「うちの子は、どうして友達の気持ちがわからないのだろう」
「空気が読めないのは、性格の問題? それとも何か病気が関係しているの?」
子どもの言動にふと違和感を覚え、このような不安や疑問を抱えたことのある保護者の方は、決して少なくありません。人の気持ちをくみ取ることが苦手な様子を見ると、「育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまう方もいらっしゃるでしょう。
しかし、こうした姿は家庭環境や性格だけが原因とは限らず、発達障害などの特性や、医療的な支援が必要な状態が関係している場合もあります。
この記事では、「人の気持ちがわからないように見える」子どもの背景として考えられる病気や障害の特徴をはじめ、診断の流れ、そして家庭や日常生活でできる具体的な関わり方について、わかりやすく解説します。
人の気持ちがわからないのは病気や障害の可能性も

子どもが人の気持ちを理解できないように見えるとき、「わがまま」「自己中心的」と捉えてしまいがちです。しかし、何度注意しても改善しない場合や、本人も困っている様子がある場合は、単なる性格の問題ではなく、発達障害などの特性や病気が背景にある可能性があります。
人の気持ちがわからない状態は、脳機能の発達に偏りがあることで生じる場合があり、本人の努力だけでは改善が難しいケースも少なくありません。まずは特性を正しく理解し、適切なサポートにつなげることが大切です。
子どもに見られる特徴
人の気持ちを理解することが苦手な子どもには、日常生活の中で次のような様子が見られることがあります。
• 友達が嫌がっていることに気づかず、同じ行動を何度も繰り返してしまう
• 相手の気持ちを考えず、思ったことをそのまま言葉にしてしまう
• 冗談や皮肉が通じにくく、言葉を文字どおりに受け取ってしまう
• 表情や声のトーンなどから感情を読み取ることが苦手
• 集団の中にある暗黙のルールや、その場の雰囲気を理解するのが難しい
これらの特徴から、周囲には「空気が読めない子」と受け取られてしまうこともあり、本人に悪気はなくても、友達関係でのすれ違いやトラブルにつながりやすい傾向があります。
大人になっても続くケース
子ども時代に見られた特性は、大人になっても続くことがあります。むしろ、子どもの頃は周囲の大人がフォローしてくれていたため目立たなかったものが、社会に出てから顕在化するケースも珍しくありません。
大人になると、職場での人間関係や取引先との対応など、より複雑なコミュニケーションが求められます。人の気持ちがわからないまま大人になった場合、対人関係でのつまずきが増え、生きづらさを感じやすくなります。
人の気持ちがわからない子どもに考えられる発達障害

人の気持ちがわからない背景には、発達障害が関係していることがあります。発達障害とは、生まれつきの脳機能の偏りによって、日常生活や対人関係に困難が生じる状態の総称です。
発達障害は病気とは異なり、治療で治すものではありません。しかし、特性を理解し、適切な支援を受けることで、困りごとを軽減することが可能です。
ASDとは?
ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係やコミュニケーションに困難を抱えやすい発達障害のひとつです。以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などと分類されていましたが、現在はこれらを連続体として捉え、ASDという名称に統合されています。
ASDの人は「心の理論」と呼ばれる、他者の気持ちや意図を推測する能力の発達に偏りがあることが多いとされています。そのため、相手の立場に立って考えることが難しく、無意識のうちに相手を不快にさせてしまうことがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性の一つとして、「空気が読めない」と感じられる行動が見られることがあります。具体的には、次のような特徴が挙げられます。
●言葉の裏にある意図や、あいまいな表現を読み取ることが苦手
● 表情や身振り、視線などの非言語的なコミュニケーションを理解しにくい
● その場の雰囲気に合わない発言をしてしまうことがある
● 特定の物事に強いこだわりがあり、予定や考えの切り替えが難しい
● 自分の興味・関心のある話題について、一方的に話し続けてしまう
これらの行動は、本人に悪気があって行われているものではありません。ASDのある子どもは、脳の情報の受け取り方や処理の仕方に特性があるため、定型発達の人が自然に行っている対人理解や場面判断が難しい場合があるのです。
ADHDとは?
ADHD(注意欠如多動症)は、不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。集中力が続かない、じっとしていられない、思いついたことをすぐに行動に移してしまうなどの特性があります。
ADHDは人の気持ちがわからない障害というわけではありませんが、その特性から周囲に「自己中心的」という印象を与えてしまうことがあります。
ADHDが自己中心的に見られる理由
ADHDの人が自己中心的に見られやすい理由には、以下のような特性が関係しています。
●相手の話を最後まで聞かずに遮ってしまう
● 衝動的に行動し、相手の予定や気持ちを考慮できない
● 約束を忘れてしまったり、大切なものをなくしたりする
● 自分の話に夢中になり、会話の主導権を握ってしまう
これらは意図的な行動ではなく、脳の実行機能の特性によるものです。本人も「なぜうまくいかないのか」と悩んでいることが多いため、周囲の理解とサポートが必要です。
子どもの発達でお悩みのときは、ステラ幼児教室・個別支援塾にご相談ください。
一人ひとりの特性に合った個別指導で、子どもの成長をサポートします。
発達障害以外で人の気持ちがわからない病気

