「抱っこしていないと泣いてしまう」「姿が見えなくなると不安そうにする」
子どものそんな様子に、戸惑いや心配を感じている親御さんも多いのではないでしょうか?
こうした行動の背景には「愛着形成」が深く関わっています。愛着とは、子どもが親御さんとの間に築く心の絆のことです。乳幼児期に安定した愛着が育まれると、やがて子どもの自己肯定感や人との関わり方にも良い影響をもたらすとされています。
本記事では、愛着形成とは何か、基本的な知識や特に大切な時期、愛着が不安定になっているサインと修復の方法などについてわかりやすく解説します。子どもとの絆を深めるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
愛着形成とは?

子どもの心の安定や成長には、「愛着形成」が大切な役割を果たします。まずは基本的なことから、一緒に確認していきましょう。
親子の心の絆を意味する愛着形成
愛着形成とは、子どもと親の間で築かれる情緒的な結びつきをいいます。わかりやすくいい換えると、「親子の絆」です。
赤ちゃんが泣いたときに親御さんが抱きしめたり、安心させたりすることで、「困ったときは守ってもらえる」という信頼感が生まれていきます。
この愛着形成の概念を提唱したのは、イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィでした。彼は、第二次世界大戦後に親と離れて暮らした子どもたちの研究をもとに、乳幼児期の愛着が生涯にわたる心の健康に深く関係していることを明らかにしました。
ボウルビィは、親を赤ちゃんにとっての「安全基地(secure base)」と位置づけました。親の存在が、子どもにとって世界を知るための出発点となるのです。
安心できる居場所があるからこそ、子どもは外の世界に関心を持ち、のびのびと成長していきます。
愛着が自己肯定感と情緒の安定を育てる
愛着がしっかり形成されると、子どもの自己肯定感や情緒の安定につながります。「自分は大切にされている」「困ったときは助けてもらえる」という安心感が、心の支えになるからです。
一方で、愛着形成がうまくいかない場合、情緒が不安定になったり、人との関わりに難しさを感じたりすることがあります。だからこそ、乳幼児期の関わりは、子どもの心を育てるうえで大切なのです。
0歳から3歳までが愛着形成の時期

愛着は一朝一夕にできるものではなく、0歳から3歳までの毎日の関わりの中で少しずつ育っていきます。この時期の優しい関わりが、子どもの心を支える土台になります。
大切なのは乳幼児期
愛着形成のもっとも大切な時期は、生後6ヶ月から1歳半ごろです。この時期に親御さんとの安定した関係を築くことが、その後の情緒や社会性の発達に影響します。
また、乳児期の子どもは、親御さんの表情や声のトーン、スキンシップにとても敏感です。毎日の関わりの中で子どものサインを感じ取り、その思いに丁寧に応えていきましょう。
発達段階ごとの特徴
愛着行動は、子どもの成長に合わせて少しずつ変化していきます。
生後3ヶ月ごろまでは、誰に対しても同じように反応しますが、生後3〜6ヶ月になると、親御さんへの反応が強まり、顔を見て笑う姿が見られるようになります。
生後6ヶ月から2〜3歳ごろは、「後追い」や「人見知り」が目立つ時期です。
「ママがいないと泣いてしまう」「知らない人を怖がる」といった行動は、大切な人をしっかり認識し始めているサインといえます。
逆に、親御さんから離れると不安そうな様子が見られるのは、愛着が順調に育っている証拠なのです。
3歳以降も愛着形成は続く?
3歳ごろになると、子どもは少しずつ親御さんから離れて行動するようになります。ただし、愛着形成は3歳で終わるものではありません。
臨界期(脳の発達で最も効果が現れる時期)を過ぎても「もう遅い」ということはなく、親子の関わりを通して絆はその後も育っていきます。
愛着形成不全のサインとは?

