「4歳になっても癇癪(かんしゃく)が収まらない」「思い通りにならないと床に転がって泣き叫ぶ」と悩んでいる保護者の方は少なくありません。2歳頃のイヤイヤ期は過ぎたはずなのに、なぜ4歳でまた激しい癇癪が起こるのでしょうか?
実は、4歳頃の癇癪はイヤイヤ期と異なる「発達段階で起こる自然な現象」です。この時期のお子さんは、感じる力は大人並みに育っているのに対し、感情をコントロールする力が発達途上にあります。
本記事では、4歳の癇癪がなぜ起こるのか、発達障害との関係、そしてご家庭で実践できる具体的な対処法について解説します。ぜひ最後までお読みください。
4歳の癇癪とは?イヤイヤ期との違い

4歳のお子さんの癇癪は、2歳のイヤイヤ期とは異なる発達段階で起こります。この頃は言葉の発達が進み、より複雑な感情を抱えるものです。しかし、それをうまく表現できない煩わしさが癇癪として表れます。
癇癪で泣き叫ぶのはどのような状態か
4歳の癇癪には、典型的なパターンがあります。床に転がって泣き叫ぶ、手に持った物を投げる、親を叩く、大声で「イヤだ」と叫び続けるといった行動です。
これらの行動は一見わがままに見えますが、実はお子さんが自分の気持ちを必死に伝えようとしている努力の表れです。まだうまく言葉で表現できない感情を、身体全体を使って表現しているといえます。
癇癪は数分で落ち着くことがほとんどです。ただし、お子さんが高いストレス状態にある場合は、30分以上続くこともあります。
イヤイヤ期と4歳の癇癪の違い
イヤイヤ期では、お子さんは「何がしたいのか」さえ自分で明確に言えません。一方、4歳のお子さんはすでに言葉での表現力が育ち始めており、「〇〇だから嫌だ」というように理由をつけて反抗します。
2歳のころは「イヤ」と泣くだけでしたが、4歳では「お兄ちゃん(お姉ちゃん)ばかりずるい」「できると思ったのにできなかった」と具体的な不満を訴えてきます。これは言葉での表現力が育ってきた証拠です。
つまり4歳の癇癪は、より複雑な感情を言葉で表そうと挑戦している段階といえます。お子さんが一歩ずつ成長している証です。
4歳の壁とは
「4歳の壁」とは、お子さんが自分の気持ちをはっきり伝えようとする大きな成長の節目です。自分のしたいことと周りからの期待がぶつかり、戸惑いや葛藤が増える時期でもあります。
たとえば「自分でやりたい」と主張する一方で、まだうまくできずに悔しがるといった場面が増えてきます。この時期に保護者の方がお子さんの気持ちを受け止め、見守りながらサポートすることで、お子さんは自分らしい表現の仕方を身につけていくのです。
この頃は大変に感じられるかもしれませんが、乗り越えた先には親子の信頼がぐっと深まります。
4歳の癇癪が起こる原因とは?

ここからは、4歳児が癇癪を起こす原因をいくつかのポイントにわけてご説明します。
感情のコントロールがまだ難しい
感情にブレーキをかける脳(前頭前野)の発達には、10代後半までかかるとされています。つまり、怒りや悲しみといった強い感情を大人と同じように感じているのに、「ちょっと待とう」「我慢しよう」と自制するのがまだ難しいのです。
この感じる力と抑える力のズレが、癇癪として表れます。
言葉で伝えきれないもどかしさ
4歳児の語彙は2歳児に比べて大きく増えています。それでも、心の中で感じている複雑な気持ちをすべて言葉で正確に伝えることは、まだ難しい年齢です。
たとえば、保育園で友達におもちゃを取られたとき、お子さんが感じているのは単なる「悲しい」だけではありません。「自分が先に遊んでいたのに」「返してもらえなかった」「先生は気づいてくれなかった」といった複数の気持ちが混ざり合っています。
自我の芽生えと現実のギャップ
4歳は自我がぐんと育つ時期です。「自分はこうしたい」「自分にはこれができるはず」という気持ちが強くなり、体の動きもぐっと器用になります。
しかし「できると思ったこと」と「実際にできること」の間には、まだ大きな開きがあります。うまくいかない現実に直面したとき、お子さんは強い悔しさや戸惑いを感じ、それが癇癪として表れます。
また、「自分でやりたい」という意欲が高まる一方で、安全や生活リズムのために保護者の方が「待って」「ダメ」と声をかける場面も増えてきます。この「自分のしたいこと」と「周りからの声かけ」のズレも、癇癪を招く要因です。
生活環境や疲れの影響
お子さんの癇癪は、生活リズムや疲れの影響を大きく受けます。お腹が空いたり体が疲れたりすると、気持ちのコントロールが難しくなるからです。
さらに睡眠不足も大きく影響します。睡眠不足のお子さんは、気持ちを整える力そのものが弱まり、癇癪の頻度や激しさが増す傾向にあります。
生活リズムと睡眠の確保は、お子さんの感情安定に欠かせない土台です。
発達障害と4歳の癇癪は関係がある?