人の気持ちがわからない原因は、発達障害だけではありません。パーソナリティ障害と呼ばれる精神疾患が背景にあるケースもあります。
境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害は、感情のコントロールが難しく、対人関係が不安定になりやすい精神疾患です。
この障害がある人は、相手の気持ちに敏感な一面がある一方で、「見捨てられるのではないか」という強い不安から、極端な言動を取ってしまうことがあります。些細なことで激しく怒ったり、相手を理想化したかと思えば急に拒絶したりと、感情の起伏が激しいのが特徴です。
結果として、周囲からは「人の気持ちがわからない人」「空気が読めない人」と受け取られてしまうことがあります。
自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害は、自分を特別な存在だと感じ、他者への共感が乏しい傾向がある精神疾患です。
表面的には自信に満ちているように見えますが、内面では自己評価が不安定で、ありのままの自分を受け入れることが難しい状態にあります。他人の意見に耳を貸さなかったり、自分の考えを一方的に押しつけたりすることがあり、対人関係で問題を起こしやすい傾向があります。
病気かどうかを診断する方法

「子どもが人の気持ちがわからないのは、病気や障害のせいかもしれない」と感じたとき、まず大切なのは専門家に相談することです。自己判断せず、適切な機関で診断を受けることで、正しい理解と支援につなげることができます。
医療機関での診断
発達障害やパーソナリティ障害が疑われる場合、小児科や児童精神科、発達外来などの医療機関で診断を受けることができます。
診断では、保護者への問診や子どもの行動観察、心理検査などを通して、発達の特性を総合的に評価します。 発達障害が疑われる場合には、知能検査(WISC検査など)や発達検査が行われることもあります。
診断がつくことによって、子ども自身の特性を客観的にとらえやすくなり、保育園や学校、支援の機関などと情報を共有しやすくなるという利点があります。 その結果として、周囲が子どもの特性を理解しやすくなり、本人にとって過ごしやすい環境や配慮が受けやすくなることにつながっていきます。
子どもが相談できる学校や自治体の窓口
医療機関を受診する前に、まずは身近な相談窓口を利用することもできます。
● 学校のスクールカウンセラー
● 市区町村の子育て支援課や発達相談窓口
● 保健センター
● 児童相談所
これらの窓口では、子どもの様子を聞き取り、必要に応じて専門機関を紹介してもらえます。「病院に行くほどではないかもしれない」と迷っている場合でも、気軽に相談できる場所として活用できます。
人の気持ちがわからない子どもが大人になると?
子どもの頃に適切なサポートを受けられないまま大人になると、さまざまな困りごとに直面する可能性があります。
大人になると対人関係や仕事で困りやすい
人の気持ちがわからない特性を持ったまま大人になると、職場での人間関係や仕事の進め方でつまずきやすくなります。
上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかない、場の空気を読んだ対応ができない、チームでの協力作業が苦手など、社会生活のさまざまな場面で困難を感じることがあります。
二次障害でうつ病や不安障害になることも
発達障害の特性による生きづらさが長く続くと、二次障害として精神疾患を発症することがあります。
対人関係での失敗体験が積み重なり、自己肯定感が低下すると、うつ病や不安障害、適応障害などを併発するリスクが高まります。早期に特性を理解し、適切なサポートを受けることが、二次障害の予防につながります。
障害者のパートナーが陥るカサンドラ症候群
発達障害のあるパートナーと関わる中で、気持ちが通じないと感じることが続くと、心がすり減ってしまうことがあります。わかってもらえない、共感してもらえない。そんな思いが積もることで、孤独や疲れを強く感じるようになる人もいます。
このような状態を、「カサンドラ症候群」と呼ぶことがあります。医学的な診断名ではありませんが、実際にそのような苦しさを抱えている人がいるのは確かです。
一人で我慢せず、信頼できる人や専門家に話を聞いてもらうことも、大切なことのひとつです。
人の気持ちがわからない子どもへの対処法

