3歳になっても発語(ことばを自発的に話すこと)がない、あるいは非常に少ない場合、保護者として「この子は理解しているのに話さない」「健常児と比べて言葉が遅いのでは?」と気になる方もおられるでしょう。
この記事では、「3歳で発語なし」の現象を深く掘り下げ、発達障害(特に自閉症)との関連、言葉の遅れの兆候、対応策、児童発達支援事業所の選び方、家庭でできる支援までを包括的に解説します。
「3歳で発語なし」とはどのような状態か
まず、「発語なし」というのは、どういった状況を指すものを明確にしておきましょう。「発語なし」は、一般的に以下のような状態を指します。
- 単語(「ママ」「パパ」「ワンワン」など)の発語がほぼない
- 意味のある言葉を含む文言(2語文以上)が見られない
- 模倣的な発声(喃語や音の真似)はあるが、自発的な言語表出が少ない
- その他、要求や応答としての「ことばを使ってのコミュニケーション」が非常に限定的
「理解はしている」と感じられることも多く、指示に従う、名前を呼ぶと反応する、といった理解能力が見られる例があります。そういった場合は、「言葉が出ない=認知的に問題がある」というわけではなく、理解と発語とのギャップが存在する状態にあると考えられます。
健常児の発語発達目安と発語なしの場合との違い
次に、健常児の発語発達目安と、発語なしの場合との違いについて解説します。
健常児の発語発達目安
発語とコミュニケーションの発達には、年齢ごとの期待値・目安があります(ただし個人差が大きい)。以下は、年齢ごとの一般的な発達段階の例をまとめた表です。
年齢 | 発語・言語表現 | 言葉の理解 | コミュニケーションの特徴 |
約1歳前後 | 「ママ」「パパ」など単語が出始める / 喃語(「あーあー」「うーうー」等) | 親の声かけや周囲の音に反応、簡単な指示に従う | 大人を見て反応する、笑顔で応答する、指差し |
1歳半~2歳 | 単語数が増える / 動詞+名詞の組み合わせが始まる | 2語程度の指示を理解/簡単な質問に反応 | 他者との簡単なやりとり、模倣行動、絵本への興味 |
2歳~3歳 | 2語文や3語文、語彙数が急速に増える | 明確に多数の指示を理解する(「お皿を持ってきて」など) | 質問をする・答える、親や周囲との会話形式のやりとりができる |
3歳時点では、健常児であれば「理解できる言葉」がかなり増えており、自己紹介・あいさつ・簡単な会話などができる子が多いとされています。
発語なし・言葉の遅れのある子との違い
「3歳で発語なし」の子どもには次のような特徴が見られることがあります。
- 理解はあるように見えるが、自分から話さない、自発的な発語がほぼない
- 模倣は可能な場合と難しい場合がある
- 非言語的コミュニケーション(指差し・視線・身振りなど)が少ない
- 周囲と比べて反応が遅い、または相互のやりとりが少ない
このような違いが「言葉の遅れ」、「発達の遅れ」として認識されることになります。
自閉症との関係性で発語なしが示す可能性
「発語なし」が見られる場合、発達障害(特に自閉症)の可能性を考慮することが大切です。
自閉症の特徴と発語との関連
自閉症は典型的には次のような特徴を含みます。
- 対人関係・社会性の障害
- コミュニケーションの困難さ
- 限局された興味/反復的行動
- 言語発達の遅れ
中でも、「言語発達の遅れ」は、自閉症の目立つ兆候の一つです。
具体的には、次のような兆候が見られます。
- 発語が遅い/発語が全くない
- 模倣が少ない
- 視線・共有注意(誰かと同じ対象を見たり、指差しをするなど)が少ない
- 社会的なやりとり(笑顔・呼びかけ・応答など)が乏しい
- 聴覚に反応するが、言葉の意味を使ったやり取りは限定的
自閉症以外の原因との違い
必ずしも発語なし=自閉症というわけではありません。他にも次のようなケースが考えられます。
- 聴覚障害(難聴など)
- 発達性言語障害(言語そのものの発達が遅いが、社会性・理解などは比較的保たれている場合)
- 知的障害
- 環境要因(言葉を聞く機会が少ない、話しかけられる機会が限られているなど)
- 運動・口腔筋機能の問題
