「ダウン症の子どもは顔つきが似ている」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか？その理由として、ダウン症には遺伝的な特徴があるからです。
そこで本記事では、ダウン症の子どもが共通した顔立ちを持つ理由やダウン症の特徴について解説します。子どもが安心して成長できるよう、支援する際のポイントも紹介します。
ダウン症とは
ダウン症（21トリソミー）は、21番染色体が通常より1本多く存在することによって起こる、先天性の疾患です。
私たちの体は、23対46本の染色体からできています。ダウン症の場合、このうち21番目の染色体が3本あるのが大きな要因です。この余分な染色体が、心臓や脳の発達、顔つきなどに影響を与え、様々な特徴が見られるようになります。
受精の過程で染色体が正しく分配されなかったり、受精後の細胞分裂の段階で異常が起こったりすることが主な原因とされています。
ダウン症の種類
ダウン症は、以下の3つに分類されます。
| 標準型 | 番目の染色体が3本になった状態 |
|---|---|
| 転座型 | 21番目の染色体が切断され、13~15番のいずれかの染色体に接着した状態 |
| モザイク型 | 正常な細胞と21番目の染色体が多い細胞が混在している状態 |
多くの場合、ダウン症は標準型です。全体の5％が転座型となり、モザイク型はそれ以上に少ない割合で起こるダウン症と言われています。
ダウン症になる割合
日本人がダウン症になる割合は、およそ500人に1人と言われています。一方で、高齢出産ではダウン症の割合が多いことも報告されています。
母体年齢が40歳以上になると、ダウン症の発症割合は1％を超えると言われており、100人に1人はハイリスクに分類されます。
ダウン症に併発しやすい疾患
ダウン症に併発しやすい合併症として、以下の疾患が挙げられます。
心疾患
心疾患は心臓に関連する疾患の総称です。ダウン症児の場合、心疾患のなかでも以下の合併症を併発することで多いと言われています。
- 心室中隔欠損症
- 心房中隔欠損症
- 高血圧
- 不整脈
これらの治療のために、生まれて直ぐに大きな手術を行うケースも少なくありません。
消化器系疾患
消化器系疾患とは、口から肛門までの消化器に関連する疾患の総称です。ダウン症児の場合、消化器系疾患のなかでも以下の合併症を併発することが多いと言われています。
- 十二指腸閉鎖
- 食道閉鎖
- 食道狭窄
- 腸閉鎖
ダウン症児は、食堂が閉鎖または狭窄しているケースが多く、これらの疾患は栄養の摂取に直結するため、生まれて直ぐに手術によって処置するケースが多いです。
内分泌疾患、代謝系疾患
ダウン症児はホルモン分泌に関する疾患や代謝に関する疾患を併発するケースも少なくありません。
- 糖尿病
- 高脂血症
- 甲状腺機能低下症
上記の合併症が多く報告されており、食生活によるコントロールや服薬などの治療方法が検討されます。
眼科系疾患
ダウン症児には眼科系疾患も多くみられます。
屈折異常、白内障、斜視などが挙げられ、発達にも大きな影響を与えるため早期治療が重要視されます。
その他の疾患・障害
ダウン症児は以下の障害を併発するケースも多いです。
- 知的障害
- 運動機能障害
- 自閉スペクトラム症
- 注意欠陥多動性障害
これらの疾患・障害は早期の診断や療育支援体制の構築が重要視されます。社会性を身に付けソーシャルコミュニケーション能力を身に付けるためにも、専門知識を持つ機関と繋がることが大切です。
ダウン症の平均寿命
医療体制が不十分な1950年代頃まで、ダウン症は出生時の死亡率も高く、平均寿命は10歳未満と言われていました。
しかし、医学的進歩や小児心臓外科の技術的発展によって、現在はダウン症児の死亡率が大幅に減少しています。現在はダウン症患者の3人に1人は60歳以上まで生きていることが実証され、平均寿命は約60歳と考えられています。
参考データ：ダウン症自然歴調査（ダウン症自然歴研究委員会）
ダウン症に見られる顔つきの具体的な特徴
ダウン症には顔つきに関する類似的な特徴があります。具体的には、以下のような特徴が見られることが多いです。
- 目がつり上がっている
目頭の皮膚がひだ状になっているため、目がつり上がって見えます。 - 鼻が低い
鼻の骨が発達しにくいため、鼻が低く見えます。 - 顔が平坦
顔の骨格が全体的に平坦な印象を与えます。 - 舌が大きい
舌の筋肉が発達しやすく、舌が大きく見えることがあります。
これらの特徴は、ダウン症の子どもに見られる一般的なものであり、個人差はありますが、顔つきが似ているように見える要素のひとつと言えます。