子どもが人の気持ちがわからないと感じたとき、保護者としてどのように接すればよいのでしょうか。具体的な対処法を紹介します。
子どもと気持ちを伝える練習をする
人の気持ちを理解する力は、練習によって少しずつ身につけることができます。
日常生活の中で、「今、お友達はどんな気持ちだったと思う?」と問いかけたり、絵本やドラマの登場人物の感情を一緒に考えたりすることで、他者の気持ちに目を向ける習慣をつけることができます。
また、子ども自身の気持ちを言葉にする練習も大切です。「嬉しい」「悲しい」「困った」など、感情を表す言葉を増やしていくことで、自分の気持ちも相手の気持ちも理解しやすくなります。
専門機関と連携して子どもをサポート
家庭だけで抱え込まず、専門機関と連携することが重要です。
学校の先生やスクールカウンセラー、発達支援の専門家と情報を共有し、子どもに合ったサポート体制を作りましょう。専門家のアドバイスを受けることで、子どもへの接し方のヒントが得られたり、保護者自身の不安を軽減したりすることができます。
子どもが利用できる支援機関
発達障害やその傾向がある子どもが利用できる支援機関には、以下のようなものがあります。
●発達障害者支援センター
発達障害のある人やその家族を支援する公的機関です。相談、情報提供、関係機関との連携など、総合的なサポートを受けられます。診断の有無に関わらず相談可能です。
●発達障害に対応した支援塾
発達障害の特性を理解した上で、学習面と社会性の両方をサポートする塾もあります。子どもの特性に合わせた指導を受けられるため、通常の学習塾では難しいと感じている場合にもおすすめです。
子ども一人ひとりの特性を理解し、その子に合った方法で学びや成長をサポートしてくれる環境を見つけることが大切です。
【まとめ】人の気持ちがわからないと感じたら早めに相談を
子どもが人の気持ちがわからないように見えるとき、それは性格や育て方の問題ではなく、発達障害などの特性が関係している可能性があります。
大切なのは、ひとりで悩まず、早めに専門家に相談することです。適切な診断と支援を受けることで、子ども自身の困りごとを軽減し、将来の可能性を広げることができます。
「もしかしたら」と感じたら、まずは学校の相談窓口や地域の支援機関に相談してみてください。子どもの特性を正しく理解し、その子に合ったサポートを見つけることが、明るい未来への第一歩です。
子どもの発達でお悩みのときは、ステラ幼児教室・個別支援塾にご相談ください。
一人ひとりの特性に合った個別指導で、子どもの成長をサポートします。
参考:
厚生労働省「発達障害の理解のために」
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター一覧」
https://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/












