的な反応でしょう。時間の経過とともに、自然と落ち着きます。

ただし、明確な原因が見当たらないのに、数週間から数か月にわたって怒りっぽい状態が続く場合は注意が必要です。ほぼ毎日、長時間イライラしたり怒ったりしているようであれば、専門家に相談してもよいでしょう。

発達障害の子どもは感情のコントロールができない?

発達障害のある子どもは、感情をうまく抑えたり切り替えたりするのが難しいことがあります。これは努力不足ではなく、生まれ持った特性によるものです。

ここでは、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)に見られる特徴と、注意したいサインについて解説します。

ADHDの子どもは感情のコントロールが苦手

ADHDの子どもは前頭葉の発達や神経伝達物質の働きの影響で、感情の切り替えや衝動の抑制が難しい傾向があります。不注意や多動性といった行動の背景には、脳の働き方の特性が関係していると考えられています。

また、興味のあることに強く集中してしまう「過集中」もADHDの特徴のひとつです。好きなことに夢中になる一方で、感情が高ぶりやすく、気持ちを落ち着けるまでに時間がかかります。

文部科学省の調査(令和4年)によると、通常の学級に通う小学生と中学生の約8.8%に、学習や行動面での特性が見られました。小学生ではその割合が10.4%とさらに高く、35人のクラスで考えるとおよそ3人にあたります。

この結果からも、発達の特性をもつ子どもが決して特別な存在ではないことがわかります。

出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」

感情の切り替えが苦手なASDの子ども

ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、脳の働き方の特性によって感情を整理したり切り替えたりするのが苦手です。不安や不快さをうまく言葉にできず、それがかんしゃくや突然の行動として表れることも少なくありません。

また、強いこだわりをもち、予定や順番の変化に戸惑いやストレスを感じやすい特徴があります。「途中でやめられない」「思い通りにいかないと落ち着かない」といった気持ちが、感情の高ぶりを招くわけです。

発達障害かどうか見極めるサインとは?

発達障害による感情コントロールの難しさには、いくつかの特徴的なサインがあります。

発達障害がない場合は、感情が爆発しても比較的短時間で落ち着き、その後に「やりすぎた」と反省し、少しずつ自分でコントロールする力を身につけることが多いです。

一方で、発達障害のある子どもは感情のピークが長く続き、感情のピークに達したとき、周りが何を言っても子ども自身もどうすることもできないケースが少なくありません。あとで反省をしても、感情を爆発させないようにコントロールすることが難しいことがよく見られます。

また、園や学校での困りごとが続く場合も注意が必要です。友達とのトラブルが頻繁に起きる、活動中に席を立つ、ゲームで負けると手が出るなど、感情的な行動が繰り返されるようなら、専門家に相談することを考えてもよいでしょう。

家庭でも、靴下の縫い目など些細な刺激でパニックになる、思いどおりにいかず物を投げる、ゲームをやめさせようとすると暴言を吐くなど、極端な反応が見られるときは要注意です。

病気が原因で感情のコントロールができないこともある?


感情の乱れが続く場合、発達障害だけでなく精神疾患が関係していることもあります。違和感が続くときは、早めに受診を考えましょう。

感情のコントロールに影響する病気とは?

感情の波が大きいとき、その背景には心の病気が関係していることもあります。

たとえば、うつ病の場合は大人と違い、「悲しい」と感じるよりも「イライラする」「怒りっぽい」といった形で現れることが多いのが特徴です。言葉にしづらい不快感やストレスを体が代わりに示すように、腹痛や頭痛、倦怠感などの身体症状を訴える子もいます。

双極性障害(躁うつ病)では、気分が高ぶって活発に行動する時期とうつ状態を繰り返します。子どもの場合は、その気分の波が数時間から数日単位で入れ替わる「急速交代型」のケースも多く、感情の浮き沈みの激しさに戸惑うかもしれません。

こうした心の病気は、気づかれにくく「性格の問題」と誤解されてしまうこともあります。しかし、早めの理解と支援があれば、子どもは安心を取り戻し、少しずつ感情のバランスを取り戻していけるはずです。

専門機関への受診を検討すべき目安は?

判断の基準となるのは、症状の持続期間と生活への影響の大きさです。

感情の乱れが家庭にとどまらず園や学校でも続き、人間関係や学習に支障が見られるなら専門機関への相談を検討しましょう。

診断の流れと治療方法

心の病気の場合、初診から診断までは、数週間から数か月ほどかかります。問診で生育歴や困りごとを聞き取り、必要に応じてWISC(ウィスク)などの検査や心理士の面接で発達や感情の特性を確認します。

治療は、薬物療法と心理社会的治療の両面から進めるのが一般的です。症状に合わせて薬が処方されるほか、プレイセラピーや箱庭療法などを通して子どもが安心して感情を表現する機会をつくります。

感情のコントロールができない子どもへの対応方法は?