このため、「理解はしているのに発語がない」子どもの場合は、そうした要因を含めた幅広いアセスメントが必要です。
言葉の遅れで「気になる兆候」チェックリスト
発語なしの状態がただの個人差なのか、支援が必要な遅れかを見極めるために、次の兆候に注意しましょう。健常児と比べて、どこがどう違うのかを明確にするためのチェックリストを紹介します。
「気になる兆候」のチェックリスト
チェック項目 | 気になる度(はい / いいえ) | メモ・例 |
名前を呼ぶと振り向く/反応するか | ||
簡単な指示(「おいで」「手をあげて」「それを取って」など)を理解して従うか | ||
指差し(欲しいものを指す・見てほしいものを指す)をするか | ||
視線・アイコンタクトがあるか | ||
周囲の音や声に反応するか、聴覚的注意があるか | ||
模倣(大人の動きや言葉の真似)をするか | ||
おもちゃ遊びや絵本を見るなど、大人との遊びのやりとりを試みるか | ||
興味・関心が非常に限定的か、こだわりが強いか | ||
他の子供と遊ぶことを避けるかどうか | ||
音や光・触覚など感覚刺激に過敏/鈍感なところがあるか |
もし上記リストの複数の項目で「はい」があり、特に「理解はあるが発語なし」「指差しや視線共有が少ない」などが該当する場合は、言葉の遅れだけでなく発達障害の可能性も検討する必要があります。
原因・背景:理解はしているのに話さない理由
次に、なぜ「理解はしているようなのに発語がない/少ない」のか。可能性のある主な原因を整理します。下記に挙げたものは、可能性のある主な原因で、必ずしもこれらのどれかに分類されるわけではありません。
聴覚の問題
言葉を聞くことができなければ、当然発語も難しくなります。難聴や中耳炎など、一時的な聴力低下が影響することがあります。聴覚検査は発語なしのチェック項目として重要です。
口腔・発声器官の発達
舌・唇・口輪筋などの口のまわりの筋肉、呼吸や発声を司る器官の発達が遅れていると、発語そのものに物理的なハードルがあることも。しゃぼん玉遊び・ストローの練習など、口腔運動を促す活動が有効とされます。
発達障害(自閉症など)の特性
自閉症など、自閉症の特性として、言語の社会的使用が苦手であること、模倣や相互作用が少ないことが影響します。また、感覚過敏・感覚鈍麻など感覚処理の問題が言語入力および出力に関与しているケースもあります。
知的発達の遅れ
理解力(認知力)そのものに遅れがあると、ことばの理解も発語も両方遅れ、知的発達の遅れにつながります。
心理社会的要因
例えば、話しやすい環境が整っていない、ストレスや不安、親の期待や比べる感覚などが子どもの発語に影響することもあります。そういった場合には、原因となっている心理社会的要因を取り除いてあげることで、発語なしの問題が改善されます。
早期支援の重要性と支援開始のタイミング
「気になる」段階で放置しないことが非常に重要です。発語なし・言葉の遅れに対する早期介入がその後の発達に与える影響は大きく、人生の早い時期に適切な支援を始めることで回復・改善の可能性が高まります。
ベストタイミングはいつ? 言葉の遅れへの支援の開始
言葉の遅れに関して、次のような状況が見られたら、早めに支援を検討しましょう。
- 2歳を過ぎても単語がほとんど出ない
- 2歳~3歳になっても自発語が少ない
- 簡単な指示や名前には反応するが、発語がない
- 指差しや視線共有がほとんどない
- 他の発達領域(社会性・運動・感覚など)にも気になる点がある
専門機関や公的機関での相談・診断
- 市区町村・都道府県の 発達障害・発達相談窓口
- 保健センターやこども家庭支援センターでの言語発達相談
- 小児科・発達小児科での検査・診断
- 言語聴覚士など専門職によるアセスメント
早期にアセスメントを受け、「理解度・発語能力・認知・社会性・感覚など多面的に評価」することが、支援の方向性や期日の見通しを立てる鍵となります。
言葉の遅れへの支援方法や訓練プログラムの具体例
発語なし・言葉の遅れのある子どもに対しては、以下のような支援方法・療育・訓練プログラムが効果的です。