愛着形成がうまくいかない場合、子どもの行動にいくつかのサインが現れます。以下、「愛着形成不全」の兆候をチェックしてみてください。
形成不全の子どもに見られる主なサイン
愛着形成不全のサインは、成長の段階によって変わります。
たとえば、赤ちゃんの頃は、抱いても泣きやまないことが多かったり、表情がかたく感情が伝わりにくかったりします。
こうした状態は、保育園や幼稚園に入ってから形を変えて続きます。ぐずりが増える、おもらしが続く、「ダメ」といわれた行動をわざと繰り返すといった様子が見られるようになります。
さらに小学生になると、いうことを聞かない、強い口調で反抗するなど、行動面でのサインが見られるかもしれません。
こうした行動の背景には、「どうせわかってもらえない」「自分なんて愛されない」という不安や戸惑いが潜んでいるとされます。
まずは行動の奥にある気持ちに気づき、安心できる関わりを重ねていくことが大切です。
情緒や対人関係への影響
愛着形成のつまずきは、子どもの情緒や対人関係にも影響をおよぼします。
子どもによっては、嬉しい出来事があっても表情があまり変わらなかったり、周りの人に対して感情や関心を示しにくかったりする様子が見られます。
人を信頼するのが難しく、周囲からの愛情に対して怒りで反応する、無関心な態度をとる子もいるようです。
とはいえ、これらのサインが見られたからといって、すぐに愛着障害と診断できるわけではありません。
子どもの様子が気になるときは、ひとりで抱え込まず、専門機関や相談窓口に相談してみることをおすすめします。
相談先としては、かかりつけの小児科、地域の保健センター、子育て支援センターなどがあります。また、発達や愛着に関する専門的な相談は、児童発達支援センターや児童精神科でも受けられます。
「このくらいで相談していいのかな」と迷う必要はありません。早めに専門家の視点を取り入れることで、子どもに合った関わり方が見つかりやすくなります。
子どもの愛着形成や子どもへの関わり方にお悩みのときは、ステラ幼児教室へご相談ください。
やり直しできる?愛着形成の修復方法とは?

「もしかして、愛着形成がうまくいかなかったのでは」と不安に感じている親御さんもいらっしゃるかもしれません。
愛着は、何度でもやり直し築くことができます。大切なのは、これから少しずつ関係を温めていこうとする気持ちです。
やり直しは何歳からでも可能
愛着の修復は、何歳からでも始められます。中学生や高校生になってからはもちろん、大人になってからでも「やり直し」は遅くはありません。
そして覚えておいてほしいのは、愛着形成に課題があったとしても、それが「親御さんからの愛情不足」を意味するわけではないことです。
愛着形成の背景には、さまざまな要因が関わっています。もしかすると、子どもの性格や発達のペースに合う関わり方を、まだ見つけられていなかっただけかもしれません。
日々の関わりを丁寧に続けていけば、親子の絆はまた穏やかに深まっていきます。
日常でできるやり直しの具体策
特別なことよりも、日々の小さな関わりが何より大切です。
子どもの目を見て話す、そっと抱きしめる、微笑みかける、うなずきながら話を聞く、そして小さなことでも褒めてください。こうした関わりの積み重ねが、子どもに「自分は大切にされている」という安心感を育てていきます。
一度に完璧を目指す必要はありません。たとえ短い時間でも、意識して関わることで、親子の関係は少しずつ変わっていきます。
子育ては「量」より「質」です。今できることから、ゆっくり始めてみましょう。
焦らず継続することが大切
愛着を育て直すには、それなりに時間がかかります。すぐに結果が見えなくても、焦る必要はありません。
「今日はうまくいかなかった」と感じる日があっても、翌日また新しい気持ちで関わっていけば大丈夫です。
そして、親御さん自身が疲れすぎないように気をつけましょう。
ときには外部のサポートを上手に取り入れることも大切です。心にゆとりがあることで、子どもと過ごす時間の質も自然と高まっていきます。
愛着形成をチェックする新奇場面法とは?