癇癪が多いからといって、すぐに発達障害を疑う必要はありません。ただし、頻度や特徴によっては専門家への相談をおすすめします。
癇癪がひどいと発達障害なの?まず知っておきたいこと
まず知っていただきたいのは、4歳児が癇癪を起こすことはごく自然であることです。
癇癪そのものが発達障害のサインとは限りません。多くの場合、成長過程で見られる自然な姿であり、発達に心配のないお子さんは5歳を過ぎるころから比較的落ち着いてくる傾向があります。
その過程で「もしかして何か発達に関することがあるのでは」と感じることがあれば、遠慮なく専門家に相談してください。
もしかして?と思ったら確認したいサイン
2歳頃のイヤイヤ期の癇癪は通常、短期(数か月から半年ほど)で落ち着きます。一方、発達障害に関連する癇癪は頻繁に起こり、長引きやすく、1回で30分以上泣き続けることも少なくありません。
ここで大切なのは、お子さんの様子を丁寧に観察することです。発達特性の一つであるASD(自閉スペクトラム症)がある場合、特定のものへの強いこだわりや、いつもと違うことへの激しい拒否が見られることがあります。
一方、じっとしていられない様子が頻繁に見られ、落ち着いて座っていることが難しい場合は、ADHD(注意欠如多動症)の可能性も視野に入ります。
心配なときはどこに相談すればいい?
「もしかして」と感じたら、まずは身近なところに相談してみましょう。いきなり大きな病院に行く必要はありません。
最初の相談先としておすすめなのは、お住まいの市区町村にある保健センターです。保健師さんによる発達相談は無料で受けられます。電話や訪問により相談でき、必要があれば、その後の専門機関も紹介してもらえます。
また、ステラ幼児教室のような児童発達支援でも、お子さんの発達と保護者の方のお悩みに対するサポートをしています。ご自身とお子さんが安心できる環境を、ゆっくり選んでいきましょう。
4歳の癇癪への具体的な対処法

癇癪が起きたとき、保護者の方がどう声をかけ、どう見守るかが大切です。ここでは、実践しやすい癇癪の対処法をご紹介します。
お子さんや周囲の安全を最優先する
お子さんが癇癪を起こしたときは、安全確保が最優先です。以下の対応をできるだけ早めに済ませておきましょう。
●ハサミなど尖ったものを手の届かない場所に片付ける
●テーブルの角や壁にクッションやタオルを挟む
●転びやすいもの(小さなおもちゃなど)を片付けておく
●カーペットやクッションマットを敷いた安全な場所を作る
また、外出先で癇癪を起こした場合は、人目の多い公共の場から静かな場所へ移動すると、親子ともに気持ちが少し楽になります。
泣き叫ぶときは落ち着くまで見守る
お子さんが泣き叫んでいる間は、落ち着くまで静かに見守ります。ただし「見守る」とは、そばを離れることではありません。お子さんのすぐそばにいながら、干渉を最小限に抑えます。
具体的には、数メートル離れた場所から静かに様子を見守り、危ないことが起きたらすぐに動ける距離を保ってください。
静かな見守りの時間を通じて、お子さんは「親が見守ってくれている」と感じるようになります。
落ち着いたら共感の言葉をかける
お子さんが落ち着き始めたら、「怒る気持ちはわかるけれど、叫ぶのはやめようね」というように、気持ちを認めつつ行動は制限する「共感的対応」を心がけます。
共感的対応とは、お子さんの気持ちを「間違っていない」「その感情は正当だ」と認めることです。そうすることで、お子さんは「自分の気持ちは親に理解されている」と理解しやすくなります。
なお、気持ちを認めずに、いきなり行動を制限するのはNGです。「怒る気持ちはわかるよ」という一言から始まることが、何よりも重要です。
落ち着いたことを具体的にほめる
落ち着いた後のほめ方は、タイミングと具体性がポイントです。「落ち着けたね」という一般的な表現よりも、「さっきは怒る気持ちがあったけど、深呼吸して落ち着けたね。すごいね」というように、具体的な行動と努力を認めてあげてください。
時間が経つとお子さんは出来事を忘れてしまうため、できるだけすぐに褒めましょう。「ママ(パパ)は〇〇ができたあなたのこと、とても誇りに思うよ」と伝えることで、自己肯定感が高まります。
疲れても4歳の癇癪対応でやってはいけないNG行動