子どもの感情が激しくなると、どう対応すべきか迷う場面があるものです。ここでは、家庭でできる実践方法と避けたいNG対応をご紹介します。

感情が爆発した時の基本的な接し方

怒りや涙があふれ出す時間は、実はほんの数分です。そんなときこそ、「落ち着くために少し別の部屋に行こうか」と、静かな場所で気持ちを整える時間をつくりましょう。数を数えたり、ゆっくり息をするのも効果的です。

声をかけるときは、否定ではなく肯定を意識してください「叩かないで」より「言葉で伝えようね」と伝えることで、子どもは安心して受け止められます。

子どもが感情のコントロールを身につけるためのサポート

小さな子どもは「つらい」「悲しい」「悔しい」といった感情を、まだうまく言葉で表現できません。そこで、気持ちを見える形にする工夫が役立ちます。

たとえば、「おこる」「かなしい」「うれしい」などのカードを使い、今の気持ちを選ばせることで、モヤモヤを言葉に変える練習になります。

また、「水を飲む」「ぬいぐるみを抱く」など、自分が落ち着ける行動をまとめたおちつきリストを一緒に作っておくのも良いでしょう。感情が高ぶったとき、子ども自らが気持ちを立て直すきっかけになります。

親がやってはいけないNG対応

子どもが怒ったとき、つい感情的に叱ってしまったことがあるかもしれません。しかし、怒鳴り返すのは逆効果です。親の行動を手本とするため、「怒れば伝わる」と誤って学んでしまいます。

また、完全に無視するのも避けたい対応です。何も反応がないと、子どもは「自分を分かってもらえない」と感じ、不安や怒りがさらに強まってしまいます。

大切なのは、叱ることよりも「どう気持ちを立て直すか」を一緒に考える姿勢にあります。何が原因だったかなどを振り返り、落ち着いた対話を重ねることで、子どもは徐々に感情をコントロールする力を育んでいきます。

どこに相談できる?感情のコントロールができない悩み

子どもの感情に関する悩みについて、ひとりで抱え込む必要はありません。

学校の教育相談や自治体の支援センター、病院の専門外来など、状況に応じて頼れる相談先がいくつもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

スクールカウンセラーや医療機関

小学生以上の子どもの場合は、スクールカウンセラーに相談するのもひとつの方法です。スクールカウンセラーは、友人関係や不登校、学習の遅れなど、学校生活に関するさまざまな相談を受け付けています。担任や養護教諭を通じて無料で予約でき、学校での様子を踏まえて、先生と連携しながらサポートを行う専門家です。

医療機関の中では、児童精神科が子どもの心理面や発達の課題を専門に扱います。小児精神科では身体面も含めて診療し、発達外来では発達障害や神経発達に関する詳細な検査および支援を受けられます。

発達障害支援センターや児童発達支援と放課後デイサービス

発達障害支援センターは、地域における発達支援の拠点となる機関です。

診断がついていなくても、「発達が気になる」という段階から相談できるのが特徴です。社会福祉士や心理士による専門的な相談、発達検査の実施機関の紹介、ペアレント・トレーニングなどを受けることができます。

そして、児童発達支援は就学前の子ども、放課後等デイサービスは小学生以上の子どもを対象とした福祉サービスです。

個々の子どもに応じた支援が受けられ、感情のコントロールが苦手な子どもに対しては、ソーシャルスキルトレーニングを通して、「順番を守る」「負けても落ち着く」「気持ちを切り替える」など、社会性を育てることや感情をコントロールする方法を練習します。

利用には通所受給者証が必要ですが、障害者手帳がなくても、医師の意見書があるなど療育の必要性がある場合に、自治体で申請できます。

ステラ幼児教室では、一人ひとりの子どもに合わせた個別指導で、気持ちの切り替えや感情のコントロールの力を育てます。

子どもの感情コントロールに関するまとめ

子どもが感情をうまくコントロールできない背景には、脳の発達段階や睡眠不足、ストレスの蓄積、発達障害や精神的な不調などの要因が絡んでいます。まずは、感情の爆発が一時的なものか、継続的に続いているのかを見極め、必要に応じて専門機関へ相談することが大切です。

家庭では、感情を言葉で表す練習やクールダウンの方法を親子で一緒に身につけていきましょう。短い時間でも毎日の声かけや、翌日の予定を一緒に確認するなどの小さな工夫が、心の安定につながります。

もし子どもの感情コントロールに不安を感じたら、スクールカウンセラーや医療機関、発達障害支援センターなどに相談してみましょう。

ステラ個別支援塾では、発達特性をもつ子ども一人ひとりに合わせたサポートを行っています。「ソーシャルスキルアップコース」では、自己表現の力やコミュニケーションスキルを育みます。まずは一度お問い合わせください。

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