新奇場面法(ストレンジ・シチュエーション法)とは、愛着の状態をチェックするために開発された心理学的な手法です。
母親と子どもを一時的に離してから再会させ、そのときの子どもの反応を観察します。その結果をもとに、子どもの愛着を4つのタイプに分類します。
安定型
全体の約60%を占める、もっとも健全な愛着パターンです。
母親が離れると不安を示しますが、戻ってくると喜んで迎え、すぐに安心して遊びに戻ります。困ったときには人に助けを求め、自分でも「きっと大丈夫」と思える自信を持っているのが特徴です。
回避型
お母さんが離れてもあまり動揺を見せず、戻ってきても積極的に近づこうとしません。どちらかといえば、距離を保とうとする傾向があります。
一見すると自立しているように見えるものの、実際には感情を表に出すことを避けている状態です。このタイプの子どもは、人と親しくなることに抵抗を感じていると考えられています。
不安型
母親が離れると強い不安を示し、戻ってきても怒りを見せたり、なかなか落ち着かなかったりします。
相手の愛情を失う不安が強いため、過剰に愛情を求めたり、依存的になったりしやすい傾向があります。親御さんのそばを離れようとせず、離れると激しく泣くこともあります。
無秩序型
母親が戻ってきたときに、近づこうとしながら固まってしまったり、混乱した行動を見せたりします。
安定した行動パターンが見られず、予測が難しい反応を示すのが特徴です。養育環境に何らかの困難やストレスがあったときに、このタイプが見られるとされています。
子どもとの愛着形成を深める関わり方
ご家庭で今日から実践できる、愛着形成を深める関わり方をご紹介します。ぜひ、チェックしてみてください。
スキンシップとアイコンタクト
抱っこをしたり頬を寄せたり、優しく撫でたりする身体的な触れ合いが基本です。こうした関わりの積み重ねが、親子の絆を深めるきっかけになります。
スキンシップには科学的な根拠があります。肌と肌が触れ合うことで「オキシトシン」というホルモンが分泌され、親子双方に安心感や幸福感をもたらします。このホルモンは「愛着ホルモン」とも呼ばれ、絆を深める働きがあるとされています。
また、子どもの目を見て話しかけることも大切です。「大好きだよ」と言葉で伝えながら、ぎゅっと抱きしめる時間を持ってみましょう。
毎日の小さな関わりの中で、子どもの心に少しずつ安心感が育っていきます。
子どもの気持ちに寄り添う声かけ
子どもが泣いたり、困っていたりするときは、そっと優しく声をかけてあげましょう。「どうしたの?」「悲しかったね」と、気持ちを言葉にして受け止めることが大切です。
子どもの話に耳を傾け、感情を受け止めることで、「自分の気持ちをわかってもらえた」という安心感が生まれます。
共働き家庭でもできる愛着形成
共働きのご家庭でも、短い時間の中でスキンシップや会話を意識することで愛着は育まれます。
たとえば、帰宅後に子どもの話をゆっくり聞く、寝る前に抱きしめる、笑顔で「おかえり」と声をかけるなど、ほんの数分の関わりでも十分です。
「一緒にいられる時間が短くて申し訳ない」と感じる必要はありません。限られた時間でも、あたたかな関わりが信頼の絆を育てていきます。
やってはいけないNG行動
子どもが泣いているのに無視する、感情的に怒鳴る、約束を守らないといった対応は、信頼関係を損なうきっかけになります。
しかし、何でも子どもの要求を聞き入れるということではありません。子どもの要求を聞き入れることができないときは、子どもの気持ちを受け止めつつも一貫した対応を心掛けましょう。そして、子どものよい行動が見られたときに、たくさん褒めてあげましょう。
親御さんも子育てに悩むこともあるでしょう。完璧な親である必要はありません。
うまくいかない日があっても、自分を責めすぎず、「次はどう接しようか」と考え直していきましょう。
子どもの愛着形成についてのまとめ
子どもとの愛着は、親子のあいだに育まれる心の絆です。生後6ヶ月から3歳頃が特に大切な時期とされていますが、愛着は一生を通して深めていくことができます。
ご家庭では、スキンシップやアイコンタクト、やさしい声かけなどを意識してみましょう。共働きのご家庭でも、短い時間の中で丁寧に関わることで、愛着はしっかりと育まれます。
また、愛着は築き直すことができます。
もし、子どもの愛着形成や子どもへの関わり方にお悩みのときは、ステラ幼児教室へご相談ください。
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