毎日の癇癪への対応で、良かれと思ってやっていることが実は逆効果になっている場合があります。
叩いたり感情的に怒鳴ったりする
怒鳴ったり、叩いてしまったりする行動は、その場ではお子さんの行動を一時的に止められるかもしれません。しかし長い目で見ると、お子さんの癇癪を悪化させる可能性もあります。
お子さんはより強い不安と恐怖を感じ、興奮状態が長引きます。また、保護者の方に対する信頼感も低下するでしょう。
お子さんの泣き声が耐えられないときや感情的になりそうなときは、別の部屋に一時的に移動するなど、物理的に距離を置くことをおすすめします。
要求をすべて受け入れる
癇癪を止めるためにおもちゃや食べ物を与える、または要求をすべて受け入れるという対応は、お子さんに間違ったパターンを学ばせてしまいます。
この仕組みは、心理学で「オペラント条件づけ」と呼ばれています。親が不快な状況(癇癪)を終わらせるために要求を受け入れると、無意識のうちにその行動を強化させる傾向があるのです。
その結果、お子さんは同じ場面で癇癪を繰り返すようになり、「泣けば親が要求を聞いてくれる」「嫌なことは癇癪で避けられる」と学んでしまいます。
逆に「癇癪を自分で抑えられたとき」など、できるだけしてほしい行動をお子さんがしたときに褒めることが望ましいです。
泣き叫ぶ子どもを突き放す
突き放したり放置したりするのは、絶対に避けるべき対応です。お子さんは「ママやパパは自分の気持ちを受け入れてくれない」「困ったときに大人は助けてくれない」というメッセージを受け取ってしまいます。
長い目で見ると、お子さんの自信が失われたり、「自分は悪い子だ」という間違ったイメージを持ったりする可能性があります。完全な放置は避けながらも、干渉しすぎない「見守り」のバランスが大切です。
ほかの子と比べる
「他のお友達は泣かないのになぜあなたは泣くの?」というような言葉は、お子さんの心を傷つけるだけでなく、兄弟姉妹間の競争心や劣等感を生んでしまいます。
4歳は発達の個人差がとても大きい時期であり、同じ年齢のお子さんでも言葉の力や感情を抑える力には大きな違いがあります。ほかの子と比べることよりも、そのお子さん自身の成長に目を向けることが大切です。
4歳の癇癪についてのまとめ
4歳の癇癪は、感情を感じる力は育っているのに、それをコントロールする力がまだ発達途上という、脳の発達バランスが原因で起こる自然な現象です。
対処で大切なのは、安全を守り、落ち着くまで見守り、落ち着いたら共感の言葉をかけ、ほめることです。お仕事で忙しいご家庭でも、「完璧な対応」より「一貫した対応」を心がけましょう。
4歳の癇癪や発達の困りごとでお悩みなら、ステラ幼児教室にご相談ください。
お子さんの発達と保護者の方のお悩みに対するサポートをしています。
ひとりで悩まずに、お気軽にご相談ください。