言語聴覚士による個別訓練
発語を引き出すための専門的なトレーニング。発音器官の使い方、音読模倣、言語音の明瞭化などを行います。
遊びを中心としたコミュニケーション療育
おもちゃ・歌・絵本・手遊びなど、子どもが興味を持ちやすく楽しい活動を通して、発語を促す環境を作ります。模倣や応答を誘う関わり方が重視されます。遊びを通して子どもに発話するきっかけを与えてあげます。
視覚支援ツール(絵カード・ジェスチャー・サインなど)
言葉だけでなく、視覚的な情報を組み合わせることで、子どもの理解を助け、言葉を使いたくなる動機付けを高めます。
児童発達支援事業所を選ぶ際のポイント
支援を提供する場として「児童発達支援事業所」や「発達支援の専門塾」を検討する際には、以下のポイントを重視すると良いです。
チェック項目 | なぜ重要か |
専門職の在籍(言語聴覚士・保育士・臨床心理士など) | 発語なし・理解はあるケースでは言語発達に関する専門的な評価・訓練が必要だから |
個別支援プログラム | 個々の発達レベル・特性(理解力・聴覚力・口腔機能・感覚特性など)に応じたアプローチができるから |
専門職の在籍(言語聴覚士・保育士・臨床心理士など) | 発語なし・理解はあるケースでは言語発達に関する専門的な評価・訓練が必要だから |
集団療育と個別療育のバランス | 集団の中での模倣や交流を通じた刺激と、個別でじっくり取り組む時間の両方が効果的だから |
保護者との連携・相談体制 | ご家庭での支援との一貫性を持たせるため、進捗報告・相談機会が定期的にあるかどうかの確認 |
早期開始可能かどうか | 3歳あるいはそれより前から対応可能な施設であること、また受け入れ枠があるか確認する必要があるから |
環境・アクセス | 通いやすさ、送迎の有無、施設の立地・雰囲気・スタッフの対応等の確認のため |
費用・補助制度の有無 | 公的補助、自治体制度、保険適用などが利用できるかを事前に確認する |
評価・改善の仕組み | 定期的な評価(発語だけでなく理解力・社会性など)と、それに基づいたプログラムの見直しが行われているかの確認 |
マンツーマン個別発達指導とは?
上記のチェック項目で挙げた重要ポイントをほぼすべて満たしているのが、マンツーマン個別発達指導です。子供一人一人につき発達レベルや特性が異なるため、個別に発達指導を受けることで、その差異は改善されます。「児童発達支援事業所」または「発達支援の専門塾」で、マンツーマン個別発達指導が行われています。
まとめ:3歳で発語なしに気づいたらどう対応すべきか
「3歳で発語なし」「健常児と比べて言葉の遅れが気になる」「理解はしているのに話さない」「自閉症の可能性があるかもしれない」と思ったら、以下のステップを踏んでみてください。
- 観察と記録
日常の中で「何ができているか」「何ができていないか」「いつ頃からそうか」などをメモしておくと、専門家との相談がスムーズになります。 - 聴力検査を含む発達相談を受ける
市区町村の発達相談センター、保健センター、こども家庭支援センター、小児科などでまず相談を。 - 専門的なアセスメント・検査
言語聴覚士、発達小児科、心理士などによる検査。理解力・言語表現力・認知・感覚・社会性など多面的に検査します。 - 早期療育・支援の開始
個別/集団療育、家庭でのサポート、視覚支援、口腔運動など、状況に応じたプログラムをできるだけ早くスタート。 - 適切な発達支援塾/児童発達支援事業所を選ぶ
先に挙げたチェックポイントをもとに、実際に見学・体験をさせてもらい、「その子に合いそうか」を判断。 - 保護者自身のサポートと理解
保護者が正しい情報を持ち、悩みを共有できる場所を持つこと。焦りや比べる気持ちを少しでも減らすことも、子どもへの支援を継続するうえで大切です。
特に「言葉の遅れが気になる」保護者にとっては、「理解はしていることを前提に、どう発語を引き出すか」を熟知しているマンツーマン個別発達指導の施設を選ぶことが重要です。この記事で解説したことを参考にして原因を分析し、家庭内での解決が判断した場合には、ぜひマンツーマン個別発達指導の施設へ相談されることをおすすめします。