ディスグラフィア(書字表出障害)とは?書けない子どもへの理解と支援方法を事例付きで解説
- 発達障害
- LD(学習障害)
- 障害診断について
- 発達検査・心理検査等
- 支援方法・家庭での過ごし方
「うちの子、漢字テストがいつもボロボロ…」
「ノートを取るのが遅くて授業についていけない…」
「先生から『もっと丁寧に書きなさい』と毎回注意されている…」
「ノートの文字がぐちゃぐちゃで読めない…」
そんな悩みを抱えている保護者の方、もしかするとお子さんは、「努力不足」や「不注意」ではなく、ディスグラフィア(書字表出障害)という発達性の学習障害を抱えているかもしれません。
今回は、ディスグラフィアの特徴や原因、学校・家庭でできるサポート方法について、実際の子どもの事例を交えてわかりやすく解説します。理解ある対応が、お子さんの自信と学びを支える第一歩になります。
目次
- ディスグラフィア(書字表出障害)とは?
- ディスグラフィアの主な症状
- 診断と評価の受け方
- 学校での支援方法(合理的配慮)
- 家庭でできるサポート
- まとめ
ディスグラフィア(書字表出障害)とは?
ディスグラフィア(dysgraphia)とは、知的発達には問題がないのに、「文字を書くこと」が極端に苦手な学習障害の一種です。LD(学習障害)の中でも特に「書字表出」に困難が出るタイプにあたります。
日本語では「書字障害」「書字表出障害」とも呼ばれます。
学習障害は以下の3つに分類されます。
• ディスレクシア(読字障害):文字を読むのが極端に苦手
• ディスグラフィア(書字表出障害):文字を書くのが極端に苦手
• ディスカリキュリア(算数障害):計算や推論が極端に苦手
これらは併発する場合もあります。
【事例1】「漢字テストが苦手で自信喪失」小学3年生・ゆうた君の場合
ゆうた君(仮名)は国語の授業は苦手ではないのですが、テストになるとミスが目立ちます。
字が乱れて読めなかったり、罫線からはみ出していたり、句読点を忘れて減点されたり…。
担任から「丁寧に書けばできるのに」と言われるものの、本人は「どう書いていいかわからない」と泣いてしまうこともありました。
このように、「覚えているのに書けない」「正しく書いたつもりでも減点される」という経験が続くと、自己肯定感の低下につながります。
ディスグラフィアの主な症状
お子さんにこの事例のゆうた君のような傾向はありませんか?以下にディスグラフィアの主な特徴をあげます。
• 書いた文字が読みにくい・不揃い
• 文字が枠や罫線からはみ出してしまう
• 鏡文字を書く
• 句読点などを忘れる
• ノートを取るのに時間がかかり、授業についていけない
• 文字を書く時に、余分に線や点を書いてしまう
• 書くことが嫌い、避けるようになっている
• 漢字の書き順がバラバラで、筆順を覚えられない
書くこと全般に強いストレスや苦手意識がある場合は、ディスグラフィアの可能性が考えられます。
ディスグラフィアの原因とは?
ディスグラフィアの原因やメカニズムは明らかになっていませんが、「サボっている」「練習不足」というものではなく、以下のような複合的な要素が困難につながっていると考えられています。
主な要因:
• 指先や手の微細運動の不全(不器用で字がかけない、苦手)
• 空間認知の不全(文字の空間的な配置の苦手さ)
• 音韻処理の不全(文字の読み方がわからない)
• 視覚情報処理の不全(文字の形の認識が困難)
【事例2】「書くことが苦痛で登校しぶり」小学4年生・あかりちゃんの場合
あかりちゃん(仮名)は、作文やノートまとめが大の苦手。手がすぐ疲れてしまい、漢字もどこか違ってしまうことが多々あります。先生に「ふざけてるの?」と言われたことがきっかけで、学校に行きたくないと泣くようになりました。
このように、ディスグラフィアは「できないのに、できるはず」と誤解されやすい障害です。周囲の無理解が二次的な問題(登校しぶり・不登校・自己否定)を生むこともあります。
診断と評価の受け方
ディスグラフィアは、医療機関や発達支援センターなどでの評価・検査によって把握されます。
代表的な評価方法:
• WISC(知能検査)による全体的な能力の把握
• 書字能力のチェック(模写・書き取り・スピード)
• 視覚認知や運動機能の検査
気になる場合は、小児科・児童精神科・発達支援センターにご相談をしてみてください。
学校での支援方法(合理的配慮)
ディスグラフィアのお子さんには、学校での「合理的配慮」が大切です。
これは本人の特性に合わせた学習環境の調整です。
学校の先生やスクールカウンセラーと連携をとり情報を共有することで、お子さんにあった配慮、精神面での支えとなりお子さんに安心感を与えます。
例:
• ノートの代わりにプリント配布
• 書かずに聞くことに集中させてもらう・黒板を撮影・タブレット入力を認める
• 書く量を減らす(漢字テストの出題数調整など)
• 定期的なスクールカウンセラーによるカウンセリング
【事例3】ICTの活用で前向きに!小学5年生・こうき君の場合
こうき君(仮名)はディスグラフィアと診断され、学校ではタブレットでの入力が許可されました。
それ以来、ノート提出やレポートも自信を持って取り組むようになり、「書くのが楽しい」と感じられるように。
環境調整によって、「できない」ではなく「やり方を変えればできる」という成功体験を重ねることができます。
家庭でできるサポート
保護者として、以下のような対応がお子さんの安心につながります。
やってほしいこと:
• 書く以外の方法で知識を表現する機会を作る(口頭、絵、タイピング)
• 苦手を責めず、「工夫で補えるよ」と伝える(大きなマス目のノートを使うなどその子に合った方法を使う)
• 本人の得意分野(話す・読む・記憶力など)を伸ばす
• 無理に「きれいな字」「たくさん書くこと」を求めない
避けてほしいこと:
• 「なんでこんな字なの!」「もっと練習しなさい」と怒る
• きれいに書ける兄弟姉妹と比較する
• 本人の苦手さを軽視してしまうこと
困っている事、つらいことを親が受けとめてくれるだけで、お子さんのつらさは和らぎます。なによりもお子さんのこころの安定、安心感を第一に考えることが保護者の役割です。温かく見守っていきましょう。
大人になっても困る?将来への影響は?
親御さんが気になるところだと思いますが、ディスグラフィアは大人になっても残ることがありますが、社会人として十分に活躍している人もたくさんいます。
支援例:
• スマホやPCの活用で書字作業を回避(現代社会はスマホやPCにより手書きはほとんどしなくても仕事は十分に成り立ちます!)
• メモアプリや音声入力の使用
• 障害者雇用枠・職場の合理的配慮の申請
まとめ:書けないことは「怠け」ではない
ディスグラフィアは、外見からはわかりにくい困難ですが、本人にとってはとても大きな壁です。
そして、それは本人の努力不足でも、親の育て方のせいでもありません。
「できない」ではなく「どうすればできるか」を一緒に探す姿勢が、お子さんの自信を育てます。
お子さんの苦手さに気づいたとき、ぜひ早めに専門機関に相談し、学校とも連携して「その子に合った学び方」を見つけていきましょう。