しかし、ダウン症の子ども一人ひとりには、かけがえのない個性を持っています。顔つきだけではなく、性格や才能もそれぞれ異なります。顔つきにとらわれず、その子の個性や才能を理解し、尊重することが大切です。
ダウン症の顔つきが似る理由
ダウン症の子どもの顔つきが似ている理由は、先述している21番目の染色体が通常より1本多いこと（トリソミー）が主な原因です。顔つきが似る大きな要因として、骨の発達がゆっくりであるという特徴があります。
その特徴が、顔の骨格や筋肉の発達に影響を与え、特徴的な顔つきにつながると考えられています。
ダウン症の体の特徴
ダウン症には以下のような体月の特徴も見られます。
- 首が太く短い
うなじ辺りの皮膚がたるんでいることもあります。 - 単一横手掌線がある
掌に横一直線に見られる線で「猿線」と飛ばれることもあります。 - 内半小指
足の小指が内側に曲がる症状です。 - サンダルギャップ
足の親指と人差し指の間が広く、サンダルを履いているような足の指の開き方になること - 筋緊張低下
筋肉の張りが弱く、体がぐにゃぐにゃしやすく、同じ体勢を長時間維持するのが難しいことがあります。また、筋緊張低下により脱臼しやすい傾向にあります。
特に、筋緊張低下は発達に大きな影響を与えます。首や腰が座るのが遅い、ハイハイや掴まり立ち、歩行の習得が遅いことにも、筋緊張低下が関係していると考えられるでしょう。その他、運動発達の遅れや表情筋が動きにくいことによる表情の乏しさなどが見られるケースも多いです。
ダウン症の子どもへの支援のポイント
ダウン症の子どもが自信を持ち、安心して成長するためには、個々の特性に合わせた適切な支援が大切です。 言葉の理解やコミュニケーションがゆっくりな人も多いため、わかりやすい伝え方や視覚的なサポートが効果的です。ここでは、ダウン症の子どもが安心して学び、生活できるよう、家庭や学校で実践できる具体的な支援のポイントを紹介します。
わかりやすく伝える
ダウン症の子どもは、言葉の理解がゆっくりだったり、複雑な話が苦手な場合があります。
- 短い言葉で話す
- 具体的に伝える
- 身振り手振りや絵を活用する
視覚的な情報を活用しながら、わかりやすく伝えることが大切です。
たとえば、「お片付けしようね」ではなく、「このおもちゃを箱に入れようね」と具体的に指示したり、絵カードを使って1日のスケジュールを視覚的に示すことも有効です。
視覚的な支援をする
ダウン症の子どもは、視覚的な情報を理解することが得意です。
- 絵カードや写真
- スケジュール表
- 色分けされた教材
視覚的なツールを活用することで、子どもの理解を助け、自立を促すことができます。
たとえば、着替えの手順を絵カードで示したり、１日のスケジュールを写真で見せたりすることで、自分で何をすれば良いのかを理解しやすくなります。
こだわりを尊重する
ダウン症の子どもは、こだわりが強い傾向があります。これは、不安や混乱を避けるための自己防衛反応であると考えられています。
- 無理にやめさせようとしない
- 代替案を提示する
- 落ち着ける場所を提供する
子どものこだわりを尊重し、寄り添うことが大切です。
たとえば、いつも同じ服を着たがる子どもには、他の服も用意しておき、「今日はどっちを着たい気分？」と選択肢を与えてあげるのも良いでしょう。
肯定的なフィードバック
ダウン症の子どもは、自己肯定感が低い場合があります。
- できたことを具体的に褒める
- 努力した過程を認める
- 小さな成長を見逃さない
肯定的なフィードバックを積極的に行うことが大切です。
たとえば、「上手にできたね！」という結果にだけでなく、「最後まで頑張ってえらかったね！」と努力やその過程を褒めることで、自信につながります。
これらのポイントを参考に、ダウン症の子ども一人ひとりの特性に合わせた、温かい支援を心がけてください。
ダウン症の顔が似る理由とその支援方法についてのまとめ
ダウン症は、21番染色体が通常よりも1本多いことで起こる先天性の疾患です。
顔つきが似ているのは、この余分な染色体が顔の骨格や筋肉の発達に影響を与え、目がつり上がっている、鼻が低い、顔が平坦、舌が大きいなどの特徴的な顔つきにつながるためです。
ダウン症の子どもの支援においては、わかりやすく伝える・視覚的な支援をする・こだわりを尊重する・肯定的なフィードバックなど、これらのポイントを参考に、ダウン症の子ども一人ひとりの特性に合わせた温かい支援を心がけてください。
参考資料
日本ダウン症協会 https://jdss.or.jp/
